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「チン!ドン!シャァァアアアアン!」
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火葬が終わり、あとは帰って納骨するだけとなった。
私の住む集落は、火葬が終わると その日のうちにお骨をお墓に入れて、そのまま七日法事を済ませてしまうのがほとんどだ。
火葬場や、告別式の時間によって 多少前後する事もあるが、それが終われば四十九日までは一息つく事になる。
片付ける事は山ほどあるのだけれど。
帰りはさすがにクタクタだった。
家に着くと位牌とお骨を前にまた拝みが始まった。
所により違うかもしれないが、普通は和尚さんが一人でお経を唱える。
お世話になっているお寺の和尚さんは、参列者にも経本を配り、所々「では皆さんご一緒に」とお経を唱えるよう勧められる。
私たち檀家なので知っているが、そうでない人達は「何で?」みたいな顔をして、小声でブツブツと唱え出す。
和尚さんとの息継ぎのタイミングを間違うと、シーンとなるので出来るだけそうならないように気を使う。
唱えみるとよく分かるが、読経は肺活量と腹筋が必要だ(笑)
普段は何とも思わないが、今日は疲れすぎていて声が出ない。
いわゆる口パクでやり過ごした。
なぜ私たちも?と一度理由を聞いてみたことがある。
そしたら意外な返事が返ってきた。
「だってぇ、私1人喋っててもみんな退屈でしょう?
それにみんなで唱えた方が賑やかで楽しいし、仏さんも喜ぶと思うんだ」
と笑いながらおっしゃった。
…そんなもんなのか(笑)
確かにお経は聴いてる分には眠くなる。
教本も、あと何ページ?と ついつい先をめくって見てしまう。
修行が足りんな。
これも悟りの世界なのか?
人と故人の両方をよく見ていらっしゃる。
でもお茶目な方だ。
ところで。
今までお葬式と言えば 集落の人が仕切ってくれていた。
出入り先親戚が寄ってきて、公民館でお弁当や昼食などを手作りし、遺族は来客の対応程度が普通だった。
葬儀も自宅が当たり前。
なので人がたくさん入るように、畳二間続きの大きな家が多い。
納骨の時も、花籠だの旗だの塔婆だの、係になった人が色々なものを手に持ち、頭には三角巾を被り 草履を履いてお墓まで行列を作って
『チン!ドン!シャァアアアアアン!』
と楽器を鳴らしながら歩いたものだ。
チン!は鐘、ドン!は太鼓、シャァァアアアアンはシンバルのようなものだ。
練習などないので 遅くなったり速くなったり、なかなか揃わないのも味がある。
私だったら上手に出来たかもしれないのになぁ。
今は火葬だが、私が中学生頃までは土葬だった。
棺桶は漬け物桶のでっかいバージョンで、遺体を座った形(座棺)で入れて お墓に深い穴を掘ってその中に埋葬していた。
時が経つと、上蓋が腐って落ち、穴が開くのでまた埋める…と言った具合。
私が15歳の時
祖母が事故で亡くなった。
棺桶に入れた際に、鼻に詰めていた綿が外れ、ドロドロと鼻水が出てきたのを覚えているが、さすがにアレは強烈だった。
みんな慌てていたのを思い出す。
さらに遺体を入れた棺桶を担いでお墓まで「チン ドン シャン」なので、みんな気力と体力が必要だった事だろう。
そう言えば、故人が戻ってこれないようにと、棺桶を担いだまま 3回家の庭を回って出発したっけ。
今の「葬儀後同じ道を通らない」っていう意味と同じだと思う。
蓋は開かないように まぁるい手頃な石を使って釘で打ち付け、その石を墓前に置いて、お参りのたびに水をかけるよう教えられた。
今でもお墓の前にちょこんと置いてある。
土葬は思い返すと今でもちょっと怖い。
いやかなり怖い。
ホラー映画やテレビの見過ぎかもしれないけど、埋めた人が土の中から出てくるんじゃないかとか(ゾンビだな)考えると、墓に行くなど絶対無理。
恐怖で眠れず、物音に怯え 夜中トイレに行けない案件となるのは間違いない。
子どもの頃に親がワザと、
「言うこと聞かないと そこから先祖様が出てくるぞ」何て言うもんだから、
…私 オネショしちゃったじゃないか(照)
正直火葬にかわった事にすごく感謝する。
少なくとも手が出てくるとか無さそうだから。
今回 我が家では葬列も食事などのお手伝いも全てお断りした。
集落では初めての試み。
手伝ってもらったといえば、香典の受付や役場への書類出しぐらいだったかなと思う。
後はほとんど葬儀社が対応してくれるし、お弁当もセットになっていて仕出しを使えば簡単。
なので働いている人にわざわざ休んでまでお世話して頂く必要がない。
実際自分もよその葬儀の時に休んだ経験があったからよく分かる。
身内とは言え、こちらは当事者ではないため忌引きにならず、仕事より葬儀を優先し、有給を使って休むしかないからだ。
寺や火葬場の都合、友引などで予定が長引くと、それだけ長く休まなくてはいけない。
このご時世、いつまでも同じやり方をするのは難しいんじゃないかと判断。
高齢者世帯も増えてきて、お手伝いも大変。
もちろん、葬儀自体を軽く考えているわけではない。
ただみんなの負担を減らしたいだけ。
その分、故人に気持ちを向けられたら それが一番いいと思った。
それをうちが最初にやれば、みんなもそれに習ってきてくれるんじゃないかという私なりの提案。
結局 家族も親戚も賛同してくれた。
意外にも、今ではそれが当たり前になってくれたのが嬉しい。
多分 みんな同じことを思っていたんだよね。
お葬式も時代と共にリニューアルしてきた。
「故人を偲ぶ」
「大切な人との想いを繋ぐ」
これを忘れなければ葬儀がどんな形であっても 故人は報われる…と私は思う。
…多分。
私の住む集落は、火葬が終わると その日のうちにお骨をお墓に入れて、そのまま七日法事を済ませてしまうのがほとんどだ。
火葬場や、告別式の時間によって 多少前後する事もあるが、それが終われば四十九日までは一息つく事になる。
片付ける事は山ほどあるのだけれど。
帰りはさすがにクタクタだった。
家に着くと位牌とお骨を前にまた拝みが始まった。
所により違うかもしれないが、普通は和尚さんが一人でお経を唱える。
お世話になっているお寺の和尚さんは、参列者にも経本を配り、所々「では皆さんご一緒に」とお経を唱えるよう勧められる。
私たち檀家なので知っているが、そうでない人達は「何で?」みたいな顔をして、小声でブツブツと唱え出す。
和尚さんとの息継ぎのタイミングを間違うと、シーンとなるので出来るだけそうならないように気を使う。
唱えみるとよく分かるが、読経は肺活量と腹筋が必要だ(笑)
普段は何とも思わないが、今日は疲れすぎていて声が出ない。
いわゆる口パクでやり過ごした。
なぜ私たちも?と一度理由を聞いてみたことがある。
そしたら意外な返事が返ってきた。
「だってぇ、私1人喋っててもみんな退屈でしょう?
それにみんなで唱えた方が賑やかで楽しいし、仏さんも喜ぶと思うんだ」
と笑いながらおっしゃった。
…そんなもんなのか(笑)
確かにお経は聴いてる分には眠くなる。
教本も、あと何ページ?と ついつい先をめくって見てしまう。
修行が足りんな。
これも悟りの世界なのか?
人と故人の両方をよく見ていらっしゃる。
でもお茶目な方だ。
ところで。
今までお葬式と言えば 集落の人が仕切ってくれていた。
出入り先親戚が寄ってきて、公民館でお弁当や昼食などを手作りし、遺族は来客の対応程度が普通だった。
葬儀も自宅が当たり前。
なので人がたくさん入るように、畳二間続きの大きな家が多い。
納骨の時も、花籠だの旗だの塔婆だの、係になった人が色々なものを手に持ち、頭には三角巾を被り 草履を履いてお墓まで行列を作って
『チン!ドン!シャァアアアアアン!』
と楽器を鳴らしながら歩いたものだ。
チン!は鐘、ドン!は太鼓、シャァァアアアアンはシンバルのようなものだ。
練習などないので 遅くなったり速くなったり、なかなか揃わないのも味がある。
私だったら上手に出来たかもしれないのになぁ。
今は火葬だが、私が中学生頃までは土葬だった。
棺桶は漬け物桶のでっかいバージョンで、遺体を座った形(座棺)で入れて お墓に深い穴を掘ってその中に埋葬していた。
時が経つと、上蓋が腐って落ち、穴が開くのでまた埋める…と言った具合。
私が15歳の時
祖母が事故で亡くなった。
棺桶に入れた際に、鼻に詰めていた綿が外れ、ドロドロと鼻水が出てきたのを覚えているが、さすがにアレは強烈だった。
みんな慌てていたのを思い出す。
さらに遺体を入れた棺桶を担いでお墓まで「チン ドン シャン」なので、みんな気力と体力が必要だった事だろう。
そう言えば、故人が戻ってこれないようにと、棺桶を担いだまま 3回家の庭を回って出発したっけ。
今の「葬儀後同じ道を通らない」っていう意味と同じだと思う。
蓋は開かないように まぁるい手頃な石を使って釘で打ち付け、その石を墓前に置いて、お参りのたびに水をかけるよう教えられた。
今でもお墓の前にちょこんと置いてある。
土葬は思い返すと今でもちょっと怖い。
いやかなり怖い。
ホラー映画やテレビの見過ぎかもしれないけど、埋めた人が土の中から出てくるんじゃないかとか(ゾンビだな)考えると、墓に行くなど絶対無理。
恐怖で眠れず、物音に怯え 夜中トイレに行けない案件となるのは間違いない。
子どもの頃に親がワザと、
「言うこと聞かないと そこから先祖様が出てくるぞ」何て言うもんだから、
…私 オネショしちゃったじゃないか(照)
正直火葬にかわった事にすごく感謝する。
少なくとも手が出てくるとか無さそうだから。
今回 我が家では葬列も食事などのお手伝いも全てお断りした。
集落では初めての試み。
手伝ってもらったといえば、香典の受付や役場への書類出しぐらいだったかなと思う。
後はほとんど葬儀社が対応してくれるし、お弁当もセットになっていて仕出しを使えば簡単。
なので働いている人にわざわざ休んでまでお世話して頂く必要がない。
実際自分もよその葬儀の時に休んだ経験があったからよく分かる。
身内とは言え、こちらは当事者ではないため忌引きにならず、仕事より葬儀を優先し、有給を使って休むしかないからだ。
寺や火葬場の都合、友引などで予定が長引くと、それだけ長く休まなくてはいけない。
このご時世、いつまでも同じやり方をするのは難しいんじゃないかと判断。
高齢者世帯も増えてきて、お手伝いも大変。
もちろん、葬儀自体を軽く考えているわけではない。
ただみんなの負担を減らしたいだけ。
その分、故人に気持ちを向けられたら それが一番いいと思った。
それをうちが最初にやれば、みんなもそれに習ってきてくれるんじゃないかという私なりの提案。
結局 家族も親戚も賛同してくれた。
意外にも、今ではそれが当たり前になってくれたのが嬉しい。
多分 みんな同じことを思っていたんだよね。
お葬式も時代と共にリニューアルしてきた。
「故人を偲ぶ」
「大切な人との想いを繋ぐ」
これを忘れなければ葬儀がどんな形であっても 故人は報われる…と私は思う。
…多分。
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