追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

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ルフェール到着

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 出発してより七日目の夕刻、ついに一行はルフェールへと到着した。

 街の中へ入ると、誰からともなく安堵のため息が漏れた。昨夜の戦闘以来、全員緊張が続いていたのだ。

「さて、ここでお別れじゃな」

 ジムケがやや名残惜しそうな口ぶりで言った。

「おぬしらには世話になった。この後全員で酒場に繰り出し一杯…と言いたいところじゃが、各々おのおの用事もあるじゃろう。ワシも今からお得意先に挨拶に行かねばならん。…デボラ殿、ドナルド殿」

 ジムケは掌に乗る程度の大きさの硬貨袋を取り出し、それをドナルドとデボラに手渡した。護衛代金という事だろう。

 ドナルドは一度硬貨袋を受け取り…しかしそれを懐に入れる事なく、悩むようにして言った。

「…おいジイさん、俺も受け取っていいのか?」

「ん?おぬしは約束通り最後まで護衛を務めてくれた。その代金を払うのは当然の事じゃろう」

「…そうか」

 ドナルドは少し迷いながらも硬貨袋を受け取った。

「それと、アレクシア殿。…これはお返ししよう」

 ジムケは懐からナイフを取り出すと、それをアレクシアに手渡す。豪華な装飾が施されたナイフだ。同行するための代金としてアレクシアがジムケに渡したものだった。

「ん…?それは、同行するための代金としてお渡ししたはずですが…」

「そうじゃな。じゃが、ワシはおぬしに命を救ってもらった。それで対価は受け取ったようなものじゃ。このナイフはお返しする」

「そうですか。…では」

 アレクシアはナイフを受け取る。

「そしてルカ君、これを」

 ジムケは、ドナルドに渡したものと同じような硬貨袋をルカに手渡した。

「え…?これって…」

「護衛の代金じゃ。ルカ君にも命を助けてもらったかの」

「いいんですか?僕は、その…大して役に立てなかったと思いますけど」

「そんな事はない。おぬしがいなければワシらは全滅しておった」

「私もその通りだと思うよ。君がいなければ、私は二体目のゴーレムに対処できなかっただろう」

 アレクシアもジムケの言葉に同意した。

「じゃから、これはおぬしの正当な報酬じゃ。受け取ってくれんか」

「…はい!」

 ルカは両手で硬貨袋を受けとった。予想以上にずっしりと重かった。

「さて、と…それじゃあ皆の者、元気でな」

 ジムケたちは市場や商店などが軒を連ねる商業地域の方へと向かっていった。商隊キャラバンの面々は、

「あんたら、元気でな」

「もしまた護衛を頼むことがあったらよろしく頼むぜ」

 などと口々に言って手を振っていた。ルカも手を振り返す。

 その場に残ったのは、ルカ、アレクシア、デボラ、ドナルドの四人となった。

「それじゃ、あたしらもここでお別れかねえ」

 デボラがしんみりした声で言った。

「坊や、これからどうするつもりなんだい?」

「しばらくこの街で冒険者として過ごそうと思います。デボラさんは?」

「あたしらは何日かこの街でゆっくり休んで…今度はルフェールへ行く商隊キャラバンを見つけて、またあの街に戻るつもりだよ。一応、あっち方面があたしらの本拠地だからね。坊やさえ良ければ一緒に行動を…とも思うけど」

「ありがとうございます。でも、僕はしばらくこの街に留まろうと思います。ルフェールには色んな思い出がありますけど…ずっとあそこにいたら、その思い出に引きずられて新しい事に挑戦できなくなるような気がするんです」

「うん、あたしらなんかと一緒にいるより、その方がずっといいと思うよ。若いんだし、頑張りな」

 デボラの瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。ルカとの別れを名残惜しく思ってくれているのだろう。意外と涙もろい性格なのかもしれない。

「命を助けてくれたあんたには感謝してる。元気でね、坊や」

「はい、デボラさんも」

 デボラは涙の浮かぶ目元を指で拭った後、アレクシアの方へと歩いていった。彼女にも礼を述べるつもりなのだろう。

 その様子を見るともなく見ていると、突然ドナルドが近付いてきた。彼は、ルカとデボラが話している最中は腕を組みそっぽを向いて突っ立っていた。それが突然近付いてきたのだ。

「おい、ガキ…いやルカ、ちょっとつら貸せよ」

 ドナルドはルカから顔を背けながら、呟くように言った。
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