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修道騎士団支部へ

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 アレクシアはシュタインベルグ王国の王女だった――それはこの場の全員にとって意外な事実だったが、そのおかげでひとまずルカたちは窮地を脱する事ができそうだった。

 修道騎士団と対等な関係を保ったまま騎士団支部へと向かう事ができる。これなら拷問にかけられたり処刑されたりといった事態に陥る事もないだろう。

「それではアレクシア女王殿下、修道騎士団支部までご案内いたします」

 分隊長が告げた。

「女王殿下、などと呼ばずとも構わないよ。と言うより、私は出来る限り身分を隠したい。もっと気軽に呼んでいただきたいものだ」

 そうアレクシアが返す。

「ではアレクシア殿とお呼びさせていただいてもよろしいでしょうか」

「ああ、それで構わない。それより、貴女の名を教えていただけないだろうか」

「これは…失礼いたしました」

 分隊長は姿勢を正した。

「ジーナ・サマラス第二級修道騎士。ルフェール修道騎士団の代表武官を務めています」

 そう言って、ジーナは右手を自身の左胸に添えて頭を下げた。貴族や王族に対する敬礼だ。

 実際の所、ジーナ分隊長はアレクシアが王族であるという事実については未だ半信半疑なのだろう。だが、下手にそれを表に出して後々問題となってはかなわない…というのが彼女の本音だ。

 ジーナは自身の紹介が終わると修道騎士たちに視線を向けた。

「あなたたちも…アレクシア殿に自らの聖職姓名を名乗りなさい」

 その言葉に促され、周囲の修道騎士たちも自らの名を名乗る。

「ジャンマリオ・モッロ従騎士です」

「ニコス・コネ従騎士と申します」

 などなど。ジーナ以外は全員『従騎士』という肩書きだった。つまり、正式な騎士ではなく騎士見習いという事だ。

 それぞれの自己紹介が終わると、ジーナは改めてアレクシアを促した。

「それでは…どうぞ、ご同行ください」

「ああ、承知した。――ルカ君、ジョゼフ殿、それで構わないね」

 アレクシアは後ろを振り返り問いかける。

「はい、勿論です」

 とルカ。

「おう、それで問題な…いえ、問題ありません、ありませぬ…!」

 ジョゼフはやや緊張した面持ちで答える。そんな様子を見て、アレクシアはクスリと笑った。

「畏まる必要はない。出来れば、今まで通りに接して欲しい」

「そ、そうでございますか…い、いや、そうか。うん、分かったぜアレクシア殿」

 ジョゼフは少し言葉を詰まらせながらもそう答えた。

「勿論、ルカ君もね」

 アレクシアはルカに微笑みかける。彼女が王女であろうとなかろうと変わらない、凛とした美しい笑顔。

「はい」

 ルカは頷いた。

 一行は、ルフェール修道騎士団支部へと向かう。
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