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ルカが起きる数時間前。
目を覚ましたアレクシアと少女。二人は、静かに寝息を立てるルカの顔を恍惚とした表情で見守っていた。
「はあ…ルカ君かわいい…マジ天使…」
「ああ、可愛らしい寝顔だ…いくら見ていても飽きないね」
「頬ずりしたい…」
「ああ…」
「抱きしめたい…」
「ああ…」
「くんかくんかしたい…」
「ああ…」
と、ルカの顔を覗き込みながらそんな事を囁きあう二人。しかし、今そんな事をしてしまえばルカが目を覚ましてしまいそうなため、ぐっと堪える。
ルカの顔をまじまじと眺めつつ、アレクシアが呟いた。
「だが…私はこんなに可愛く幼いルカ君に頼りっぱなしだ。もう少し彼の役に立てるようになりたいのだが…」
「そ、それを言うならわたしの方こそですよう。ルカ君と、それにアレクシアさんのおかげで自由の身になれたのにまだ何もお返しできてないんですから…」
はあ…とため息を吐く少女。
「ここがわたしの地元だったら、美味しいラーメン屋さんとかに連れていってあげれるんですけど…」
「ラーメン?それはいったい…」
「えっと、何て言えばいいんでしょう。汁に浸かったパスタ、的な?とにかく、とっても美味しい料理です」
「料理…料理、か…」
と、アレクシアは少女の言葉に何か思いついたように頷いた。
「よし、私たちでルカ君の朝食を用意するというのはどうだろう。今までの恩を返すには全然足りないが、少しでも彼が喜ぶことをしてあげたい」
「いいですね、それ!」
という事で、朝食の材料になりそうなものを探しに二人は朝の市場へと向かったのだった。
市場を訪れた少女は、その光景に圧倒された。ルフェールは決して大きな街ではなかったが、それでも市場の活気というのは凄まじい。
そして市場で取り扱われる品物。その中には少女にとって馴染みのある物もあったが、今まで見た事もない品物も数多く並べられていた。
ピンク色をしたキノコ。物音に反応して花びらを動かす植物。稲妻のような形をした果物。さらには、食べ物なのか道具なのか何なのか全く見当もつかない謎の物体。
改めてここが異世界なのだと認識させられる。少女はアレクシアに案内されながら市場を見て回った。もっとも、アレクシアは王族。こういった市場に詳しい訳ではない。少女に聞かれても分からない事も多かった。
それでも、
「あ、あれってもしかしてお米ですか?」
「ああ、そうだね」
「へえ~、この世界でもお米ってあるんですねえ。よく食べるんですか?」
「いや、月に一度か二度、パエリアやリゾットを食べる程度だろうか。無論、地域によっても違うだろうが…」
だとか、
「あ!あれ!あの黒い液体!もしかして醤油ですか!?」
「ん?ショーユ?聞きなれない単語だね。あれは醤油ではなく魚醬だよ」
「へえ…魚醬、ですか…」
「もし気になるならお店の人に詳しく話を聞いてみるかい?」
などと会話しつつ市場の中を進んだ。そして、少女は一軒の屋台の前で足を止める。
「お魚…」
少女が足を止めたのは魚を売る屋台の前だった。
「こんな新鮮な魚を売ってるって事は、ここって海の近くなんですか?」
この世界には冷蔵技術など存在しないだろう。にもかかわらず鮮魚を扱っている店があるという事は、この町は海の近くなのでは?そう考えた少女だったが、
「おいおい、なに言ってんだい嬢ちゃん」
と、魚屋の店員に笑われた。
「ルフェールから海までは十日以上かからあ。ここにいる魚は全部川や湖で取れた魚だぜ」
「え、これ、みんな淡水魚なんですか?この鮭みたいなのも?」
と、一匹の魚を指差す。
「ああ、こいつは鮭じゃなくて鱒だ。まあ、鮭も鱒も同じ種類の魚なんだがな。この鱒なんていい形してるだろ。オスだから卵は持ってねえが、香草焼きにしたら美味いぜ」
「へえ…鱒のオス…つまり鱒雄ですか。サザエやカツオやワカメやタラは売ってないんですか?」
「あ、ああ?サザエもカツオもワカメもタラも海のもんだからここにはねえよ」
「そうですね、失礼しました。つい…」
何が「つい」なのかよく分からず首を傾げる魚屋。しかし、ここで少女はハッ…と何かに気が付いたように口元に手を当てる。
「おじさん、今鱒は鮭と同じ種類の魚だって言いましたよね」
「あ、ああ…」
「って事は…さっき見かけたお米と、魚醬…そしてこのお魚を合わせて…よし、決まりました!」
パン、と手を叩く少女。
「決まった?何が決まったんだい?」
今まで魚屋と少女のやり取りを見守っていたアレクシアが声をかける。少女はふふん、と胸を張って答えた。
「決まったのはもちろん、ルカ君に作る朝食のメニューです!」
目を覚ましたアレクシアと少女。二人は、静かに寝息を立てるルカの顔を恍惚とした表情で見守っていた。
「はあ…ルカ君かわいい…マジ天使…」
「ああ、可愛らしい寝顔だ…いくら見ていても飽きないね」
「頬ずりしたい…」
「ああ…」
「抱きしめたい…」
「ああ…」
「くんかくんかしたい…」
「ああ…」
と、ルカの顔を覗き込みながらそんな事を囁きあう二人。しかし、今そんな事をしてしまえばルカが目を覚ましてしまいそうなため、ぐっと堪える。
ルカの顔をまじまじと眺めつつ、アレクシアが呟いた。
「だが…私はこんなに可愛く幼いルカ君に頼りっぱなしだ。もう少し彼の役に立てるようになりたいのだが…」
「そ、それを言うならわたしの方こそですよう。ルカ君と、それにアレクシアさんのおかげで自由の身になれたのにまだ何もお返しできてないんですから…」
はあ…とため息を吐く少女。
「ここがわたしの地元だったら、美味しいラーメン屋さんとかに連れていってあげれるんですけど…」
「ラーメン?それはいったい…」
「えっと、何て言えばいいんでしょう。汁に浸かったパスタ、的な?とにかく、とっても美味しい料理です」
「料理…料理、か…」
と、アレクシアは少女の言葉に何か思いついたように頷いた。
「よし、私たちでルカ君の朝食を用意するというのはどうだろう。今までの恩を返すには全然足りないが、少しでも彼が喜ぶことをしてあげたい」
「いいですね、それ!」
という事で、朝食の材料になりそうなものを探しに二人は朝の市場へと向かったのだった。
市場を訪れた少女は、その光景に圧倒された。ルフェールは決して大きな街ではなかったが、それでも市場の活気というのは凄まじい。
そして市場で取り扱われる品物。その中には少女にとって馴染みのある物もあったが、今まで見た事もない品物も数多く並べられていた。
ピンク色をしたキノコ。物音に反応して花びらを動かす植物。稲妻のような形をした果物。さらには、食べ物なのか道具なのか何なのか全く見当もつかない謎の物体。
改めてここが異世界なのだと認識させられる。少女はアレクシアに案内されながら市場を見て回った。もっとも、アレクシアは王族。こういった市場に詳しい訳ではない。少女に聞かれても分からない事も多かった。
それでも、
「あ、あれってもしかしてお米ですか?」
「ああ、そうだね」
「へえ~、この世界でもお米ってあるんですねえ。よく食べるんですか?」
「いや、月に一度か二度、パエリアやリゾットを食べる程度だろうか。無論、地域によっても違うだろうが…」
だとか、
「あ!あれ!あの黒い液体!もしかして醤油ですか!?」
「ん?ショーユ?聞きなれない単語だね。あれは醤油ではなく魚醬だよ」
「へえ…魚醬、ですか…」
「もし気になるならお店の人に詳しく話を聞いてみるかい?」
などと会話しつつ市場の中を進んだ。そして、少女は一軒の屋台の前で足を止める。
「お魚…」
少女が足を止めたのは魚を売る屋台の前だった。
「こんな新鮮な魚を売ってるって事は、ここって海の近くなんですか?」
この世界には冷蔵技術など存在しないだろう。にもかかわらず鮮魚を扱っている店があるという事は、この町は海の近くなのでは?そう考えた少女だったが、
「おいおい、なに言ってんだい嬢ちゃん」
と、魚屋の店員に笑われた。
「ルフェールから海までは十日以上かからあ。ここにいる魚は全部川や湖で取れた魚だぜ」
「え、これ、みんな淡水魚なんですか?この鮭みたいなのも?」
と、一匹の魚を指差す。
「ああ、こいつは鮭じゃなくて鱒だ。まあ、鮭も鱒も同じ種類の魚なんだがな。この鱒なんていい形してるだろ。オスだから卵は持ってねえが、香草焼きにしたら美味いぜ」
「へえ…鱒のオス…つまり鱒雄ですか。サザエやカツオやワカメやタラは売ってないんですか?」
「あ、ああ?サザエもカツオもワカメもタラも海のもんだからここにはねえよ」
「そうですね、失礼しました。つい…」
何が「つい」なのかよく分からず首を傾げる魚屋。しかし、ここで少女はハッ…と何かに気が付いたように口元に手を当てる。
「おじさん、今鱒は鮭と同じ種類の魚だって言いましたよね」
「あ、ああ…」
「って事は…さっき見かけたお米と、魚醬…そしてこのお魚を合わせて…よし、決まりました!」
パン、と手を叩く少女。
「決まった?何が決まったんだい?」
今まで魚屋と少女のやり取りを見守っていたアレクシアが声をかける。少女はふふん、と胸を張って答えた。
「決まったのはもちろん、ルカ君に作る朝食のメニューです!」
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