161 / 1,156
一回戦第二試合
しおりを挟む
「一回戦第二試合…ライモンド・ガイモvsドンズ・クアドラド!」
司会役であるニコニスの叫びと共に、二人の剣士が入場する。
ライモンド・ガイモは穏やかな風貌の男だった。しかし、軟弱さは感じられない。おそらく身長は180cmを越えている。腕や胸回りも太く、その体が鍛え上げられたものだという事がはっきりと見て取れる。だが…それでも、彼と対峙する男に比べれば随分と小さく感じられた。
ドンズ・クアドラド。その身の丈、2m30cm。ライモンドより頭ふたつ分は背が高く、体の分厚さ、腕の太さなどは倍ほどもある。その全身を鎧で包み、左手には盾、右手には斧。兜《ヘルム》の間から見える顔は、いかにも朴訥そうだ。
「でっけえ…」
誰からともなく、観客席で声があがる。
「こんなん、相手のライモンドは勝てんのかよ?」
「いや、剣術は体の大きさで決まるもんじゃねえぜ」
「一流の剣士は巨大な魔物だって剣一本でぶっ倒すんだからな」
「とはいえ、体格差があればリーチだって違うぜ?」
そんな観客同士の会話がルカ達の耳にも届いてきた。
「ねえ、アレクシアさん」
安鶴沙がアレクシアの顔を覗き込む。
「アレクシアさん的には、どっちが有利だと思いますか?」
「そうだね…まず、一般論を言わせてもらうと剣士同士の戦いでは位階が上の人間は実力も上とされている。この場合、ライモンド殿はアルトゥース流の準修伝、ドンズ殿はガーヴァーン流の中伝だ」
「準修伝ってのは、英検とか漢検でよくある準一級とか準二級と同じ意味って事でいいんですかね?」
「「英検…?」」
アレクシアとルカが聞きなれない単語に首を傾げる。
「いや、えっと…つまり、準修伝ってのは修伝未満で中伝より上って意味で合ってますか?」
「うん、その通りだよ。だからこの場合はライモンド殿の方がやや優勢…という事になる。ただし、これはあくまで一般論でしかない。相性や戦い方の工夫、その時々のコンディションなど勝敗を決定付ける要素は無数に存在するからね。どちらが有利…というのは、残念ながら簡単には判断できない」
そこまで言って、アレクシアは「ただ…」と付け加える。
「やはり、ドンズ殿の巨体はこのトーナメント参加者の中で突出している。このような特異な性質を持つ者が、それを上手く扱う事ができれば…間違いなく、強いよ」
そう言い終えた時、試合開始を告げるゴングの音が会場に響いた。
司会役であるニコニスの叫びと共に、二人の剣士が入場する。
ライモンド・ガイモは穏やかな風貌の男だった。しかし、軟弱さは感じられない。おそらく身長は180cmを越えている。腕や胸回りも太く、その体が鍛え上げられたものだという事がはっきりと見て取れる。だが…それでも、彼と対峙する男に比べれば随分と小さく感じられた。
ドンズ・クアドラド。その身の丈、2m30cm。ライモンドより頭ふたつ分は背が高く、体の分厚さ、腕の太さなどは倍ほどもある。その全身を鎧で包み、左手には盾、右手には斧。兜《ヘルム》の間から見える顔は、いかにも朴訥そうだ。
「でっけえ…」
誰からともなく、観客席で声があがる。
「こんなん、相手のライモンドは勝てんのかよ?」
「いや、剣術は体の大きさで決まるもんじゃねえぜ」
「一流の剣士は巨大な魔物だって剣一本でぶっ倒すんだからな」
「とはいえ、体格差があればリーチだって違うぜ?」
そんな観客同士の会話がルカ達の耳にも届いてきた。
「ねえ、アレクシアさん」
安鶴沙がアレクシアの顔を覗き込む。
「アレクシアさん的には、どっちが有利だと思いますか?」
「そうだね…まず、一般論を言わせてもらうと剣士同士の戦いでは位階が上の人間は実力も上とされている。この場合、ライモンド殿はアルトゥース流の準修伝、ドンズ殿はガーヴァーン流の中伝だ」
「準修伝ってのは、英検とか漢検でよくある準一級とか準二級と同じ意味って事でいいんですかね?」
「「英検…?」」
アレクシアとルカが聞きなれない単語に首を傾げる。
「いや、えっと…つまり、準修伝ってのは修伝未満で中伝より上って意味で合ってますか?」
「うん、その通りだよ。だからこの場合はライモンド殿の方がやや優勢…という事になる。ただし、これはあくまで一般論でしかない。相性や戦い方の工夫、その時々のコンディションなど勝敗を決定付ける要素は無数に存在するからね。どちらが有利…というのは、残念ながら簡単には判断できない」
そこまで言って、アレクシアは「ただ…」と付け加える。
「やはり、ドンズ殿の巨体はこのトーナメント参加者の中で突出している。このような特異な性質を持つ者が、それを上手く扱う事ができれば…間違いなく、強いよ」
そう言い終えた時、試合開始を告げるゴングの音が会場に響いた。
0
あなたにおすすめの小説
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる