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一回戦第二試合2
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アルトゥース流準修伝剣士、ライモンド・ガイモはティネンの剣術修練所で若者相手に剣技を教えて生計を立てている。温厚な性格で理論派の彼は教え子たちからの評判が良かった。そして、剣術師範としてだけではなく剣士としての評判も高い。
ライモンドの戦いは論理で構築されている。まず最も重要なのは敵の弱点を突く事。そしてもし防がれた場合の二の手、三の手を事前に考えておく。そうすれば常に優勢を保つ事ができる。これが彼の考えだ。
――天才には常人を超えた勘や閃きがある。だけれど、常人であろうと論理を構築すれば天才とも戦える。
ライモンドは教え子たちに いつもそう語っていた。そしてそれをこのトーナメントで実践し、証明してみせるつもりだ。
◇
試合開始と共にライモンドが動いた。真正面からドンズに突っ込んでいく――と見せかけ、突如横に飛ぶ。アルトゥース流修伝体技、『暗足』。
(この巨体に加え、全身鎧…フットワークは苦手だろう?)
それがライモンドの導き出した答えだ。ドンズの横に回り込み、素早く剣を振り降ろす。初伝剣技『斜斬り落とし』。しかし、ドンズの反応は予想を越えて早かった。
――キィン。
金属と金属がぶつかり合う音が響く。
「なに…!?」
ライモンドの剣は、ドンズの盾に阻まれていた。金属製の重厚な盾だ。常人では持ち上げるのも困難だろう。このような物を安々と動かす腕力、『暗足』に対応する反射神経。常人のものではない。
(だが、二の手、三の手は考えてあるさ…!)
ライモンドは盾に押し当てた剣に練気を込めた。アルトゥース流修伝剣技、『圧し斬り』。
(このまま盾を断ち割る…)
練気の込められた剣であれば鉄すら断つ事も可能だ。ドンズの盾も、メロンでも割るが如く真っ二つに――は、ならなかった。ライモンドの剣は、盾でがっちりと受け止められたままだ。
観客席でその様子を観察するアレクシアが呟く。
「ガーヴァーン流中伝盾技『剛壁』か…」
(くっ…)
ライモンドは内心で舌打ちをする…が、まだ想定の範囲内だ。
(ここは一度距離を取って…)
後ろへ下がろうとするライモンド。しかし、その時ドンズが動いた。右手に持つ斧を振り下ろしたのではない。複雑なステップを見せた訳でもない。ただ――前へと進んだのだ。猛然たる勢いで。
「なっ…ちょっ、待て…!」
ドンズの動きは牛の突進を思わせた。ライモンドに盾を押し付け、巨獣の如き迫力で突き進む。ガーヴァーン流中伝盾技、『盾突』。
ライモンドは盾の勢いに負け、後ろへ突き飛ばされる。しかしドンズは尚も止まらない。
「ぐっ…やめろ!止まれ、やめ…!」
勢いの凄まじさに、押し返す事はおろか横へ避ける事もままならない。そして気が付けば――後ろには、試合場を取り囲む壁。
「ぐえゃっ」
盾と壁に挟まれ、ライモンドの口から声ならぬ声が上がる。そして、しばしの静寂。
ドンズは盾を壁から離す。すると失神したライモンドが前のめりになって倒れ伏した。盾を置き、ポリポリと頬を掻くドンズ。
「勝者、ドンズ・クアドラド!」
勝ち名乗りと共に試合終了を告げるゴングが鳴り響く。
一回戦第二試合 ライモンド・ガイモvsドンズ・クアドラド…勝者、ドンズ・クアドラド
ライモンドの戦いは論理で構築されている。まず最も重要なのは敵の弱点を突く事。そしてもし防がれた場合の二の手、三の手を事前に考えておく。そうすれば常に優勢を保つ事ができる。これが彼の考えだ。
――天才には常人を超えた勘や閃きがある。だけれど、常人であろうと論理を構築すれば天才とも戦える。
ライモンドは教え子たちに いつもそう語っていた。そしてそれをこのトーナメントで実践し、証明してみせるつもりだ。
◇
試合開始と共にライモンドが動いた。真正面からドンズに突っ込んでいく――と見せかけ、突如横に飛ぶ。アルトゥース流修伝体技、『暗足』。
(この巨体に加え、全身鎧…フットワークは苦手だろう?)
それがライモンドの導き出した答えだ。ドンズの横に回り込み、素早く剣を振り降ろす。初伝剣技『斜斬り落とし』。しかし、ドンズの反応は予想を越えて早かった。
――キィン。
金属と金属がぶつかり合う音が響く。
「なに…!?」
ライモンドの剣は、ドンズの盾に阻まれていた。金属製の重厚な盾だ。常人では持ち上げるのも困難だろう。このような物を安々と動かす腕力、『暗足』に対応する反射神経。常人のものではない。
(だが、二の手、三の手は考えてあるさ…!)
ライモンドは盾に押し当てた剣に練気を込めた。アルトゥース流修伝剣技、『圧し斬り』。
(このまま盾を断ち割る…)
練気の込められた剣であれば鉄すら断つ事も可能だ。ドンズの盾も、メロンでも割るが如く真っ二つに――は、ならなかった。ライモンドの剣は、盾でがっちりと受け止められたままだ。
観客席でその様子を観察するアレクシアが呟く。
「ガーヴァーン流中伝盾技『剛壁』か…」
(くっ…)
ライモンドは内心で舌打ちをする…が、まだ想定の範囲内だ。
(ここは一度距離を取って…)
後ろへ下がろうとするライモンド。しかし、その時ドンズが動いた。右手に持つ斧を振り下ろしたのではない。複雑なステップを見せた訳でもない。ただ――前へと進んだのだ。猛然たる勢いで。
「なっ…ちょっ、待て…!」
ドンズの動きは牛の突進を思わせた。ライモンドに盾を押し付け、巨獣の如き迫力で突き進む。ガーヴァーン流中伝盾技、『盾突』。
ライモンドは盾の勢いに負け、後ろへ突き飛ばされる。しかしドンズは尚も止まらない。
「ぐっ…やめろ!止まれ、やめ…!」
勢いの凄まじさに、押し返す事はおろか横へ避ける事もままならない。そして気が付けば――後ろには、試合場を取り囲む壁。
「ぐえゃっ」
盾と壁に挟まれ、ライモンドの口から声ならぬ声が上がる。そして、しばしの静寂。
ドンズは盾を壁から離す。すると失神したライモンドが前のめりになって倒れ伏した。盾を置き、ポリポリと頬を掻くドンズ。
「勝者、ドンズ・クアドラド!」
勝ち名乗りと共に試合終了を告げるゴングが鳴り響く。
一回戦第二試合 ライモンド・ガイモvsドンズ・クアドラド…勝者、ドンズ・クアドラド
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