追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

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一回戦第三試合

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「いや~、終わってみればドンズ・クアドラドの圧勝だったね」

 レームの言葉の通りだった。結局、ライモンドの剣はドンズに傷一つ付ける事ができなかったのだ。

「二回戦のルカ君の相手は、あのドンズさんって事になりましたねえ」

 安鶴沙が悩まし気な口調で腕を組む。

「あの体格に加え、盾が厄介ですねえ…えっと、ガーヴァーン流盾技じゅんぎ、でしたっけ」

「うん。ガーヴァーン流というのは、盾を使って戦う剣術流派だからね」

 アレクシアが答える。

「盾に練気プネウマを込めて敵の攻撃を防御する。のみならず、攻撃にも転用して戦う流派だ。ドンズ殿が最後に見せた突進…『盾突じゅんとつ』がそうだね。無論、剣を使った攻撃もできる。剣技についてはアルトゥース流、ガーヴァーン流共通のものが多いね」

「むむむ…アルトゥース流の攻撃力に加え、盾を使った防御力…手強い相手ですね」

「しかし、アルトゥース流にはアルトゥース流の利点がある。そして何よりも…ルカ君には、ルカ君にしかない武器が沢山あるからね」

 アレクシアは隣に座る少年の顔を覗き込む。

「二回戦も、応援しているよ」

「はい――頑張ります」

 ルカはアレクシアの瞳を見つめながら頷いた。



 一回戦第三試合の出場者が入場した。

 一方は、年若い少女。純白のショートヘアに、勝気な瞳。その背には槍を背負っている。彼女の名は、ローエングリン・ファイアフィズ。

 もう一方は、ナマズのような細長い髭を生やした男。燕尾服を身に纏っており、剣士というよりはどこかの下級貴族といった印象を受ける。彼の名はベーロイ・ウースラ。

「ええっと、確か…女の子、ローエングリンさんの方はパルツィヴァール槍術の位階無し、とか言われてましたね。位階無しってどういう意味なんでしょうか?」

「普通に考えれば、初伝位階より下の見習みならいって意味だろぅねー」

 安鶴沙の疑問に答えたのはレームだ。

「流派武術は、初伝、中伝、修伝、皆伝、奥伝、秘伝、叡意、覚意、極意の九位階だけど、その下に見習がある。ローエングリンって子は、まだ初伝にもならない見習なんじゃないかなぁ」

「なるほど…それじゃあ、まだまだ駆け出しって事なんですね」

「それでこのトーナメントに出場しようってんだから大したもんだよねぇ」

「そしてそのそのローエングリンさんと戦うのが…ベーロイさんですか」

 安鶴沙はベーロイに視線を移す。彼は余裕の表情で、観客に対して「やあやあ」と手を振っている。

「ベーロイ流の開祖って話でしたけど…ベーロイ流ってのは、強いんでしょうか?」

「ううーん、分かんないねえ」

 レームは肩を竦める。

「あ、そうなんですか。物知りレームちゃんでも知らないんですね」

「自分にだって分からない事はあるさあ。それより、こういう事はアレクシアちゃんの方が詳しいんじゃないのかぃ?今まで触れてこなかったけどさぁ…ツヴァイクって事はあの剣の名門ツヴァイク家の一員って事だろぅ?」

 と、レームはアレクシアに話を振った。しかしアレクシアは首を振る。

「残念ながら私もベーロイ流という流派名は聞き覚えがないな…ルカ君は?」

「僕もありません…初めて聞く名前です」

 ルカも首を振った。つまり、ベーロイ・ウースラの実力は未知数という事だ。
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