背景、あなたは勇者に選ばれました

h-san

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第1章

一.目覚めるとそこは…

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・勇者(ゆうしゃ)
1.勇気ある者のこと。
2.多くの者から勇気を称えられ賞賛される者。

出典:パルテニア標準辞典

━━━━━━━━━━━━━━━━━

痛い。

体全身に強い衝撃が伝わる。まるでコンクリートの壁に打ちつけられたような痛みだ。
意識が混濁する。
周囲からは聞いた事がない言語が聞こえてくる。
段々と体の感覚と意識が戻ってきた。
まだ朦朧とする意識の中、なぜこのような状況なのか自分の記憶を探る。

たしか、あれは修学旅行の途中、バスで山の中にある温泉街に向かう途中だった。バスの様子がおかしくなり曲がることが出来ずガードレールを突き破りそのまま…

そこで直前の記憶を全て思い出し完全に意識を取り戻し急いで目を開け体を起こす。
もし崖から落ちたのなら今すぐこのバスの中から脱出しなければ。
しかし、目を開けてみるとそこはバスの中でも無くましてや山の中でもなかった。

「ここは、どこだ…?」

目を開けるとそこには石造りの広場らしき場所が広がっていた。
周囲には同じバスに乗っていたクラスメイトや担任の先生が眠るように横になっていた。

どうやら俺が起きたことに気がついたらしい。
奥から世界史の教科書で見たような聖職者の服装をした
俺と同じ歳ぐらいの少女が近づいてきた。金髪に碧眼、どうやら日本人ではないらしい。

「━━━━━━━━━━!━━━━━━!!」

とても眩しい笑顔をこちらに向けながら話しかけてくるが、何を話しているか全く分からない。
英語とも違うし、中国語などのアジア圏の言語でもない。なにやらロシア語に近い発音だ。

「━━━━━━…?…━━━━!」

どうやら話が通じていないことに気がついたらしい。
ポケットの中を物色して何かを探しているらしい。
しばらくすると彼女の顔が明るくなった。
どうやらお目当てのものを見つけたらしい。
ポケットからなにやら飴玉らしきものをさしだしきた。
そしてそれを口の中に入れろというジェスチャーをしてくる。
ここは従うのが得策か。
少女の手から飴玉を受け取り口の中に放り込む。
その飴玉らしきものは口の中に入れた途端直ぐに溶け無くなってしまった。
今まで体験したことがない不思議な感覚だな。

「あのー、これで通じるようになりましたか…?」

こちらに対して恐る恐る聞いてくる。

「はい、分かるようになりました。ありがとうございます。」

「そうですか!なら良かったです!」

言語が通じるようになったことがわかり少女の顔は明るい笑顔へと変化した。
…最初見た時から思ってはいたが、やはり可愛いな。

「私はエミリー・メニファーといいます!人間の年齢だと今年で17歳になります。これからよろしくお願いしますね。それで、貴方様のお名前をお教えして頂いてもよろしいでしょうか…?」

…どうやらお互いに自己紹介をする流れに持っていきたいらしい。ここはその流れに乗るとするか。

「俺は宮康二 明仁ミヤジ アキト。君と同じ17歳だ、よろしく。それでいくつか聞きたいことがあるのだが…」

色々と質問をしようとした時背後から人が起きる音が聞こえてきた。
背後に目をやるとどうやら何人か起き始めたらしい。
エミリーはそちらの対応をするために走っていった。

数十分後、全員が起き俺と同じように飴玉を舐め言語が分かるようになるとエミリーは俺たち全員を上階へと連れていった。
そこにはいかにも王らしき人物が玉座に鎮座しており、脇には騎士らしき人間が数十名直立不動で立っていた。
俺たちはその王らしき人物の御膳へと連れていかれ跪かされ、全員が跪くのを確認するとエミリーは俺たちの集団の前に出て跪きなにやら報告らしきことを始めた。

「宮廷魔道士エミリー・メニファー以下17名、王の命により勇者を召喚完了致しましたことを報告さしあげます。」

…薄々勘づいてはいたがどうやら異世界に召喚されたらしい。しかも勇者として。
周囲のクラスメイトをチラ見すると多くの者がまだ状況を飲み込めていないようだったが、俗に言うオタクと呼ばれるクラスメイトはある程度状況を飲み込めており頬が緩んでいる者がいた。

「ふむ。ご苦労であったな、エミリーよ。もう下がっても良い」

「はっ、失礼いたします」

そう言うとエミリーは素早く騎士達がいる脇へと移動していった。

「オホン、まずこの度は突然お主らを召喚した事を詫びよう」

すると後ろからなにやら声が聞こえてきた。

「なにが詫びるだ!さっさとおれらを元の世界へと戻しやがれ、クソジジイ!」

声の主の方をみるとクラスの中で一番血の気が多い山園 忍ヤマゾノ シノブが立ち上がり王を睨みつけていた。それはそうとして仮にも王に対してクソジジイは不味いだろう。
周囲が抑えにかかっているがどうやら抑えが効かないらしい。

「おい、お前!王の御膳であるぞ!」

ほら言わんこっちゃない。周囲の騎士の中でも特に目立つ鎧を来ている騎士から注意が飛んできた。
どうやらこの中で1番階級が高いらしい。

「大丈夫だ、構わんよ。それはそうとすまないが、お主たちを元の世界へと戻すことは難しい」

それを聞いた瞬間山園の表情が変わった。

「勝手に呼んどいてそれで帰れないとか、ふざけんなよ!!」

体が前に動き出す。どうやら殴りかかろうとするらしい。それを見た王は手を振り下ろし周囲の騎士へなにか合図をだした。
その合図を受け取ったらしい先程注意をした騎士が剣を引き抜き山園の前に出てきた。
そして剣を山園の方に向け、

『グサ』

鈍い音が響き渡る。
どうやら剣を山園に刺し素早く抜き去ったようだ。
龍園は刺された傷口から血を流しながら倒れ込んだ。
周囲からは女子の悲鳴や数名が立ち上がり山園の方へと駆け寄る者、腰を抜かす者などがいた。
それを見た王は「ハァ…」というため息を出しながらこちらを見てくる。

「アルベド、こやつ・・・の状態は?」

「はっ、王!急所は外しましたので暫くは大丈夫かと。ただ出血がありますのでお話はお早めにお願い致します」

「わかった。…聞いたなお主たち、こやつを助けたかったら素直に話を聞くことだ」

それを聞き皆黙り再び跪き王の話へと耳を傾ける。

「余はアルフェンヌ二世だ。早速本題だが、お主たちを呼んだ理由は魔王軍から我が国、いや世界を勇者として救ってほしいからだ」

やはり異世界召喚といったらそれか。
すると俺の隣にいたオタクに分類される山内 傑ヤマウチ スグルは待ってましたと言わんばかりに立ち上がり王に疑問を投げかける。

「アルフォンヌ王よ!」

こいつ、順応するのが早いな。
それに目が完全に期待の眼差しだ。

「しかし我々はただの学生。戦う力など到底ございません。それは先程のアレ・・・・・が十分な証明となると思われます。して王よ、我々はどのように戦えば良いのでしょうか…?」

「それはいまからそやつ・・・で見せてやる。エミリーよ」

それを聞くとエミリーは王の御前、瀕死状態の山園の隣に跪いた。

「隣のそれの傷を元に戻せ」

「承知致しました」

するとエミリーはなにやら呪文らしき物を唱え始めた。
そして数十秒後、呪文を唱え終わると山園についた傷口の上になにや光の輪が出現し段々と発光を始め、数秒後には光が収まると先程まで血を流しながら開いていた傷口が綺麗さっぱり無くなっていた。

「これで元に戻ったはずです。直ぐに意識が戻るはずです」

「度々すまなかったな。今度こそ下がってもよい」

先程と同じように返事を返すと右側の脇にいる騎士の後ろへと下がって行った。

「さて、先程の話に戻るとするか。どのように戦えばよいかだったか。今見たようにこの世界では魔術を使えばあらゆることができる。その魔術を使って戦ってほしい。」
 
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