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0章 プロローグ
1話 『別れ』
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「本当に…………行ってしまうのですか?」
空一面に広がる星々。木々が広がるこの森を抜けた場所には俺と彼女の二人の男女が対峙していた。
俺の方は半袖半ズボンというとてもラフな格好、彼女の方はドレスを身にまとっている。この状況からして俺と彼女の身分の差が伺えられる。
この二人を照らしている満月。彼女の金髪のように輝いているのが印象的だった。
「あぁ……ごめんな。フェリシア。俺はもう、ここにいるわけにはいかない。それは、フェリシアも分かっているよな?」
「そ、それは………そうですがっ」
今にも泣き出しそうな彼女。
「そうだな………この世界は楽しかったよ。でも、俺は異界の者だ。俺の意思一つで留まっていいものではない」
「しかしっ、どうしていきなり」
「空を見ろよ。綺麗だろ?あの満月」
「綺麗な満月………」
そこで彼女は思い出す。俺と彼女との出会いのシーンを。彼女が俺をこの世界へ招待した張本人だから、余計に。
「そうだな。だからこそ………。ここでお別れだ」
「どうしてっ、どうして………トモヒロはそこまで強く生きられるんですか?」
「………俺が、強い?そんなわけねーだろ。俺だって、別れは悲しいよ。この世界で生きていきたいと考えたことだってある」
「じゃあっ」
「さっきも言っただろ?俺はいちゃいけない存在なんだよ。勇者あるところになんとやらというだろ?」
「なんとやらって………悪、現れるでしょ」
「そうだな。分かっただろ?俺がいたらこの世界は平和を取り戻せない」
「………こんなこと、言うつもりじゃなかったのに。笑って送り出そうと思っていたのにっ」
彼女の目からはすでに涙がこぼれ落ちている。
「……………俺も同じだよ。大して変わらない。フェリシアに会ったら、余計に帰りたくなくなった」
俺の目からも一粒一粒涙がこぼれ落ちていく。
「すいませんっ………私のせいで」
「そうだな。でも、フェリシア……。これでお別れだ。これで………別れの時だ」
ここからは広大な大地、多くの建物が一望することが出来る。そして、そこには俺が帰るための唯一の方法がある。ここには、思い出が全て詰まっている。
「【レヴァーレ】」
すると、この空間を支配するかのような魔法陣が展開された。その魔法陣は俺を光とともに包み込んだ。
「フェリシアっ、これ」
俺は手にしていた腕時計を外し、フェリシアに投げ渡す。すると、びっくりしたかのように俺の方を見ている。
「どうしてっ………これは、大切なもののはずではっ」
「そうだよ。だから、あげるんじゃねーよ。預かっとけ。俺と出会った証として。そして、俺にまた出会うことを願って」
魔法陣の光は徐々に強くなっていく。俺自身、眩しいと感じるまでに。
「今度こそ………お別れだ」
「はいっ、本当にありがとう………トモヒロ」
俺の意識は朦朧とする中、少年トモヒロは見た。彼女が何かを口に出しているのを。しかし、その言葉が俺の耳に入ることはなかった。
ーーー「………さようなら。私の初恋」
空一面に広がる星々。木々が広がるこの森を抜けた場所には俺と彼女の二人の男女が対峙していた。
俺の方は半袖半ズボンというとてもラフな格好、彼女の方はドレスを身にまとっている。この状況からして俺と彼女の身分の差が伺えられる。
この二人を照らしている満月。彼女の金髪のように輝いているのが印象的だった。
「あぁ……ごめんな。フェリシア。俺はもう、ここにいるわけにはいかない。それは、フェリシアも分かっているよな?」
「そ、それは………そうですがっ」
今にも泣き出しそうな彼女。
「そうだな………この世界は楽しかったよ。でも、俺は異界の者だ。俺の意思一つで留まっていいものではない」
「しかしっ、どうしていきなり」
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「綺麗な満月………」
そこで彼女は思い出す。俺と彼女との出会いのシーンを。彼女が俺をこの世界へ招待した張本人だから、余計に。
「そうだな。だからこそ………。ここでお別れだ」
「どうしてっ、どうして………トモヒロはそこまで強く生きられるんですか?」
「………俺が、強い?そんなわけねーだろ。俺だって、別れは悲しいよ。この世界で生きていきたいと考えたことだってある」
「じゃあっ」
「さっきも言っただろ?俺はいちゃいけない存在なんだよ。勇者あるところになんとやらというだろ?」
「なんとやらって………悪、現れるでしょ」
「そうだな。分かっただろ?俺がいたらこの世界は平和を取り戻せない」
「………こんなこと、言うつもりじゃなかったのに。笑って送り出そうと思っていたのにっ」
彼女の目からはすでに涙がこぼれ落ちている。
「……………俺も同じだよ。大して変わらない。フェリシアに会ったら、余計に帰りたくなくなった」
俺の目からも一粒一粒涙がこぼれ落ちていく。
「すいませんっ………私のせいで」
「そうだな。でも、フェリシア……。これでお別れだ。これで………別れの時だ」
ここからは広大な大地、多くの建物が一望することが出来る。そして、そこには俺が帰るための唯一の方法がある。ここには、思い出が全て詰まっている。
「【レヴァーレ】」
すると、この空間を支配するかのような魔法陣が展開された。その魔法陣は俺を光とともに包み込んだ。
「フェリシアっ、これ」
俺は手にしていた腕時計を外し、フェリシアに投げ渡す。すると、びっくりしたかのように俺の方を見ている。
「どうしてっ………これは、大切なもののはずではっ」
「そうだよ。だから、あげるんじゃねーよ。預かっとけ。俺と出会った証として。そして、俺にまた出会うことを願って」
魔法陣の光は徐々に強くなっていく。俺自身、眩しいと感じるまでに。
「今度こそ………お別れだ」
「はいっ、本当にありがとう………トモヒロ」
俺の意識は朦朧とする中、少年トモヒロは見た。彼女が何かを口に出しているのを。しかし、その言葉が俺の耳に入ることはなかった。
ーーー「………さようなら。私の初恋」
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