瞬風雷刃の勇者 ~忘れた記憶~

ノイ

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1章 イグニドル

7話 『初クエスト』

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「……ステラはこの中でやりたいクエストとかあるか?」


俺は目の前にあるクエストボードを見ながら、ステラに問いかける。


俺たちのランクはF。


そのため、そこまで強いモンスターを倒せないだろうが、やらなければ何も進展しない。


俺が笑顔でステラに言うと俺の顔をステラが覗き込む。


「だ、大丈夫ですか?」


ステラの純粋な瞳に俺の何が写っているのだろうか。


そんなことがふと気になった。


「あ、あぁ……」


俺は戸惑いながらも答える。


「無理を……してませんか?」


ステラは俺に追い打ちをかけるかのように見てくる。


俺は顔を赤くし、ステラをまっすぐ見えない状態で答える。


「大丈夫だって。で、どれがいいと思う?」

「わ、私は……どれでも」


ステラはうつむきながら答えた。


「はぁ……ステラもさ、俺に気を使うな。パーティーメンバーだろ?」

「は、はいっ」


ステラは俺を見て、元気に答える。


ステラは冒険者としての不安は残っているが、仲間としては満点だ。


このままずっと見てても日が暮れるだけと考えた俺はFランクのクエストで適当に選んだ。


「も、もうこれでいいや」


それは、ただの照れ隠しだと自分でも分かっていた。


そのことについて考えると……超、恥ずい。


俺はそのまま、ステラに聞くことなく、カウンターまで持っていく。


「これでお願いしますっ」

「はい、承りました。こちら、グルルントスの討伐でよろしいですか?」

「はい」

「では、前金の100Gです」

「はい」


俺はバッグから100Gを取り出し、カウンターの女性に渡した。


「はい。ちょうど受け取りました。では、ギルドカードの提示をお願いします」

「わかりました」


俺はバッグから今度はギルドカードを取り出し、カウンターの女性に渡した。


このカードを渡すことによってこのカードにクエスト内容が記される。


それと、パーティーはグループとして見なされるため、受注の際に見せるのはリーダーの俺だけとなっている。


「では、お返しします。契約を破棄されたい場合にはお金がかかってしまいますので、ご了承ください」

「分かりました」


そして、俺の手続きは終わった。


俺はボードの前で立っているステラのところまで戻る。


「クエスト、受注してきたぞ」

「は、はい。あ、ありがとうございます」

「だから、遠慮すんなって」

「は、はい」


まだ会ってから数時間から経っていない。


それなのに、どうしてパーティーを組もうと思ったかは自分でも謎だが、それは今はいい。


まずはお金を貯めてこの街を出たい。


というか、旅に出たい。


そんな決意をここに来てからずっとしている。


だが、この街を出れるだけの資金を集めるのは大変なこと。


ギルドランクもFのままでは出られないままだ。


だからと言って、一日に二回のクエスト……無謀すぎる。


一日一回。


そう考えると頭がおかしくなりそうだ。


俺はそんなことを考えるのをやめることにした。


未来、どうなるかを考えるより、今どうしたいかを考えるべき。


昔言われたあの言葉を思い出す。


今はどこにいるかも分からないあの方に。


「だ、大丈夫ですか?」


俺がぼーっと考え事をしているとステラは心配そうに覗いてくる。


「あぁ……大丈夫だ。じゃあ、行こうか」

「は、はい」


そして、俺たちはギルド協会を出て、グルルントスを狩りに向かった。


やはり、この世界はそこまで甘くない。


最初っから完璧までのストーリーが決まっていない。


ということは、俺はこんな異世界で人生が終わるかもしれない。


だが、俺はポジティブに考えることにした。


ストーリがないから自分で作れるのではないか、と。






「……この辺りにグルルントスはいるはずなんだけど」


俺たちはグローリーという薬草を集めたあの森へ来ていた。


ここにいるモンスター。


それこそが俺たちの目的のモンスター。


Fランクだからって気を抜ける相手ではない。


俺たちは神経を張り巡らせ、グルルントスの気配を察知する。


グルルントスはそこまで大きくないが、蛇型のモンスターだ。


そして、グルルントスは毒を持っている。


噛まれると毒が回って死の危険性があるモンスターだ。


俺が討伐することになっている数は5匹。


モンスターの中にもボスというのが存在する。


しかし、今回討伐するグルルントスは子どもサイズ。


ボスモンスターの討伐クエストなんてFランクにはない。


俺たちが森を歩き回り、しばらくすると、近くの草からガサガサという小さな音が聞こえてきた。


不気味なその音に俺たちは恐る恐る振り向くと……。


「こいつが……グルルントスか?」

「は、はい」


俺たちの前には1匹のグルルントスが現れた。


1匹……これはチャンスだ。


このような状況に5度ほどなれば余裕でクエストクリアになる。


ステラは手に持っている剣の鞘を抜き、構え、戦う態勢になった。
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