瞬風雷刃の勇者 ~忘れた記憶~

ノイ

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2章 アースロアナ

10話 『新たなる世界』

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「あれ……? ここは、どこ?」


俺はゆっくりと目を開け、辺りを見渡した。


そこは、一つの部屋。


部屋の広さは俺が住んでいた場所よりも圧倒的に広い。


どちらかといえば、王城にある寝室に近いかもしれない。


しかし、ここは寝室ではいということがすぐに分かった。


なぜなら、ここのどこにもベッドが見当たらないからだ。


俺は一通り、目を通したあたりで俺に声がかけられた。


「トモヒロ、大丈夫かい?」


俺はその声にビクッと反応し、すぐに振り返った。


光のような眩しい金髪がすぐに俺の目に入ってきた。


どうしてここにいるのかわからない俺の頭の中は混乱で満ちていた。


一生懸命、整理しようと頑張った。


しかし、本当にわからない時はそれすら、出来ないということを俺は知っている。


驚きのあまり、声が出なかった俺だが、その少年に向かって無理やりと声を出した。


「ど、どうして……俺の名前、知ってるの?」


俺の声は震えていたに違いない。


その言葉に対してその少年は小さく笑った。


「なるほどね……忘れちゃったか」


俺にはその言葉の意味がよく分からなかった。


俺はその言葉の意味を探るために切り出そうとしたのだが、すぐにその少年に遮られた。


「トモヒロの言いたいことは分かっている」

「えっ……?」

「俺が何者かっていうことを問いたいんだろ?」

「ま、まあ……」

「わかったよ。俺の記憶を少し分けてやる。ただし、これはあくまで俺の記憶だ。これ以上のことは教えられないからな」

「お、おう……」


そう言うとその少年は魔法を唱え始める。


「【ゲデヒトニス】」


少年が俺に向かってそう言うと手のひらからは黄色い光のようなものが出てくる。


それは、俺に向かって真っ直ぐと飛んでくる。


そして、それは俺の中に入ってきた。


暖かい。とても暖かかった。


安心感を覚えた。


そして、俺の頭の中には違和感が生じた。


何度か魔法を食らったことはある。


しかし、こんな感じになったのは初めてだった。


俺の記憶は上書きをされているかのようだった。


数分経つと少年の記憶と思われるものが俺の頭の中へ表示された。


その記憶をみて、俺の目からは涙が浮かんでいることに気がついた。


「……これは?」


その記憶の目の前には少年がいた。


黒髪の少年。


俺はその少年を知っていた。


いや……知っていたとかそう言う問題ではない。


その少年はどう見ても俺なのだ。


そして、その俺がいる場所。


そこは、明らかにあの異世界でも日本という場所でもない。


じゃあ……ここは、どこなんだ?俺の頭には新たな不信感が芽生え始めていた。


俺の表情を覗き込むのように金髪の少年は言う。


「トモヒロは記憶って知ってる?」

「記憶?それって、俺が見たものを覚えるというやつだろう?」

「あぁ……そうだ。そして、この世界には魔法が存在する。意味がわかるよな?」

「もしかして……」

「わかりが早くて助かる。お前が記憶を失っていたのにも魔法が関係する」

「な、なんだと……。でも、何のために?」

「分からない。あぁ……それと、この世界に呼び込んだのは俺だ。分かるな?」

「うん……。もちろん」

「さっきまでの記憶も欲しいか?それを見れば俺がこの世界に呼んだ理由がわかると思うんだが」

「え……と」


俺は一通り、記憶の整理を試みる。


この少年が本当のことを口にしているかは分からない。


記憶を削除する魔法があるということは改ざんする魔法もあるということになる。


むやみにこの人を信用は出来ない。


俺は「頼む……」と小さな声で言う。


少しでも俺の考える時間が欲しかったのと、単にどうしてここに俺がいるのかを知りたかった。


あと……どうして、この世界を俺は追放されたかについても知りたかった。


金髪の少年は「分かった」と小さく頷くとまたしても、魔法を唱え始めた。


「【ゲデヒトニス】」


少年は優しくそう唱える。


すると、またしても少年の手のひらからは黄色い光が放たれた。


すんなりと俺の中へその光の玉は入ってくる。


それが俺の中へ広がった瞬間、さっきまでとは違った感情が生まれた。


「な、何だ……これ?」


さっきの記憶は昔の俺だろう。


その内容は希望に満ちた少年のいく末。


しかし、今流れ込んできた記憶は違う。


悲しい記憶。


「あいつが……どうして」


俺の言葉は詰まり、涙が流れ出ていた。


少年はニコリと笑い、俺の肩をポンポンと叩く。


「そうだ。トモヒロが……ここにきた理由が分かっただろ?」

「う、うん……。俺は裏切られ、死に際だった」


俺の記憶は出会って間もなかったあいつに裏切られたという事実だけが語られていた。


でも、そこで疑問が浮かび上がる。


「……どうして、ステラは禁術に手を出して、イグニドルを襲ったんだ?」


俺は少年に聞く。


少年は首を傾げ、答える。


「分からない……ただ、この状況を打破するためにトモヒロを助けた」

「すまなかった……」


俺は失われていた記憶の一部を失った。


それは完璧なものではなかったけど、これからどうなるかは分からない。


ただ、一つだけわかることがある。


人生、何もかもが上手くはいかないということだけだった。
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