伝説の勇者と学園無敵の少女

ノイ

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1章 学園編

十六話

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「ま、まさか……お前たち」

俺の言った言葉はこの会場を襲ってきた数人の男性たちに向けられていた。その声に気がついたのはその男性たちではなく俺が戦う人物だった。

「この人たちを知っているのですか?」

その男性が俺に向かって恐る恐る聞く。俺は驚きもしたが深呼吸をして答える。

「数年前に起こった悲劇をご存知ですか?」

俺はゆっくりと問いかける。
すると、

「あ、あぁ……。確か……あの有名なアスファルトが解決した事件だな」
「はい……それはそうなのですが、彼らは別に絶命したわけではありません」
「どういうことだ?」
「これは、教科書には載ってないことなのですが、彼らは確実に……生きているのです」
「ど、どうして……お前はそんなに詳しいんだ?」
「そ、それは……」

俺は少し困った。
それは、自分の正体を明かしていいのかということ。
別に俺が体験した過去は別に完璧に消し去りたいというわけではない。
しかし、もう戦争には一歩も足を踏み入れたくないだけ。
俺が説明をしていると目の前にいる俺の『敵』。
そして、何の前触れもなく攻撃をしてくる。
俺の正体を理解していない彼らは俺にではなくこの施設全体に攻撃している。
この会場で行われているトーナメント戦を壊しに彼らは来たということが察しがついた。

「まだまだ、行くぞーーー。【ファイヤーボール】」

ファイヤーボールは魔法の中でも初歩的だ。
しかし、魔力によってその威力は異なってくる。
彼らはもともと伝説と呼ばれたアスファルトと互角に戦ってきた存在だ。
ただのファイヤーボールでも戦争というものを知らない生徒たちにとっては恐怖でしかなかった。

「おいっ!お前強いんだろ?」
「そ、それはあ、当たり前だろ」

俺の説明を聞いていた彼が一番この『戦場』で恐れていたに違いない。
俺は「はぁ……」とため息をついてから告げる。

「俺たち、騎士の誓いはなんだ?」
「ひ、人々を守ること……」

この会場に普通は一般人など来ない。
しかし、今日は状況が違う。
トーナメント戦の最中は一般人だってここに入ることが許されている。
ここで俺たちが逃げたら一般人に危害を与えかねない。
つまり、俺たちに逃げるという選択肢はなかった。

「俺は一般人に危害を与えないように結界を張っておく」
「け、結界……だと」

俺の発した言葉に心底驚いていた。
普通に結界はそこまで難しい技ではない。
しかし、この会場はとても大きい。
この大きさの結界を張るとなるととても大きな魔力を使うことになる。
そんな状況を悠々といった俺に驚いたのだろう。
俺は、

「カード展開っ!【結界】」

俺はポケットから一枚のカードを取り出し、上にかざした。
すると、そのカードからは光が輝き出し、おさまった時には俺の手にはカードは握られていなかった。

「な、何が起こった」

この会場にいた人全員が思ったことだろう。
目の前にいた敵もそんな表情をしていた。
その時にはもう回覧席の前には緑色の膜のようなものが貼られていた。これが結界だ。
しかし、このカードマジックの驚くべきことはこの結界だけではない。

「無詠唱だと……」

この世界にある魔法で無詠唱魔法など存在しない。
しかし、俺は確かに無詠唱で結界を作り出した。

「お前……何者だ?」

慎重そうに彼は俺の正体を問う。
俺は、

「普通の魔術師だよ」
「魔術師だと……」

魔法師と魔術師は似たようで少し違う。
それは、魔法を扱う術者のことを魔法師といい、魔法陣などを作って術を出すのが、魔術師だ。
しかし、俺の使った技に一切魔法陣は見られなかった。それとこの世界では決してないこと。

「この時代に……魔術師なんているもんか」
「ふぅん。君はそう考えるんだ」

この時代に魔術師なんていない。
その通り。教科書ではそうやって教わった。
しかし、教科書に書いてあることが絶対と考えるのは少し違うように思える。
そもそも教科書なんて表の顔であって裏の顔が書いてあるはずがないのだから。

「魔術師は絶滅した。この国が設立した頃にな」
「はぁ……君は頭が硬いね」
「な、なんだとっ!」
「魔術師は実在する。例えば貴族と呼ばれる中にもいるんだよ」
「え……」
「魔術と魔法は似た者同士。これが魔法と言われれば魔術だって魔法になる。そういう原理でこの世界は動いているんだよ」

俺は説得力を込めていう。
しかし、俺の敵はビクともしない。
当然だ。
一度俺と勝負したことがあるのだから。

「魔術師か……懐かしいな。では、勝負と行きますか」

俺のいう敵が俺に向かっていった。
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