8 / 8
8
しおりを挟む
「お、俺は今一体何を…?」
素面に戻ったシリウスを見て、シャルルは理解した。今、たった今呪いが解けたのだ。熱に浮かされたように告白めいたことを言ったシリウスは、戸惑っている。シャルルの中に疑惑が上がった。
もしや本心ではなかったのではないか、と。
「あの…」
シリウスが真顔になってシャルルを見た。先程のような熱のこもった瞳ではない。多少顔を赤らめているが。
「俺、今あなたの手にキスを…」
ボボボっとシリウスの顔が赤くなった。
「…ええ」
「人生を共に歩んで欲しいといいました、か」
「ええ。いいましたね。あの、でも勘違いだったというのなら、いいのですよ?」
だって、自白中は言いたくないことでも、口に出してしまうんですもの。仕方がないわ。
「いえっ!勘違いじゃ、ないです。俺、入学する前からあなたのこと、見てました」
「え?」
「あの、俺、騎士団の練習によく王宮に上がっていたんです。俺の兄が騎士団長で、その、時々あなたを見かけて、それから2年近く想ってました」
「ま、まあ…。そんなに前から…?」
「はい。あの、なんか熱にうなされたようにキスしたり、抱き締めたり申し訳ありませんでした。いつもあんなじゃないんです」
口に出されて言われると一気に恥ずかしさが蘇る。キスしたり抱き締めたりは、婚約者でも滅多にしないのではないだろうか。婚約者がいたことが(数分しか)ないシャルルには分からない。
「あ、ええ。それは」
「なので、改めて、お願いします。シャルル嬢、あなたが好きです。愛しています。婚約してもらえないでしょうか」
シリウスは騎士の礼儀に則り、片膝を落としそっとシャルルの手を取った。
「婚約ですか。もれなく呪いも一緒について来ますが、よろしいでしょうか」
「問題ない。呪いも一緒に愛しましょう。どんとこいです」
二人はにっこりと微笑みあった。
*
「結局お前は容姿で選んだんだな」
「失礼ですよ、お兄様。たまたま容姿もついて来ただけの話ですわ」
容姿も好みで、夢もあり仕事もあり、愛もあり、恋も浪漫も語る。兄がダメだとケチをつけたもの全てを手に入れたシャルルは大変満足だった。もちろん兄に多少は感謝もしている。どうしたって、オリバーや第二王子は受け入れられなかったから。
シャルルは卒業後、騎士の妻となるべくマッカーサー伯爵家に嫁入り修行に入り、兄フィリップも程なくして結婚した。結構な美人の兄嫁で、魔法が得意な人らしい。
新しく王になった第一王子からは、シャルルの功績から男爵位を叙爵され、シリウスも無事王宮騎士団入りになった。
呪いは解けたが、幸せはまだまだ続くらしい。
=END=
素面に戻ったシリウスを見て、シャルルは理解した。今、たった今呪いが解けたのだ。熱に浮かされたように告白めいたことを言ったシリウスは、戸惑っている。シャルルの中に疑惑が上がった。
もしや本心ではなかったのではないか、と。
「あの…」
シリウスが真顔になってシャルルを見た。先程のような熱のこもった瞳ではない。多少顔を赤らめているが。
「俺、今あなたの手にキスを…」
ボボボっとシリウスの顔が赤くなった。
「…ええ」
「人生を共に歩んで欲しいといいました、か」
「ええ。いいましたね。あの、でも勘違いだったというのなら、いいのですよ?」
だって、自白中は言いたくないことでも、口に出してしまうんですもの。仕方がないわ。
「いえっ!勘違いじゃ、ないです。俺、入学する前からあなたのこと、見てました」
「え?」
「あの、俺、騎士団の練習によく王宮に上がっていたんです。俺の兄が騎士団長で、その、時々あなたを見かけて、それから2年近く想ってました」
「ま、まあ…。そんなに前から…?」
「はい。あの、なんか熱にうなされたようにキスしたり、抱き締めたり申し訳ありませんでした。いつもあんなじゃないんです」
口に出されて言われると一気に恥ずかしさが蘇る。キスしたり抱き締めたりは、婚約者でも滅多にしないのではないだろうか。婚約者がいたことが(数分しか)ないシャルルには分からない。
「あ、ええ。それは」
「なので、改めて、お願いします。シャルル嬢、あなたが好きです。愛しています。婚約してもらえないでしょうか」
シリウスは騎士の礼儀に則り、片膝を落としそっとシャルルの手を取った。
「婚約ですか。もれなく呪いも一緒について来ますが、よろしいでしょうか」
「問題ない。呪いも一緒に愛しましょう。どんとこいです」
二人はにっこりと微笑みあった。
*
「結局お前は容姿で選んだんだな」
「失礼ですよ、お兄様。たまたま容姿もついて来ただけの話ですわ」
容姿も好みで、夢もあり仕事もあり、愛もあり、恋も浪漫も語る。兄がダメだとケチをつけたもの全てを手に入れたシャルルは大変満足だった。もちろん兄に多少は感謝もしている。どうしたって、オリバーや第二王子は受け入れられなかったから。
シャルルは卒業後、騎士の妻となるべくマッカーサー伯爵家に嫁入り修行に入り、兄フィリップも程なくして結婚した。結構な美人の兄嫁で、魔法が得意な人らしい。
新しく王になった第一王子からは、シャルルの功績から男爵位を叙爵され、シリウスも無事王宮騎士団入りになった。
呪いは解けたが、幸せはまだまだ続くらしい。
=END=
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
51
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
とても楽しく拝読させていただきました!
ただ、6話の話は消去する事をお勧めします。恐らく、途中までのを間違えたのか何なのか知りませんが中途半端に投稿されており、7話と途中まで被ってるんですよね(苦笑)
余計なお世話かと思いますが·····( ̄▽ ̄;)
ミグ様
ひえええ!大変申し訳ありません。直しました!なんか中抜けなのか、おかしな事になってました。ご指摘ありがとうございました!助かりました!ありがとうございます。
投稿、おめでとうございます。
現在1を拝読したのですが、不自然なことが、さっそく起き始めてしまいましたね。
あらすじにある、滅亡。
そちらへとどんな風に、向かってゆくのか。追わせていただきます。
柚木ゆず様
ありがとうございます!設定は緩いので、コメディとして受け取っていただけるとよろしいかと思います。楽しんでいただけると嬉しいです。コメントありがとうございました。