ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美

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勝手なこと言ってない?

 さあ、王様。選択を、と言いかけたところで、シャムロックが咆哮を上げた。

 ビリビリと体の芯まで響く咆哮に皆が地べたに突っ伏したところで威嚇だと理解した。立っているのは、エヴァンとアルヴィーナそれと意外なことに国王であるバルタだけだった。

 シンファエルはスカイの口に半身を突っ込んだまま、スカイもろともひっくり返っていた。侯爵令嬢に至っては泡を吹き、色々下から漏れていたので、こっそり洗浄魔法をかけて薬草畑に寝かせておいた。

『我は1000年を生きる緑竜である!お前達のような小賢しい人間どもに干渉する気は一切なかったが、森の民と地の民の血を引く者が現れたからには、その守護となるのは当然の事!我はそのエヴァンと血の契約を交わした者!逆らうものがあれば排除する!』

 血の契約!?契約はしたが、血は一滴も流していないよ!?

『血の契約とは、お前達の言う魔力契約のことだ、馬鹿者。人間の汚らわしい血をもらって我が喜ぶわけなかろう』

 あ、そう。魔力のことね。

 俺と意識を繋げた者にしか念話することができなかったはずのシャムロックが、全員にそう伝えた。気を失うものも多数いたが、魔導士や騎士達は低頭に慄き震え上がった。王様に関しては、一人畑の真ん中で突っ立っているが、あれは。青ざめた顔が白く変わっているところを見ると、立ったまま気を失っているか、下手したら心臓も止まっているかもしれないな。

『ここにいるエヴァンとそのつがいであるアルヴィーナは、これから瘴気を殲滅させる義務がある。これは天命だ。この見窄らしい土地から、そのようなものが生まれでたことを誇りに思うが良い!国を立て直すが良い!だが王は要らぬ!なぜなら人間全ての王となるのは、ここにいるエヴァンとアルヴィーナ、そしてその血筋のものだからだ!逆らうものには神罰が落ちると心せよ!』

 えっ?ちょっと待って!?番とか人前で言わないでくれる!?
 人間全ての王って、何それ!?
 神罰って、はあ!?

「聞いてないよ!?」
『やかましいわ。お前は黙っておれ』

 あれっ?おれ、君の主人だよね?

『我が言葉は魂の言葉。この世界におる全ての人間に届いておる。もしもその言葉が聞けぬ、わからぬと言うのであれば会いに来るが良い。だがその時は命はないものと考えよ。森の主と地の主を怒らせると言うことは、この地上で生きてはいけぬと言うことを身をもって知るが良い』

 ちょっと!?なに言ってんの?怖いよ!?大軍が攻めてきたらシャムロックなんとかしてくれんだよね!?

『と言うわけだ。我らは森に帰る。行くぞ、エヴァン。アルヴィーナ』

 ええっ!?言いたいことだけ言ってずらかろうって魂胆?いいのか!?みんなそれで納得するの!?

「わ、私も行きますよ!竜様!アルヴィーナ様にはメイドがいなければ!」

 瞳をキラキラさせたサリーが、両手を胸元で組んで見上げていた。おう。この場に及んで強いな、お前。流石の緑竜もちょっと引いている。

『う、うむ。ではそこの羽虫も来るが良い』
「ハイっ!ありがとうございます!行きましょう!エヴァン様!アルヴィーナ様!」

 え、羽虫呼ばわりされても笑顔で頷くサリーって。この中で一番心臓に毛が生えているの、実はサリーだったりする?嬉々としてシャムロックによじ登ろうとするあたり、もしかしてドラゴンに乗りたいだけ?


「ちょっと待て!エヴァンを連れて行くことはこの私が許さないゾッ!」

 振り向くと、ようやくスカイの嘴の中から這い出てきたヨダレでベロベロのシンファエルが、仁王立ちしていた。

「エヴァンは私のものだ!」

 げっ。まだおかしいのか、こいつは。

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