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「そっ、それだけはっ!頼む!愚息は北の塔に放り込み、二度と御令嬢の前には現れないと約束する!婚約も解消、いや白紙に戻そう!なんなら王太子の妃という立場を与えても問題ないっ!」
「いやいや、王太子殿下にはすでに婚約者殿がいらっしゃるではありませんか。それに歌姫と王太子妃というものは両立は難しいですからね。娘に無駄な心労もかけたくはありませんし?それについては辞退いたしますとも。それに、そろそろ各国からの要人も入国して来ますでしょう?ここで妃を挿げ替えるなどという内部の恥を晒すのはあまり賢い選択とは言えませんよね?
ああ、それとなんでしたか、例の伯爵家の娘。あれを1年も遊ばせておくのも考えものだと思うんですが、まだ時間がかかるのですかね?その証拠を掴むというのに、1年近くかかってまだというのは国の暗部としてなんとも情報収集能力的に、いかがなものかと思いますがねぇ?必要でしたらこちらで集めた情報から公開処刑という形で、全ての悪事を披露させてもよろしいんですが?ああ、それに連なる半数ほどの貴族も芋づる式で上がってしまいますが」
「!?そっ、それについては、今っ」
「会談中のところ失礼します。本日付で、アマディリア・シェインは伯爵家から除籍され、平民として処刑されることが決定しました。すでに騎士が彼女の身は捕縛、現在平民用獄房に逗留されています」
王が顔色をほとんど白に変えたところで、王太子であるアドランが慌てて入室した。
「アドラン!無礼だぞ!今、フローレス侯爵がっ」
無礼だぞ、と声を上げた王ではあったが、王太子アドランの乱入によって即答を免れたとホッと冷や汗を拭った。
「申し訳ございません、陛下、フローレス侯爵。お声を聞き必要かと思い急遽参上しました」
「これは、王太子殿下。タイムリーな話題ですな」
フローレス侯爵はことの真偽を図っているような視線で王太子を見遣り、口角をわずかに上げた。
「フローレス侯爵。私の弟であるフランシスが大変ご迷惑をおかけした事を、お詫び申し上げます。つきましては、婚約をこちら有責で解消とし、侯爵家並びにレニー嬢に対し、迷惑料としてフランシスの持つ領土の一部の譲渡、かの者の個人資産の全額を慰謝料としてお納めしたいと思います」
「ほう。それはまた……。してその領土の一部というのは?」
「はい。湖水地方の銀山とその麓を予定しておりますが、いかがでしょうか。勿論、納税責任もございません」
「なにっ!?」
国王が目を剥いて声を上げたが、咄嗟に両手で口を塞ぎ咳で誤魔化した。それを横目にしながらも侯爵は微笑む。
「ああ、王国避暑地として有名なマッケラン地方ですね?なるほど…では婚約解消につきましてはそれで手を打ちましょう。それから、シェイン家及びアマディリア嬢に対しての処置に関しては、王家の手腕を拝見させてもらいますが……あまり甘い事をされるようでしたらこちらにも考えがあります。平和を乱すという者は、いつの世にもいるものです。対処は徹底的にされたほうが良い。持て余すようでしたら、我が家にお任せいただいてもよろしいのですよ?」
「わ、わかっておる!それについても二週間後の音楽祭までにはきれいに片付ける」
「……了解しました。では書類などはまた後日ということで」
「あ、ああ。こちらからすぐに連絡を入れよう」
入って来た時とは打って変わってにこやかに退場した侯爵を見送り、国王と王太子はほぅっと緊張を緩めどかりと椅子に腰掛けた。
「忌々しいフローレスめが…。あの銀山は最近見つかったものだというのに」
「すでに手をつけていたら、差し出せませんでしたよ、父上。もともとフランシスにくれてやるものだったのですから、よしとしなければ」
アドランは侯爵が出て行ったことを確認するかのように扉に視線を送り、それから苦笑した。それを見て国王も苦々しい顔を作り、天井を見上げた。
10年ほど寿命が縮んだ思いだった。あの男が本気で怒るところは流石の国王も見たことはない。もちろんあれが本気で怒っていたのかどうかもわからないが。こうなっては致し方ない。もともと三男に侯爵家の一人娘を手懐けるなど無理難題だったのに、夢を見てしまった。
「アドラン。作戦会議をする。おい、誰かフランシスを連れてきてくれ」
気配を消して壁際に立っていた騎士が深々と頭を下げ、部屋を出た。
「いやいや、王太子殿下にはすでに婚約者殿がいらっしゃるではありませんか。それに歌姫と王太子妃というものは両立は難しいですからね。娘に無駄な心労もかけたくはありませんし?それについては辞退いたしますとも。それに、そろそろ各国からの要人も入国して来ますでしょう?ここで妃を挿げ替えるなどという内部の恥を晒すのはあまり賢い選択とは言えませんよね?
ああ、それとなんでしたか、例の伯爵家の娘。あれを1年も遊ばせておくのも考えものだと思うんですが、まだ時間がかかるのですかね?その証拠を掴むというのに、1年近くかかってまだというのは国の暗部としてなんとも情報収集能力的に、いかがなものかと思いますがねぇ?必要でしたらこちらで集めた情報から公開処刑という形で、全ての悪事を披露させてもよろしいんですが?ああ、それに連なる半数ほどの貴族も芋づる式で上がってしまいますが」
「!?そっ、それについては、今っ」
「会談中のところ失礼します。本日付で、アマディリア・シェインは伯爵家から除籍され、平民として処刑されることが決定しました。すでに騎士が彼女の身は捕縛、現在平民用獄房に逗留されています」
王が顔色をほとんど白に変えたところで、王太子であるアドランが慌てて入室した。
「アドラン!無礼だぞ!今、フローレス侯爵がっ」
無礼だぞ、と声を上げた王ではあったが、王太子アドランの乱入によって即答を免れたとホッと冷や汗を拭った。
「申し訳ございません、陛下、フローレス侯爵。お声を聞き必要かと思い急遽参上しました」
「これは、王太子殿下。タイムリーな話題ですな」
フローレス侯爵はことの真偽を図っているような視線で王太子を見遣り、口角をわずかに上げた。
「フローレス侯爵。私の弟であるフランシスが大変ご迷惑をおかけした事を、お詫び申し上げます。つきましては、婚約をこちら有責で解消とし、侯爵家並びにレニー嬢に対し、迷惑料としてフランシスの持つ領土の一部の譲渡、かの者の個人資産の全額を慰謝料としてお納めしたいと思います」
「ほう。それはまた……。してその領土の一部というのは?」
「はい。湖水地方の銀山とその麓を予定しておりますが、いかがでしょうか。勿論、納税責任もございません」
「なにっ!?」
国王が目を剥いて声を上げたが、咄嗟に両手で口を塞ぎ咳で誤魔化した。それを横目にしながらも侯爵は微笑む。
「ああ、王国避暑地として有名なマッケラン地方ですね?なるほど…では婚約解消につきましてはそれで手を打ちましょう。それから、シェイン家及びアマディリア嬢に対しての処置に関しては、王家の手腕を拝見させてもらいますが……あまり甘い事をされるようでしたらこちらにも考えがあります。平和を乱すという者は、いつの世にもいるものです。対処は徹底的にされたほうが良い。持て余すようでしたら、我が家にお任せいただいてもよろしいのですよ?」
「わ、わかっておる!それについても二週間後の音楽祭までにはきれいに片付ける」
「……了解しました。では書類などはまた後日ということで」
「あ、ああ。こちらからすぐに連絡を入れよう」
入って来た時とは打って変わってにこやかに退場した侯爵を見送り、国王と王太子はほぅっと緊張を緩めどかりと椅子に腰掛けた。
「忌々しいフローレスめが…。あの銀山は最近見つかったものだというのに」
「すでに手をつけていたら、差し出せませんでしたよ、父上。もともとフランシスにくれてやるものだったのですから、よしとしなければ」
アドランは侯爵が出て行ったことを確認するかのように扉に視線を送り、それから苦笑した。それを見て国王も苦々しい顔を作り、天井を見上げた。
10年ほど寿命が縮んだ思いだった。あの男が本気で怒るところは流石の国王も見たことはない。もちろんあれが本気で怒っていたのかどうかもわからないが。こうなっては致し方ない。もともと三男に侯爵家の一人娘を手懐けるなど無理難題だったのに、夢を見てしまった。
「アドラン。作戦会議をする。おい、誰かフランシスを連れてきてくれ」
気配を消して壁際に立っていた騎士が深々と頭を下げ、部屋を出た。
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