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学園講堂――
かつて数々の断罪劇が執り行われた場が、今朝、静かに姿を変えた。
壇上に設けられたのは、透明な結界のように見える魔導陣。
香塔と共同で設計された“香遮断結界”。
香気、香魔、香魔導の一切を遮ることを目的とした、厳重な魔法障壁だった。
「今回の断罪は、“香の支配”を抜きに行われるべきだ」
そう語ったのは、ライナス=グレイブ。
その言葉に教師会も頷き、結界が展開された。
そして今――
講堂に集う百を超える生徒と数十名の教職員たちは、言いようのない不安に包まれていた。
「……なにこれ、息が詰まる……」
「空気が……重い……?」
「香がないって、こんなに“感じる”ものだったっけ……」
誰もが、無意識に“何かが足りない”と感じていた。
それは香そのものではなく――
香によって“和らげられていたはずの何か”が、むき出しになっていることへの違和感だった。
そのとき、講堂の扉が開く。
アズナ=グランフォードが、ゆっくりと入場してきた。
変わらぬ気品と、変わらぬ微笑。
だが、その背からは一切の香が漂っていなかった。
彼女はそのまま、言葉ひとつ発することなく、用意された席へと腰を下ろす。
その所作は静かで、端正で、非の打ち所がなかった。
――それゆえに、あまりにも“異様”だった。
「……怖い」
誰かが、吐息のように漏らした。
「微笑んでるのに、全然安心できない……」
「なんで……香がないだけで、こんなにも空気が違うの……?」
壇上でも、裁定を務める予定の教師たちが、資料をめくる手をわずかに震わせていた。
アズナは何もしていない。
ただ、香を纏わずに、そこに“在る”だけ。
それなのに――会場全体が、凍るような沈黙に飲み込まれていた。
“支配”とは命令ではない。
“影響”とは押しつけではない。
彼女が香をまとわぬだけで、
人々の心がどれほど不安定に揺らぐのか。
それが、はっきりと可視化された瞬間だった。
そして、生徒たちは理解し始めていた。
「今の彼女は、香を使っていない」
「でも、香がない方が……怖い」
「“香”があったことで、どれだけ安心していたか、今なら分かる……」
香のない断罪劇。
それは、言葉よりも強い“沈黙”から始まった。
始まったはずなのに――
誰も声を上げられない。
何も始められない。
香の支配がなくなったことで、彼女の本質がむき出しになった。
そして、それこそが最も深い“恐怖”なのだと、誰もが思い知った。
かつて数々の断罪劇が執り行われた場が、今朝、静かに姿を変えた。
壇上に設けられたのは、透明な結界のように見える魔導陣。
香塔と共同で設計された“香遮断結界”。
香気、香魔、香魔導の一切を遮ることを目的とした、厳重な魔法障壁だった。
「今回の断罪は、“香の支配”を抜きに行われるべきだ」
そう語ったのは、ライナス=グレイブ。
その言葉に教師会も頷き、結界が展開された。
そして今――
講堂に集う百を超える生徒と数十名の教職員たちは、言いようのない不安に包まれていた。
「……なにこれ、息が詰まる……」
「空気が……重い……?」
「香がないって、こんなに“感じる”ものだったっけ……」
誰もが、無意識に“何かが足りない”と感じていた。
それは香そのものではなく――
香によって“和らげられていたはずの何か”が、むき出しになっていることへの違和感だった。
そのとき、講堂の扉が開く。
アズナ=グランフォードが、ゆっくりと入場してきた。
変わらぬ気品と、変わらぬ微笑。
だが、その背からは一切の香が漂っていなかった。
彼女はそのまま、言葉ひとつ発することなく、用意された席へと腰を下ろす。
その所作は静かで、端正で、非の打ち所がなかった。
――それゆえに、あまりにも“異様”だった。
「……怖い」
誰かが、吐息のように漏らした。
「微笑んでるのに、全然安心できない……」
「なんで……香がないだけで、こんなにも空気が違うの……?」
壇上でも、裁定を務める予定の教師たちが、資料をめくる手をわずかに震わせていた。
アズナは何もしていない。
ただ、香を纏わずに、そこに“在る”だけ。
それなのに――会場全体が、凍るような沈黙に飲み込まれていた。
“支配”とは命令ではない。
“影響”とは押しつけではない。
彼女が香をまとわぬだけで、
人々の心がどれほど不安定に揺らぐのか。
それが、はっきりと可視化された瞬間だった。
そして、生徒たちは理解し始めていた。
「今の彼女は、香を使っていない」
「でも、香がない方が……怖い」
「“香”があったことで、どれだけ安心していたか、今なら分かる……」
香のない断罪劇。
それは、言葉よりも強い“沈黙”から始まった。
始まったはずなのに――
誰も声を上げられない。
何も始められない。
香の支配がなくなったことで、彼女の本質がむき出しになった。
そして、それこそが最も深い“恐怖”なのだと、誰もが思い知った。
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