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7 宿場町の夜
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第三話 宿場町の夜
通りの灯りがまだ点々と残る宿場の夜道を、二人は並んで歩いていた。
夜店の呼び声や酒の笑い声が背後で揺れ、遠ざかっていく。
足元の土は昼の熱を失い、ひやりと硬い。
空は相変わらず灰に覆われ、星は一つも見えなかった。
鉄之介は大槌を肩に担いだまま、歩幅も呼吸もまるで変えずに進む。
この寒さも薄暗さも、彼にとってはただの夜風にすぎないらしい。
金之助はその半歩後ろをついて歩いた。
さっき食った丼の温かさが腹の底に落ちたぶん、身体は少し楽になった――はずだった。
ところが胸の奥の熱だけは、逆に濃く、重くなっていく。
どくん。
どくん。
懐で珠が脈を打つたび、熱が血に溶けて四肢へ回り、
身体の芯をじわじわと焼いた。
喉が乾き、唇の裏が熱くなる。
背中に汗が滲み、その汗が夜風に冷やされてぞくりとする。
通りの灯が、少し滲んで見え始めた。
人の声が遠い。
足元がふわつく。
――まずい。
そう思った瞬間、鉄之介がふと歩みを緩めた。
横目で金之助を確かめるように見る。
さっきまでの豪快な笑いとは違う、妙に鋭い目だった。
「……おい」
低い声に、金之助が顔を上げると、鉄之介の眉が寄っている。
「おまえ、どっか具合でも悪いのか? 真っ青じゃねえか」
金之助は反射で首を振った。
「いや……大丈夫だ」
言った途端、声が思ったより弱いと自分で気づく。
喉の奥で掠れ、息がうまく続かない。
「大丈夫じゃねえだろ」
鉄之介は足を止め、ずいと金之助の前へ回り込んだ。
そして迷いなく手を伸ばし、金之助の額に触れる。
ごつごつした掌が、意外なほど温かい。
その温もりが触れた瞬間、金之助の内側の熱が皮膚の上へ滲み出るように感じられた。
「――熱、あるじゃねえか」
鉄之介の声が少し沈む。
金之助は俯いた。
胸の奥の熱も、珠の脈動も、自分で分かっている。
だが口にできない。
珠のことを言ったら、何が起きるか分からない。
戸兵衛の死が、すぐ背後に立つ。
鉄之介は腕を組み、ふうと大きく息を吐いた。
吐息が白く薄く揺れる。
「まったく……こんな身体で一人旅か。無茶しやがる」
責めているようで、責めきれない声音だった。
呆れているようで、結局は心配が滲んでいる。
その声を聞いた途端、金之助の胸の奥の張りつめたものが、ほんの少し緩んだ。
ここまでずっと、倒れそうでも誰にも言えなかった。
無茶だと叱られることすら、遠いところにあった。
金之助は小さく笑みを浮かべ、ぽつりとこぼした。
「……でも、おまえと会えた」
自分で言って、自分で驚くほど素直な言葉だった。
鉄之介は一瞬きょとんとする。
それから腹の底から笑い飛ばした。
「ははっ、言うじゃねえか!」
笑いながら、鉄之介は金之助の背をばんと叩く。
その衝撃で金之助の身体が揺れたが、不思議と痛くはない。
むしろ胸の冷えが吹き飛ばされるみたいだった。
「よし、俺がついてりゃ倒れようが燃えようが安心だ。
だから遠慮せず、俺を頼れ!」
灰の降る夜に、その声はやけに明るく響いた。
金之助はかすかにうなずき、肩の力を抜く。
熱はまだ胸の奥で脈を打っている。
不安も恐怖も、消えはしない。
それでも――
二人の間に生まれた温もりだけは、
この灰冷えの風でも消せぬほど確かなものになり始めていた。
金之助は、歩いている途中でふっと腰まわりが軽くなったのに気づいた。
袖の内側にかかっていた重みが、ない。
心臓が一拍遅れて跳ねる。
反射のように振り返った。
――巾着が、ない。
人の波の隙間を縫って、ひとつの小さな背中が走り去るのが見えた。
夜店の灯りのあいだを、魚のようにすり抜けていく影。
痩せて、短く、足だけがやけに速い。
「待て!」
金之助が声を張りあげた瞬間には、もう遅かった。
だが、鉄之介の動きはそれより早い。
「おう、任せろ」
言うなり鉄之介は大股で踏み出し、路地の入口を一息で詰めた。
肩に担いだ大槌が揺れる。
その巨体が人混みに割って入ると、夜の宿場のざわめきが一瞬割れた。
長い腕が伸びた。
逃げる影の肩口をがっしり掴む。
「こら、何を抜きやがった!」
引き戻された影が、びくりと跳ねる。
鉄之介の手の中に転がるようにして現れたのは――
十にも満たぬ子どもだった。
骨ばった細い腕。
泥のこびりついた頬。
灰と汗で固まった髪が額に張りつき、目だけがぎらりと光っている。
その小さな体で、必死に巾着を胸へ抱きしめていた。
「離せ! 返さない!」
子どもは歯をむき、必死に腕を突っ張る。
声は震えているのに、目だけは逃げない。
「盗っ人が何を言うか」
鉄之介は鼻を鳴らし、巾着を引きはがそうとした。
が、子どもはさらに強く抱え込んで、喉の奥から絞り出すように叫んだ。
「母ちゃんに……!
母ちゃんに飯を……!」
その一言が、夜の空気をきゅっと凍らせた。
鉄之介の腕の力が、はっきり止まったのが分かった。
金之助も息を呑み、言葉を失って、ただ子どもの顔を見た。
宿場の灯りの下で、その顔が一瞬だけ年相応に見えた。
怖いのに、悔しいのに、泣きたいのに、泣く暇もない。
そういう顔。
子どもはその一瞬の隙を逃さなかった。
鉄之介の手の下をするりと潜り、身をひるがえす。
「――っ!」
すっと人垣に溶けるように駆け出した。
「おい!」
鉄之介が舌打ちし、金之助も反射で後を追う。
二人の足音が、石畳と土を叩く音になって、夜の路地に響いた。
子どもは速かった。
狭い路地の奥へ奥へと入り、曲がり角を急に折れ、屋並みの影へ身を隠す。
鉄之介の巨体には通りにくい場所ばかりを選んで走る。
けれど、鉄之介は距離を詰めていく。
大槌を担いだままでも足が落ちないのは、ただの喧嘩屋ではない証だ。
金之助は息を切らしながら、その背を追った。
胸の奥の熱がぶり返し、視界が一瞬揺れる。
だが今は立ち止まれなかった。
やがて路地の先、宿場の灯が届かない暗がりに、朽ちかけた家が見えた。
藁葺きの屋根は半分落ち、壁は土が剥げ、雨風を凌ぐのがやっとという、あばら家。
子どもはその戸口へ転がり込むように飛び込んだ。
二人が追いついたとき、家の中は薄暗く、鼻をつくような湿った匂いが漂っていた。
灯りは、ない。
囲炉裏も消えている。
息をする音だけが、小屋の中でかすかに響いていた。
子どもは土間に膝をつき、巾着の口を震える指で解く。
中にあるものを確かめるように、一度だけ目を伏せ、
そして――
取り出したのは、乾き飯の小さな包みだった。
その包みを両手で掴み、奥へ差し出す。
そこには、布団に伏した女がいた。
女の顔色は土のように青く、頬は痩せこけ、唇は乾いて白い。
呼吸は浅く荒く、胸がかすかに上下しているだけで、生きているのかどうかさえ心許ない。
「母ちゃん……食べて……」
子どもの声は、嗚咽と混じって細く震えた。
必死に気丈を装おうとしているのに、
声だけがどうしても泣きに崩れる。
女はかすかに目を開け、子どもの差し出す飯を見た。
だが手は上がらず、ただ困ったように眉が寄る。
「……お前……」
その声は、風に消えそうなほど弱い。
金之助と鉄之介は、戸口に立ち尽くしたまま動けなかった。
さっきまで“盗っ人”として追っていた子どもが、いまはまるで、この暗い小屋の最後の灯みたいに見える。
鉄之介が、ひとつ大きく息を吐いた。
短く、苛立つような音が混じる。
「……ちっ」
鉄之介は、小屋の中へずかずか踏み込む代わりに、巾着をぽん、と子どもの足元へ放り投げた。
「持ってけ。
どうせ大したもんは入ってねえ」
子どもがきょとんとする。
金之助も思わず鉄之介を見る。
鉄之介は肩をすくめ、照れ隠しみたいに言葉を荒くした。
「俺らが食わなくても死にはしねえ。
だが、こいつらは今夜を越せねえだろ」
その言い方はぶっきらぼうなのに、決して強がりではなかった。
“事実”として置かれた言葉だった。
金之助の胸の奥に、熱いものがじわりと広がる。
辰の珠の熱とは違う、もっと柔らかくて、胸を痛くする熱。
「……おまえ、やっぱり優しいんだな」
ぽつりとこぼしたその声に、鉄之介は顔をそむけた。
「馬鹿言え」
大槌の柄を背に担ぎ直し、わざと乱暴に頭を掻く。
「子ども相手に意地張ってどうする。
……さ、行くぞ」
その背中は、さっきまでより少しだけ大きく見えた。
強さだけじゃない何かが、背中に乗っているようだった。
金之助はその背を追いながら、ふと微笑んだ。
胸の奥の冷たい塊が、ゆっくり溶けていくのが分かる。
――この男となら、危うい旅路も歩いていける。
そう思えたことが、
金之助にとって今夜いちばん大きな“飯の温かさ”だった。
第四話 雨宿りの廃寺
宿場を後にし、中山道へ入った二人は、灰の混じる風の中を黙々と歩いていた。
道は夏のはずなのに薄暗く、木々の緑さえくすんで見える。
空を漂う灰が光を遮り、昼でも夕暮れのような陰りを落としていた。
金之助は歩きながら、ときおり無意識に胸元へ手を当てていた。
珠の熱だ。
ここ数日、熱が引いたと思えばぶり返し、軽くなったと思えばまた重くなる。
胸の奥に小さな火種を抱えたまま歩いているようで、息を吸うたびに身体の内側がじりじりと焼けた。
それでも、足を止めるわけにはいかない。
止まった途端に、戸兵衛の最期の声が背中へ重く掛かってくる気がした。
鉄之介はそんな金之助の様子を、黙って横で見ていた。
わざとらしく声をかけることはしない。
ただ歩幅を半拍だけ落とし、金之助が遅れぬように合わせる。
その気遣いを、金之助は言葉にされないからこそ、いっそう強く感じていた。
やがて黒雲が空を覆い、山の奥で稲光がひとすじ走った。
遠雷が腹の底へ響くように転がる。
ぽつり、ぽつり。
雨が落ち始めたと思った次の瞬間、雨音は一気に太くなった。
叩きつけるような土砂降り。
灰と泥が混じった水が道を流れ、草の匂いが冷たく立ちのぼる。
「ちっ、こりゃかなわねえ。おい、こっちだ!」
鉄之介が道の脇を指差す。
そこには苔むした石段と、半ば崩れた山門が口を開けていた。
雨に洗われた石段が黒く光り、門の奥は深い影へ沈んでいる。
二人は駆け込み、びしょ濡れのまま廃寺の本堂へ身を寄せた。
屋根の穴から雨だれが落ち、板床に小さな水溜まりを作っている。
線香の匂いの残るはずの空気は湿気で冷たく、古い木の腐りかけた匂いが鼻を刺した。
闇に慣れぬ目を凝らしていると――
天井の暗がりから、突然、ばさばさと羽音が起こった。
蝙蝠の群れだ。
黒い影が一斉に飛び立ち、二人の頭上をかすめて外へ吸い込まれていく。
「うわっ!」
鉄之介が思わず尻もちをつく。
大槌を抱えたまま腰を抜かしたように後ろへ転がり、目を白黒させている。
金之助は一拍遅れて状況を理解し、腹を抱えて笑った。
「はははっ!
おまえ、人相手ならあんなに喧嘩っ早いくせに、蝙蝠ごときに腰抜かすんだな」
鉄之介は顔を赤くして唸った。
「……うるせえ!
ちょっと、びっくりしただけだ!」
ふてくされるように立ち上がる姿が妙に子どもっぽくて、金之助の胸の奥の重さが一瞬だけ軽くなった。
笑うこと自体、久しぶりだった。
じいさまを失ってから、笑いはどこか遠いものになっていた。
けれど鉄之介といると、不意にこうやって心が跳ねる。
それが嬉しくも、少し怖くもあった。
しかし夜が更けるにつれ、金之助の身体は別の方向へ落ちていった。
雨の匂いと冷気が堂内を満たし、
濡れた着物がじわじわと体温を奪っていく。
その冷えと反対に、金之助の胸の奥の熱だけが、じっとりと増していった。
どくん。
どくん。
珠が脈打つたび、血が熱を運び、
指先がしびれ、視界が滲み、頭の芯が割れるように痛む。
身体が震えだした。
寒さの震えではない。
内側から沸き立つ熱が、骨を揺らすような震えだ。
息が詰まる。
咳をしようとしても喉が焼けて声にならず、胸の奥が掴まれたみたいに苦しい。
鉄之介が振り向き、すぐに顔色を変えた。
「おい、どうした!」
金之助は「だいじょうぶだ」と言おうとしたが、声が出ない。
口を開いた瞬間、視界がぐらりと揺れた。
鉄之介は即座に駆け寄り、金之助の体を支えた。
乱暴な手つきではない。
ぶっきらぼうな男のくせに、その腕は驚くほど慎重だ。
「無茶すんな、座れ」
鉄之介は金之助を板床に横たえ、自分の羽織を脱いで乱暴に……いや、わざと乱暴に見せながら、金之助の肩へ掛けた。
濡れた羽織なのに、鉄之介の体温が移った布は少しだけ温い。
鉄之介は懐から手拭いを取り出し、雨水を受けて絞る。
その冷たい布を、金之助の額へ当てた。
ひやり、とした感触が、熱にゆらぐ意識へ小さな杭を打つ。
金之助は微かに眉を寄せ、唇が震える。
「まったく……無理しやがって」
鉄之介の声は苛立ちに似ているが、
その裏にあるのは、どう見ても心配だった。
金之助は目を閉じ、うわ言のように呟いた。
「……じいさま……」
誰にも言うつもりはなかった名が、熱に溶けて漏れ出る。
戸兵衛の背中、囲炉裏の火、あの夜の血の匂い。
全部が暗い天井の上に浮かんで、金之助の胸を締めつけた。
鉄之介はその呟きを聞いて、言葉を返さなかった。
ただ、濡れ布を替え、額を拭き、肩に掛けた羽織を直す。
焚き火を起こし、火の番をして、何度も金之助の顔を覗き込む。
夜の雨音が寺の屋根を叩き続ける間、鉄之介は一度も寝なかった。
火が弱れば薪を足し、布が温くなればまた冷やし直す。
それを黙々と繰り返した。
その背中は、喧嘩の時の豪快さとは違う、
静かな強さで金之助を包むようにそこにあった。
夜明け。
雨は上がり、灰混じりの雲の切れ間から淡い光が差し込んでいた。
本堂の隙間に朝の風が通り、湿った木の匂いが少しだけ薄れる。
鳥の声が遠くから聞こえた。
久しぶりに聴く、普通の朝の音。
金之助はゆっくり目を開けた。
身体はまだ鉛のように重い。
喉も乾いている。
だが、胸の焼けるような熱は引き潮のように遠のき、頭の痛みも薄くなっていた。
横を見ると、鉄之介が柱にもたれて座っている。目の下にうっすら影があり、髪が乱れ、明らかに一夜起きていた男の姿だ。
それでも鉄之介は、何事もなかったように大あくびをし、わざとらしく朗らかに言った。
「おい、飯にしようぜ。
腹が減っちゃ戦もできねえ」
その声が、やけにいつも通りで、金之助は胸の奥がきゅっと熱くなった。
“心配させた”という痛みと、
“見捨てられなかった”という安堵が一緒に押し寄せる。
金之助は鉄之介の背を見上げ、
言葉にできないほど大きな安心を覚えた。
この男は、強い。
喧嘩の強さだけじゃない。
人が倒れそうなとき、黙って隣にいる強さだ。
廃寺の朝日が二人の影を並べ、
雨に洗われた中山道を、また先へと導いていた。
通りの灯りがまだ点々と残る宿場の夜道を、二人は並んで歩いていた。
夜店の呼び声や酒の笑い声が背後で揺れ、遠ざかっていく。
足元の土は昼の熱を失い、ひやりと硬い。
空は相変わらず灰に覆われ、星は一つも見えなかった。
鉄之介は大槌を肩に担いだまま、歩幅も呼吸もまるで変えずに進む。
この寒さも薄暗さも、彼にとってはただの夜風にすぎないらしい。
金之助はその半歩後ろをついて歩いた。
さっき食った丼の温かさが腹の底に落ちたぶん、身体は少し楽になった――はずだった。
ところが胸の奥の熱だけは、逆に濃く、重くなっていく。
どくん。
どくん。
懐で珠が脈を打つたび、熱が血に溶けて四肢へ回り、
身体の芯をじわじわと焼いた。
喉が乾き、唇の裏が熱くなる。
背中に汗が滲み、その汗が夜風に冷やされてぞくりとする。
通りの灯が、少し滲んで見え始めた。
人の声が遠い。
足元がふわつく。
――まずい。
そう思った瞬間、鉄之介がふと歩みを緩めた。
横目で金之助を確かめるように見る。
さっきまでの豪快な笑いとは違う、妙に鋭い目だった。
「……おい」
低い声に、金之助が顔を上げると、鉄之介の眉が寄っている。
「おまえ、どっか具合でも悪いのか? 真っ青じゃねえか」
金之助は反射で首を振った。
「いや……大丈夫だ」
言った途端、声が思ったより弱いと自分で気づく。
喉の奥で掠れ、息がうまく続かない。
「大丈夫じゃねえだろ」
鉄之介は足を止め、ずいと金之助の前へ回り込んだ。
そして迷いなく手を伸ばし、金之助の額に触れる。
ごつごつした掌が、意外なほど温かい。
その温もりが触れた瞬間、金之助の内側の熱が皮膚の上へ滲み出るように感じられた。
「――熱、あるじゃねえか」
鉄之介の声が少し沈む。
金之助は俯いた。
胸の奥の熱も、珠の脈動も、自分で分かっている。
だが口にできない。
珠のことを言ったら、何が起きるか分からない。
戸兵衛の死が、すぐ背後に立つ。
鉄之介は腕を組み、ふうと大きく息を吐いた。
吐息が白く薄く揺れる。
「まったく……こんな身体で一人旅か。無茶しやがる」
責めているようで、責めきれない声音だった。
呆れているようで、結局は心配が滲んでいる。
その声を聞いた途端、金之助の胸の奥の張りつめたものが、ほんの少し緩んだ。
ここまでずっと、倒れそうでも誰にも言えなかった。
無茶だと叱られることすら、遠いところにあった。
金之助は小さく笑みを浮かべ、ぽつりとこぼした。
「……でも、おまえと会えた」
自分で言って、自分で驚くほど素直な言葉だった。
鉄之介は一瞬きょとんとする。
それから腹の底から笑い飛ばした。
「ははっ、言うじゃねえか!」
笑いながら、鉄之介は金之助の背をばんと叩く。
その衝撃で金之助の身体が揺れたが、不思議と痛くはない。
むしろ胸の冷えが吹き飛ばされるみたいだった。
「よし、俺がついてりゃ倒れようが燃えようが安心だ。
だから遠慮せず、俺を頼れ!」
灰の降る夜に、その声はやけに明るく響いた。
金之助はかすかにうなずき、肩の力を抜く。
熱はまだ胸の奥で脈を打っている。
不安も恐怖も、消えはしない。
それでも――
二人の間に生まれた温もりだけは、
この灰冷えの風でも消せぬほど確かなものになり始めていた。
金之助は、歩いている途中でふっと腰まわりが軽くなったのに気づいた。
袖の内側にかかっていた重みが、ない。
心臓が一拍遅れて跳ねる。
反射のように振り返った。
――巾着が、ない。
人の波の隙間を縫って、ひとつの小さな背中が走り去るのが見えた。
夜店の灯りのあいだを、魚のようにすり抜けていく影。
痩せて、短く、足だけがやけに速い。
「待て!」
金之助が声を張りあげた瞬間には、もう遅かった。
だが、鉄之介の動きはそれより早い。
「おう、任せろ」
言うなり鉄之介は大股で踏み出し、路地の入口を一息で詰めた。
肩に担いだ大槌が揺れる。
その巨体が人混みに割って入ると、夜の宿場のざわめきが一瞬割れた。
長い腕が伸びた。
逃げる影の肩口をがっしり掴む。
「こら、何を抜きやがった!」
引き戻された影が、びくりと跳ねる。
鉄之介の手の中に転がるようにして現れたのは――
十にも満たぬ子どもだった。
骨ばった細い腕。
泥のこびりついた頬。
灰と汗で固まった髪が額に張りつき、目だけがぎらりと光っている。
その小さな体で、必死に巾着を胸へ抱きしめていた。
「離せ! 返さない!」
子どもは歯をむき、必死に腕を突っ張る。
声は震えているのに、目だけは逃げない。
「盗っ人が何を言うか」
鉄之介は鼻を鳴らし、巾着を引きはがそうとした。
が、子どもはさらに強く抱え込んで、喉の奥から絞り出すように叫んだ。
「母ちゃんに……!
母ちゃんに飯を……!」
その一言が、夜の空気をきゅっと凍らせた。
鉄之介の腕の力が、はっきり止まったのが分かった。
金之助も息を呑み、言葉を失って、ただ子どもの顔を見た。
宿場の灯りの下で、その顔が一瞬だけ年相応に見えた。
怖いのに、悔しいのに、泣きたいのに、泣く暇もない。
そういう顔。
子どもはその一瞬の隙を逃さなかった。
鉄之介の手の下をするりと潜り、身をひるがえす。
「――っ!」
すっと人垣に溶けるように駆け出した。
「おい!」
鉄之介が舌打ちし、金之助も反射で後を追う。
二人の足音が、石畳と土を叩く音になって、夜の路地に響いた。
子どもは速かった。
狭い路地の奥へ奥へと入り、曲がり角を急に折れ、屋並みの影へ身を隠す。
鉄之介の巨体には通りにくい場所ばかりを選んで走る。
けれど、鉄之介は距離を詰めていく。
大槌を担いだままでも足が落ちないのは、ただの喧嘩屋ではない証だ。
金之助は息を切らしながら、その背を追った。
胸の奥の熱がぶり返し、視界が一瞬揺れる。
だが今は立ち止まれなかった。
やがて路地の先、宿場の灯が届かない暗がりに、朽ちかけた家が見えた。
藁葺きの屋根は半分落ち、壁は土が剥げ、雨風を凌ぐのがやっとという、あばら家。
子どもはその戸口へ転がり込むように飛び込んだ。
二人が追いついたとき、家の中は薄暗く、鼻をつくような湿った匂いが漂っていた。
灯りは、ない。
囲炉裏も消えている。
息をする音だけが、小屋の中でかすかに響いていた。
子どもは土間に膝をつき、巾着の口を震える指で解く。
中にあるものを確かめるように、一度だけ目を伏せ、
そして――
取り出したのは、乾き飯の小さな包みだった。
その包みを両手で掴み、奥へ差し出す。
そこには、布団に伏した女がいた。
女の顔色は土のように青く、頬は痩せこけ、唇は乾いて白い。
呼吸は浅く荒く、胸がかすかに上下しているだけで、生きているのかどうかさえ心許ない。
「母ちゃん……食べて……」
子どもの声は、嗚咽と混じって細く震えた。
必死に気丈を装おうとしているのに、
声だけがどうしても泣きに崩れる。
女はかすかに目を開け、子どもの差し出す飯を見た。
だが手は上がらず、ただ困ったように眉が寄る。
「……お前……」
その声は、風に消えそうなほど弱い。
金之助と鉄之介は、戸口に立ち尽くしたまま動けなかった。
さっきまで“盗っ人”として追っていた子どもが、いまはまるで、この暗い小屋の最後の灯みたいに見える。
鉄之介が、ひとつ大きく息を吐いた。
短く、苛立つような音が混じる。
「……ちっ」
鉄之介は、小屋の中へずかずか踏み込む代わりに、巾着をぽん、と子どもの足元へ放り投げた。
「持ってけ。
どうせ大したもんは入ってねえ」
子どもがきょとんとする。
金之助も思わず鉄之介を見る。
鉄之介は肩をすくめ、照れ隠しみたいに言葉を荒くした。
「俺らが食わなくても死にはしねえ。
だが、こいつらは今夜を越せねえだろ」
その言い方はぶっきらぼうなのに、決して強がりではなかった。
“事実”として置かれた言葉だった。
金之助の胸の奥に、熱いものがじわりと広がる。
辰の珠の熱とは違う、もっと柔らかくて、胸を痛くする熱。
「……おまえ、やっぱり優しいんだな」
ぽつりとこぼしたその声に、鉄之介は顔をそむけた。
「馬鹿言え」
大槌の柄を背に担ぎ直し、わざと乱暴に頭を掻く。
「子ども相手に意地張ってどうする。
……さ、行くぞ」
その背中は、さっきまでより少しだけ大きく見えた。
強さだけじゃない何かが、背中に乗っているようだった。
金之助はその背を追いながら、ふと微笑んだ。
胸の奥の冷たい塊が、ゆっくり溶けていくのが分かる。
――この男となら、危うい旅路も歩いていける。
そう思えたことが、
金之助にとって今夜いちばん大きな“飯の温かさ”だった。
第四話 雨宿りの廃寺
宿場を後にし、中山道へ入った二人は、灰の混じる風の中を黙々と歩いていた。
道は夏のはずなのに薄暗く、木々の緑さえくすんで見える。
空を漂う灰が光を遮り、昼でも夕暮れのような陰りを落としていた。
金之助は歩きながら、ときおり無意識に胸元へ手を当てていた。
珠の熱だ。
ここ数日、熱が引いたと思えばぶり返し、軽くなったと思えばまた重くなる。
胸の奥に小さな火種を抱えたまま歩いているようで、息を吸うたびに身体の内側がじりじりと焼けた。
それでも、足を止めるわけにはいかない。
止まった途端に、戸兵衛の最期の声が背中へ重く掛かってくる気がした。
鉄之介はそんな金之助の様子を、黙って横で見ていた。
わざとらしく声をかけることはしない。
ただ歩幅を半拍だけ落とし、金之助が遅れぬように合わせる。
その気遣いを、金之助は言葉にされないからこそ、いっそう強く感じていた。
やがて黒雲が空を覆い、山の奥で稲光がひとすじ走った。
遠雷が腹の底へ響くように転がる。
ぽつり、ぽつり。
雨が落ち始めたと思った次の瞬間、雨音は一気に太くなった。
叩きつけるような土砂降り。
灰と泥が混じった水が道を流れ、草の匂いが冷たく立ちのぼる。
「ちっ、こりゃかなわねえ。おい、こっちだ!」
鉄之介が道の脇を指差す。
そこには苔むした石段と、半ば崩れた山門が口を開けていた。
雨に洗われた石段が黒く光り、門の奥は深い影へ沈んでいる。
二人は駆け込み、びしょ濡れのまま廃寺の本堂へ身を寄せた。
屋根の穴から雨だれが落ち、板床に小さな水溜まりを作っている。
線香の匂いの残るはずの空気は湿気で冷たく、古い木の腐りかけた匂いが鼻を刺した。
闇に慣れぬ目を凝らしていると――
天井の暗がりから、突然、ばさばさと羽音が起こった。
蝙蝠の群れだ。
黒い影が一斉に飛び立ち、二人の頭上をかすめて外へ吸い込まれていく。
「うわっ!」
鉄之介が思わず尻もちをつく。
大槌を抱えたまま腰を抜かしたように後ろへ転がり、目を白黒させている。
金之助は一拍遅れて状況を理解し、腹を抱えて笑った。
「はははっ!
おまえ、人相手ならあんなに喧嘩っ早いくせに、蝙蝠ごときに腰抜かすんだな」
鉄之介は顔を赤くして唸った。
「……うるせえ!
ちょっと、びっくりしただけだ!」
ふてくされるように立ち上がる姿が妙に子どもっぽくて、金之助の胸の奥の重さが一瞬だけ軽くなった。
笑うこと自体、久しぶりだった。
じいさまを失ってから、笑いはどこか遠いものになっていた。
けれど鉄之介といると、不意にこうやって心が跳ねる。
それが嬉しくも、少し怖くもあった。
しかし夜が更けるにつれ、金之助の身体は別の方向へ落ちていった。
雨の匂いと冷気が堂内を満たし、
濡れた着物がじわじわと体温を奪っていく。
その冷えと反対に、金之助の胸の奥の熱だけが、じっとりと増していった。
どくん。
どくん。
珠が脈打つたび、血が熱を運び、
指先がしびれ、視界が滲み、頭の芯が割れるように痛む。
身体が震えだした。
寒さの震えではない。
内側から沸き立つ熱が、骨を揺らすような震えだ。
息が詰まる。
咳をしようとしても喉が焼けて声にならず、胸の奥が掴まれたみたいに苦しい。
鉄之介が振り向き、すぐに顔色を変えた。
「おい、どうした!」
金之助は「だいじょうぶだ」と言おうとしたが、声が出ない。
口を開いた瞬間、視界がぐらりと揺れた。
鉄之介は即座に駆け寄り、金之助の体を支えた。
乱暴な手つきではない。
ぶっきらぼうな男のくせに、その腕は驚くほど慎重だ。
「無茶すんな、座れ」
鉄之介は金之助を板床に横たえ、自分の羽織を脱いで乱暴に……いや、わざと乱暴に見せながら、金之助の肩へ掛けた。
濡れた羽織なのに、鉄之介の体温が移った布は少しだけ温い。
鉄之介は懐から手拭いを取り出し、雨水を受けて絞る。
その冷たい布を、金之助の額へ当てた。
ひやり、とした感触が、熱にゆらぐ意識へ小さな杭を打つ。
金之助は微かに眉を寄せ、唇が震える。
「まったく……無理しやがって」
鉄之介の声は苛立ちに似ているが、
その裏にあるのは、どう見ても心配だった。
金之助は目を閉じ、うわ言のように呟いた。
「……じいさま……」
誰にも言うつもりはなかった名が、熱に溶けて漏れ出る。
戸兵衛の背中、囲炉裏の火、あの夜の血の匂い。
全部が暗い天井の上に浮かんで、金之助の胸を締めつけた。
鉄之介はその呟きを聞いて、言葉を返さなかった。
ただ、濡れ布を替え、額を拭き、肩に掛けた羽織を直す。
焚き火を起こし、火の番をして、何度も金之助の顔を覗き込む。
夜の雨音が寺の屋根を叩き続ける間、鉄之介は一度も寝なかった。
火が弱れば薪を足し、布が温くなればまた冷やし直す。
それを黙々と繰り返した。
その背中は、喧嘩の時の豪快さとは違う、
静かな強さで金之助を包むようにそこにあった。
夜明け。
雨は上がり、灰混じりの雲の切れ間から淡い光が差し込んでいた。
本堂の隙間に朝の風が通り、湿った木の匂いが少しだけ薄れる。
鳥の声が遠くから聞こえた。
久しぶりに聴く、普通の朝の音。
金之助はゆっくり目を開けた。
身体はまだ鉛のように重い。
喉も乾いている。
だが、胸の焼けるような熱は引き潮のように遠のき、頭の痛みも薄くなっていた。
横を見ると、鉄之介が柱にもたれて座っている。目の下にうっすら影があり、髪が乱れ、明らかに一夜起きていた男の姿だ。
それでも鉄之介は、何事もなかったように大あくびをし、わざとらしく朗らかに言った。
「おい、飯にしようぜ。
腹が減っちゃ戦もできねえ」
その声が、やけにいつも通りで、金之助は胸の奥がきゅっと熱くなった。
“心配させた”という痛みと、
“見捨てられなかった”という安堵が一緒に押し寄せる。
金之助は鉄之介の背を見上げ、
言葉にできないほど大きな安心を覚えた。
この男は、強い。
喧嘩の強さだけじゃない。
人が倒れそうなとき、黙って隣にいる強さだ。
廃寺の朝日が二人の影を並べ、
雨に洗われた中山道を、また先へと導いていた。
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