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22 立て直し
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第八章 立て直し
第一話 村井左門
火山灰はまだ細かく降り続き、屋敷の軒先に黒い粉が薄く積もっている。
夜の風が喉の奥を刺すように冷たく、闇に溶けた街道の向こうからは断続的に悲鳴と犬の遠吠えが聞こえた。
佐野一行が屋敷の門をくぐると、控えの者たちが畳に跪き、一斉に状況を報告した。
表情は硬く、手のひらは血と灰で汚れている。
「殿、城前の状況を御報告いたします」
村井左門が前に進み、手早く首を振って数を告げる。
「我が方の損耗は、死者四、重傷二、軽傷六です。民の避難を手引きした者もおりますが、城内ではまだ負傷者の手当てを続けております。敵は退いたふうを装いつつ、屋敷周辺に散開しておる。油断は許されませぬ」
佐野は書院の障子に凭れ、表情を微動だにせず報告を聞いた。
怒りは内に秘めたまま、口調は冷たい。
「死者は四か……無論、補填できる数ではない。だが、その損耗は想定の範囲内だ。よく動いた、左門」
左門はぺこりと頭を下げる。
だが佐野の目は、すぐ脇に立つ二人を捉えた。お蘭は袖を深く被り、痣を隠すように俯いている。
隻眼の武蔵は、顔に血と土をつけたまま、どこか不満げに足を組んでいた。
二人とも、さっきの敗走の責任を軽く受け流すようなふてくされた態度だ。
左門の顔が険しくなる。彼は鋭く、お蘭と武蔵に向けて声を飛ばした。
「お蘭殿、荒谷武蔵殿――貴殿らは何をしておったのだ。姫を拉致する機を逸し、兵を混乱させ、仲間を死なせた。理由は何にせよ説明されよ」
お蘭が小さく口を噤む。
武蔵は肩をすくめ、言い訳めいた声を返す。
「仕方ねえだろうが。あいつらが突っ込んで来たとき、動けなかったんだ」
左門の額に静かな怒りが立ち上る。
だが彼は声を荒げず、冷たく畳みかける。
「『動けなかった』では済まぬ。殿の命と田沼様の計略が懸かっておる。戦力の一手を無駄にしたのだ。貴殿らの軽率さは、他の者の命をも奪った。弁解なさるなら、今すぐ正されよ」
「うるせえ、知ったことぬかすな」
武蔵が睨み返し、口が裂けるように怒鳴り返す。
お蘭はむしろ目を背け、顔を隠す。互いに押し問答が続く。
その様子を、佐野はただ冷ややかに見下ろしていた。刃より重い沈黙の後、彼は手を上げて話を切った。
「よい。余の前で喚くな」
その一言で屋敷は静まる。
佐野の声は凛としていて、怒りの色はあれども、言葉は無駄に荒げない。彼は武家の矜持と統率を失わぬ男だ。
「お蘭、武蔵。儂はお前らの失態を甘んじて受けるつもりはない。だが余は感情のみで動く者ではない。いまは取り乱す暇はない。別室へ行け。傷の手当てを受け、理由を詫びよ。明日より再起の機会を与えるか否か、余が判断する」
お蘭は震える声で「はい」とだけ答え、武蔵は無言で首を下げて別室へ押し出された。左門が彼らを押しやるように導き、戸が閉まると重い音がして、廊下にことば少なに気配だけが残った。
左門は佐野の前に戻り、早足で報告の続きをする。
「殿、我らに手があるはずです。お蘭の体調不良は問題ですが――忍神の珠は残り一つ、ここに在ります。まずは、この珠を如何に使わせる人材を見出すべきです。適合者を得られぬままに乱用すれば、我らに更なる損耗を招くのみ」
佐野はゆっくりと頷いた。彼の声は冷静な計略家のそれである。
「よい。時間はない。城と藩を舞台にするわけにはいかぬ。使えそうな人物を挙げよ。速やかに連れてこい。候補が多くを占めぬよう、慎重に選べ」
左門は短く礼をし、すぐさま動き出す。屋敷の戸口を出る際、彼は一瞬だけ背中を振り返り、細く光る佐野の横顔を見た。
そこには冷徹な決意しかなかった。
「は、承知しました。直ちに候を集め、御目にかけます」
左門は廊下を駆け、屋敷の奥で待機していた手勢に号令を飛ばした。
灰色の夜に、また新たな火花が走る――策の立て直しは、今まさに始まったのである。
第二話 器の男
村井左門は伊賀衆数名と佐野の手勢を伴い、静まり返った街道を進んでいた。行き先の定めはなくとも、目的はただひとつ――忍神の珠を扱える器を見つけること。
「殿の御前にこれ以上の失態は許されぬ……」
左門は心中で呟き、黒い火山灰に覆われた地面を踏みしめる。
不意に、道端の瓦礫から影が立ち上がった。黒屍人である。
呻き声をあげて襲いかかってくるそれを、伊賀衆の一人が手際よく首を刎ねた。灰が散り、闇夜に溶けていく。
「単発ばかりだな。問題はない」
左門は周囲を見渡し、さらに歩を進める。
やがて――。
「……おい、見ろ」
家来の一人が指をさした先に、十数体の黒屍人に囲まれた人影があった。
左門は一瞬、助けを求めている者かと思った。だが次の瞬間、息を呑む。
――剣が、舞っていた。
人影は浪人姿の男。長身に痩せた体つき、しかし振るう刀は正確無比。
黒屍人の首が、次々と宙を舞う。
その顔には苦悩の色が濃く、無言で振るう剣には怒りと虚無が混じっていた。
「こやつ……」
左門は思わず声を漏らす。
「見事な腕だ……あれなら使える」
しかし、その浪人――鷲尾虎之進は、耳に届かぬかのように黒屍人を斬り続けていた。額に汗を浮かべ、呻くように独り言を吐きながら。
「こんな……木偶の坊を斬ったところで……何になる……。俺は……所詮、この程度の男だ……!」
その声は、自らの剣を呪うかのようであった。黒屍人を全て斬り倒してもなお、刀を下ろすことなく震えている。
静寂が戻ると、虎之進の前に左門が歩み出た。
後ろに伊賀衆が構えるのも、淡々と名乗る。
「貴殿、……見事な腕前。 拙者は村井左門と申す」
虎之助は血に濡れた刀を下げたまま、険しい目で相手を見返した。
「……なんだ、おぬしは。 なにか用か?」
その刹那、左門の目は冷たく光った。
――この男なら、珠に適うかもしれぬ。
左門は巾着に収まった戌の珠を虎之進の前に差し出した。
「な…」
巾着越しにでも、鈍く光る妖艶さは虎之進にも分かった。
左門は手を離すが、珠はその場に留まりゆっくりと揺れて宙を浮く。
魅入られるように、虎之進が巾着に触れると、中の薄紫の鼓動する珠が全貌を表し、巾着だけが地面に落ちた。
虎之進は、その珠に吸い込まれるように手を伸ばした。
虎之進の指先が、鈍く紫を帯びた珠に触れた瞬間、世界が一拍、息を呑んだように静まった。
珠は応えるかのように輝きを増し、周囲の灰色の闇を薄紫の光で引き裂いていく。光は流動する帯のように虎之進の脇差へ注ぎ込み、拭い去ることのできぬ必然の流れのように、鞘の内へとすべり込んだ。
――衝撃。
手首に冷たい衝撃が走り、虎之進は思わず膝を折る。全身の血が逆流したように、視界が一瞬白く歪む。
だがそれは苦悶の長引く前触れではなく、短く鋭い断絶であった。
次の瞬間、彼の内側で何かが目を覚まし、骨の奥まで震わせるような力が込み上げてきた。
脇差が鞘と一体となる感触。刃の錆びた冷たさが、指先から肩へ、背筋へと伝播し、刀がただの鉄塊ではなく――己そのものになる。
その感覚は言葉にしがたく、虎之進は思わず両手で柄を確かめた。
確かに、そこにはいつもと違う重みと反応があった。
左門の顔が薄く映り、伊賀の者たちの呼吸が戻るのを感じる。だが虎之進の世界はもう彼らの声を拾わない。
耳の奥で低い鼓動が鳴り、身体の動きが内側から書き換えられていく。
刃筋の一本一本、足の運び、呼吸の間合い――すべてが即時に補正され、無駄が削ぎ落とされるのを感じた。
とっさに脇差を抜く。
その抜き手は、これまでの彼の動きではなかった。刃先の走りは鋭く、抜いた瞬間に廻し、右手の打刀を構える。左右に二刀を持つ姿は、もはや浪人の焦燥に満ちた立ち居振る舞いではなかった。静謐さと殺気が同居する、まったく別人のような気配が漂う。
虎之進は、初めて自分の掌の中の“力”を確かめるように、ゆっくりと振り返った。目の色がどこか鋭く輝きを増している。胸の奥から、震えるような確信が湧いた。
「やれる……やれるぞ」
声は低く、しかし震えてはいなかった。声の奥には狂気めいた自信ではなく、冷静な期待があった。
虎之進の脳裡に浮かんだのは、あの時すれ違った片眼の巨漢だった。
名も素性も知らぬ。ただ一目交わしただけで、息を呑み、剣を抜くことすらできぬまま立ち尽くさせられた。
人か、物の怪か――答えは出ぬ。ただ、あの異様な威圧感が骨の髄に焼き付いている。
だが今、脇差に宿った珠の脈動が全身を駆け巡る。
震えるほどの力と同時に、あの巨漢と同質の“気配”が己から立ち上っているのを、虎之進は確かに感じ取った。
「……これが……」
背筋に寒気が走る。だがそれは恐怖ではなかった。
恐怖を越えた先に芽生える昂ぶり――。
虎之進は無意識に笑みを漏らした。
「やれる……あの怪物にすら、並び立てる……!」
第三話 試し斬り
村井左門は、珠をはめた脇差を握る虎之進の肩先に軽く手を置き、眉を寄せて問いかけた。
「大丈夫か? 平気か?」
虎之進は、その異様な充足感を胸の奥で確かめるように、半ば呆然と目を細めた。 唇がほころび、どこか浮遊するような声で応じる。
「何がだ? 拙者は──気分が良い。こんな感覚は、初めてかもしれぬ」
左門は短く頷いた。計算され尽くした眼差しが、男の変化を冷静に受け止める。
「よし、ならば行こう。拙者と参れ。田沼様のもとへ連れて行く」
だが、虎之進は首を横に振り、鋭く笑った。
「いやだ。ここで試させてもらおう。拙者が、本当に強くなったのか──確かめねばならぬ」
言い終わらぬうちに、虎之進は左門の背後にいる、伊賀衆の一人へと向かって走り出した。
その走りは人の歩速を遥かに凌ぎ、辺りの空気が一瞬引き裂かれたかのように見えた。
黒灰の舞う道端に立ち尽くしていた家来たちの目には、虎之進の動きが瞬時に消え、そして再び刃が閃いたのが映った。
──一太刀。
伊賀の者の首が、まるで糸を切られた人形のように軽やかに落ちる。
血は跳ね、灰が混ざり、切り裂かれた衣が床に垂れた。
横にいた仲間は、何が起きたのか理解する前に固まっている。
動くことも叫ぶこともできぬ。
その光景を見届けると、虎之進はゆっくりと刀を鞘へ戻した。
呼吸は平静そのもので、顔には陶然とした悦びすら滲んでいた。
眼光は以前の虚ろさを失い、冷たく研ぎ澄まされている。
「いいぞ。これだ、これが拙者の求めていた力だ」
その言葉は悦楽に満ちていた。
刀を鞘に収めた手が小さく震え、だが声にはためらいがなかった。
周囲の伊賀衆も、左門も、手勢も、皆が一瞬、息を呑む。
今しがたの一閃がただの腕力や技量だけではないことを、肌で感じ取ったからだ。
光る珠が放つ気配が、虎之進の一撃を導いた──そう直感させるほどに、刃の切っ先には異様な“確信”が宿っていた。
村井左門はわずかに顔を綻ばせ、だがすぐに表情を引き締めた。
戦場は甘くない。
だが確かに、ここに可能性がある。虎之進の胸の奥で燃え上がる熱が、これからの歯車を回し始めたのを、左門は見逃さなかった。
夜風が灰を巻き上げ、道ばたの瓦礫が一行の影を乱した。
左門の手勢を従え、鷲尾虎之進は重心をやや右に寄せ、右足をひそやかに引きずりながら歩いていた。
脇差の鞘は微かに紫の光を漏らし、路の闇に淡い色を落とす。
左門はそれに気づいて、ふと足を止めた。石畳に落ちた足跡を目で追い、虎之進の歩き方を注意深く見据える。
侍としての観察眼が、ただの疲労ではない何かを告げていた。
「どうした、その脚。どこか痛めたか?」
左門の問いは穏やかだが、確かな重みを帯びていた。
彼の声は夜気に溶け、虎之進の背中を静かに押した。
虎之進は一瞬、口元を歪めて右足を庇う仕草をする。
だが表情はすぐに引き締まり、そっけなく返した。
「いや。なんでもござらん。ちょっと違和感があるだけだ。身体がまだこの珠の力に馴染んでおらぬのだろう」
左門は眉をひそめ、更に一歩近づく。足取りを改めて観察し、呟くように続けた。
「そうか……だが、念のため申す。あの忍神の珠には力の対価がある。大きな力を得る代わりに、身体に何らかの『代償』が現れることがあると、聞いておる」
その言葉に、虎之進の頬を一瞬、影がよぎった。右足を庇う動作がわずかに大きくなる。だが彼はすぐに鼻を鳴らし、投げ捨てるように笑った。
「なんだと…。たいしたことはないのであろう? 得られる強大な力に比べりゃ、些細なこと」
左門は静かに首を振る。口調に一枚、侍としての厳格さが乗る。
「さぁな、些細とは申せぬ。身体を蝕む代償は、時間をかけて確実に進行することが多い。楽観は命取りになるぞ」
それでも虎之進は肩をすくめ、粗野に笑った。
「まぁ、気にするな。拙者が欲しかったのは力だ。この脚がどうなろうが、この刃で勝てるなら一向に構わん」
左門は短く息を吐き、しかし一言だけ付け加えた。
声は冷静であるが、含意は重い。
「やめるかと申すのではない。今更返せとも言わぬ。だが己の命を賭す覚悟があるなら、それに伴う責も心得よ。生きて返る保証も、拙者には断じて申せぬ」
虎之進は唇を噛んだ。紫の珠の光が脇差の鞘で瞬き、彼の瞳にそれを映した。
内側で何かが疼く。
胸の底に、かつて味わったことのない熱と昂揚が燃え上がる。
(ああ、そうだ。この力があれば、俺は何だってできる。些細な代償など、受け入れてやる)
左門は肩に置いた掌を軽く動かし、続ける。
「お前以外にも、既に二柱の珠使いがいる。やつらと行動を共にすることになる。だが忘れるな、彼らは侍ではない故、ひとつも礼節を知らぬ。 よろしく頼むぞ」
その言葉が、虎之進の顔を曇らせた。
目が細くなり、唇は固く閉ざされる。
脇差の柄をぎゅっと握り直し、指先に力を籠めた。
胸中の誓いが、言葉となってほとばしる。
(もう毒を喰らったのだ。何だって食ってやる。命が削られようが、若き日の挫折を払うためなら構わん)
虎之進は左門を睨みつけるように見返し、短く頷いた。
「分かった。連れていけ。やつらとやってやる」
左門は静かに微笑む風でもなく、ただ一度だけ目を細めて答えた。
「よかろう。ならば行こう。田沼公の御意に叶うよう、速やかに整えねばならぬ」
夜の道を、二人は再び歩き出した。虎之進の足取りは依然として右を引いていたが、紫の光に煽られたその瞳は暗闇の向こうを見据えていた。
脚に潜む不安を呑み込み、彼は己の選択を噛みしめるように前へ進む。
第一話 村井左門
火山灰はまだ細かく降り続き、屋敷の軒先に黒い粉が薄く積もっている。
夜の風が喉の奥を刺すように冷たく、闇に溶けた街道の向こうからは断続的に悲鳴と犬の遠吠えが聞こえた。
佐野一行が屋敷の門をくぐると、控えの者たちが畳に跪き、一斉に状況を報告した。
表情は硬く、手のひらは血と灰で汚れている。
「殿、城前の状況を御報告いたします」
村井左門が前に進み、手早く首を振って数を告げる。
「我が方の損耗は、死者四、重傷二、軽傷六です。民の避難を手引きした者もおりますが、城内ではまだ負傷者の手当てを続けております。敵は退いたふうを装いつつ、屋敷周辺に散開しておる。油断は許されませぬ」
佐野は書院の障子に凭れ、表情を微動だにせず報告を聞いた。
怒りは内に秘めたまま、口調は冷たい。
「死者は四か……無論、補填できる数ではない。だが、その損耗は想定の範囲内だ。よく動いた、左門」
左門はぺこりと頭を下げる。
だが佐野の目は、すぐ脇に立つ二人を捉えた。お蘭は袖を深く被り、痣を隠すように俯いている。
隻眼の武蔵は、顔に血と土をつけたまま、どこか不満げに足を組んでいた。
二人とも、さっきの敗走の責任を軽く受け流すようなふてくされた態度だ。
左門の顔が険しくなる。彼は鋭く、お蘭と武蔵に向けて声を飛ばした。
「お蘭殿、荒谷武蔵殿――貴殿らは何をしておったのだ。姫を拉致する機を逸し、兵を混乱させ、仲間を死なせた。理由は何にせよ説明されよ」
お蘭が小さく口を噤む。
武蔵は肩をすくめ、言い訳めいた声を返す。
「仕方ねえだろうが。あいつらが突っ込んで来たとき、動けなかったんだ」
左門の額に静かな怒りが立ち上る。
だが彼は声を荒げず、冷たく畳みかける。
「『動けなかった』では済まぬ。殿の命と田沼様の計略が懸かっておる。戦力の一手を無駄にしたのだ。貴殿らの軽率さは、他の者の命をも奪った。弁解なさるなら、今すぐ正されよ」
「うるせえ、知ったことぬかすな」
武蔵が睨み返し、口が裂けるように怒鳴り返す。
お蘭はむしろ目を背け、顔を隠す。互いに押し問答が続く。
その様子を、佐野はただ冷ややかに見下ろしていた。刃より重い沈黙の後、彼は手を上げて話を切った。
「よい。余の前で喚くな」
その一言で屋敷は静まる。
佐野の声は凛としていて、怒りの色はあれども、言葉は無駄に荒げない。彼は武家の矜持と統率を失わぬ男だ。
「お蘭、武蔵。儂はお前らの失態を甘んじて受けるつもりはない。だが余は感情のみで動く者ではない。いまは取り乱す暇はない。別室へ行け。傷の手当てを受け、理由を詫びよ。明日より再起の機会を与えるか否か、余が判断する」
お蘭は震える声で「はい」とだけ答え、武蔵は無言で首を下げて別室へ押し出された。左門が彼らを押しやるように導き、戸が閉まると重い音がして、廊下にことば少なに気配だけが残った。
左門は佐野の前に戻り、早足で報告の続きをする。
「殿、我らに手があるはずです。お蘭の体調不良は問題ですが――忍神の珠は残り一つ、ここに在ります。まずは、この珠を如何に使わせる人材を見出すべきです。適合者を得られぬままに乱用すれば、我らに更なる損耗を招くのみ」
佐野はゆっくりと頷いた。彼の声は冷静な計略家のそれである。
「よい。時間はない。城と藩を舞台にするわけにはいかぬ。使えそうな人物を挙げよ。速やかに連れてこい。候補が多くを占めぬよう、慎重に選べ」
左門は短く礼をし、すぐさま動き出す。屋敷の戸口を出る際、彼は一瞬だけ背中を振り返り、細く光る佐野の横顔を見た。
そこには冷徹な決意しかなかった。
「は、承知しました。直ちに候を集め、御目にかけます」
左門は廊下を駆け、屋敷の奥で待機していた手勢に号令を飛ばした。
灰色の夜に、また新たな火花が走る――策の立て直しは、今まさに始まったのである。
第二話 器の男
村井左門は伊賀衆数名と佐野の手勢を伴い、静まり返った街道を進んでいた。行き先の定めはなくとも、目的はただひとつ――忍神の珠を扱える器を見つけること。
「殿の御前にこれ以上の失態は許されぬ……」
左門は心中で呟き、黒い火山灰に覆われた地面を踏みしめる。
不意に、道端の瓦礫から影が立ち上がった。黒屍人である。
呻き声をあげて襲いかかってくるそれを、伊賀衆の一人が手際よく首を刎ねた。灰が散り、闇夜に溶けていく。
「単発ばかりだな。問題はない」
左門は周囲を見渡し、さらに歩を進める。
やがて――。
「……おい、見ろ」
家来の一人が指をさした先に、十数体の黒屍人に囲まれた人影があった。
左門は一瞬、助けを求めている者かと思った。だが次の瞬間、息を呑む。
――剣が、舞っていた。
人影は浪人姿の男。長身に痩せた体つき、しかし振るう刀は正確無比。
黒屍人の首が、次々と宙を舞う。
その顔には苦悩の色が濃く、無言で振るう剣には怒りと虚無が混じっていた。
「こやつ……」
左門は思わず声を漏らす。
「見事な腕だ……あれなら使える」
しかし、その浪人――鷲尾虎之進は、耳に届かぬかのように黒屍人を斬り続けていた。額に汗を浮かべ、呻くように独り言を吐きながら。
「こんな……木偶の坊を斬ったところで……何になる……。俺は……所詮、この程度の男だ……!」
その声は、自らの剣を呪うかのようであった。黒屍人を全て斬り倒してもなお、刀を下ろすことなく震えている。
静寂が戻ると、虎之進の前に左門が歩み出た。
後ろに伊賀衆が構えるのも、淡々と名乗る。
「貴殿、……見事な腕前。 拙者は村井左門と申す」
虎之助は血に濡れた刀を下げたまま、険しい目で相手を見返した。
「……なんだ、おぬしは。 なにか用か?」
その刹那、左門の目は冷たく光った。
――この男なら、珠に適うかもしれぬ。
左門は巾着に収まった戌の珠を虎之進の前に差し出した。
「な…」
巾着越しにでも、鈍く光る妖艶さは虎之進にも分かった。
左門は手を離すが、珠はその場に留まりゆっくりと揺れて宙を浮く。
魅入られるように、虎之進が巾着に触れると、中の薄紫の鼓動する珠が全貌を表し、巾着だけが地面に落ちた。
虎之進は、その珠に吸い込まれるように手を伸ばした。
虎之進の指先が、鈍く紫を帯びた珠に触れた瞬間、世界が一拍、息を呑んだように静まった。
珠は応えるかのように輝きを増し、周囲の灰色の闇を薄紫の光で引き裂いていく。光は流動する帯のように虎之進の脇差へ注ぎ込み、拭い去ることのできぬ必然の流れのように、鞘の内へとすべり込んだ。
――衝撃。
手首に冷たい衝撃が走り、虎之進は思わず膝を折る。全身の血が逆流したように、視界が一瞬白く歪む。
だがそれは苦悶の長引く前触れではなく、短く鋭い断絶であった。
次の瞬間、彼の内側で何かが目を覚まし、骨の奥まで震わせるような力が込み上げてきた。
脇差が鞘と一体となる感触。刃の錆びた冷たさが、指先から肩へ、背筋へと伝播し、刀がただの鉄塊ではなく――己そのものになる。
その感覚は言葉にしがたく、虎之進は思わず両手で柄を確かめた。
確かに、そこにはいつもと違う重みと反応があった。
左門の顔が薄く映り、伊賀の者たちの呼吸が戻るのを感じる。だが虎之進の世界はもう彼らの声を拾わない。
耳の奥で低い鼓動が鳴り、身体の動きが内側から書き換えられていく。
刃筋の一本一本、足の運び、呼吸の間合い――すべてが即時に補正され、無駄が削ぎ落とされるのを感じた。
とっさに脇差を抜く。
その抜き手は、これまでの彼の動きではなかった。刃先の走りは鋭く、抜いた瞬間に廻し、右手の打刀を構える。左右に二刀を持つ姿は、もはや浪人の焦燥に満ちた立ち居振る舞いではなかった。静謐さと殺気が同居する、まったく別人のような気配が漂う。
虎之進は、初めて自分の掌の中の“力”を確かめるように、ゆっくりと振り返った。目の色がどこか鋭く輝きを増している。胸の奥から、震えるような確信が湧いた。
「やれる……やれるぞ」
声は低く、しかし震えてはいなかった。声の奥には狂気めいた自信ではなく、冷静な期待があった。
虎之進の脳裡に浮かんだのは、あの時すれ違った片眼の巨漢だった。
名も素性も知らぬ。ただ一目交わしただけで、息を呑み、剣を抜くことすらできぬまま立ち尽くさせられた。
人か、物の怪か――答えは出ぬ。ただ、あの異様な威圧感が骨の髄に焼き付いている。
だが今、脇差に宿った珠の脈動が全身を駆け巡る。
震えるほどの力と同時に、あの巨漢と同質の“気配”が己から立ち上っているのを、虎之進は確かに感じ取った。
「……これが……」
背筋に寒気が走る。だがそれは恐怖ではなかった。
恐怖を越えた先に芽生える昂ぶり――。
虎之進は無意識に笑みを漏らした。
「やれる……あの怪物にすら、並び立てる……!」
第三話 試し斬り
村井左門は、珠をはめた脇差を握る虎之進の肩先に軽く手を置き、眉を寄せて問いかけた。
「大丈夫か? 平気か?」
虎之進は、その異様な充足感を胸の奥で確かめるように、半ば呆然と目を細めた。 唇がほころび、どこか浮遊するような声で応じる。
「何がだ? 拙者は──気分が良い。こんな感覚は、初めてかもしれぬ」
左門は短く頷いた。計算され尽くした眼差しが、男の変化を冷静に受け止める。
「よし、ならば行こう。拙者と参れ。田沼様のもとへ連れて行く」
だが、虎之進は首を横に振り、鋭く笑った。
「いやだ。ここで試させてもらおう。拙者が、本当に強くなったのか──確かめねばならぬ」
言い終わらぬうちに、虎之進は左門の背後にいる、伊賀衆の一人へと向かって走り出した。
その走りは人の歩速を遥かに凌ぎ、辺りの空気が一瞬引き裂かれたかのように見えた。
黒灰の舞う道端に立ち尽くしていた家来たちの目には、虎之進の動きが瞬時に消え、そして再び刃が閃いたのが映った。
──一太刀。
伊賀の者の首が、まるで糸を切られた人形のように軽やかに落ちる。
血は跳ね、灰が混ざり、切り裂かれた衣が床に垂れた。
横にいた仲間は、何が起きたのか理解する前に固まっている。
動くことも叫ぶこともできぬ。
その光景を見届けると、虎之進はゆっくりと刀を鞘へ戻した。
呼吸は平静そのもので、顔には陶然とした悦びすら滲んでいた。
眼光は以前の虚ろさを失い、冷たく研ぎ澄まされている。
「いいぞ。これだ、これが拙者の求めていた力だ」
その言葉は悦楽に満ちていた。
刀を鞘に収めた手が小さく震え、だが声にはためらいがなかった。
周囲の伊賀衆も、左門も、手勢も、皆が一瞬、息を呑む。
今しがたの一閃がただの腕力や技量だけではないことを、肌で感じ取ったからだ。
光る珠が放つ気配が、虎之進の一撃を導いた──そう直感させるほどに、刃の切っ先には異様な“確信”が宿っていた。
村井左門はわずかに顔を綻ばせ、だがすぐに表情を引き締めた。
戦場は甘くない。
だが確かに、ここに可能性がある。虎之進の胸の奥で燃え上がる熱が、これからの歯車を回し始めたのを、左門は見逃さなかった。
夜風が灰を巻き上げ、道ばたの瓦礫が一行の影を乱した。
左門の手勢を従え、鷲尾虎之進は重心をやや右に寄せ、右足をひそやかに引きずりながら歩いていた。
脇差の鞘は微かに紫の光を漏らし、路の闇に淡い色を落とす。
左門はそれに気づいて、ふと足を止めた。石畳に落ちた足跡を目で追い、虎之進の歩き方を注意深く見据える。
侍としての観察眼が、ただの疲労ではない何かを告げていた。
「どうした、その脚。どこか痛めたか?」
左門の問いは穏やかだが、確かな重みを帯びていた。
彼の声は夜気に溶け、虎之進の背中を静かに押した。
虎之進は一瞬、口元を歪めて右足を庇う仕草をする。
だが表情はすぐに引き締まり、そっけなく返した。
「いや。なんでもござらん。ちょっと違和感があるだけだ。身体がまだこの珠の力に馴染んでおらぬのだろう」
左門は眉をひそめ、更に一歩近づく。足取りを改めて観察し、呟くように続けた。
「そうか……だが、念のため申す。あの忍神の珠には力の対価がある。大きな力を得る代わりに、身体に何らかの『代償』が現れることがあると、聞いておる」
その言葉に、虎之進の頬を一瞬、影がよぎった。右足を庇う動作がわずかに大きくなる。だが彼はすぐに鼻を鳴らし、投げ捨てるように笑った。
「なんだと…。たいしたことはないのであろう? 得られる強大な力に比べりゃ、些細なこと」
左門は静かに首を振る。口調に一枚、侍としての厳格さが乗る。
「さぁな、些細とは申せぬ。身体を蝕む代償は、時間をかけて確実に進行することが多い。楽観は命取りになるぞ」
それでも虎之進は肩をすくめ、粗野に笑った。
「まぁ、気にするな。拙者が欲しかったのは力だ。この脚がどうなろうが、この刃で勝てるなら一向に構わん」
左門は短く息を吐き、しかし一言だけ付け加えた。
声は冷静であるが、含意は重い。
「やめるかと申すのではない。今更返せとも言わぬ。だが己の命を賭す覚悟があるなら、それに伴う責も心得よ。生きて返る保証も、拙者には断じて申せぬ」
虎之進は唇を噛んだ。紫の珠の光が脇差の鞘で瞬き、彼の瞳にそれを映した。
内側で何かが疼く。
胸の底に、かつて味わったことのない熱と昂揚が燃え上がる。
(ああ、そうだ。この力があれば、俺は何だってできる。些細な代償など、受け入れてやる)
左門は肩に置いた掌を軽く動かし、続ける。
「お前以外にも、既に二柱の珠使いがいる。やつらと行動を共にすることになる。だが忘れるな、彼らは侍ではない故、ひとつも礼節を知らぬ。 よろしく頼むぞ」
その言葉が、虎之進の顔を曇らせた。
目が細くなり、唇は固く閉ざされる。
脇差の柄をぎゅっと握り直し、指先に力を籠めた。
胸中の誓いが、言葉となってほとばしる。
(もう毒を喰らったのだ。何だって食ってやる。命が削られようが、若き日の挫折を払うためなら構わん)
虎之進は左門を睨みつけるように見返し、短く頷いた。
「分かった。連れていけ。やつらとやってやる」
左門は静かに微笑む風でもなく、ただ一度だけ目を細めて答えた。
「よかろう。ならば行こう。田沼公の御意に叶うよう、速やかに整えねばならぬ」
夜の道を、二人は再び歩き出した。虎之進の足取りは依然として右を引いていたが、紫の光に煽られたその瞳は暗闇の向こうを見据えていた。
脚に潜む不安を呑み込み、彼は己の選択を噛みしめるように前へ進む。
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