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第二章 快進撃

マヤの気持ち(ソウルヒート視点)

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「くそっ、無能のヤマトごときが、調子に乗りやがって!」

「許せませんわね!」

 マキシリオンたちは負のオーラをまき散らしながら、ズカズカと往来おうらいを歩いていた。
 事情を知らない人たちは彼らの圧におされ、道を開けている。
 
「なにがアドバイスのおかげだ、資金管理をなめるなだぁ? 頭おかしいんじゃねぇのか!? そんなもんで強くなれるんなら、誰も苦労しねぇだろうが」

「そうだねぇ。いったいどうやって彼女たちに取り入ったのやら」

「それもこれも、マヤの資金管理が下手なせいですわ! それをヤマトなんかに見抜かれてしまったんですもの。あのあわれむような目、我慢なりませんわ!」

 スノウがそう言うと、三人ともマヤへ目を向ける。
 酷い言いがかりだが、マヤはもう反論しなかった。
 ただただ、トボトボ歩きながら淡々とあやまる。

「……ごめんなさい」

「まあまあ、スノウも落ち着いて。マヤちゃんだって悪気があるわけじゃないんだからさ」

「ふんっ」

「しっかしよぉ、資金の減りが早いのも事実なんだ。ちゃんとしてくれよな、マヤ」

「ええ、分かってるわ」

 マヤはうつむいたまま答える。
 出費を抑えるように何度も言っているのに、それを聞かない彼らの自業自得ではあったが、マヤはこれ以上なにも言わない。
 言ったところで、また自分の資金管理が下手なのだと言われるだけだ。

 もはやあきらめていた。
 ソウルヒートの歩む先にあるのは滅亡のみ。
 だからこそ、今のうちに身の振り方をよく考えなければならない。

(確か……ヤマトさん、だったわね……)

 不機嫌そうにズカズカと歩いていくメンバーたちだったが、マヤは一人立ち止まり、背後を振りむいた。
 もちろんヤマトたちの姿はもう見えないが、マヤは彼との出会いに胸を高鳴らせる。

「彼は本物だったわ。断じて無能なんかじゃない」

 パーティの女の子たちが言っていたように、弱小パーティが資金管理のおかげで急成長したと言うのなら、間違いなくヤマトの手腕だろう。
 マヤでは想像すらできないほどの実力を持っているに違いない。
 それに、彼は一目見ただけで、ソウルヒートの資金力低下を見抜いていた。
 それこそ、金銭的価値を見抜くことのできる、鋭い目利めききのなによりの証拠。

「ヤマトさん、あなたはいったい……」

 彼が最後に向けた、かつての仲間を気遣う視線を思い出し、マヤは手で胸を押さえた。
 ソウルヒートのメンバーに冷遇されていたせいか、彼の優しげな眼差しがマヤの心をかき乱す。
 自分でもよく分かっていない温かい感情を抱きながら、マヤはマキシリオンたちの後を追うのだった。
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