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第四章 『ヤマト運用商会』結成

親愛なる人へ

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 ~~親愛なるケルベム・ロジャー様へ~~

 あなたの元を離れて長い年月が経ちますが、お元気でしょうか? お体に障りないでしょうか?

 僕のほうは大丈夫です。
 一時はどうなることかと思っていたハンター生活も、今では素晴らしい仲間たちと出会うことができ、想像とはまた違った有意義な日々を送っています。

 もちろん、師匠から教わった多くのことは、なに一つ忘れたりしていません。

 前パーティの資金管理係としての仕事に忙殺され、一時は忘れかけていた僕の夢もようやく思い出すことができました。

 仲間のみんなには内緒なのですが、実はあと少しで、新しい道へと進むことができそうなのです。

 今の仲間たちなら、心配ありません。
 マヤという女の子が、僕のようになりたいと嬉しいことを言ってくれて、資金管理や運用のことについて色々教えていますし、ラミィ、ハンナ、シルフィという優しく強い仲間たちも、努力の末にハンターとして十分な実力を身に着けました。
 もうそろそろ僕はお役目ご免となることでしょう。

 寂しくはありますが、師匠に近づくため、夢を叶えるため、僕も前へ進もうと思います。

 長くなりましたが、最後に今一度お伝えします。
 僕は元気です。
 素晴らしい仲間たちに巡り合えて、とても幸せです。
 師匠も、僕のことは心配せず、より多くの人たちを救ってあげてください。
 僕にそうしてくれたように。

 ~~ヤマトより~~

「ふぅ~」

 一通り手紙を書き終えたヤマトは、椅子に背もたれ大きく背伸びする。
 平和な日々が続き、時間があるうちに師匠へ近況報告をしようと考えたのだ。
 手が疲れ、達成感にほうけていると、机の上にピー助、ポゥ太、キュウ子が降りてきた。

「クェ?」

「クックッ」

「キュルルッ!」

「うん、そうだよ。師匠への手紙さ」

 小鳥たちはなにやら楽しそうに言い合っている。
 幼少の時からの付き合いである彼らも、ヤマトの育ての親である師匠のことはよく知っているのだ。
 
「クェッ、クェェェ!」

「あっ、そうだね、分かったよ」

 ピー助から自分たちのこともちゃんと書くようにと注文を受け、修正を加え始める。
 ささっと書いて小鳥たちに確認をとると、満足げに鳴いたので、今度こそ完成だ。
 ヤマトはベッドの上へ移動するとどかっと腰を下ろした。

「師匠、元気かなぁ……」

 ヤマトが懐かしむように目を細めて上を向いていると、ポゥ太が肩にとまり、「また会いたいね」とささやくように鳴いてきた。

「うん、そうだね……」

 ヤマトは眉尻を下げ、寂しそうに頷く。
 もちろん彼も、ポゥ太たちと気持ちは同じだ。
 でも、そう簡単に叶う願いではない。
 師匠は非常に忙しい人で、この手紙だって屋敷へ送るものの、師匠がいつ帰ってきているかは分からないのだ。

「いつかまた会えるよね」

 その日が楽しみだと、頬を緩め呟くと部屋の扉がノックされた。

「――ヤマトぉ、いるかーい?」

「あれ? もうこんな時間か。どうぞー」

 ヤマトが返事をすると、扉が開きぞろぞろとトリニティスイーツの四人が入って来た。
 すると、机の上にいた小鳥たちが嬉しそうに鳴き、ピー助がシルフィの胸へ、ポゥ太がハンナの胸へ飛び込む。

「あらあら。ピー助さん、ただいま戻りました」

「こら、くすぐったいよポゥ太」

 小鳥たちもすっかり彼女たちになついていた。
 とはいえ、ピー助たちの言葉の分かるヤマトには、ただのスケベ心からだと分かっていたが。
 キュウ子だけはメス鳥なので、不機嫌そうに「キュッ」と鳴いて、ムスッとした様子でヤマトの肩に乗る。

「みんな、クエストお疲れさま。ケガはない?」

「もちろんだよ。今日も絶好調だった」

「ですね。レアな素材もたくさん手に入りましたし」

 最近のトリニティスイーツは順調で、ヤマトが管理しなくても、マヤさえいれば資金管理面での問題はなくなってきた。 
 むしろ、消耗品アイテムや余剰資金などに余裕があるときは、マヤ自身もパーティのステータス強化要員としてクエストへ出ているぐらいだ。

「先生のほうは、どうされてたんですか?」

「僕は、ちょっと手紙をね」

 ニコニコ問いかけてくるマヤに、机の上を一瞥いちべつしつつ答えた。
 それを聞いたシルフィとハンナがくいついてくる。

「お手紙、ですか?」

「ま、まさかっ、恋人!?」

「いやいや違うよ。昔、僕を育ててくれた師匠に近況報告をするだけさ」

「まぁ! 先生の先生ということですね!?」

 マヤが目を輝かせる。
 
「まぁ、そうことになるかな」

「ヤマトの幼少期か……興味あるな」

「た、確かに!」

「聞いてみたいです」

「え? まぁ別に隠すことでもないし、いいけど……」

 ヤマトは美少女たちに興味があると言われては悪い気がしないので、昔のことを語り始めた。
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