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第四章 『ヤマト運用商会』結成
小さな影
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「素晴らしい! ヤマトさんの実力なら、圧倒的な利回りを出せるでしょう」
ヤマトは強く頷いた。
ピー助、ポゥ太、キュウ子といった優秀な情報収集係がいるので、儲けるチャンスはいくらでも見つかる。
後は、伸びそうな商会へ出資したり、高騰しそうな資源の所有権を先物市場で売買したりするだけで良いのだ。
結局、ソウルヒートやトリニティスイーツの資金管理をしていた時となにも変わらない。
唯一の違いは、商会として利益を追い求める攻めの姿勢に転じることだ。
「しかしヤマトさん。私へのご相談というのは……」
「はい。この商売は、信用がなによりも大事です。お客さんの資産をしっかり守れるという安心感。そして確かな実力を持ち、資産を増やせるという信頼が」
「間違いありません」
「ですので、実績のない最初はやはり、顧客が集まらないでしょう。そこで、様々な商会に顔のきくアーク会長に、知り合いへ勧めてもらいたいのです」
もちろんヤマトにも、ウルティマ商会以外との繋がりはある。
かつて短期間だけ出資していた商会や、懇意にしていた店などにも声をかけていくつもりだ。
しかしこの商売は手数料ビジネス。
より多くの顧客を獲得することが、成功への鍵と言えるのだ。
ヤマトの提案に、アークは微笑みながら頷いた。
「もちろん構いません。私どもはヤマトさんに恩がありますから、知り合いに紹介しましょう。もちろん会長のヤマトさんは、我がウルティマ商会が繁盛するきっかけを作った実力者だと付け加えて」
「ありがとうございます。すごく頼もしいです」
「お安いごようです。ところで、見返りと言ってはなんですが……」
「はい、なんでもおっしゃってください」
ヤマトはにこやかに頷く。
もしヤマトが失敗すれば、彼を紹介したアークの信用にも傷がつく。
そのリスクをおかすのだから、それなりの見返りはあって当然だ。
その内容を冷静に吟味すべく、ヤマトがハーブティーに口を付けると――
「うちのシーアを嫁としてもらって頂きたいのです」
「ぶふぉっ!?」
ヤマトは盛大に噴き出した。
もちろん、その要望は丁重にお断りし、別の要望で勘弁してもらうのだった。
――――――――――
ヤマトが外へ出ると、日も暮れ始め町の人通りも多くなってきていた。
仕事終わりの騎士や汗だくになったハンターたちで酒場や市場はごった返している。
彼は寄り道せずまっすぐに宿へ向かって歩き出した。
そんな後ろ姿を遠くから眺める小さい影があった。
「やっと見つけた……」
紅い瞳を輝かせて呟いたのは、明らかに怪しい格好をした少女。
漆黒の毛皮で作られた胸下までの黒装束の下には鎖帷子を着込み、短いスカートの後ろから垂れている尻尾のような布は、剛毛で毛先が鋭く尖っている。
闇のように暗い髪は長くサイドテールを作っており、口元をスカーフで隠しているものの、シミ一つない色白の肌も相まって可憐な美少女と言って過言ではない。
彼女は見失わないようにと、一定の距離を保ちながら、ヤマトの後を追う。
「ヤマト様……」
愛おしそうに彼の呼ぶ少女の目には、歓喜の涙が浮かんでいた。
ヤマトは強く頷いた。
ピー助、ポゥ太、キュウ子といった優秀な情報収集係がいるので、儲けるチャンスはいくらでも見つかる。
後は、伸びそうな商会へ出資したり、高騰しそうな資源の所有権を先物市場で売買したりするだけで良いのだ。
結局、ソウルヒートやトリニティスイーツの資金管理をしていた時となにも変わらない。
唯一の違いは、商会として利益を追い求める攻めの姿勢に転じることだ。
「しかしヤマトさん。私へのご相談というのは……」
「はい。この商売は、信用がなによりも大事です。お客さんの資産をしっかり守れるという安心感。そして確かな実力を持ち、資産を増やせるという信頼が」
「間違いありません」
「ですので、実績のない最初はやはり、顧客が集まらないでしょう。そこで、様々な商会に顔のきくアーク会長に、知り合いへ勧めてもらいたいのです」
もちろんヤマトにも、ウルティマ商会以外との繋がりはある。
かつて短期間だけ出資していた商会や、懇意にしていた店などにも声をかけていくつもりだ。
しかしこの商売は手数料ビジネス。
より多くの顧客を獲得することが、成功への鍵と言えるのだ。
ヤマトの提案に、アークは微笑みながら頷いた。
「もちろん構いません。私どもはヤマトさんに恩がありますから、知り合いに紹介しましょう。もちろん会長のヤマトさんは、我がウルティマ商会が繁盛するきっかけを作った実力者だと付け加えて」
「ありがとうございます。すごく頼もしいです」
「お安いごようです。ところで、見返りと言ってはなんですが……」
「はい、なんでもおっしゃってください」
ヤマトはにこやかに頷く。
もしヤマトが失敗すれば、彼を紹介したアークの信用にも傷がつく。
そのリスクをおかすのだから、それなりの見返りはあって当然だ。
その内容を冷静に吟味すべく、ヤマトがハーブティーに口を付けると――
「うちのシーアを嫁としてもらって頂きたいのです」
「ぶふぉっ!?」
ヤマトは盛大に噴き出した。
もちろん、その要望は丁重にお断りし、別の要望で勘弁してもらうのだった。
――――――――――
ヤマトが外へ出ると、日も暮れ始め町の人通りも多くなってきていた。
仕事終わりの騎士や汗だくになったハンターたちで酒場や市場はごった返している。
彼は寄り道せずまっすぐに宿へ向かって歩き出した。
そんな後ろ姿を遠くから眺める小さい影があった。
「やっと見つけた……」
紅い瞳を輝かせて呟いたのは、明らかに怪しい格好をした少女。
漆黒の毛皮で作られた胸下までの黒装束の下には鎖帷子を着込み、短いスカートの後ろから垂れている尻尾のような布は、剛毛で毛先が鋭く尖っている。
闇のように暗い髪は長くサイドテールを作っており、口元をスカーフで隠しているものの、シミ一つない色白の肌も相まって可憐な美少女と言って過言ではない。
彼女は見失わないようにと、一定の距離を保ちながら、ヤマトの後を追う。
「ヤマト様……」
愛おしそうに彼の呼ぶ少女の目には、歓喜の涙が浮かんでいた。
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