滅亡世界の魔装設計士 ~五体不満足で転生した設計士は、魔装を設計し最強へと成り上がる~

高美濃 四間

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第四章 ライトニングハウンド

狂戦獣ベヒーモス

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 一方、廃墟と化した村では――

 ――ブオォンッ!

 ベヒーモスの振り下ろした前足が宙を裂く。
 ハナは紙一重で横転し回避。
 もう片方の前足が連続して迫るが、冷静に太刀で受け流すと大きく跳び退いた。

 肩で息をしているハナの顔には般若面が装着され、両手で太刀を握りしめている。
 対するベヒーモスは獲物を逃したことなど意に介していないかのように、ゆっくりハナへと向き直った。

 ベヒーモスはカトブレパスと同等のサイズ感で四足歩行の魔獣だ。
 全身の筋肉が異様に発達しており、獰猛ないかつい顔に鋭く尖った二本の角。圧倒的な膂力はミノグランデの怪力に匹敵するうえに、反射神経がとび抜けている。
 まさしく猛獣といったところだが、知性も高く剣のような刃を生やした尻尾を駆使するから隙が無い。

「くっ……」

 ハナは反撃の糸口が掴めず奥歯を強く噛む。
 鬼の能力を開放しても、ベヒーモスの余裕の態度は覆らない。
 テオを失ってからこの日のために鍛え直してきたというのに、なんという体たらくだろうか。
 だが、弟の仇を目の前にして憎しみの炎は揺らいだりしない。

「このぉぉぉっ!」

 ハナは地を蹴り風を切る。
 凄まじいスピードで迫るも、ベヒーモスは冷静に片足を引いた。
 次の瞬間、ベヒーモスの体が一回転し、尻尾の剣が薙ぎ払われる。
 しかし、その攻撃モーションは昔にも見ていた。

「見切った!」

 ハナは咄嗟に跳び上がり、尻尾の斬撃を回避する。
 そしてそのままの勢いでベヒーモスへ斬りかかる。

「ギャゥンッ……」

 上空から振り下ろした一撃は見事にベヒーモスの肩を裂いた。
 だが、あまりにも硬い筋肉に阻まれ、深くは入らなかった。

「まだ!」

 ハナは着地と同時に太刀を横から薙ぎ払う。

 ――ガキンッ!

 ベヒーモスの首を飛ばす勢いで振るった一閃は、その強靭な牙に挟まれていた。

「ぐぅぅぅ……」

 敵の咬合力とハナの力が均衡するものの、ベヒーモスはすぐ攻撃に切り替えた。
 太刀から口を離し、隙だらけのハナに猛烈なタックルをかます。

「っ!?」

 ハナはベヒーモスの硬い右肩に突き飛ばされ、荒野を勢いよく転がった。
 太刀も手放してしまい、あらぬ方向に飛んでいく。

「テオの仇を討つまで、私はっ……」

 痛みに顔を歪めながらも憎悪を糧に立ち上がると、ベヒーモスがその鋭い深緑の角をハナへ向け猛然と駆け出していた。
 ハナの脳裏にテオの最期が蘇る。
 あの時も、ピンチのハナをテオが庇って貫かれたのだ。
 しかし今、ハナにそれを避けるための余力も、助けてくれる人もいない。

「テオ――」

 ハナが掠れる声で呟き目を閉じる。
 そのとき、耳に届いたのは肉が貫かれる音ではなかった。
 
「――ハナぁぁぁ!」
 
 シュウゴは全速力で荒野の上空を飛び、ハナを捉えると左腕を放った。
 体から離れ、けたたましい噴射音を響かせたオールレンジファングは、間一髪で立ち尽くすハナの腕を掴んだ。

「うぉぉぉぉぉ!」

 巻き取り機構を起動し、一気に引き寄せる。
 空中でハナをしっかり抱き止めたシュウゴは、バーニアの噴射を調整し地面に着地。
 ぎゅっと目を瞑っていたハナを地面に寝かせ顔を覗き込んだ。

「ハナ、大丈夫か?」

「……え? シュウゴ、くん? なんで?」

 ハナはゆっくり目を開け、信じられないというように目を白黒させている。

「なんでって……仲間だからだよ」

 シュウゴはさも当たり前のように言う。ハナは黙って目を見開いていた。
 実際のところ、ハナの探索をバラムに願い出て、ヴィンゴールの許可をもらったのだ。

「無事で本当に良かった……」

 間一髪のところで間に合って、シュウゴは心の底から安堵した。
 歓喜で涙すらこぼれそうだったが、今は目の前の敵に集中する。
 ベヒーモスは今、デュラが足止めしているが、さすがはクラスAモンスター。
 デュラの力でもってしても、防御で精一杯だ。
 ランスで反撃する隙すら与えられていない。

 バコン!

 ベヒーモスが回転しながら横へ跳び、薙ぎ払われた尻尾がデュラを叩き飛ばす。
 次にシュウゴのほうを向くと、牙を光らせ地を蹴った。
 覇気を纏った猛獣が凄まじい勢いで迫るが、シュウゴは慌てず叫ぶ。

「メイ!」

 次の瞬間、ベヒーモスの左側方から白光が迫った。
 ビームアイロッドの最大火力だ。
 だがベヒーモスはここでも超常的な反射神経を発揮し、直撃の寸前で身を捻り横へ転がって緊急回避した。

「くそっ、なんなんだあいつは!」

「……あれが狂戦獣ベヒーモス。私と弟が鬼の力をもってしても敵わなかったバケモノよ」

 ハナはシュウゴの肩を借り、ゆっくり立ち上がる。
 シュウゴが前を向くと、ベヒーモスは既にメイに狙いを定めていた。

「メイちゃんが!」

 ハナが慌てて叫び走り出そうとするが、シュウゴがその腕を掴んで止める。
 困惑の表情で振り返ったハナへシュウゴが言う。

「大丈夫だ」

 そのすぐ後、ドスン!という音が響きハナは再び前を向いた。
 ベヒーモスが倒れていたのだ。
 その両前足には白い糸が巻き付き、ベヒーモスが前につんのめって顔を地面に付けている。
 メイがスパイダーホールドを張っていたのだ。

「今だ、ハナは太刀を!」

 シュウゴはそう言ってバーニアを噴射し、ベヒーモスへ飛び出す。
 ハナは頷き、太刀を拾うべく走り出した。
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