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第十三章 真実を知る者
山積みの問題
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それから数日、神殿の遺跡での激闘に備え、シュウゴは着実に準備を整えていく。
その日、シュウゴが装備強化の素材集めのためにデュラと紹介所へ向かっていると、途中で鉄を打つ甲高い音が聞こえ足を止めた。
音の源へ目を向けると、紹介所の近くにある高台で、ハイパーレーザーカノンの設置作業が着々と進んでいるのが分かった。
シュウゴは高台の下まで歩いていくと、作業を見守っていたシモンに声をかける。
「どんな感じ?」
「おぉ、シュウゴか。設置だけならすぐにできそうだよ」
そう言ってシモンは微笑み、手に持っていた一枚の大きな紙を広げる。
シュウゴがそれを覗き込むと、そこに描かれていたのはレーザーカノンの据付図だった。
高台の上に電磁加速用レールと光線源を発射する銃身を設置し、電源となる大容量バッテリーは地上に置いて、アラクネの糸を皮製の被覆で覆ったケーブルで接続している。
あまりに完成された図面に、シュウゴは思わず感嘆の声を上げた。
「これは凄い完成度だな……」
「ファランさんが描いてくれたんだよ。上手いだろ?」
「ああ、さすがだ」
「でも、問題は完成した後だよ。コイツを動かすための雷をどうやって貯めるかってことと、発射時の反動で銃口が逸れる可能性が高いことだ」
シュウゴは唸る。
蓄電については、人を集めて雷魔法を使うことで、地道に貯めていくしかない。
それよりも問題は反動。実験の結果から、低くない確率で狙いを外す可能性があるという結果が得られたため、対策が必要なのだ。
「反動を抑えるのはやっぱり難しいか。完成した状態からまた実験して銃口を補正したり、固定用の治具を作ったりして改良していくしかなさそうだ」
「ま、そこら辺は気長にやるさ。いざとなったら、僕が全身で支えればいいんだろ?」
シモンが頬を吊り上げながら冗談を言う。
シュウゴは肩を震わせて楽しそうに笑った。
「シモンのガタイじゃ、粉々になるんじゃないか?」
「失礼な」
そう言ってシモンも笑う。
すると、デュラが自分のことをアピールするように、ずいっと前に出た。
シュウゴは微笑みながら彼の肩をポンポンと叩く。
「そうだな、俺とデュラがいれば十分だろう。でも、レールにはとんでもない摩擦熱が発生するはずだから、その対策まで含めてやっと完成だと思った方がいい」
「う~ん、やっぱり難しいなぁ……これじゃぁ、いつになっても撃てないぞ。ダンタリオンがそれまで待ってくれればいいんだけどね」
シモンは表情を曇らせて言う。
シュウゴも眉を寄せてため息を吐いた。
「神のみぞ知る、か……」
「シュウゴも神殿の遺跡なんてサクッと攻略して、コイツの開発に専念してくれよ」
シモンは冗談のように軽いトーンで言うが、切実な願いであることは間違いない。
シュウゴは真剣な表情で頷いた。
「任せろ」
そして気を引き締め、素材収集へ向かうのだった。
その日、シュウゴが装備強化の素材集めのためにデュラと紹介所へ向かっていると、途中で鉄を打つ甲高い音が聞こえ足を止めた。
音の源へ目を向けると、紹介所の近くにある高台で、ハイパーレーザーカノンの設置作業が着々と進んでいるのが分かった。
シュウゴは高台の下まで歩いていくと、作業を見守っていたシモンに声をかける。
「どんな感じ?」
「おぉ、シュウゴか。設置だけならすぐにできそうだよ」
そう言ってシモンは微笑み、手に持っていた一枚の大きな紙を広げる。
シュウゴがそれを覗き込むと、そこに描かれていたのはレーザーカノンの据付図だった。
高台の上に電磁加速用レールと光線源を発射する銃身を設置し、電源となる大容量バッテリーは地上に置いて、アラクネの糸を皮製の被覆で覆ったケーブルで接続している。
あまりに完成された図面に、シュウゴは思わず感嘆の声を上げた。
「これは凄い完成度だな……」
「ファランさんが描いてくれたんだよ。上手いだろ?」
「ああ、さすがだ」
「でも、問題は完成した後だよ。コイツを動かすための雷をどうやって貯めるかってことと、発射時の反動で銃口が逸れる可能性が高いことだ」
シュウゴは唸る。
蓄電については、人を集めて雷魔法を使うことで、地道に貯めていくしかない。
それよりも問題は反動。実験の結果から、低くない確率で狙いを外す可能性があるという結果が得られたため、対策が必要なのだ。
「反動を抑えるのはやっぱり難しいか。完成した状態からまた実験して銃口を補正したり、固定用の治具を作ったりして改良していくしかなさそうだ」
「ま、そこら辺は気長にやるさ。いざとなったら、僕が全身で支えればいいんだろ?」
シモンが頬を吊り上げながら冗談を言う。
シュウゴは肩を震わせて楽しそうに笑った。
「シモンのガタイじゃ、粉々になるんじゃないか?」
「失礼な」
そう言ってシモンも笑う。
すると、デュラが自分のことをアピールするように、ずいっと前に出た。
シュウゴは微笑みながら彼の肩をポンポンと叩く。
「そうだな、俺とデュラがいれば十分だろう。でも、レールにはとんでもない摩擦熱が発生するはずだから、その対策まで含めてやっと完成だと思った方がいい」
「う~ん、やっぱり難しいなぁ……これじゃぁ、いつになっても撃てないぞ。ダンタリオンがそれまで待ってくれればいいんだけどね」
シモンは表情を曇らせて言う。
シュウゴも眉を寄せてため息を吐いた。
「神のみぞ知る、か……」
「シュウゴも神殿の遺跡なんてサクッと攻略して、コイツの開発に専念してくれよ」
シモンは冗談のように軽いトーンで言うが、切実な願いであることは間違いない。
シュウゴは真剣な表情で頷いた。
「任せろ」
そして気を引き締め、素材収集へ向かうのだった。
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