異世界投資家の逆襲 ~冤罪で国を追われた王子は、辺境の地で最強の投資家として成り上がる~

高美濃 四間

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エピローグ

生涯の投資家として

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 それからすぐに、エデンの現政権は解体された。

 キグスやスカールらは、権力の乱用により不正を働いていたことで投獄され、任期の満了を待たずして現政権は崩壊した。
 そしてすぐに新政権に生まれ変わることになる。

 誇りを取り戻したエデン国民たちによって、厳正に選ばれた政治家たち。
 宰相には意外にも、前政権にもいたリオン大臣が就任した。
 キグスらが不正を働いていた中、彼の無実は騎士団の厳密な調査の末、明らかになったそうだ。
 演説では、王子ランダーの遺言に胸を打たれ、前政権の暴走を止めることのできなかった自分に、やり直す機会を与えてほしいと訴えていた。

 それがどうやら国民の心を掴んだらしい。
 本心はどうか分からないが、心配はいらないだろう。
 新たな大臣には、ホロウ商会を引退してアウルに引き継いだ、リュウエンもいるのだから。
 また、新たな王には、プリステン家の遠い親戚にあたる一族が名乗り出た。

「――アリサ、本当に良かったの?」

 ランダーは今、アリサと二人でエデンの郊外にある草原の木陰に座り、のんびりしていた。
 もう間もなく国外行きの馬車が出る。それまでの暇つぶしだ。

「もちろんです。私はランダー様の護衛なんですからね」

「そうは言っても、エデンにいる家族はどうする」

「大丈夫です。今度は長い旅になると伝えて来ましたから。それに弟たちも、もう姉離れする頃ですからね」

 そう言ってアリサは目を細め、柔らかく微笑む。
 ランダーは「そっか……」と安堵したように呟き、果てしなく緑の広がる草原へ目を向けた。
 この激動の一年弱がまるで嘘のような心地よさを感じる。
 優しい風が吹き、アリサは流れる深紅の髪を手で押さえながら、ランダーを横目に見た。

「ランダー様はよろしいのですか?」

「ん?」

「あなたは正式な王位継承者なのですから、レイス様の後を継ぐこともできたはずです」

「いいんだよ。ランダー・プリステンはもう死んだんだ。死人が出てきたりしたら、エデンがまた混乱してしまう」

 ランダーは寂しそうに目線を下げる。
 アリサは「そうですね」と頷き、話題を変えようと努めて明るい声で問いかけた。

「そういえば、これからはなんとお呼びすれば良いのでしょうか?」

「う~ん、そうだなぁ……」

 ランダーは難しい顔で「う~ん」と唸る。
 もちろんもう本名は使えず、ノベル・ゴルドーも魔人たちから目をつけられているため使えない。

「そうだ、ノベルスなんてどう? なんのひねりもないけど。ノベルス……えっと……」

 ノベルスの後が続かない。
 そのとき、アリサがハッとなにかをひらめいたかのように、顔を上げた。

「でっ、では、ノベルス・サラマンレッドなんてどうでしょう?」

 アリサは目を輝かせ、ランダーに詰め寄って来る。

「おぉ、かっこいいね。それにしよう……あれ? でもサラマンレッドって……」

「えへへぇ~」

 アリサの家名もサラマンレッド。
 彼女は赤くなった頬に手を当て、幸せそうにはにかんでいた。
 ランダーはアリサの意図に気付いたというのに、ポンと手を叩く。

「なるほど! 兄弟だったら、二人でいても自然だもんね」

「え、えぇっ!?」

 しかしランダーの予想は外れていたようで、アリサはショックを受けたようにガックリと肩を落とした。
 ランダーは彼女の反応に首を傾げるが、そろそろ時間だと悟り立ち上がる。
 アリサも名残惜しそうにため息を吐きそれに続いた。

「それじゃあ行こうか」

「はい、ノベルス様」

 兄弟という設定なら様付けはおかしい気がするが、この際ランダーはなにも言わないことにした。
 そして二人は、新たな投資先を探しエデンを立つのだった。
 生涯の投資家と、その護衛として――
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みんなの感想(1件)

Zetta16
2023.08.03 Zetta16

最後、制止を振りきって、ですね。
応援しています。

解除

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