サクリファイスリベリオン ~冤罪で追いつめられた元凄腕ハンターは、ギルドの陰謀を暴き人脈を駆使して復讐する~

高美濃 四間

文字の大きさ
22 / 66
第三章 外資

交渉の行方

しおりを挟む
 ウィルムは眉をしかめるが、なにも言わず次の言葉を待つ。

「無謀以外に言葉が見つかりませんね。孤立無援のその状態でどうやって市場の支配者と戦うつもりですか? 領民の人気を得られる画期的な商品でも開発したのですか?」

「それは……」

「私は慈善事業を行っているのではありません。投資家なんです。分が悪い商売は投資ではなくギャンブルだ。今のあなたに協力することはできません」

 シーカーの言うことはもっともで、予想もしていた。
 だがウィルムは諦めない。
 「分が悪い」と言うのなら、リスクに対するリターンを大きくするまで。
 たとえ賭けであっても、勝ったときの利益に価値を持たせるのだ。

「ドラチナス市場への先行投資権が得られるとしてもですか?」

「ほぅ、どうやって?」

「ギルドを解体して、ドラチナスの市場を開放します」

 それがウィルムに提案できる最大の一手だ。
 ギルドが独占している市場に参入できるのなら、条件としては悪くないはず。
 なぜなら、ギルドが解体されることで、他州や他国から商人が集まりやすくなり、自由な商売によって市場は再び活発化するからだ。
 シーカーが黙り込み考え始めたところでたたみかける。

「今のドラチナスで商売をするには、ギルドの加入とドラチナス金庫からの出資が暗黙の了解となっています。つまり、他国の資本家がいくらドラチナスの店や商会に興味を持って投資しようとしても、ドラチナス金庫が先に出資してオーナーとなっているため、よそからの新たな出資を認めないんです。だからもし、投資家がそこへ入り込めれば、ギルドが得ていた大きな儲けを奪いとることができるでしょう」

「なるほど、一理ある。ですが、あらかじめ外資系の商会がドラチナスへ入ればどうなるんです? 既に出資者オーナーがいるのですから、ギルドに加入してもドラチナス金庫は介入できないでしょう」

「いいえ。ドラチナスで商売をするなら、ギルドにとって都合の悪い商会は仕事を融通してもらえません。ドラチナス金庫の不利益になるような輩は、ギルドにとっても邪魔でしかない。だからどんな大きな商会でも、市場への参入が難しいんです」

「へぇ、そういう仕組みだったのか。でしたら、ドラチナス市場の開放は僕たち外資にとって、魅力的な話ですね。しかし矛盾していませんか?」

「どういうことですか?」

「今のドラチナスで商売をする者には、よそからの出資は受けられない。それはつまり、ウィルムさんにも当てはまることでしょう? 私があなたに出資しても、ドラチナスへ戻れば私との契約の破棄を求められるのでは?」

 シーカーは口調こそ穏やかだが、鋭い眼差しを向けてくる。
 まったくもって隙がない。
 ウィルムは彼から感じる圧を痛いほど感じながらも、真っ向から対峙する。

「ご心配には及びません。外資が参入できないのは、あくまでドラチナス金庫がオーナーになっているからです。つまり、なんらかの事情で出資を打ち切られた者には、当てはまらない」

「まさか……」

「そうです。今のクルセイド鉱石商にオーナーはいません。それどころか、ドラチナス金庫自ら貸し剥がしをしてきたんです」

 ウィルムの声に熱が宿る。
 思い出しただけで怒りが込み上げ、拳を握りしめる。
 しかし、今のこの状況こそが唯一の好機なのだ。
 普通は、ドラチナス金庫に出資を打ち切られるなど、破産寸前か倫理に反して騎士団に目をつけられるぐらいしかありえない。
 そうなると、いくら出資できるチャンスだろうと、ギルドから見捨てられた商人には投資家も手は出さない。

「そういうことですか……ふふふっ、中々面白いことを考えるお人だ。エルダさんが惹かれるのも分かる気がする」

「え?」

「いいえ、なんでもないです。ではそろそろ教えて頂けませんか? あなたがそこまでギルドにこだわる理由を。ギルドはなにを隠しているんです?」

 ウィルムはすぐには答えられなかった。
 ギルドの暗部に踏み込み過ぎている上に、そもそも信じてもらえるかも分からない。
 ただ、シーカーの目は先ほどまでと違い、まるで少年のように輝いて見えた。
 なにか面白いことを求めているようだ。
 ならばその期待に応えようと、ウィルムは意を決して語った。ギルドの隠している真実を。彼らの繁栄の真相を。

「――んなっ……」

 最後まで聞き終えたシーカーは、目を見開いて絶句する。
 しかし信じていないわけではないようだ。
 そして腹を抱え笑いを必死にこらえようとしていた。

「……ふふっ、思った以上に面白そうな案件ですね。ギルドのやり方も大変勉強になりました。それに、ウィルムさんには勝機がないと思っていましたが、そうでもないようだ」

「シーカーさん、どうか僕に力を貸してください」

「もう少し慎重な判断が必要ですが……まあ、いいでしょう」

「え? ほ、本当ですか!?」

「ええ、本来ならあり得ないことですが、エルダさんの頼みもありますし、なによりあなたのその目は信用できそうだ。それに、竜人というのは高いポテンシャルを秘めていますからね」

「シーカーさん、本当にありがとうございます!」

「ただし、条件があります」

「はい」

「もし私の出資をもってしても資金繰りが悪化し、回収の見込みが低いと判断した場合は、あなた自身を売ってもらいます」

 凍てつくような低い声で言ったシーカーは、冷徹なまでに無表情だった。
 ウィルムは息を呑む。
 竜人の鱗や脊髄などは、闇市場で高く売れる。
 それを想像すると、背筋に悪寒が走った。
 しかし、シーカーの恐ろしさを目の当たりにしたウィルムだったが、決意に満ちた瞳は揺らぐことなく堂々と答えた。

「構いません」

 すると、シーカーは張り詰めていた空気を霧散させ微笑む。
 
「交渉成立です。これであなたと私は商売仲間、一蓮托生です」

 二人はかたく手を握り合い、ドラチナスの闇と戦うことを決めたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...