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最終章 激動の最終決戦
濃厚な敗色
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「えぇいっ、ペテンめ! 皆、騙されるな! どうせこの者は、自分がひいきにしている領外の商会を送り込み、己の私腹を肥やそうとしているだけだ。税率の引き下げなど、領民から支持を得るための綺麗ごとにすぎない!」
ルークははらわたが煮えくり返る思いだった。
どの口が言うのかと。
すべてカドルに当てはまることではないか。
己の私利私欲のためにギルドと手を組み、政治を思い通りに操ろうとしている。これをペテンと言わずなんと言うのか。
しかしルークは、そんな見え透いた挑発には乗らず、あくまで冷静に反論する。
「綺麗ごとなどで済ませるつもりはありません」
「ほぅ? では証明してみせようか?」
「はい? どういう意味ですか?」
ルークは違和感を覚えた。
カドルの浮かべている不敵な笑みは、決して強がりには見えない。絶対の有利を確信しているものだ。
しかし、この状況でいったいなにができるのか。
ルークが思考を巡らせていると、カドルは壁際に立つ自分の護衛騎士に目配せした。
頷いた騎士は、大会議室の入口へ歩いていき扉を開け放つ。
するとそこには、二人の騎士とそれに押さえ付けられたボロボロの騎士の姿があった。その騎士はぐったりとこうべを垂れて両肩を掴まれており、ボサボサな髪に赤く腫れあがった頬を見ても、酷い暴行にあったことは疑いようもない。
屈強な騎士たちは、罪人のように押さえ付けられた騎士を無理やり歩かせ、部屋に入ったところでひざまづかせる。
驚愕に目を見開き固まったルークへ、カドルは勝ち誇ったような薄い笑みを浮かべた。
「この者は、そなたの護衛で間違いないな?」
「……なぜ」
ルークは蚊の鳴くような声で唖然と呟いた。
今、彼らの目の前で罪人のようにこうべを垂れている騎士は、昨日ウィルムの元へ送った護衛だったのだ。
彼は傷だらけの顔をわずかに上げ、申し訳なさそうに告げる。
「……ルーク様、申し訳ございません」
「カ、カドル殿っ! これはいったいどういうことですか!? なぜあなたが私の大切な部下を捕らえているのです!? すぐに解放してください!」
彼の謝罪の言葉を聞いた途端、ルークの冷静さは失われ感情的になってしまう。
カドルは部下たちに「離してやれ」と告げ、ルークの護衛は解放された。しかし彼は、悔しそうに唇を噛んで俯いたまま立ち上がらない。
カドルは悪びれた様子もなく、ルークを見据えて言い放つ。
「これは失礼。彼がある鉱石商の家に入ったところを部下が目撃したようでね。怪しいと思い、証人としてここに連れて来た」
「証人?」
「ルーク補佐官、そなたは鉱石商ウィルム・クルセイドと繋がっているな?」
そのとき、文官たちの間で波紋が広がる。
その表情は様々。
ウィルム・クルセイド、彼は先日のアビス襲撃の件で見事それを撃退した英雄でもあり、以前に詐欺容疑をかけられた鉱石商でもある。
顔を見合わせる文官たちの中には、嫌悪感も示す者もいれば、だからなんだと平然としている者もいる。
ルークは、なにもやましいことなどないと言うように、カドルから目を逸らさず堂々と答えた。
「鉱石商のウィルムとは、親しくさせてもらっています。それがなにか?」
「どうも怪しいな」
「なにがです?」
苛立ちを孕んだルークの視線を受け流し、カドルはグレイヴへ目を向ける。
グレイヴは一歩前に出て問いに答えた。
「ウィルム・クルセイドは、この町に現れた新種アビスを討伐しました。それどころか、その弱点が火であることをあばき、大量のフレアダイト鉱石を売り払って、火属性の武器を急速に広めたのです」
「その通り、言わばドラチナスの救世主でしょう。なにが怪しいと言うのですか?」
「ではなぜ、彼はそんな絶妙なタイミングでフレアダイト鉱石を仕入れることができたのでしょうか? なぜ、出現して数日しか経っていなかったのに、誰も知らない新種の弱点を鉱石商の彼が知り得たのでしょうか?」
「それは……」
ルークは言葉に詰まる。
正直に答えたところで、事情を知らない文官たちがどう思うか分からないのだ。
ルークは忌々しげに頬を歪ませる。彼らに最大の勝機を潰されてしまったと悟った。
カドルはそんなルークの様子を見て冷笑し、さらに追いつめようとする。
「怪しすぎるな。そして、そんな鉱石商と繋がっているルーク補佐官、そなたも怪しい。もしや、先ほどの詭弁の正当性を高めるために、そなたが仕組んだことではないのか?」
「バカな! 私が新種の出現を意図的に画策したとでも言うつもりですか!?」
「ふんっ、そのほうが納得できるというもの。そうなると、領主様を暗殺したのもそなたである可能性が浮上してくるな」
「ふざけないで頂きたい! そこまでの侮辱、到底許せるものではありません!」
怒鳴るルーク。
しかし状況はいつの間にか彼の圧倒的不利になっていた。
ギルド側を糾弾するはずが、なぜかルークがその黒幕に仕立てられそうになっている。
「くっ……」
ルークとてカドルとギルドとの繋がり、そして裏での暗躍とアビス開発の真実をあばきたいが、上手くはいきそうになかった。
重要な証人がここにいない今、言葉だけを並べたところで負け惜しみにしか聞こえない。
だが、このまま領主選の採決に入っては、間違いなくルークが負ける。
ルークははらわたが煮えくり返る思いだった。
どの口が言うのかと。
すべてカドルに当てはまることではないか。
己の私利私欲のためにギルドと手を組み、政治を思い通りに操ろうとしている。これをペテンと言わずなんと言うのか。
しかしルークは、そんな見え透いた挑発には乗らず、あくまで冷静に反論する。
「綺麗ごとなどで済ませるつもりはありません」
「ほぅ? では証明してみせようか?」
「はい? どういう意味ですか?」
ルークは違和感を覚えた。
カドルの浮かべている不敵な笑みは、決して強がりには見えない。絶対の有利を確信しているものだ。
しかし、この状況でいったいなにができるのか。
ルークが思考を巡らせていると、カドルは壁際に立つ自分の護衛騎士に目配せした。
頷いた騎士は、大会議室の入口へ歩いていき扉を開け放つ。
するとそこには、二人の騎士とそれに押さえ付けられたボロボロの騎士の姿があった。その騎士はぐったりとこうべを垂れて両肩を掴まれており、ボサボサな髪に赤く腫れあがった頬を見ても、酷い暴行にあったことは疑いようもない。
屈強な騎士たちは、罪人のように押さえ付けられた騎士を無理やり歩かせ、部屋に入ったところでひざまづかせる。
驚愕に目を見開き固まったルークへ、カドルは勝ち誇ったような薄い笑みを浮かべた。
「この者は、そなたの護衛で間違いないな?」
「……なぜ」
ルークは蚊の鳴くような声で唖然と呟いた。
今、彼らの目の前で罪人のようにこうべを垂れている騎士は、昨日ウィルムの元へ送った護衛だったのだ。
彼は傷だらけの顔をわずかに上げ、申し訳なさそうに告げる。
「……ルーク様、申し訳ございません」
「カ、カドル殿っ! これはいったいどういうことですか!? なぜあなたが私の大切な部下を捕らえているのです!? すぐに解放してください!」
彼の謝罪の言葉を聞いた途端、ルークの冷静さは失われ感情的になってしまう。
カドルは部下たちに「離してやれ」と告げ、ルークの護衛は解放された。しかし彼は、悔しそうに唇を噛んで俯いたまま立ち上がらない。
カドルは悪びれた様子もなく、ルークを見据えて言い放つ。
「これは失礼。彼がある鉱石商の家に入ったところを部下が目撃したようでね。怪しいと思い、証人としてここに連れて来た」
「証人?」
「ルーク補佐官、そなたは鉱石商ウィルム・クルセイドと繋がっているな?」
そのとき、文官たちの間で波紋が広がる。
その表情は様々。
ウィルム・クルセイド、彼は先日のアビス襲撃の件で見事それを撃退した英雄でもあり、以前に詐欺容疑をかけられた鉱石商でもある。
顔を見合わせる文官たちの中には、嫌悪感も示す者もいれば、だからなんだと平然としている者もいる。
ルークは、なにもやましいことなどないと言うように、カドルから目を逸らさず堂々と答えた。
「鉱石商のウィルムとは、親しくさせてもらっています。それがなにか?」
「どうも怪しいな」
「なにがです?」
苛立ちを孕んだルークの視線を受け流し、カドルはグレイヴへ目を向ける。
グレイヴは一歩前に出て問いに答えた。
「ウィルム・クルセイドは、この町に現れた新種アビスを討伐しました。それどころか、その弱点が火であることをあばき、大量のフレアダイト鉱石を売り払って、火属性の武器を急速に広めたのです」
「その通り、言わばドラチナスの救世主でしょう。なにが怪しいと言うのですか?」
「ではなぜ、彼はそんな絶妙なタイミングでフレアダイト鉱石を仕入れることができたのでしょうか? なぜ、出現して数日しか経っていなかったのに、誰も知らない新種の弱点を鉱石商の彼が知り得たのでしょうか?」
「それは……」
ルークは言葉に詰まる。
正直に答えたところで、事情を知らない文官たちがどう思うか分からないのだ。
ルークは忌々しげに頬を歪ませる。彼らに最大の勝機を潰されてしまったと悟った。
カドルはそんなルークの様子を見て冷笑し、さらに追いつめようとする。
「怪しすぎるな。そして、そんな鉱石商と繋がっているルーク補佐官、そなたも怪しい。もしや、先ほどの詭弁の正当性を高めるために、そなたが仕組んだことではないのか?」
「バカな! 私が新種の出現を意図的に画策したとでも言うつもりですか!?」
「ふんっ、そのほうが納得できるというもの。そうなると、領主様を暗殺したのもそなたである可能性が浮上してくるな」
「ふざけないで頂きたい! そこまでの侮辱、到底許せるものではありません!」
怒鳴るルーク。
しかし状況はいつの間にか彼の圧倒的不利になっていた。
ギルド側を糾弾するはずが、なぜかルークがその黒幕に仕立てられそうになっている。
「くっ……」
ルークとてカドルとギルドとの繋がり、そして裏での暗躍とアビス開発の真実をあばきたいが、上手くはいきそうになかった。
重要な証人がここにいない今、言葉だけを並べたところで負け惜しみにしか聞こえない。
だが、このまま領主選の採決に入っては、間違いなくルークが負ける。
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