58 / 66
最終章 激動の最終決戦
最後の乱入者
しおりを挟む
ルークがカエデに目配せすると、彼女は頷き真実を語り始めた。
「鉱石商ウィルム・クルセイドに、新種アビスの弱点を伝えたのは私です」
「っ!」
カドルが目を見開き眉をひくつかせる。
彼もようやく事態を把握したようだ。
だが邪魔をする隙を与えまいと、すぐにルークが問いを投げる。
「なぜ君は新種の弱点を知っていたんだ?」
「それは……新種を生み出したのが、薬屋フローラだからです」
「な、なんだって!?」
「そ、そんなバカなことが……」
「待てっ、そんな言葉を信じるのか!?」
カエデの証言に会議室が騒然となる。
もちろんそれだけで信じろと言うのは無理があるが、間違いなく文官たちの心は揺れていた。
大きな波紋が広がり、カドルやグレイヴもなんと言って静めるか思案する中、カエデは声を大にして続けた。
「フローラはずっと、新種を生み出す研究をしてきました。その試行錯誤の末に生まれたのが、アビスなのです」
一人の文官が信じられないとばかりに、立ち上がり机に身を乗り出してカエデへ質問を浴びせる。
「アビスを人工的に生み出しただと? そんなことが可能なのか!?」
「はい。アビスの元となる素体さえあれば、ですが」
「素体?」
「アビスの素体として利用されているのは、生きた『竜人族』です。つまり、これまでの竜人失踪はすべてフローラ……いえ、ギルドの指示によるものでした。すべてはアビスを生み出すためです」
「そんなバカなこと……なぜギルドがっ!? なぜ、アビスを生み出す必要がある!?」
到底信じられないと険しい表情で問う文官に、ルークが答える。
「それは私が先ほど言ったことです。ドラチナスを発展させるためですよ」
「なんと……」
その文官は、カドルに強く味方している立場だが、矢継ぎ早に問い質すことで、それがかえってギルドの悪事を暴くことになっている。
「で、でたらめだっ!」
慌てたグレイヴが大声で叫び話を遮る。太い金の眉が吊り上がり顔を憤怒で真っ赤に染めている。
並大抵の者であればその迫力に怯むのだろうが、ルークの攻勢は揺らがない。
「グレイヴ殿、彼女は正真正銘フローラの薬師ですよ。そんな彼女が言っているのだから間違いありません。彼女が身分を偽っていると疑うのであれば、町の人々に聞いてみれば分かることです」
「くっ……あなたがそこの薬師と手を組んで、一芝居打っている可能性もあるでしょう!?」
「ありえないことです。そもそも私と彼女は面識がありません」
睨み合うルークとグレイヴ。
もはや乱戦。
文官たちはざわめき様々な疑問をぶつけ合い、幹事もおろおろするばかりで、もはや領主選の体裁を保っていない。
そんな中、とうとうカドルが怒りの声を上げる。
「もういい! ギルドの話は領主選には関係ない。後でじっくり聞いてやるから、今は出て行け!」
カドルは背後の騎士へ目配せし、カエデを無理やり連れださせようとする。
それに対し、ルークも彼女を連れて来た護衛に目で指示する。
カエデに近づこうとした騎士の前に騎士が立ちはだかり、二人は静止。ルークとカドルの意思は拮抗した。
すると、今度はグレイヴがずかずかと肩を怒らせながら歩き出した。
その目的は当然カエデ。
「グレイヴ殿!?」
「安心されるがいい。俺も一緒に出て行きますから」
「やめろぉっ!」
額に冷汗を浮かべ、慌てて呼び止めるルーク。
だが、グレイヴを止めるために動かせる部下はもうこの場にいない。
この度こそ万事休すに思われた。
それでもカエデは、迫るグレイヴの覇気に怯まず気丈に睨み返していた。
カドルが愉快そうに頬を吊り上げ呟く。
「これで悪あがきも終わりだ」
まるで野獣のような大きく太いグレイヴの手が、カエデへ迫る。
グレイヴは歪んだ笑みを浮かべ、カエデは後ずさる。
これで今度こそ、ルークの敗北が決するかに思われた。
そのとき――
――バタンッ!
大きな音を立て、会議室の入口扉が開いた。
同時に疾風が舞い、高潔なる闘気が雷の如く駆け抜ける。
「――んなっ!」
驚愕に目を見開き硬直するグレイヴ。
その手首は、最後の乱入者によって掴まれていた――
「鉱石商ウィルム・クルセイドに、新種アビスの弱点を伝えたのは私です」
「っ!」
カドルが目を見開き眉をひくつかせる。
彼もようやく事態を把握したようだ。
だが邪魔をする隙を与えまいと、すぐにルークが問いを投げる。
「なぜ君は新種の弱点を知っていたんだ?」
「それは……新種を生み出したのが、薬屋フローラだからです」
「な、なんだって!?」
「そ、そんなバカなことが……」
「待てっ、そんな言葉を信じるのか!?」
カエデの証言に会議室が騒然となる。
もちろんそれだけで信じろと言うのは無理があるが、間違いなく文官たちの心は揺れていた。
大きな波紋が広がり、カドルやグレイヴもなんと言って静めるか思案する中、カエデは声を大にして続けた。
「フローラはずっと、新種を生み出す研究をしてきました。その試行錯誤の末に生まれたのが、アビスなのです」
一人の文官が信じられないとばかりに、立ち上がり机に身を乗り出してカエデへ質問を浴びせる。
「アビスを人工的に生み出しただと? そんなことが可能なのか!?」
「はい。アビスの元となる素体さえあれば、ですが」
「素体?」
「アビスの素体として利用されているのは、生きた『竜人族』です。つまり、これまでの竜人失踪はすべてフローラ……いえ、ギルドの指示によるものでした。すべてはアビスを生み出すためです」
「そんなバカなこと……なぜギルドがっ!? なぜ、アビスを生み出す必要がある!?」
到底信じられないと険しい表情で問う文官に、ルークが答える。
「それは私が先ほど言ったことです。ドラチナスを発展させるためですよ」
「なんと……」
その文官は、カドルに強く味方している立場だが、矢継ぎ早に問い質すことで、それがかえってギルドの悪事を暴くことになっている。
「で、でたらめだっ!」
慌てたグレイヴが大声で叫び話を遮る。太い金の眉が吊り上がり顔を憤怒で真っ赤に染めている。
並大抵の者であればその迫力に怯むのだろうが、ルークの攻勢は揺らがない。
「グレイヴ殿、彼女は正真正銘フローラの薬師ですよ。そんな彼女が言っているのだから間違いありません。彼女が身分を偽っていると疑うのであれば、町の人々に聞いてみれば分かることです」
「くっ……あなたがそこの薬師と手を組んで、一芝居打っている可能性もあるでしょう!?」
「ありえないことです。そもそも私と彼女は面識がありません」
睨み合うルークとグレイヴ。
もはや乱戦。
文官たちはざわめき様々な疑問をぶつけ合い、幹事もおろおろするばかりで、もはや領主選の体裁を保っていない。
そんな中、とうとうカドルが怒りの声を上げる。
「もういい! ギルドの話は領主選には関係ない。後でじっくり聞いてやるから、今は出て行け!」
カドルは背後の騎士へ目配せし、カエデを無理やり連れださせようとする。
それに対し、ルークも彼女を連れて来た護衛に目で指示する。
カエデに近づこうとした騎士の前に騎士が立ちはだかり、二人は静止。ルークとカドルの意思は拮抗した。
すると、今度はグレイヴがずかずかと肩を怒らせながら歩き出した。
その目的は当然カエデ。
「グレイヴ殿!?」
「安心されるがいい。俺も一緒に出て行きますから」
「やめろぉっ!」
額に冷汗を浮かべ、慌てて呼び止めるルーク。
だが、グレイヴを止めるために動かせる部下はもうこの場にいない。
この度こそ万事休すに思われた。
それでもカエデは、迫るグレイヴの覇気に怯まず気丈に睨み返していた。
カドルが愉快そうに頬を吊り上げ呟く。
「これで悪あがきも終わりだ」
まるで野獣のような大きく太いグレイヴの手が、カエデへ迫る。
グレイヴは歪んだ笑みを浮かべ、カエデは後ずさる。
これで今度こそ、ルークの敗北が決するかに思われた。
そのとき――
――バタンッ!
大きな音を立て、会議室の入口扉が開いた。
同時に疾風が舞い、高潔なる闘気が雷の如く駆け抜ける。
「――んなっ!」
驚愕に目を見開き硬直するグレイヴ。
その手首は、最後の乱入者によって掴まれていた――
0
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を
タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。
だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。
雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。
血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、
“最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる