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80話 黒狼
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「よいか。この作戦が失敗した場合、我らの負けだ。絶対に気を抜くでないぞ」
カロスは真剣な眼差しで言い放つ。
木々が薙ぎ倒される音が響き渡っているが、今この場にいる者の意識はまだそちらに向くことはない。
ただ今は、作戦を頭に叩き込むのみ。
「では行け!」
カロスの合図と共にヴァミア、ミルマ、ベルゼルフが岩の影から飛び出して行く。
木々を薙ぎ倒し、怒り狂う者に向かって。
作戦はこうだ。
まず、ベルゼルフがグラファの背後に回り込んで動きを止める。
ほんの一瞬しか時間は稼げないが、その間でヴァミアとミルマ、それにベルゼルフで攻撃を叩き込む。
ベルゼルフは相手の動きを止めてばかりで支援系に見えるが、あれでも五大魔獣の一角。
繰り出される攻撃の威力は桁違いなのだ。
グラファは今冷静さを完全に失っている。
一撃の攻撃が強くなっているとしても、冷静さを失っている以上隙が多くなるはず。
その隙上手く狙うしかない。
そして地道に攻撃を仕掛けている間に、カロスはある一撃を放つための準備をし、弱って来たところをその一撃で叩く。
これがカロスの伝えた作戦だ。
騙してすまぬな。
我の本当の作戦を伝えれば多分お前達は……
「何故私はここに残されているのでしょうか? 私は今すぐ戦いたいのですが」
「すまない。だが、これはお前にしか頼めないのだ」
「私に?」
「そうだ。それで頼みたいことなのだが――」
一瞬強い風が吹く。
まるで何かを退けるように。
激しい戦闘を行う人間を、邪魔だと言うように。
「良いのですか?」
「勿論だ。これをしなければ我らは勝てない。それにリウス様も喜び下さるだろう」
「しかし、悲しみなさるとも思いますよ」
カロスは空を見上げる。
嗚呼、この綺麗な空の下で居眠りをしたい。
この綺麗な空の下で走り回りたい。
今日の空はあの日、我が今は亡き魔獣の王に拾われた日に似ている。
今日こそが、今こそが我の全てを使う時なのだと。
「……我はもう嫌なのだ。我のせいで大切な仲間が死ぬのは」
ゼーラの顔からは、いつもの余裕そうな顔が消えていた。
「……分かりました。ならば私にお任せを」
「頼んだぞ」
リウス様。
弱気我を、こんな氷結の白狼をお許しください。
我のせいで、ファイは死んだ。
いい奴とは思わなかったが、楽しいやつではあった。
フェイのことを聞いた時、我は寂しさを感じてしまった。
まさか我が寂しさを感じるなど、自分自身信じられなかったのだが。
フェイの帰りを待つ者は沢山いる。
リウス様の帰りを待つ者も沢山いる。
ヴァミアも、ミルマも、ベルゼルフもゼーラも。
皆に帰りを待ってもらっている。
ならば我が帰るべきものを、帰りを待たれているべき者を返さなければならない。
もう二度と、我と同じような思いをする者が現れないように。
昔守れなかったものは、今度こそは必ず守ってみせる。
「生命の鐘」
カロスの口からそう発せられた直後、どこからか鐘の音が鳴り響き渡った。
グラファと死闘を繰り広げるヴァミア達も、気を失いかけているリウスにも、覇獣士にも、仲間同士で争っている兵士達にも鳴り響く。
「お別れだ」
カロスの体毛は瞬く間に黒く変色し、目は赤く光っていったと思えば体の大きさが増大していった。
今この場に氷結の白狼などもういない。
代わりにいるのは……
悪魔の黒狼。
カロスは真剣な眼差しで言い放つ。
木々が薙ぎ倒される音が響き渡っているが、今この場にいる者の意識はまだそちらに向くことはない。
ただ今は、作戦を頭に叩き込むのみ。
「では行け!」
カロスの合図と共にヴァミア、ミルマ、ベルゼルフが岩の影から飛び出して行く。
木々を薙ぎ倒し、怒り狂う者に向かって。
作戦はこうだ。
まず、ベルゼルフがグラファの背後に回り込んで動きを止める。
ほんの一瞬しか時間は稼げないが、その間でヴァミアとミルマ、それにベルゼルフで攻撃を叩き込む。
ベルゼルフは相手の動きを止めてばかりで支援系に見えるが、あれでも五大魔獣の一角。
繰り出される攻撃の威力は桁違いなのだ。
グラファは今冷静さを完全に失っている。
一撃の攻撃が強くなっているとしても、冷静さを失っている以上隙が多くなるはず。
その隙上手く狙うしかない。
そして地道に攻撃を仕掛けている間に、カロスはある一撃を放つための準備をし、弱って来たところをその一撃で叩く。
これがカロスの伝えた作戦だ。
騙してすまぬな。
我の本当の作戦を伝えれば多分お前達は……
「何故私はここに残されているのでしょうか? 私は今すぐ戦いたいのですが」
「すまない。だが、これはお前にしか頼めないのだ」
「私に?」
「そうだ。それで頼みたいことなのだが――」
一瞬強い風が吹く。
まるで何かを退けるように。
激しい戦闘を行う人間を、邪魔だと言うように。
「良いのですか?」
「勿論だ。これをしなければ我らは勝てない。それにリウス様も喜び下さるだろう」
「しかし、悲しみなさるとも思いますよ」
カロスは空を見上げる。
嗚呼、この綺麗な空の下で居眠りをしたい。
この綺麗な空の下で走り回りたい。
今日の空はあの日、我が今は亡き魔獣の王に拾われた日に似ている。
今日こそが、今こそが我の全てを使う時なのだと。
「……我はもう嫌なのだ。我のせいで大切な仲間が死ぬのは」
ゼーラの顔からは、いつもの余裕そうな顔が消えていた。
「……分かりました。ならば私にお任せを」
「頼んだぞ」
リウス様。
弱気我を、こんな氷結の白狼をお許しください。
我のせいで、ファイは死んだ。
いい奴とは思わなかったが、楽しいやつではあった。
フェイのことを聞いた時、我は寂しさを感じてしまった。
まさか我が寂しさを感じるなど、自分自身信じられなかったのだが。
フェイの帰りを待つ者は沢山いる。
リウス様の帰りを待つ者も沢山いる。
ヴァミアも、ミルマも、ベルゼルフもゼーラも。
皆に帰りを待ってもらっている。
ならば我が帰るべきものを、帰りを待たれているべき者を返さなければならない。
もう二度と、我と同じような思いをする者が現れないように。
昔守れなかったものは、今度こそは必ず守ってみせる。
「生命の鐘」
カロスの口からそう発せられた直後、どこからか鐘の音が鳴り響き渡った。
グラファと死闘を繰り広げるヴァミア達も、気を失いかけているリウスにも、覇獣士にも、仲間同士で争っている兵士達にも鳴り響く。
「お別れだ」
カロスの体毛は瞬く間に黒く変色し、目は赤く光っていったと思えば体の大きさが増大していった。
今この場に氷結の白狼などもういない。
代わりにいるのは……
悪魔の黒狼。
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