10 / 37
第十章
「怒り」のアーカイブは地獄にある!
しおりを挟む
俺の人生は何かに翻弄されている。
何かだ。見えない何かだ。
運命、それを司る神、消え去った過去、待ち受けてる未来、死…
いつもいつも、後一歩で欲しいものを掴み損ねる。
プロセスは輝きに満ちたていても、結果は、暗闇に埋没し、見る気もなくなる。
ここで間違ってくれるな!
俺は決して、不幸を望んだ生き方は欲していなかったことを!
今は違うが…
良い大学に入り、好きなあの娘と結婚して、子供に恵まれ普通の家庭、仕事も頑張り、それなりの評価を得、普通夢見る生き方を望んでいたんだ!
しかし、見えない何かにいつも邪魔される。
30代のリストラ業務も同じだ。
俺はその仕事に邁進したが、狡い奴は、調子良く、俺にリスクだけを押し付け出した。
あの「怒り」が蘇って行ったよ!俺の心が焚き付ける、あの「怒り」が!
俺は幹部養成研修で表彰を受けて、九州支社の人事部に抜擢された。
主な仕事は人員整理だ。バブル崩壊後の会社の経営赤字は尋常ではない数字が表出されていた。
ここから5年間、九州支社の社員にとって地獄のリストラ計画が遂行されることになる。
その折衝担当が俺だ!
研修明けの35歳の若造である俺が主たる担当だ!
社員の人生を左右するリストラ勧告を俺が宣告して行くのだ。
俺の仕事は、リストラ勧告だけではなかった。
九州支社の子会社の吸収合併を津波のように問答無用に推し進めて行かなければならなかった。
更にだ!
人員整理された各県の支社の要望、吸収合併された子会社の要望、リストラ勧告された社員の最後の要望をひたすら聞かなければならなかった。
当然、そんな要望などまかり通ることはない。訴訟回避の形だけのパフォーマンスだ。
この折衝会議では、いつも怒号が飛び合った。
「いままでの会社に対する貢献を無視するつもりか!」
「社員の労働条件をこれ以上悪化させると、メンタルが蔓延するぞ!」
「俺たちに死ねと言うのか!」
「お前らだけ、美味しい汁を吸うのか!」
「お前は死神だ!」
こんな感じた…
俺は自身の感情を殺し、会社の作成したマニュアル答弁を繰り返した。正に壊れたレコードのように。
「やむを得ない措置です。」
「ご理解願います。会社全体の存続の為の措置なのです。」
「ご要望は承っておきます。お約束は致しかねませんが…」
こんな具合に来る日も来る日も、各県を周り、折衝を行い、小会議を行い、折り合いを付け、最終的に九州支社での機関会議で決着を付ける。
5年間、この流れに沿って、俺は仕事のみで生きた。
家族?
子供の顔は寝姿しか見たことはなかったよ。
パニック障害は?
悪化するに決まっているだろ!
言いたいことも言えず、ただただ、壊れたレコードのように、鉄仮面を被り、リストラ等を宣告するんだぜ!
ストレスはマグマのように噴き上がり、それを噴出することはできないため、俺の心のアーカイブ室に蓄積されて行ったよ。
この頃から、また、あの耳鳴りが酷くなった。
心が俺を挑発して来る。
「お前は本当に会社の犬だな~、それもかなり従順な犬だ。」
「お前の「怒り」はアーカイブ室に蓄積しておくが、いつ映写機を回したらいいんだい?」
「おい、冷静に良く周りを見てみろよ。狡賢いコヨーテどもは穴倉に姿を消しているじゃないか!お前だけだぞ。矢面に立ってる馬鹿はな。」と
そう。俺の心が言う通りだ。
このリストラ計画を策定していた頃の上司・先輩社員は、リストラが佳境に入ると、雲隠れのように姿を眩まし、いつのまにか、東京本社で昇進を果たしていた。
クソッタレ野郎ども!
偉そうに計画だけ立て、実行には加らず、一つの傷を負うこともなく、栄転かよ!
リストラ社員の憎しみは俺に集中させておいて、腐れ野郎は悠々と都でエリート暮らしだ!
ならば此方にも考えがある。
本当の死神になってやる!
俺はそう思い、リストラ策を強行に促進した。
社員や子会社との折衝も悪魔の如きだ。
会社の作成したマニュアル答弁なんぞ、クソ喰らえだ!
「いいから、お前はクビだ!つべこべ言うな!退職金を出さないとは言ってない、お前の日頃の努力が、この結果だ!身の丈を知れ!」
「貴社は吸収され消滅するんだよ。契約書は既に交わされてる。この温情会議で物を言えるだけ幸せと思って頂きたい。」とね。
俺の血相はまるで、仁王の如く、弱者を睨み通した。
俺の心がまた茶々を入れ出した。
「おいおい、「怒り」の相手が違うだろ~、お前の相手は会社であり、逃って行った卑怯者に向けるべきだ!」と
俺は俺の心に言った。
「そんなこと分かっている。「怒り」を増幅させているのさ。来るべき時に、誰も止められないような怪物になるため、相手問わず、怒り狂っているのさ」と
俺の心は安心して、俺にご褒美をくれた。
鬱病というご褒美を…
俺から睡眠を奪い去り、心臓の動悸を大太鼓のように打ち付け、酒と煙草と抗うつ剤を食料とし、「怒り」のエネルギーを俺の希望通り増幅させてくれた。
正に生きた屍、夜叉の如く、俺の本性は瞬く間に変身して行った。
待っていろ!
逃げやがった卑怯者ども。
お前らを俺は必ず捕らえ、地獄を見せてやる!
今、俺の居る地獄を!
何かだ。見えない何かだ。
運命、それを司る神、消え去った過去、待ち受けてる未来、死…
いつもいつも、後一歩で欲しいものを掴み損ねる。
プロセスは輝きに満ちたていても、結果は、暗闇に埋没し、見る気もなくなる。
ここで間違ってくれるな!
俺は決して、不幸を望んだ生き方は欲していなかったことを!
今は違うが…
良い大学に入り、好きなあの娘と結婚して、子供に恵まれ普通の家庭、仕事も頑張り、それなりの評価を得、普通夢見る生き方を望んでいたんだ!
しかし、見えない何かにいつも邪魔される。
30代のリストラ業務も同じだ。
俺はその仕事に邁進したが、狡い奴は、調子良く、俺にリスクだけを押し付け出した。
あの「怒り」が蘇って行ったよ!俺の心が焚き付ける、あの「怒り」が!
俺は幹部養成研修で表彰を受けて、九州支社の人事部に抜擢された。
主な仕事は人員整理だ。バブル崩壊後の会社の経営赤字は尋常ではない数字が表出されていた。
ここから5年間、九州支社の社員にとって地獄のリストラ計画が遂行されることになる。
その折衝担当が俺だ!
研修明けの35歳の若造である俺が主たる担当だ!
社員の人生を左右するリストラ勧告を俺が宣告して行くのだ。
俺の仕事は、リストラ勧告だけではなかった。
九州支社の子会社の吸収合併を津波のように問答無用に推し進めて行かなければならなかった。
更にだ!
人員整理された各県の支社の要望、吸収合併された子会社の要望、リストラ勧告された社員の最後の要望をひたすら聞かなければならなかった。
当然、そんな要望などまかり通ることはない。訴訟回避の形だけのパフォーマンスだ。
この折衝会議では、いつも怒号が飛び合った。
「いままでの会社に対する貢献を無視するつもりか!」
「社員の労働条件をこれ以上悪化させると、メンタルが蔓延するぞ!」
「俺たちに死ねと言うのか!」
「お前らだけ、美味しい汁を吸うのか!」
「お前は死神だ!」
こんな感じた…
俺は自身の感情を殺し、会社の作成したマニュアル答弁を繰り返した。正に壊れたレコードのように。
「やむを得ない措置です。」
「ご理解願います。会社全体の存続の為の措置なのです。」
「ご要望は承っておきます。お約束は致しかねませんが…」
こんな具合に来る日も来る日も、各県を周り、折衝を行い、小会議を行い、折り合いを付け、最終的に九州支社での機関会議で決着を付ける。
5年間、この流れに沿って、俺は仕事のみで生きた。
家族?
子供の顔は寝姿しか見たことはなかったよ。
パニック障害は?
悪化するに決まっているだろ!
言いたいことも言えず、ただただ、壊れたレコードのように、鉄仮面を被り、リストラ等を宣告するんだぜ!
ストレスはマグマのように噴き上がり、それを噴出することはできないため、俺の心のアーカイブ室に蓄積されて行ったよ。
この頃から、また、あの耳鳴りが酷くなった。
心が俺を挑発して来る。
「お前は本当に会社の犬だな~、それもかなり従順な犬だ。」
「お前の「怒り」はアーカイブ室に蓄積しておくが、いつ映写機を回したらいいんだい?」
「おい、冷静に良く周りを見てみろよ。狡賢いコヨーテどもは穴倉に姿を消しているじゃないか!お前だけだぞ。矢面に立ってる馬鹿はな。」と
そう。俺の心が言う通りだ。
このリストラ計画を策定していた頃の上司・先輩社員は、リストラが佳境に入ると、雲隠れのように姿を眩まし、いつのまにか、東京本社で昇進を果たしていた。
クソッタレ野郎ども!
偉そうに計画だけ立て、実行には加らず、一つの傷を負うこともなく、栄転かよ!
リストラ社員の憎しみは俺に集中させておいて、腐れ野郎は悠々と都でエリート暮らしだ!
ならば此方にも考えがある。
本当の死神になってやる!
俺はそう思い、リストラ策を強行に促進した。
社員や子会社との折衝も悪魔の如きだ。
会社の作成したマニュアル答弁なんぞ、クソ喰らえだ!
「いいから、お前はクビだ!つべこべ言うな!退職金を出さないとは言ってない、お前の日頃の努力が、この結果だ!身の丈を知れ!」
「貴社は吸収され消滅するんだよ。契約書は既に交わされてる。この温情会議で物を言えるだけ幸せと思って頂きたい。」とね。
俺の血相はまるで、仁王の如く、弱者を睨み通した。
俺の心がまた茶々を入れ出した。
「おいおい、「怒り」の相手が違うだろ~、お前の相手は会社であり、逃って行った卑怯者に向けるべきだ!」と
俺は俺の心に言った。
「そんなこと分かっている。「怒り」を増幅させているのさ。来るべき時に、誰も止められないような怪物になるため、相手問わず、怒り狂っているのさ」と
俺の心は安心して、俺にご褒美をくれた。
鬱病というご褒美を…
俺から睡眠を奪い去り、心臓の動悸を大太鼓のように打ち付け、酒と煙草と抗うつ剤を食料とし、「怒り」のエネルギーを俺の希望通り増幅させてくれた。
正に生きた屍、夜叉の如く、俺の本性は瞬く間に変身して行った。
待っていろ!
逃げやがった卑怯者ども。
お前らを俺は必ず捕らえ、地獄を見せてやる!
今、俺の居る地獄を!
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
後宮の死体は語りかける
炭田おと
恋愛
辺境の小部族である嶺依(りょうい)は、偶然参内したときに、元康帝(げんこうてい)の謎かけを解いたことで、元康帝と、皇子俊煕(しゅんき)から目をかけられるようになる。
その後、後宮の宮殿の壁から、死体が発見されたので、嶺依と俊煕は協力して、女性がなぜ殺されたのか、調査をはじめる。
壁に埋められた女性は、何者なのか。
二人はそれを探るため、妃嬪達の闇に踏み込んでいく。
55話で完結します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる