憤慨

ジョン・グレイディー

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第二十七章

負け犬のDNAでは孕まない!

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 このコ○ナ禍により精神病院の患者が合計237名死亡した。

 これら患者は感染しても転院がままならないことから病院に居ながらも感染症の手当を受けられず死んで行ったという。

 俺は思う。

 精神病院に入院できた者で、これだけ亡くなっている。
 その他、踠き苦しんでいる人々は想像以上に、数字以上に多いと…

 精神疾患…

 統合失調症、双極性躁鬱病、鬱病等々、全国に380万以上の患者がいると言われている。

 その潜在者は、その何倍か?

 想像を絶する規模が想定される。

 精神疾患者の心は重い。

 真冬の曇空のように、真っ黒な雲が地上に近づき、うんも言わさずに鋼鉄の重い重い板が地上を押し潰す、

 そんな、決して晴れない心境である。

 外に出る勇気もない。

 人と話すエネルギーもない。

 決して明日は見えない。

 しかし、神はこれらの人々にも平等にコ○ナ禍を味合わせようとなさる。

 俺もその1人だ…

    重鬱症であり、コ○ナ感染の既歴者だ。

 感染により、鬱は、この上なく重きを帯びた。

 重い扉が目の前を遮断した。

 未来、将来、明日という景色が消え去り、目前には真っ黒な鋼鉄の扉が立ち塞がった。

 その扉には鍵は掛かってない。

 何とかすれば開く扉だ。

 しかし、開いてどうなる。

 先の見えない扉を開いてどうなるのだ!
 
 そこには、「死」しか、存在しない。

 「死」は先ではない、究極の行き止まりだ。

 各宗教は、それは違うと言う。

 「死」は、来世であり、怖いものではないと言う。

 キリスト教もそう教える。

 「死」を身近に感じながら、現在を生きろと。
 そして、神の偉大な摂理である計画に身を委ねよと。

 「死」は怖いものではないのか?…

 いや、「死」は紛れもなく怖いものである。

 精神疾患者は、よーく、それを知っている。

 「鬱」は、当初、将来への恐怖を与えて来る。
 この先が見えない怖さ、この先どうなるか分からない不安、明日への希望を失った喪失感を脳内に叩き込み、脳内ホルモンの分泌を異常操作する。

 「鬱」患者は、先に進むことが出来ず、そこに、今に、現在に留まる。

 「鬱」患者は、そこに留まりながら、迷う。

 先に行くべきか、過去に戻るべきかと。

 ここで「鬱」患者は、おおよその者が過去に遡及する。

 過去の「喜び」、「楽しみ」を探しに行くのだ。

 病んでる患者にも一つ、二つぐらいの幸福がある、それを見に行くのだ。

 少ない喜びは、直ぐに見つかる。

 暫し、過去の平穏な日々を懐かしむ。

 その後だ!

 必ず自問自答が始まるのだ。

 あんなに幸せであったのに、どうして、こんな風になってしまったのか?と

 必ず不幸の素を追及し始めるのだ。

 そして、あっという間に、屈辱、恥辱、侮辱に囲まれて、息切れ切れ、今へと戻ってくる。

 そして、途方に暮れる。

 どうして俺は生まれて来たのか?と親を恨む。

 そして、友を恨み、恋人を恨み、仲間を恨み、世間一般を恨み出す。

 やがて、恨み疲れ、恨んでも、妬んでも、僻んでも、どうしようもないことに気付く。

 結局、前にも後ろにも行けないことに気付く。

 次に取るべき方法、それは、目の前を塞ぐ、鋼鉄の扉を開け、死に救いを求めるしかないのだ。

 宗教は「死」は怖くないと言う。

 ならば聞こう!

 包丁で手首を切るのは痛くないのか?怖くないのか?腹を裂くのは痛くないのか?怖くないのか?睡眠剤を大量摂取することは苦しくないのか?怖くないのか?高台から飛び降り地面に激突した時は痛くないのか?怖くないのか?電車に飛び込み車輪に粉砕される時は痛くないのか?怖くないのか?…

 頼むから「死」は怖くないなど寝言を言うのはよしてくれ…

 結局、「死」が将来であり未来であり明日である以上、「死」は怖いんだよ。

 それでも「死」を求める「鬱」患者の希死念慮は、お前らに想像が付くかい?

 それも、コ○ナと鬱が合体した上での近づき来る「死」の恐怖を想像できるかい?

 数字の世界でコ○ナ感染者と精神疾患者を表出するな!

 感染してない者、精神に異常を来していない者には、この暗黒の辛さは決して分からない。

 熊本時代の震災復興の頓挫、「鬱」の強襲まで話した所である。

 震災から半年経ち、季節は暦的には秋である10月になっていた。

 だが、現状は何も変わっていなかった。

 熊本市の街中のマンションはぐっしゃり潰れたままだ。

 崩壊の恐れはないと国土交通省は言うが、誰がそれを信じるものか。

 熊本城は、哀れな骸骨のまま、生き恥を晒している。

 倒壊建物の解体作業は進みはするが、それはそれで、格差を産んでいた。

 富む者と富まない者との格差

 また、市町村での格差も生じ、置き去りにされたゴーストタウンが県下にその存在を露にし出した。

 格差か…

 俺はその言葉に嫌気が差していた。

 そう、毎晩のように訪れる、あの「高貴の微笑み」と「黒い影」による淫靡な見せしめ。

 俺から離れたことをこの上なく喜び、嬉しがるのを、わざわざ見せつけるように俺の目の前に現れ、よがり狂う、腐れ女!

 俺は次第に奴らが来訪する気配を感じることが出来始めていた。いやを無しに…

 薬とアルコールが、昼間の疲れを誤魔化しの安定に導き出す。

 部屋の電気を消す。

 居間の扉を閉める。

 横になる。

 暫し沈黙が部屋の中を占領する。

 次第に台所の冷蔵庫が秋の虫のように電磁的な鳴き声を上げ始める。

 すると、誰も居ないはずの台所の床が軋む。

 俺は「また来たか」と諦め、天井を見遣る。

 天井が回り出す。

 暗闇の暗闇に穴が開く。

 その穴を覗きに奴が現れる。

 腐れ女の「高貴の微笑み」だ!

 俺を探すように穴から顔出し、部屋中を見渡す。

 俺と目が合う。

 「高貴の微笑み」を浮かべ、粗末なボロ雑巾を見るかのように、憐れみの微笑みを浮かべる。

 ふっと、右を見遣ると、扉が開き、「黒い影」が部屋の中に入って来ている。

 俺は無意識に拳を硬く握る。

 俺は何も言わない。

 すると「高貴の微笑み」が物足りないように、俺を煽り出す。

「今日は私を怒鳴らないのね。貴方にしては珍しいわ。乱暴者の貴方にしてはね。」と

 俺は誘いに乗ることなく無視を貫く。

 それに気分を害した「高貴の微笑み」は、いつものように、「黒い影」を呼び寄せ、性行を始め出す。

 淫靡なよがり声を上げながら、そして、時折、俺が見ているかを確認する様に、此方をチラッと見ながら、性行を繰り返す。

 俺が無視を決めつけると、「高貴の微笑み」は、激しく腰を動かし、「黒い影」の中で逝き果てる。

 そして、ぐったりとした淫靡な表情を「黒い影」に撫でなれながら、吐息のような嫌味を俺に発する。

「貴方みたいな負け犬に、一時でも餌をあげた私が愚かだったわ。こんな素晴らしい伴侶がその先に居ると分かっていれば、この野良の負け犬なんかに構うことなどなかったのに…、私の人生の唯一の汚点だわ!」と

 俺はさらに無視を保持する。

 「高貴の微笑み」は、ちぇっと、舌打ちをし、「黒い影」の愛撫を受けながら、俺を挑発する。

「覗き見しないでよね!いやらしい!私達の幸せを邪魔しないで頂戴。賤しい負け犬。」と

 俺は眼を瞑る。

 すると、自殺した息子の顔が浮かんできた。

 そして、息子は、顔面血だらけで、頭蓋骨から脳味噌を覗かせながら、俺にこう聞く。

「どうして、俺はお父さんに似たのかな?お父さんみたいな乱暴者に…」と

 俺は何も答えず、泣きべそをかく息子を睨む。

 そこに、「高貴の微笑み」が口を挟む。

「ほら見てご覧なさい。貴方の呪われたDNAの被害者が訴えているじゃないの。私はそれが嫌だったのよ。貴方の呪われたDNAを孕むのが。こちらの優秀なDNAが欲しかったのよ!」と言い、「黒い影」に跨り腰をくねらし、涎を垂らし、よがり捲り、逝きまくる。

 俺はハッと思い、淫乱腐れ女に怒鳴った!

「お前が呼んだのか、お前が息子を呼んだのか?」と

 「高貴の微笑み」は、「黒い影」に突かれながら、意識を失いそうになりながら、俺の問いに面倒臭そうに、「うん、うん」と頷く。

 俺は「高貴の微笑み」と「黒い影」の交わった映像を黙って見続け、心に誓う。

「この映像を脳裏に焼き込め!決して忘れぬように!決して許さぬように!」と
 
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