社宅

ジョン・グレイディー

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第七章

呪怨と憑依

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「私もね、見たよ!この前、金縛りの後に!」と

 娘は臆する事なく平然と言い放った。

 妻と俺は目を見合わせ、仕方なく、妻がこう問うた。

「浩子ちゃん、何を見たの?」

「子供が居たの!呪怨君みたいな男の子が!」

 娘が言うには…

【3日前のことであった。

 夜中、娘はベットに横たわり、スマホで音楽を聴いていたそうだ。

 すると、急に音が途切れ途切れとなり、遂には音が止まってしまった。

 その瞬間、身体が動かなくなり、声も出せなくなった。

 金縛りであった。

 暫くの間、金縛りの状態が続いたが、次第に身体の強張りが緩み出し、スマホからの音楽も鳴り始め、金縛りが解けた。 

 娘はホッとし、目を瞑った。

 その時!

「ガサ、ガサ」と

 ベットの横の押入れの中から物音が聞こえて来た。

 娘は気味が悪く、暫し、押入れの引戸を開くことなく、その物音に耳を傾けていた。

 しかし、いつまで経っても物音は鳴り止まないどころか、一定の間隔を保ちながら規律良く音を立て続けた。

 意を決した娘は、恐る恐る、引戸を開いて見た。

 そこには…

 押入れの中には、サンリオの縫いぐるみに混じって、真っ白な裸の男の子が体育座りで座っていた!

 娘はあまりの衝撃に声を失い、呆然としてしまった。

 すると、その裸の男の子は、縫いぐるみを一つ掴み、愛おしく抱きしめると、にっこり笑って、娘を見つめた。

 娘は本能的に「ビシッ」と力ずくに引戸を閉めた。

 そして、娘はベットシーツに潜り込み、両手で両耳を塞いだ。】

 話を終えた娘は、我々が思ったよりは怖がっては居らず、至って平然としていた。

「その後、押入れの中は見たのか?」

「見てないよ。」

「物音はするのか?」

「あれからはしないよ!」

 その問答に少し安堵した俺は、妻と娘を引き連れ、娘の部屋に向かい、恐る恐る押入れの引戸を開けて見た。

 押入れの中は、沢山の縫いぐるみがそこを狭しとぎゅうぎゅうに押し込められており、それ以外の物は何も見当たらなかった。

 娘は押入れ奥の四隅の一角を指差して、こう言った。

「あそこよ!あの隅に座っていたの!」

 そして、妻の方を見ながらこう言った。

「あの男の子、お母さんが見た長い髪の毛の白い女の人の子供かもね。」と

 この時、俺は「もう手遅れかもしれない。」とそう思った。

 この社宅に来た日、北部屋から感じた直感が、今まさに現実と色帯びてしまったのだ。

 大の大人3人揃って、信じ難い、所謂、超常現象を体験してしまった。

 それもこの何ヶ月といった短期間に…

 最早、疑いの余地はない。俺はそう思った。

 俺は娘の部屋を出ながら、隣室の北部屋の押入れに目をやり、そして睨み、誰に言うわけでもなく心にこう呟いた。

「悪かったんだな。開けてはならない扉を開けてしまった俺達が悪かったんだな…」と

 8月に入ると超常現象は加速して行った。

 特に妻の体験は限界値を思わせるものであった。

 8月の終わり、ある日曜日の昼下がり

 我々3人はそれぞれの部屋で寛いでいた。

 真夏の時分、クーラーはリビングに一台しか設置していないことから、各室の扉は開いたままであった。

 俺はiPadで映画を見ていた。

 娘は寝ているようであった。

 夕方になった。

 俺は台所の換気扇の下に煙草を吸いに行った。

 いつもなら、夕食の準備をしているはずの妻の姿はなかった。

 何か嫌な予感を感じた俺は、妻の部屋を覗いて見た。

 すると、妻は布団に横たわり、苦悶の表情を浮かべ、寝苦しそうに踠いでいた。

「おい!大丈夫か!」

「はっ!貴方?良かったぁ~」

「どうしたんだ?」

「来たのよ…」

「あの女か?」

「そうよ…、昼間に…」

 と妻は困憊した表情を浮かべた。

 そして、妻はゆっくりとその現象を話し始めた。

【昼過ぎ、妻は布団に横たわり、うとうととしながら昼寝をしていた。

 すると、いつものように静寂が起こり、そして、金縛り状態になった。

 そして、瞬きした瞬間

 妻の眼前には、あの女の白目だけの眼差しが現出していた。

 女は妻に跨り、腕を伸ばして来た。

 女はいつもと違い、首ではなく、妻の口を執拗に引っ張ろうとする。

 そう、妻の口を大きく広げようとしていた。

 そして、口が開くと、頭を押し込もうとする。

 妻は懸命に口を締めようとした。

 すると女は妻を睨み、こう言った。

「貴女の中に入らせて…、私を中に入らせて…」と

 妻は最後の力を振り絞り、心の中で叫んだ!

「嫌よ!貴女なんか、入らせないわ!」と

 いつの間にか妻は気を失い、気づいた時は、先程、俺が声を掛けた時だったと言う。

 完全に祟られている。

 あの女は妻に憑依しようとしている。

 間違いない。

 俺はそう思い、そして、妻に言った。

「もう限界だよ。ここを出よう。」と
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