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第二十四章
怨念は愛へと進化していた…
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俺一人での社宅生活も1週間が経過した。
あの女の怨霊が現れる気配もなく、地縛霊が遊びに寄って来ることもなかった。
明日で仕事納め、この日は社宅に戻り、明日から九州に帰省する用意をしていた。
午後9時頃、携帯電話が鳴った。
登録番号でない。
俺は元々電話嫌いであったので、その電話をやり過ごした。
すると、その30秒後、また、同じ電話番号の相手から電話が掛かった。
俺は仕事関係か、新居のマンションの関係者かと思い、その電話に出た。
「もしもし、小野です。」
「夜分申し訳ありません。私、霊媒師の多幸と申します。」
多幸からであった。
「その節は大変お世話になりました。」
「ご主人さん、お尋ねしたい事があります。」
「何ですか?例の女の怨霊に関係する事ですか?」
「そうです。」
「分かりました。」
「因果関係がある二つのキーワード、今から申します。」
「はい。」
「滝壺、十字架のネックレス…」
そのフレーズを聞いた瞬間、俺は身震いをした。
走馬灯のように記憶が蘇って行った。
そうだ。初めての彼女と良くデートをした滝…、その彼女に初めてあげたプレゼントが十字架のネックレスだ…
俺とその彼女は高校時代から付き合っていた。
相思相愛で恋人となった。
大学は別々となり遠距離恋愛ではあったが、関係は上手く続いていた。
お互い実家に帰省した際には、ドライブに行った。
彼女は森林浴が好きだった。
森の中を二人で歩きながら、たわいのない話を良くしていた。
滝…
そう、『名勝の滝』
彼女に十字架のネックレスをプレゼントした場所だ。
大学を卒業し、お互い、地元の会社に就職した。
俺はその彼女と結婚するつもりでいた。
彼女もそうだと思い込んでいた。
それが…
急に彼女と連絡が付かなくなった。
電話しても出ない、家に行っても会ってくれない、手紙を出しても返答もない…
そんな中、一通の手紙が彼女から届いた。
「別れてください。理由は聞かないでください。
結婚することにしました。
相手は貴方も知ってる〇〇さんです。
貴方から頂いたネックレス、お返しします。
私の事は忘れてください。
お元気で…」
こう記された手紙であった。
当然、俺は納得できず、理由を教えてくれと、俺の何処が気に入らないのか、俺に何の非があるのか等々、執拗に手紙を出したが…
何の返答もされなかった。
そして、風の便りで、彼女は6月に盛大な結婚式を挙げる事を聞き及んだ。
俺はその女を忘れようと努力した。
しかしだ!
理由なき別れの強要だ!
なかなか吹っ切れるものではなかった。
苦労したよ…
吹っ切るのに…
そうだった…
苦労した…、最後に思い出の名勝の滝壺にネックレスを投げ捨てたよ!
俺はその後、妻と知り合い、結婚した。
そして、2人の子供を授かり、普通の家庭を築いた。
裕福でもなく、生活に困窮する訳でもなく、普通の…
「もしもし、ご主人さん、大丈夫ですか?、もしもし!」
一頻り過去の嫌な思い出を振り返っていた俺は、今、多幸と電話をしている事を思い出し、
「はい、小野です。失礼しました。」
「滝とネックレス…、何かご記憶はありませんか?」
「はい…、昔の女と良くデートに行った場所が滝でした。
その女に初めてあげたプレゼントが十字架のネックレスです。
それが…」
「そうです。そこに全てが関係していました…」
「何で…、まさか、怨霊の女は、昔の女ですか?」
「違います。貴方は全く承知していない人物です。」
「それが何で怨霊として…、私の家族に降り掛かって来るのですか?
この社宅とは関係ないんですか?」
「運命の因果です。
偶然の一致
それが運命です。
全てが偶然、いや、その社宅を拠点として、必然的に生じた…」
「必然的に…」
「そうです。
貴方達の家族がその社宅に集うのを待っていた。
怨霊の女は貴方にサインを送っていたはずです。」
「サイン?」
「白い服を着た女の夢です。」
「あぁ…、その夢ですか…」
「やはり、貴方はご覧になっていたのですね。」
「はい、妻には嘘をつきましたが…」
「やっぱり、見てた…」
「その夢がどう関係するのですか?」
「貴方に知らせたかったのです。」
「何を?」
「不遇な女の一生を」
「どうして私に?」
「貴方はネックレスを滝壺に投げ捨てた。
そのネックレスに宿る幾多の念、幾多の想いを貴方に知って欲しかったのです。」
「全く知らない人が何故私に知って欲しがるのですか?」
「先程も申しました。運命の一致です。
互いが了知した事のみが意識の一致ではないのです。
一方が知らない事が既に一致している事があるのです。」
「そんな…」
「それを女は貴方に知らせようとした。」
「夢の中で…」
「そうです。」
「しかし…」
「そこです!
夢の中で貴方はどうされたんですか?教えてください!」
「私はその白い服の女に呼びかけるんです。
しかし、その女は私に見向きもしない…
私は何度も何度も呼びかけるのに…
その女は一向に私の方を向いてくれないのです。」
「………………」
「どうしました?多幸さん?」
「怨念は…」
「怨念?」
「怨念は変化してしまっている。」
「何に?」
「怨念は愛に変化してる…」
「愛?」
「そうです。貴方が愛の無い物として葬った十字架のネックレス…、
しかし、貴方はその真逆の人生を築いた…」
「はい!至って普通の愛ある家族を築いたつもりです。」
「夢の中の女、怨霊の女は…」
「……………」
「貴方が不幸になる事を願っているのです。」
「何故?」
「貴方の捨てたネックレスを自分に重ね、また、蘇生し、貴方に渡したいと思っていた…、貴方に愛の無い結婚を選ぶ女など居ないという事を解らせるために…」
「………………」
「しかし、貴方は愛のある結婚をし、最早、女が教示する場面が無くなった。
住む世界が「愛」というカテゴリーからして、全く異なるエリアに区別されてしまった。
だから、夢の中で現出しても貴方に気づかないのです。」
「それで、怨霊となり現れるのですか?」
「……………」
「多幸さん、どうしたんですか?何でも構いません!言ってください!
もう驚きませんから!」
「あの女は、貴方を愛してしまったのです…」
「私を愛してしまった?」
「そうです。
気づいたのです。
夢の中で自分に呼びかける貴方を…」
「違う!あの女は振り向かない!」
「それは貴方の記憶に無いだけです。
良いですか。
貴方は夢の中であの女と接触したんです。
思い出す事は困難ですが…」
「そんな…、そんな事、信じられません!」
「悪い事は言いません。
一度、その滝を訪れてください。
そうすれば、何か思い出すかも知れません。
夢の中の一コマを…」
あの女の怨霊が現れる気配もなく、地縛霊が遊びに寄って来ることもなかった。
明日で仕事納め、この日は社宅に戻り、明日から九州に帰省する用意をしていた。
午後9時頃、携帯電話が鳴った。
登録番号でない。
俺は元々電話嫌いであったので、その電話をやり過ごした。
すると、その30秒後、また、同じ電話番号の相手から電話が掛かった。
俺は仕事関係か、新居のマンションの関係者かと思い、その電話に出た。
「もしもし、小野です。」
「夜分申し訳ありません。私、霊媒師の多幸と申します。」
多幸からであった。
「その節は大変お世話になりました。」
「ご主人さん、お尋ねしたい事があります。」
「何ですか?例の女の怨霊に関係する事ですか?」
「そうです。」
「分かりました。」
「因果関係がある二つのキーワード、今から申します。」
「はい。」
「滝壺、十字架のネックレス…」
そのフレーズを聞いた瞬間、俺は身震いをした。
走馬灯のように記憶が蘇って行った。
そうだ。初めての彼女と良くデートをした滝…、その彼女に初めてあげたプレゼントが十字架のネックレスだ…
俺とその彼女は高校時代から付き合っていた。
相思相愛で恋人となった。
大学は別々となり遠距離恋愛ではあったが、関係は上手く続いていた。
お互い実家に帰省した際には、ドライブに行った。
彼女は森林浴が好きだった。
森の中を二人で歩きながら、たわいのない話を良くしていた。
滝…
そう、『名勝の滝』
彼女に十字架のネックレスをプレゼントした場所だ。
大学を卒業し、お互い、地元の会社に就職した。
俺はその彼女と結婚するつもりでいた。
彼女もそうだと思い込んでいた。
それが…
急に彼女と連絡が付かなくなった。
電話しても出ない、家に行っても会ってくれない、手紙を出しても返答もない…
そんな中、一通の手紙が彼女から届いた。
「別れてください。理由は聞かないでください。
結婚することにしました。
相手は貴方も知ってる〇〇さんです。
貴方から頂いたネックレス、お返しします。
私の事は忘れてください。
お元気で…」
こう記された手紙であった。
当然、俺は納得できず、理由を教えてくれと、俺の何処が気に入らないのか、俺に何の非があるのか等々、執拗に手紙を出したが…
何の返答もされなかった。
そして、風の便りで、彼女は6月に盛大な結婚式を挙げる事を聞き及んだ。
俺はその女を忘れようと努力した。
しかしだ!
理由なき別れの強要だ!
なかなか吹っ切れるものではなかった。
苦労したよ…
吹っ切るのに…
そうだった…
苦労した…、最後に思い出の名勝の滝壺にネックレスを投げ捨てたよ!
俺はその後、妻と知り合い、結婚した。
そして、2人の子供を授かり、普通の家庭を築いた。
裕福でもなく、生活に困窮する訳でもなく、普通の…
「もしもし、ご主人さん、大丈夫ですか?、もしもし!」
一頻り過去の嫌な思い出を振り返っていた俺は、今、多幸と電話をしている事を思い出し、
「はい、小野です。失礼しました。」
「滝とネックレス…、何かご記憶はありませんか?」
「はい…、昔の女と良くデートに行った場所が滝でした。
その女に初めてあげたプレゼントが十字架のネックレスです。
それが…」
「そうです。そこに全てが関係していました…」
「何で…、まさか、怨霊の女は、昔の女ですか?」
「違います。貴方は全く承知していない人物です。」
「それが何で怨霊として…、私の家族に降り掛かって来るのですか?
この社宅とは関係ないんですか?」
「運命の因果です。
偶然の一致
それが運命です。
全てが偶然、いや、その社宅を拠点として、必然的に生じた…」
「必然的に…」
「そうです。
貴方達の家族がその社宅に集うのを待っていた。
怨霊の女は貴方にサインを送っていたはずです。」
「サイン?」
「白い服を着た女の夢です。」
「あぁ…、その夢ですか…」
「やはり、貴方はご覧になっていたのですね。」
「はい、妻には嘘をつきましたが…」
「やっぱり、見てた…」
「その夢がどう関係するのですか?」
「貴方に知らせたかったのです。」
「何を?」
「不遇な女の一生を」
「どうして私に?」
「貴方はネックレスを滝壺に投げ捨てた。
そのネックレスに宿る幾多の念、幾多の想いを貴方に知って欲しかったのです。」
「全く知らない人が何故私に知って欲しがるのですか?」
「先程も申しました。運命の一致です。
互いが了知した事のみが意識の一致ではないのです。
一方が知らない事が既に一致している事があるのです。」
「そんな…」
「それを女は貴方に知らせようとした。」
「夢の中で…」
「そうです。」
「しかし…」
「そこです!
夢の中で貴方はどうされたんですか?教えてください!」
「私はその白い服の女に呼びかけるんです。
しかし、その女は私に見向きもしない…
私は何度も何度も呼びかけるのに…
その女は一向に私の方を向いてくれないのです。」
「………………」
「どうしました?多幸さん?」
「怨念は…」
「怨念?」
「怨念は変化してしまっている。」
「何に?」
「怨念は愛に変化してる…」
「愛?」
「そうです。貴方が愛の無い物として葬った十字架のネックレス…、
しかし、貴方はその真逆の人生を築いた…」
「はい!至って普通の愛ある家族を築いたつもりです。」
「夢の中の女、怨霊の女は…」
「……………」
「貴方が不幸になる事を願っているのです。」
「何故?」
「貴方の捨てたネックレスを自分に重ね、また、蘇生し、貴方に渡したいと思っていた…、貴方に愛の無い結婚を選ぶ女など居ないという事を解らせるために…」
「………………」
「しかし、貴方は愛のある結婚をし、最早、女が教示する場面が無くなった。
住む世界が「愛」というカテゴリーからして、全く異なるエリアに区別されてしまった。
だから、夢の中で現出しても貴方に気づかないのです。」
「それで、怨霊となり現れるのですか?」
「……………」
「多幸さん、どうしたんですか?何でも構いません!言ってください!
もう驚きませんから!」
「あの女は、貴方を愛してしまったのです…」
「私を愛してしまった?」
「そうです。
気づいたのです。
夢の中で自分に呼びかける貴方を…」
「違う!あの女は振り向かない!」
「それは貴方の記憶に無いだけです。
良いですか。
貴方は夢の中であの女と接触したんです。
思い出す事は困難ですが…」
「そんな…、そんな事、信じられません!」
「悪い事は言いません。
一度、その滝を訪れてください。
そうすれば、何か思い出すかも知れません。
夢の中の一コマを…」
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