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第二十五章
意識裏の夢の現出
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12月29日午前9時、俺は福岡の自宅に帰省するため京都発の新幹線「のぞみ」に乗車した。
俺は迷っていた。
多幸から言われた件を…
「あの女は、貴方を愛してしまったのです…
気づいたのです。
夢の中で自分に呼びかける貴方を…
貴方は夢の中であの女と接触したんです。
一度、その滝を訪れてください。
そうすれば、何か思い出すかも知れません。
夢の中の一コマを…」
そんな馬鹿な話なんて…、夢の中の白い服を着た女が俺を愛してしまった…
そんな馬鹿げた話なんて、鵜呑みに出来るはずがない。
ましてやその女が怨霊となって、俺の家族を呪っているなど…
しかし、多幸が電話を終える前に言った言葉が気になった。
「忘れている夢を思い出すほど困難な事はありません。
夢は忘却の積み重ねであるからです。
しかし、夢の中の出来事は現実に起こった事なのです。
未来の事ではありません。
今起こっている事でもありません。
既に起こった事
そう、過去の事実なのです。
平素、忘れ去られた事柄が思い出して欲しく、懸命になって夢に表出するのです。
だからこそ、夢の映像はその人にとって、大事な事柄なのです。
意識の裏にあるもう一つのアイデンティティの要素でもあるのです。」
「そんな哲学的な事言われても、到底、信用できないですよ。」
「では、お聞きします。
貴方は何故、『白い服の女の夢』を見ていた事を奧さんに見てないと嘘を付いたのですか。」
この問いに俺は微かに何かを感じた。
多幸の言う通り、何故、俺は妻に嘘を言ったのか…
現在、家族を取り巻く不吉な現象のキーとなる件について、何故、俺は正直に妻に言わなかったのか…
返答に詰まった俺に対して多幸はこう言った。
「貴方は夢の中で女と接触したのです。
貴方の意識裏は、全て了知している事なのです。
だからこそ、貴方の意識に嘘を言わせたのです。
もう一度お願いします。
滝に行ってみてください。
貴方は何かを感じます。
そして、その先見た夢を思い留めておいてください。
私からの忠告は以上です。」と
新幹線は広島を過ぎ、残り1時間半で博多駅に着く。
俺は『名勝の滝』に寄って、帰宅することを決心した。
そして、何気に妻にLINEした。
「博多に着くのが予定より遅くなった。
夕方には家に戻る」と
俺はLINEした後、はっと思った。
また、無意識に妻に嘘を言っている。
本当の事を言えば良いのに…
多幸から言われたと、『白い服の女の夢』を思い出すようにと、
キーワードは『滝』と『ネックレス』だと、
心当たりのある、『名勝の滝』に行って来ると、
何故…、そう言わないのか…
俺はその事についてしきりに考え続けた。
そして、多幸の忠告を素直に心に流し込んだ。
その時感じた。
「何かが止めている。」と
そう思った。
俺は博多駅で降りるとレンタカーを借り、『名勝の滝』へと
向かった。
福岡県と佐賀県の県境
博多駅から車で1時間少々の所
福岡市の早良区の県道を進む。
通り慣れた道筋と言うか、元恋人に振られて憔悴の元に通った思い出したくもない道筋
もう30年前の事柄が今尚、心を捉える。
何年経っても嫌な思い出は残存する。
そう思いながら車を西へ西へと向かわせる。
午後3時前に『名勝の滝』付近に着いた。
見覚えのある喫茶店の店構え、店名は代わっていた。
年迫る暮れの時分、忙しさの喧騒は此処にはない。
静まり返った森林の雰囲気は今も昔も変わりがない。
俺は店名の代わった喫茶店の駐車場に車を止めて、行き慣れた小径を歩んだ。
多幸からは聞いていた。
「貴方を偲ぶ女は、貴方を追い、滝壺へと向かい、貴方の無造作な行動を目の当たりとし、その後、入水自殺をしました。」と
多幸の言うその女が潜んでいたという大木が見えた。
俺は何も感じなかった。
そして眼前に巨大な水と岩の構造物が現出した。
それらは今も昔も変わらなかった。
爆声が轟く中、水色鮮やかな滝壺が俺を待っていた。
この中に貴金属を投げ込んだ。
そんな軽い気持ちも今も昔も変わりなかった。
滝壺の中を見遣る。
何かを感じようと瞑想したが、思い出すのは、昔の恋人の別れの手紙の行間のみであった。
その行間を俺は洞察したことを思い出す。
都合の良い洞察ではあったが、結果は哀れそのものであった。
立ち尽くす爆声の辺りの中、嫌な思い出しか脳裏を掠めない。
俺は多幸の言う事を形式的に信じ、滝壺に祈りを捧げた。
何も感じない、何も心に木霊しない。
何分居ただろうか。
ほんの5分少々か。
儀式は終わった、キーワードの箇所はクリアーしたと俺は形式的に納得し、その場を去った。
店名の代わった店に入る気は毛頭ない。
用件は済ませたと思い、俺は何事も無かったかのように、帰路を急いだ。
これも、今思えば、事を急いで終わらせようとした事自体が渦中の主人公にならんとするシグナルでもあったのだ…
俺はその時何も見えてなかった。
自宅に夕暮れ間際に帰宅した。
多幸とのやり取りは、やはり妻には説明しなかった。
ただ、社宅では何も変化は生じなかった事のみを事実として報告した。
報告…、その類であった…
多幸からの電話、帰省途中の滝への寄り道
霊媒師のインスピレーションに付き合ってしまったが、俺としては、この時までは、引っ越せば何かも終わると思い込んでいた。
全てが終わると。
甘い俺の洞察力は次の日の目覚めと共に消え去った。
「はっ!」と心臓が止まるような驚きと共に俺は目覚める事になる。
見たのだ。
夢を。
意識裏が表に回り込み、現出した因果な夢を見たのだ。
繋がる…
何もかも繋がる不幸の連鎖を感じる夢を…
俺は迷っていた。
多幸から言われた件を…
「あの女は、貴方を愛してしまったのです…
気づいたのです。
夢の中で自分に呼びかける貴方を…
貴方は夢の中であの女と接触したんです。
一度、その滝を訪れてください。
そうすれば、何か思い出すかも知れません。
夢の中の一コマを…」
そんな馬鹿な話なんて…、夢の中の白い服を着た女が俺を愛してしまった…
そんな馬鹿げた話なんて、鵜呑みに出来るはずがない。
ましてやその女が怨霊となって、俺の家族を呪っているなど…
しかし、多幸が電話を終える前に言った言葉が気になった。
「忘れている夢を思い出すほど困難な事はありません。
夢は忘却の積み重ねであるからです。
しかし、夢の中の出来事は現実に起こった事なのです。
未来の事ではありません。
今起こっている事でもありません。
既に起こった事
そう、過去の事実なのです。
平素、忘れ去られた事柄が思い出して欲しく、懸命になって夢に表出するのです。
だからこそ、夢の映像はその人にとって、大事な事柄なのです。
意識の裏にあるもう一つのアイデンティティの要素でもあるのです。」
「そんな哲学的な事言われても、到底、信用できないですよ。」
「では、お聞きします。
貴方は何故、『白い服の女の夢』を見ていた事を奧さんに見てないと嘘を付いたのですか。」
この問いに俺は微かに何かを感じた。
多幸の言う通り、何故、俺は妻に嘘を言ったのか…
現在、家族を取り巻く不吉な現象のキーとなる件について、何故、俺は正直に妻に言わなかったのか…
返答に詰まった俺に対して多幸はこう言った。
「貴方は夢の中で女と接触したのです。
貴方の意識裏は、全て了知している事なのです。
だからこそ、貴方の意識に嘘を言わせたのです。
もう一度お願いします。
滝に行ってみてください。
貴方は何かを感じます。
そして、その先見た夢を思い留めておいてください。
私からの忠告は以上です。」と
新幹線は広島を過ぎ、残り1時間半で博多駅に着く。
俺は『名勝の滝』に寄って、帰宅することを決心した。
そして、何気に妻にLINEした。
「博多に着くのが予定より遅くなった。
夕方には家に戻る」と
俺はLINEした後、はっと思った。
また、無意識に妻に嘘を言っている。
本当の事を言えば良いのに…
多幸から言われたと、『白い服の女の夢』を思い出すようにと、
キーワードは『滝』と『ネックレス』だと、
心当たりのある、『名勝の滝』に行って来ると、
何故…、そう言わないのか…
俺はその事についてしきりに考え続けた。
そして、多幸の忠告を素直に心に流し込んだ。
その時感じた。
「何かが止めている。」と
そう思った。
俺は博多駅で降りるとレンタカーを借り、『名勝の滝』へと
向かった。
福岡県と佐賀県の県境
博多駅から車で1時間少々の所
福岡市の早良区の県道を進む。
通り慣れた道筋と言うか、元恋人に振られて憔悴の元に通った思い出したくもない道筋
もう30年前の事柄が今尚、心を捉える。
何年経っても嫌な思い出は残存する。
そう思いながら車を西へ西へと向かわせる。
午後3時前に『名勝の滝』付近に着いた。
見覚えのある喫茶店の店構え、店名は代わっていた。
年迫る暮れの時分、忙しさの喧騒は此処にはない。
静まり返った森林の雰囲気は今も昔も変わりがない。
俺は店名の代わった喫茶店の駐車場に車を止めて、行き慣れた小径を歩んだ。
多幸からは聞いていた。
「貴方を偲ぶ女は、貴方を追い、滝壺へと向かい、貴方の無造作な行動を目の当たりとし、その後、入水自殺をしました。」と
多幸の言うその女が潜んでいたという大木が見えた。
俺は何も感じなかった。
そして眼前に巨大な水と岩の構造物が現出した。
それらは今も昔も変わらなかった。
爆声が轟く中、水色鮮やかな滝壺が俺を待っていた。
この中に貴金属を投げ込んだ。
そんな軽い気持ちも今も昔も変わりなかった。
滝壺の中を見遣る。
何かを感じようと瞑想したが、思い出すのは、昔の恋人の別れの手紙の行間のみであった。
その行間を俺は洞察したことを思い出す。
都合の良い洞察ではあったが、結果は哀れそのものであった。
立ち尽くす爆声の辺りの中、嫌な思い出しか脳裏を掠めない。
俺は多幸の言う事を形式的に信じ、滝壺に祈りを捧げた。
何も感じない、何も心に木霊しない。
何分居ただろうか。
ほんの5分少々か。
儀式は終わった、キーワードの箇所はクリアーしたと俺は形式的に納得し、その場を去った。
店名の代わった店に入る気は毛頭ない。
用件は済ませたと思い、俺は何事も無かったかのように、帰路を急いだ。
これも、今思えば、事を急いで終わらせようとした事自体が渦中の主人公にならんとするシグナルでもあったのだ…
俺はその時何も見えてなかった。
自宅に夕暮れ間際に帰宅した。
多幸とのやり取りは、やはり妻には説明しなかった。
ただ、社宅では何も変化は生じなかった事のみを事実として報告した。
報告…、その類であった…
多幸からの電話、帰省途中の滝への寄り道
霊媒師のインスピレーションに付き合ってしまったが、俺としては、この時までは、引っ越せば何かも終わると思い込んでいた。
全てが終わると。
甘い俺の洞察力は次の日の目覚めと共に消え去った。
「はっ!」と心臓が止まるような驚きと共に俺は目覚める事になる。
見たのだ。
夢を。
意識裏が表に回り込み、現出した因果な夢を見たのだ。
繋がる…
何もかも繋がる不幸の連鎖を感じる夢を…
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