11 / 48
第二章 不穏な夕食会
#6 姉妹
しおりを挟む「お姉様。ディキンソン卿のどこがそんなに嫌なの?次男でディキンソン侯爵の爵位を継げないから?」
その夜、ウィレミナがセラフィーヌの部屋を訪ねると、セラフィーヌは寝台の上で両足を立てて雑誌を読んでいた。
「違うわ。あぁ、違くないかもしれないけれど。
とりあえず、お父様が結婚を押し付けるのが嫌なだけよ。舞踏会で一回会って話した内容も覚えているかいないかの相手を将来添い遂げる相手として、そう簡単に選びたくないわ」
ウィレミナはセラフィーヌの寝台の端に座って、相槌を打った。
「良かった。お姉様には他に好いている人でもいるのかと思ってた」
ウィレミナが何気なく発したその言葉に、セラフィーヌは初めて雑誌から目を離して妹の顔をじっと見た。
「どうしてそう思ってたの?」
「だって社交界は恋愛の場でしょ?恋愛ありきの社交界だって、ミセス・エルシーが述べていたわ」
セラフィーヌは聞きなれない名前に眉を寄せる。
「ミセス・エルシーって誰なの?」
「ノックストーク誌の社交コラムを書いている人よ」
「もしかしてゴシップ誌?」
セラフィーヌの問いにウィレミナは何気なく顔を不向けた。それをセラフィーヌは「答えたくない」と受け取ったらしい。実際「答えたくない」のではなく、どんなものがゴシップ誌というものなのか、わからなかっただけなのだ。
「ミナでもそんな雑誌を読むのね。妹なのに知らないことばかりだわ。きっと」
セラフィーヌは微笑んでウィレミナの眉間に垂れ下がった、一房だけ長い髪を後ろに避けた。
「ねぇ、知ってる?ここの部屋と、ミナの部屋。間にドアがあるのよ。普段パーテーションとカーテンで見えないけど…」
そう言ってセラフィーヌはベッドを降りて、壁に近寄り、パーテーションを折り畳んだ。そして、その背後のカーテンをめくる。
すると、カーテンの影から、木の壁と同じ色の扉が現れた。しかし、ドアノブがない。
「ここをね、こうやって押すと…」
そう言いながら、セラフィーヌが扉の真ん中辺りを押すと、くるっとピースが飛び出て、小さな輪っかが真ん中にできた。
「このドアね、両開きみたいなの。押せば開くのよ」
セラフィーヌが扉を押すと、木が発するギシギシという音と共に扉が開いて、向こうにウィレミナの部屋に置いてあるランプが見えた。
「明日は、わたしがあなたの部屋にお邪魔するわ。さぁ、寝ましょう」
セラフィーヌの笑顔に、ウィレミナは応えてその扉を通った。
0
あなたにおすすめの小説
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる