独り立ちしたい姉は、令嬢ながらにお金を稼いでた

子猫文学

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第二章 不穏な夕食会

#6 姉妹

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 「お姉様。ディキンソン卿のどこがそんなに嫌なの?次男でディキンソン侯爵の爵位を継げないから?」

 その夜、ウィレミナがセラフィーヌの部屋を訪ねると、セラフィーヌは寝台の上で両足を立てて雑誌を読んでいた。

 「違うわ。あぁ、違くないかもしれないけれど。
  とりあえず、お父様が結婚を押し付けるのが嫌なだけよ。舞踏会で一回会って話した内容も覚えているかいないかの相手を将来添い遂げる相手として、そう簡単に選びたくないわ」

 ウィレミナはセラフィーヌの寝台の端に座って、相槌を打った。

 「良かった。お姉様には他に好いている人でもいるのかと思ってた」

 ウィレミナが何気なく発したその言葉に、セラフィーヌは初めて雑誌から目を離して妹の顔をじっと見た。

 「どうしてそう思ってたの?」

 「だって社交界は恋愛の場でしょ?恋愛ありきの社交界だって、ミセス・エルシーが述べていたわ」

 セラフィーヌは聞きなれない名前に眉を寄せる。

 「ミセス・エルシーって誰なの?」

 「ノックストーク誌の社交コラムを書いている人よ」

 「もしかしてゴシップ誌?」

 セラフィーヌの問いにウィレミナは何気なく顔を不向けた。それをセラフィーヌは「答えたくない」と受け取ったらしい。実際「答えたくない」のではなく、どんなものがゴシップ誌というものなのか、わからなかっただけなのだ。

 「ミナでもそんな雑誌を読むのね。妹なのに知らないことばかりだわ。きっと」

 セラフィーヌは微笑んでウィレミナの眉間に垂れ下がった、一房だけ長い髪を後ろに避けた。

 「ねぇ、知ってる?ここの部屋と、ミナの部屋。間にドアがあるのよ。普段パーテーションとカーテンで見えないけど…」

 そう言ってセラフィーヌはベッドを降りて、壁に近寄り、パーテーションを折り畳んだ。そして、その背後のカーテンをめくる。
 すると、カーテンの影から、木の壁と同じ色の扉が現れた。しかし、ドアノブがない。

 「ここをね、こうやって押すと…」

 そう言いながら、セラフィーヌが扉の真ん中辺りを押すと、くるっとピースが飛び出て、小さな輪っかが真ん中にできた。

 「このドアね、両開きみたいなの。押せば開くのよ」

 セラフィーヌが扉を押すと、木が発するギシギシという音と共に扉が開いて、向こうにウィレミナの部屋に置いてあるランプが見えた。

 「明日は、わたしがあなたの部屋にお邪魔するわ。さぁ、寝ましょう」

 セラフィーヌの笑顔に、ウィレミナは応えてその扉を通った。
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