独り立ちしたい姉は、令嬢ながらにお金を稼いでた

子猫文学

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第五章 社交シーズン(セラフィーヌ)

さぁ、踊りあかそう

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 「きっとテンポの良いダンスを踊っているのですね。にぎやかな速い曲が聞こえます」

 セラフィーヌは遠くにぼんやりと見え始めた灯りの方を向いて言う。

 その灯りはだんだん明確となり、それがダンスホールの周りを繋いでいる飾りだとわかる。手前にはテントがあり、椅子やテーブルが並べられ、そこで休憩する人々の姿が見える。

 「あなたはテンポの速い曲が好きでしたね」

 と、ヘイウッドが言う。

 「昨年、テンポの速い曲をとても軽やかに踊っていたのをよく覚えていますよ」

 「えぇ、北国発祥のダンスのような、弦楽器に合わせて軽やかに踊るものが好きなんです」

 そこで初めてディキンソン卿は、セラフィーヌのダンスの好みを知った。セラフィーヌがデビューしてから、毎年欠かさず踊っていたものの、それは皆舞踏会ののんびりとした優雅なものばかりだったからだ。
 もちろん、通常と比べて速いダンスもあった。しかしそれは、北国発祥のダンスとは比べ物にならないほど、依然のんびりとしたものだ。

 ヴァイオリンの合奏が聞こえ、女性がヒールで木の床を打つ音も聞こえ始める。
 
 舞踏会でのダンスは、男性が女性の腰に手を添えて踊るが、そこではなんでもありだった。皆カップルは両手を繋いでくるくると回り、元のダンスを少しアレンジして踊っている者もいる。

 「今年も賑やかですね!人がたくさんだわ」

 セラフィーヌは興奮して、あたりをちらちらと見渡している。

 「どうです?ダンスの相手になってくれますか?」
 
 そうセラフィーヌに提案したのは、ディキンソン卿だった。

 「最初のダンスを共に踊ってくれると約束したのを覚えていますか?」

 ディキンソン卿はいたずらっけのある視線を、セラフィーヌに送っていた。

 「えぇ、踊りましょう」


 ***


 「やっと見つけたわ。どうやらバーナビーと私は見当違いの場所を探していたようね。ところで、セラフィーヌさんは?」

 はぐれていたルクリアとバーナビーがヘイウッドの元へとやってきた。

 「ディキンソン卿と踊っているよ」

 「あら、先を越されたのね」

 なぜか残念そうな表情をしていたのは、ルクリアの方だった。

 「あのふたりは本当に結婚秒読みだよ。私の付け入る隙などないよ」

 「そういうってことは認めるのね。セラフィーヌさんに特別な想いがあること」

 「認めるしかないだろう」

     諦めたようなヘイウッドの口調を聞いて、ルクリアが言葉を次ぐ。

    「もう少ししたらセラフィーヌさんもディキンソン卿も戻ってくるわ。そうしたら、セラフィーヌさんをダンスに誘うのよ」


 
 
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