独り立ちしたい姉は、令嬢ながらにお金を稼いでた

子猫文学

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第五章 社交シーズン(セラフィーヌ)

さぁ、踊りあかそうⅢ

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 「お嬢様、次は私と踊って頂けますか?」

 ディキンソン卿とセラフィーヌが、休憩場となるテントの方へと歩みを進めると、その前を横切るように男が立ちはだかった。
 
 「リヴァヴァルト卿!」

 リヴァヴァルト卿が人の多い中、高い柱のようにまっすぐと立つその姿を見て、セラフィーヌは場の雰囲気とリヴァヴァルト卿が醸し出す雰囲気が全く似合っていないと思った。

 「セラフィーヌ嬢?」

 「え、えぇ…。踊りましょう」

 
 ***


 突然、背の高い容姿端麗な青年が現れて目の前に立ちはだかった時、ディキンソン卿はその青年を記憶の中から探すことに夢中になった。

 ……この男、どこかで見たことある。

 その男はセラフィーヌをダンスに誘った。セラフィーヌはディキンソン卿の方をちらりと見て、言葉を重くしながらダンスを承諾した。

 「セラフィーヌ嬢、こちらの方は?」

 「リヴァヴァルト卿です。リヴァヴァルト公爵のご子息ですわ」

 「はじめまして」

 ディキンソン卿がそういうと、リヴァヴァルト卿は手のひらを差し出して、二人は握手をした。

 「では、踊りましょうか」

 リヴァヴァルト卿が言葉を発して、セラフィーヌの手を引いて、ダンスをしに行った。


 ***


 「あら、どうしたのかしら」

 ルクリアが言いながら向く方向には、ディキンソン卿がこちらに歩いてくるのが見える。

 「セラフィーヌ嬢がいないわ」

 心なしか、ディキンソン卿は俯いて見える。
 それを見たヘイウッドも、無意識のうちに、遠くの方にセラフィーヌを探し始めていた。

 「ディキンソン卿、セラフィーヌ嬢はどうしたのかしら?」

 「リヴァヴァルト卿にダンスに誘われて、戻りました」

 「あら、リヴァヴァルト卿がいらしていたの?」

 と、ルクリア。

 「えぇ。彼をご存知で?」

 ディキンソン卿が聞くと、ルクリアは言いにくそうな表情をして、

 「先ほど、我が家で開いていた夕食会にいらしていたんです」

 「今シーズンのうちに、また夕食会や舞踏会を開く予定なので、いらしてください」

 ルクリアの背後にいたバーナビーが、ルクリアの言葉に次いで言う。彼はこう言うふうにして、さまざまな人を招待するので、毎度人数が当初の予定よりも増えていくのだ。

 「えぇ、ありがとうございます。来週デビュタントの翌日に我が家でも舞踏会を開くので、ぜひいらしてください。セラフィーヌ嬢のご家族もお誘いする予定なのです」

 

 ***



 「残念だったわね。あのリヴァヴァルト卿に先を越されたわよ」

 ルクリアがそっとヘイウッドにいう。その体は少しヘイウッドの方へ傾けているが、視線は正面を向いたままだった。

 「からかい過ぎるのも良くないぞ」

 「本心だって。信じてちょうだい」

 
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