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第六章 社交シーズン(ウイレミナ)
デビュタント
しおりを挟む「いよいよ、明日はデビュタントですからね。今日は早めに寝なさい」
まだお昼のうちから、母のケイトがウィレミナに言った。
さらにウィレミナの気が重くなったのは言うまでもない。
「あとでお母様のお気に入りの香油を届けるから、メイドに手伝ってもらって前日の準備もなさいね」
部屋に戻って、ウィレミナはベッドに身を投げ出して、淑女らしからぬ行為に、満面の笑みを浮かべた。
「私にも、お姉さまのように何か熱中できることがあればいいのに…」
そのまま何もしないで、そこに横たわっているよりも、何かをした方が得策なのは明らかだった。重い頭を持ち上げて、ベッドの枕元にある紐を思い切り引っ張ってアイヴィーを呼ぶ。
毎度アイヴィーを呼ぶタイミングはバラバラにもかかわらず、彼女は用意周到にウィレミナの元に現れるのだった。
そのとき、アイヴィーは特別な化粧品のセットと翌日に着る予定の下着を持って現れた。
「そろそろ、呼ばれる頃かと思いまして」
アイヴィーは言う。
そのままウィレミナは明日のための用意をしながら、アイヴィーとの時間を過ごしたのだった。
***
翌日…
使用人たちが美しく飾りつけた馬車が屋敷の門前に佇んでいた。ウィレミナを象徴する花であるミモザが馬車の四隅に飾り付けられ、屋敷の者全員がミモザを胸元につけている。
「おめでとう。ミナ」
そう言いながらウィレミナの寝室に入ってきたのは、セラフィーヌと母ケイトである。ケイトはミモザを髪に質素に刺し、セラフィーヌは片手にミモザの花束を持っている。
「この花瓶にミモザを生けておくわね」
セラフィーヌの耳元にはミモザがモチーフのイヤリングが輝いていた。
一方のウィレミナは純白のドレスを纏って鏡台を前にして座っていた。まだ髪飾りはつけていない。デビューをする令嬢は皆、白いベールが垂れた髪飾りをつけるのが慣例なので、出発するギリギリまでつけないのだ。
「今日の予定を話し合いましょう」
ケイトがそういうと、そばにあった可愛らしい一人掛けの椅子に腰を下ろした。
「私とミナ、そしてお父様は拝謁のために宮殿に入ったら、国王様の元へ行くわ。サラは左手に行って宮殿開催のお昼食会に参加ね。全ての行事が終わったら、一度皆でここに帰ってきて、キースリー宮殿の舞踏会の準備をしましょう」
その日のケイトは、いつも以上に美しかった。グレーの光沢のあるドレスを着ており、髪には羽飾りをつけている。
「とうとうね。あなたが生まれて16年間、長いようであっという間だったわね」
ケイトはにっこりと微笑んでささやき、優しくウィレミナの頬をつついた。
「二人の娘を社交界へ送り出したわ…」
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