独り立ちしたい姉は、令嬢ながらにお金を稼いでた

子猫文学

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第六章 社交シーズン(ウイレミナ)

拝謁

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 それぞれの馬車が、色とりどりの花に彩られて、宮殿前の道を等間隔に走っていた。
 窓から見えるのは、道に沿って列をなす衛兵たちの姿と飾り付けられた道側の花々だった。

 膝を寄せ合って、侯爵とセラフィーヌ、ケイトとウィレミナが向かい合って座る。規定通り軍服に身を包んだ侯爵は苦しそうに首元を触っていた。

 「苦しいの?ヒュー」

 ケイトが聞くと、ヒューは顔をしかめて、違う、と一言言った。

 ケイトはにこっとして、セラフィーヌを見、「緊張しているのね」とからかうように言った。

 「ミナは緊張してる?」

 「いいえ、お母様。そんなに緊張してないわ」

 「さすが、ミナだな。昔からミナは本番に強いから」

 ヒューが言った。


 ***


 宮殿内に入ってすぐに、宮殿に仕える使用人が必ず隅や階段の袂に彫像のように立っている。

 「それじゃあ、お母様、お父様、ミナ。後ほど。ミナ、楽しんできてね」

 入り口で、セラフィーナは家族にそう声をかけて左側に立ち去って行った。若いが羽根飾りのつけていない令嬢や、堅苦しい服装に身を包んだ青年たちがその部屋に吸い込まれるように消えていく。

 「私たちも行きましょうか」

 ケイトがそう言い、ウィレミナを先頭にして、オルヴィス一家は厳かに正面の階段を登り始めた。
 
 一段、一段、登るごとにウィレミナは宮殿の豪華さに圧倒されてしまった。

 「すごいわ」

 うっかりと口を開けてつぶやいてしまう。我慢していなければ、更なる歓声をその場で発していたことだろう。

 「私はこちらのようだ」

 正面階段の踊り場に差し掛かった時、そうオルヴィス侯爵が言って、左手側に進む。オルヴィス侯爵とは背を向けるようにして、ケイトとウィレミナは右側に進んだ。


 『……公爵令嬢とその母君……夫人!』

 『……伯爵令嬢とその姉君……伯爵夫人!』

 ホールの入り口で通る声を持った侍従長が、拝謁をする令嬢やその近親者の名を大声で紹介している。

 「私も呼ばれるの?お母様」

 突然不安に襲われてウィレミナが、母の方を向く。しかし母はただにこりと微笑んだだけだった。

 
 ***


 「ウィレミナ・オルヴィス侯爵令嬢とその母君、夫人!」

 侍従の声が響いた瞬間、ホール内がしんと静まり返った。

 ウィレミナは厳かに進み出て、静かに膝を折る。なんとも優雅で静かで、目立たない拝謁だった。

 「そなたがセラフィーヌ嬢の妹君ですね」

 静まった中、若い男の声が響いた。
 
 拝謁する令嬢に声をかけられるのは、唯一王と王妃、そして皇太子である。

 「えぇ。そうでございます。殿下」

 ウィレミナは視線を上げずに答えた。

 「姉君の吉報を今度こそ聞けると信じておりますよ、侯爵夫人」

 今度は王妃が言葉を発した。

 「光栄でございます。王妃殿下」

 
 滞りなく拝謁が終わり、流れるようにウィレミナとケイトは隣室に通された。

 「まさか、セラフィーヌのことを聞かれるとは思っていなかったわ」

 終わって一番ホッとしている表情を浮かべていたのはケイトだった。

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