独り立ちしたい姉は、令嬢ながらにお金を稼いでた

子猫文学

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第六章 社交シーズン(ウイレミナ)

昼食会

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 「これはこれは、再び会いましたね、セラフィーヌ嬢」

 昼食会の会場となるのは、宮殿を抜けてその奥に広がる、王室が管理している庭園だった。

 季節の花々が見事で、その間を日差しを遮るように簡易的な作りの建物が走っている。毎年昼食会のために作られるものだ。

 その建物の中を等間隔を開けて、丸い6人がけのテーブルが設置してあり、昼食が運ばれてくるのをただ待っている。

 「リヴァヴァルト卿……」

 背後にいたのはリヴァヴァルト卿だった。

 「昼食会、ご一緒していただけませんか?」

 「えぇ」

 セラフィーヌはリヴァヴァルト卿に手を取られ、同じテーブルで食事をすることになった。

 この王室主催の昼食会に招待されるのは伯爵以上の爵位を有する未婚の貴族、あるいは、その令嬢や令息であった。モットレイ子爵は未婚だが、伯爵以下の爵位なので、招待されていない。通常であればディキンソン卿も侯爵令息なので招待されているはずだが、セラフィーヌは彼の姿を探しても見当たらなかった。

 「セラフィーヌ嬢、今夜のキースリー宮殿での舞踏会で踊る相手は決まっているのでしょうか?」

 誰にも聞かれない大きさの声で、リヴァヴァルト卿が聞く。耳元に顔を近づけられた気がして、セラフィーヌは反射的に顎を引いてしまった。

 「はい…。ディキンソン卿と約束をしておりますわ」

 セラフィーヌがそういうと、リヴァヴァルト卿は目を細める。

 「彼は、幸運ですね」

 「え?」

 するとそこに、更なる招待客が現れた。

 「オルヴィス侯爵令嬢、お久しぶりですわね」

 セラフィーヌとリヴァヴァルト卿が座るテーブルにやってきたのは、アーリス公爵令嬢カレンと、ルカ・グウィリス公爵令息ヒンスだった。このふたりはセラフィーヌよりひとつ年上で、結婚秒読みと言われている。昨年の社交シーズンで婚約する話が持ち上がったのだが、アーリス公爵令嬢の兄がシーズン中に不慮の事故で亡くなったため、先送りとなってしまっていた。カレンの兄が死んでしまったことで、身内に男子のいないアーリス公爵家には正当な後継者がいなくなり、一方のヒンス・ルカ・グウィリス公爵令息は一族唯一の後継者である。このふたりが結婚すれば、莫大な富が動くことは明白で、王室も注目していると噂が立っていた。

 カレン・アーリスの登場で、リヴァヴァルト卿は礼儀に則って立ち上がる。そして、カレン・アーリスが座ったのを見届けると、同じく着席した。

 それから、ベルガ伯爵の令息とネオ卿が加わり、昼食会が始まった。
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