独り立ちしたい姉は、令嬢ながらにお金を稼いでた

子猫文学

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第六章 社交シーズン(ウイレミナ)

キースリー宮殿の舞踏会

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 たくさんの明かりの灯った馬車が列を成して進んでいく。昼間に通った道とほぼ同じだったのにも関わらず、ウィレミナは新しいものを見る目で、窓の外を見ていた。

 「キースリー宮殿の舞踏会に国王夫妻もいらっしゃるの?」
 
 ウィレミナが聞くと、

 「もちろん」と父ヒューが答える。
 「主催者は国王夫妻だからね」

 ヒューの言葉を継ぐようにケイトがいう。

 「最初のダンスは国王夫妻と、皇太子殿下とそのパートナーが踊り、二曲目から伯爵以上の爵位家系とそのパートナー、三曲目からその他の人たちが踊ることを許されるの。おそらく、最初の曲はワルツ続きよ。毎年そうだったから」

 「例外があることがあるの?」

 と、セラフィーヌ。

 「私がデビューしてからはまだないわ。だけど、先代国王が皇太子だった時に、一曲目からテンポの激しい曲で、足を挫いた人が続出したらしいわ」

 「舞踏会が平和の象徴ってわけではなさそうね」

 ポツリとセラフィーヌがつぶやいた。

 「舞踏会は婚期の令嬢たちの戦場よ。セラフィーヌ、あなたは戦っているのですからね。婚期を逃さないために努力しなさい。結婚できなかったらどうするの」

 そうケイトに厳しく言われて、セラフィーヌは‘しまった‘という顔をした。

 「そうだ、ディキンソン卿はとてもいい男だぞ。一曲目は彼と踊るのだろう?」

 父が母の言葉を追うようにいう。

 (お姉さまは天邪鬼だから、余計なことは言っちゃいけないのに…)

 と、ウィレミナは心の中でつぶやいた。


 ***


 舞踏会会場のキースリー宮殿について、貴族たちが次々と馬車から降りて行く。順番に宮殿内に入り、一番最初の部屋の奥で座っている国王夫妻に順にお辞儀をして、招待の礼を述べていた。それが終わると、彼らは幾つもの部屋を通り過ぎて、知り合いを探していた。

 天井の高いホールが舞踏会のメイン会場で、そこで国王夫妻が初めのダンスをする予定だった。その両隣の部屋もダンス専用の部屋で、大勢の楽団が既に曲を静かに弾きながら、客人を迎えている。

 王室特有の赤い制服に身を包んだ使用人がグラスが並べられたプレートを持ちながら辺りを歩いて、客人にシャンパンを配っていた。ダンス専用の部屋より外側には甘いお菓子と小皿に盛られた料理が並べられて、空腹を満たせるようになっている。

 「セラフィーヌ嬢?」

 呼び止められてセラフィーヌが振り返ると、そこには黒い最高礼服をまとったディキンソン卿がいた。

 「ディキンソン卿」

 見知った顔を確認したセラフィーヌは安心して、ディキンソン卿に近づいた。


 ***


 キースリー宮殿に入ると、セラフィーヌはすぐに別れ、ウィレミナは両親について、中に入った。

 そして、そこで思い立ったのだ。

 「お母様、私ダンスの相手いなかったわ」
 

 
 
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