独り立ちしたい姉は、令嬢ながらにお金を稼いでた

子猫文学

文字の大きさ
48 / 48
第六章 社交シーズン(ウイレミナ)

キースリー宮殿の舞踏会

しおりを挟む

 たくさんの明かりの灯った馬車が列を成して進んでいく。昼間に通った道とほぼ同じだったのにも関わらず、ウィレミナは新しいものを見る目で、窓の外を見ていた。

 「キースリー宮殿の舞踏会に国王夫妻もいらっしゃるの?」
 
 ウィレミナが聞くと、

 「もちろん」と父ヒューが答える。
 「主催者は国王夫妻だからね」

 ヒューの言葉を継ぐようにケイトがいう。

 「最初のダンスは国王夫妻と、皇太子殿下とそのパートナーが踊り、二曲目から伯爵以上の爵位家系とそのパートナー、三曲目からその他の人たちが踊ることを許されるの。おそらく、最初の曲はワルツ続きよ。毎年そうだったから」

 「例外があることがあるの?」

 と、セラフィーヌ。

 「私がデビューしてからはまだないわ。だけど、先代国王が皇太子だった時に、一曲目からテンポの激しい曲で、足を挫いた人が続出したらしいわ」

 「舞踏会が平和の象徴ってわけではなさそうね」

 ポツリとセラフィーヌがつぶやいた。

 「舞踏会は婚期の令嬢たちの戦場よ。セラフィーヌ、あなたは戦っているのですからね。婚期を逃さないために努力しなさい。結婚できなかったらどうするの」

 そうケイトに厳しく言われて、セラフィーヌは‘しまった‘という顔をした。

 「そうだ、ディキンソン卿はとてもいい男だぞ。一曲目は彼と踊るのだろう?」

 父が母の言葉を追うようにいう。

 (お姉さまは天邪鬼だから、余計なことは言っちゃいけないのに…)

 と、ウィレミナは心の中でつぶやいた。


 ***


 舞踏会会場のキースリー宮殿について、貴族たちが次々と馬車から降りて行く。順番に宮殿内に入り、一番最初の部屋の奥で座っている国王夫妻に順にお辞儀をして、招待の礼を述べていた。それが終わると、彼らは幾つもの部屋を通り過ぎて、知り合いを探していた。

 天井の高いホールが舞踏会のメイン会場で、そこで国王夫妻が初めのダンスをする予定だった。その両隣の部屋もダンス専用の部屋で、大勢の楽団が既に曲を静かに弾きながら、客人を迎えている。

 王室特有の赤い制服に身を包んだ使用人がグラスが並べられたプレートを持ちながら辺りを歩いて、客人にシャンパンを配っていた。ダンス専用の部屋より外側には甘いお菓子と小皿に盛られた料理が並べられて、空腹を満たせるようになっている。

 「セラフィーヌ嬢?」

 呼び止められてセラフィーヌが振り返ると、そこには黒い最高礼服をまとったディキンソン卿がいた。

 「ディキンソン卿」

 見知った顔を確認したセラフィーヌは安心して、ディキンソン卿に近づいた。


 ***


 キースリー宮殿に入ると、セラフィーヌはすぐに別れ、ウィレミナは両親について、中に入った。

 そして、そこで思い立ったのだ。

 「お母様、私ダンスの相手いなかったわ」
 

 
 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

処理中です...