7 / 47
第二話 学校の七不思議
作戦会議 sideフェル
しおりを挟む
「エリーフェ。ここにいたんですか。」
そう言うと君は満面の笑みで振り返った。『フェル様!』と僕の姿を見て笑う姿は昔飼っていた犬のようだった。まるで尻尾が見えているかのような表情のわかりやすさ。単純…。いかにも脳の面積が足りない奴の顔だ。
すかさず彼女の心配をする。僕が初めて会ったときから彼女は倒れている。禁忌を犯した、禁術紛いの事をしたから体が追いついていないのか?
…これだから魔術は興味深いと思ってしまう。今ここに、いつ倒れるのかわからない人が居るというのに僕は魔術の方に興味がいってしまう。
もし、ヒロインとされているあの子ならば、救国の聖女となる僕の初恋の人ならば、魔術よりも夢中になれるものを教えてくれるのではないのかと、淡い期待を抱きながら僕はあの子を探している。
くだらない思考をやめ、エリーフェとの約束を取り付け寮に戻って支度をする。談話室のセッティング完了、全て予習通り。共用スペースに行くと丁度来たであろうエリーフェがいた。
「エリーフェ。」
「どわっ!!」
急に声をかけられびっくりした彼女は、女性でありながら間抜けな声を出して僕の方に振り返った。談話室まで案内するとお菓子屋や茶が置かれているのに気づいて、いかにも美味しそうという顔をしたと思えば直ぐに表情を曇らせた。コロコロ表情を変えて楽しそうな奴だと思いつつ本題に入った。
「では早速、前回の続きを話そう。」
「はい!っと…その前に一つお聞きしたいのですが。口調変わりました?」
どうやら彼女は僕の口調が先程から変わっていたことに気づいたようだった。もう既に僕の本性は彼女にバレている様だし、繕うだけ苦労者というところだから猫被りはやめた。
まあ真っ当な理由をつけるとしたら禁術、禁忌レベルの事だ、秘密を共有した共犯者くらいの仲なのだからタメでいいだろうと言ったところか。
早速、彼女から情報を貰う。少しでもあの子の事を知るために。
「まずはですね…こちら!救国の聖女、フェル様の攻略対象!リイス•クリスチャーヌです!」
「……リイス。」
名前を呼ぶとしっくりくる様な感覚がする。忘れない様に、持ってきたメモ用紙にペンを走らせる。
『リイス•クリスチャーヌ』確かに幼い頃見たあの笑顔にぴったりの名前。記憶のカケラと共に名前に魔術を刻む、これで後はあの子の魔力をここに注ぐと…あの時会った人が本当に彼女なのか、確かめる事ができる。
でもこれを成功させるには3年で習う『証人魔術』を習得しなければならない。…エリーフェ、君が知っている僕はこれを行ったのかい?
気になる点を残しつつ彼女の話を聞いていたら、
…学園の名前を覚えていない…と。
これが自分の婚約者なのだと頭を抱えてしまうが、あの子の新しい情報として1番初めに会ったのは僕だと伝えられたものだからつい許してしまった。
魔術に対しての知識を聞いても属性が一つ足りなかった、仮にも愛読小説。彼女の記憶力がないのかはては、作者がそれを省いていたか。
真相は分からないが、恐らく彼女が知っている僕は小説に記載されている範囲外のところで『証人魔術』を使用した可能性もある。
一体、僕は何を思って彼女を諦めたのだろうか。
王子の婚約者だからが本当の理由なのだろうか。推理小説の読み過ぎからか深読みに入ってしまう。考えたとて出てこない事実なのだから。
とりあえず失敗してもいいよう、この婚約者の頭をどうにか良くしなければと勉強会を取り付けた。
そう言うと君は満面の笑みで振り返った。『フェル様!』と僕の姿を見て笑う姿は昔飼っていた犬のようだった。まるで尻尾が見えているかのような表情のわかりやすさ。単純…。いかにも脳の面積が足りない奴の顔だ。
すかさず彼女の心配をする。僕が初めて会ったときから彼女は倒れている。禁忌を犯した、禁術紛いの事をしたから体が追いついていないのか?
…これだから魔術は興味深いと思ってしまう。今ここに、いつ倒れるのかわからない人が居るというのに僕は魔術の方に興味がいってしまう。
もし、ヒロインとされているあの子ならば、救国の聖女となる僕の初恋の人ならば、魔術よりも夢中になれるものを教えてくれるのではないのかと、淡い期待を抱きながら僕はあの子を探している。
くだらない思考をやめ、エリーフェとの約束を取り付け寮に戻って支度をする。談話室のセッティング完了、全て予習通り。共用スペースに行くと丁度来たであろうエリーフェがいた。
「エリーフェ。」
「どわっ!!」
急に声をかけられびっくりした彼女は、女性でありながら間抜けな声を出して僕の方に振り返った。談話室まで案内するとお菓子屋や茶が置かれているのに気づいて、いかにも美味しそうという顔をしたと思えば直ぐに表情を曇らせた。コロコロ表情を変えて楽しそうな奴だと思いつつ本題に入った。
「では早速、前回の続きを話そう。」
「はい!っと…その前に一つお聞きしたいのですが。口調変わりました?」
どうやら彼女は僕の口調が先程から変わっていたことに気づいたようだった。もう既に僕の本性は彼女にバレている様だし、繕うだけ苦労者というところだから猫被りはやめた。
まあ真っ当な理由をつけるとしたら禁術、禁忌レベルの事だ、秘密を共有した共犯者くらいの仲なのだからタメでいいだろうと言ったところか。
早速、彼女から情報を貰う。少しでもあの子の事を知るために。
「まずはですね…こちら!救国の聖女、フェル様の攻略対象!リイス•クリスチャーヌです!」
「……リイス。」
名前を呼ぶとしっくりくる様な感覚がする。忘れない様に、持ってきたメモ用紙にペンを走らせる。
『リイス•クリスチャーヌ』確かに幼い頃見たあの笑顔にぴったりの名前。記憶のカケラと共に名前に魔術を刻む、これで後はあの子の魔力をここに注ぐと…あの時会った人が本当に彼女なのか、確かめる事ができる。
でもこれを成功させるには3年で習う『証人魔術』を習得しなければならない。…エリーフェ、君が知っている僕はこれを行ったのかい?
気になる点を残しつつ彼女の話を聞いていたら、
…学園の名前を覚えていない…と。
これが自分の婚約者なのだと頭を抱えてしまうが、あの子の新しい情報として1番初めに会ったのは僕だと伝えられたものだからつい許してしまった。
魔術に対しての知識を聞いても属性が一つ足りなかった、仮にも愛読小説。彼女の記憶力がないのかはては、作者がそれを省いていたか。
真相は分からないが、恐らく彼女が知っている僕は小説に記載されている範囲外のところで『証人魔術』を使用した可能性もある。
一体、僕は何を思って彼女を諦めたのだろうか。
王子の婚約者だからが本当の理由なのだろうか。推理小説の読み過ぎからか深読みに入ってしまう。考えたとて出てこない事実なのだから。
とりあえず失敗してもいいよう、この婚約者の頭をどうにか良くしなければと勉強会を取り付けた。
0
あなたにおすすめの小説
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。
なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。
超ご都合主義のハッピーエンド。
誰も不幸にならない大団円です。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
小説家になろう様でも投稿しています。
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる