優しい夜のうた

びぅむ

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第3章 もう、恋なんてしない

佃島滋との出会い

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「だったら、何?」

「玲、帰れ!」

とレジの方からまた彼が叫ぶと、やがて彼女は私の腕を離し、何か言いたげに唇が微かに動いたけれど足早に去っていった。野次馬たちも、ようやくその場から散っていくと、私はまた顔を上げて彼を見た。彼はニコニコ笑いながら私に手招きをしている。私は溜め息をつくと、ゆっくりとレジに歩み寄った。

「なんで、私のこと、知ってるの?」

と私が尋ねると、彼は目を丸くして身を乗り出して、

「え?!まじで言ってんの?同じ学校なのに!」

と言うと、今度は私が驚いて身を乗り出した。

「同じ学校?」

「そ。俺、結構有名なんだけど、まだ俺を知らない女の子なんて、いるんだ」

彼はそう言って、ニコニコ笑っている。

頭、おかしいのかな?この人。それとも、からかわれてるだけ?

私はそう思うと、私は彼から目を逸らして、

「悪いけど、冗談に付き合ってる暇ないわ」

と言って彼に背を向けると、彼は慌てたように私の腕を掴んだ。

「ちょ………ちょっと待ってよ!俺の名前とか気になんないの?!」

と言って首を傾げると、私はまたチラッと彼を見つめた。

「俺さ、佃島つくだじましげるっていうんだ。滋って呼んでよ。あ、ちなみに学年は君の一つ上で……」

と言いかけると、私は眉をしかめて、

「……佃煮?へんなの」

と言うと、彼は頭を大きく横に振った。

「違うしッッ!それ、ガキん時のあだ名。だから、《滋》って呼んで……」

「さよなら」

私は完全に彼を無視して、店を出ていった。

私はスタスタと歩いて帰りながら、思い出して吹き出してしまった。


へんな人。

佃煮?なんだっけ……?

そうそう、佃島…滋…?

珍しい名前。

確かに 教室でそんな名前が話題になっていたような、気もする。そんなクラスの話題には、私は疎い。噂話をして笑い合える友達は、いない。心を許せる人なんか、誰もいないもの…。

また、考えがネガティブになってきた。

私の悪い癖。

前は、もっと楽観的だったはずなのに、いつの間にか、私は人の気持ちの裏を読んでしまうようになってしまった。

私は、家に着く時には、もう笑顔を忘れてしまっていた。
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