優しい夜のうた

びぅむ

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第5章 動き始めた疑惑

敵か味方か、刑事かストーカーか。

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私はゆっくりと目を開けた。

そこは初めて見る部屋だった。殺風景で何もない部屋。簡単な家具とテレビがあるだけ。目を開けて部屋を見回していると、

「萌梨ちゃん、起きた?」

と坂井さんが顔を覗き込むと、私は坂井さんを見上げた。この部屋には、今は他に誰もいないみたいだ。

「往診してもらって、注射も打ってくれたから、もう大丈夫。あとはゆっくり寝てなさい」

と言って無精髭が残る顎をさすりながら微笑んでいた。そこにインターホンが鳴って、坂井さんが玄関に向かって「へいへーい」と呟きながら歩いて玄関のドアを開けた。玄関から、滋先輩の声と坂井さんの声が聞こえてきて、佃島先輩が来たことが分かった。

「梶原さん」

そこで誰かに名前を呼ばれて、私はハッとして顔を上げると、その人が私に駆け寄ってきた。

目の前に渡部わたべ雪子さんが、いた。渡部さんは、心配そうに私の顔を覗き込むと、優しく頭を撫でてくれた。すると、先輩が渡部さんの隣で微笑み、

「俺が呼んだんだ。帰りたくないって言うから、泊まるにも、一応家に電話したほうがいいだろ?でも男の俺が電話するわけにもいかない。だから、雪子に来てもらったんだ」

と言うと、私は何故かじわっと涙ぐんでしまい、また眠りについてしまった。





「しかし、萌梨ちゃんが帰れないとなると、父親が帰るまで妹たちは食事ナシか…」

坂井理が腕を組みながらそうポツリと言うと、佃島と渡部は顔を見合わせて、

「坂井さん、なんでそんなことまで知ってるんだ?ほんとに刑事かよ。ストーカー?」

と佃島が尋ねると、坂井は気がついて顔を上げて佃島を見つめた。

「それはないよ。ま、そのへんは、萌梨ちゃんが元気になってから、ちゃんと話す。それより」

と言いながら、ふと渡部雪子を見ると、

「…よし、君。渡部さんだっけ。一緒に萌梨ちゃんちに行こう。佃島くんは、ここにいて萌梨ちゃんの看病!用事を済ませてくる。そしたら、君達も家に送り届けよう」

と言って、白い歯をニッと出して笑うと、佃島は身を乗り出した。

「俺は、帰らない!」

佃島がそう言うと、渡部は驚いて佃島を見てため息をつき、今度は坂井を見上げた。

「まぁ、とりあえず、坂井さんの言う、その用事を、済ませましょう」

と強く言うと、3人は顔を見合わせて頷いた。
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