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14.クラウスの憂鬱
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クラウスはエリーゼを送った帰りの馬車の中で結婚の申し込みを受け入れてくれた彼女のはにかむ笑顔を思い出していた。
自分では順調に距離を縮めていると思っていたが、クラウスの考える以上に彼女は身分を気にしていて逃げ出そうとしていた。明日からは公爵領に仕事で行くことになっており1週間は戻れない。もし告白を後回しにしていたらエリーゼはクラウスの前から姿を消していたかもしれない。今は侯爵夫妻に話を通して外堀をある程度埋めたので安心して行くことができる。
安堵の息をつきエリーゼに会ってからの今日までの自分の必死さを思い起こすと不思議な気持ちになる。
自分が誰かを愛し必死に求愛するなど想像もしたことがなかったのだから。
クラウスには女性不信な所がある。それは自分自身の経験からではなく兄の姿を見てのことだった。
兄アーベル・ヘンケルはクラウスより10歳年上で頭も良く理想的な公爵家当主である。兄には以前、家の取引に有利な令嬢と婚約をしていた。クラウスから見て二人は仲睦まじく見えた。兄は常に令嬢に丁寧に接し、節目の贈り物も必ず渡していた。令嬢も兄を慕っていると思っていたが、結婚もあと半年に控えたある日に令嬢はとある商人と駆け落ちした。皮肉にも結婚式に関わる品物を注文している商家の息子だった。だが兄は寛大にも婚約者もその家もその商人の家族にも責任を負わせず許した。なんと素晴らしい兄だと尊敬の念を抱いていたが……今となっては婚約者に興味がなかっただけだと分かる。
その後元婚約者はたったの二か月で平民の暮らしに耐えられないと駆け落ち相手を捨てアーベルにやり直したいと泣いて縋ってきた。駆け落ちは間違いだった、自分はアーベルを愛しているしアーベルも自分を愛しているはずだからやり直せるはずだと……。クラウスはその言い分を呆気にとられて聞いていた。優しい兄は許すのかと心配すれば、冷淡に突き放し今後もし付きまとうならあなたの家との取引は停止しますがどうしますかと静かに問いかけ追い払った。
令嬢に未練はないのかと聞いたら、もともと何とも思っていなかったが利益あっての結婚だから仕方なく受け入れただけだと言っていた。建前と本音の落差に兄の闇を垣間見た気がした。その後アーベルは傷心の振りをして縁談を遠ざけた。
当時11歳だったクラウスはその令嬢の態度に衝撃を受けていた。好きだと言って駆け落ちした相手を生活が辛いと簡単に捨てたのだ。覚悟の出奔ではなかったのか。そして本当はアーベルを愛していると言う。愛の安売りにひどく幻滅し悲しくなったのを覚えている。あの頃はまだ幼く未熟だったと思う。
クラウスは気付いていなかったが、良くも悪くもヘンケル家は溺愛体質らしい。今は亡き祖父もクラウスたちの父親も伴侶に対する愛情が過剰……過多……まあ、要は重いのだ。思い返せば父親の母親への構い方は異常……だった。子供達にすら激しい嫉妬を見せていたなと思う。小さい頃はそれが普通だと思っていたが大人になるにつれ違うことに気付いたが兄や自分は例外でそうならないと思っていた。
いざアーベルがクリスタと結婚すると父同様の執着心を見せる。比較すれば以前の婚約者にどれほど興味がなかったのか気の毒になるほど違うのだ。アーベルも愛情が持てないことをすまないと思っていたから駆け落ちは許したのだろうが、やっぱり戻りたいと言われても受け入れることができないのは当然だろう。
なかなか想う相手に出会えなかったアーベルが無事に妻を娶りクラウスは安心していた。
二人の姿を見ていると食傷気味にはなるがそれを見てクラウスは自分が結婚する事はないと思っていた。あれは……無理だと、アーベルのように一途に愛せる相手に出会えるとは思えなかった。
公爵は兄が継いだので自分は貴族籍を抜け平民として地道に公爵領を支えようと思っていた。公爵領は広すぎてアーベルだけでは管理できない。今は両親が領地にいて治めているがそろそろのんびりしたいと言っていた。
クラウスは人脈の必要性を考え文官として王宮にも勤めたが先日辞めて本格的に領地経営に携わるつもりでいた。
クラウスへの縁談は山の様に来ていて特に婿入りの話は多かったが、どれほどの美女でも資産家でも名家であっても興味は湧かずその気にはならなかった。
だが、アーベルはしきりに結婚を勧めるのだ。自分が幸せだからクラウスにも幸せなってほしいという気持ちは有難いがほっておいてほしい。だいたいアーベルの結婚も30歳を過ぎていたのだからクラウスにはまだ猶予があるはずだ。押し付けられる釣書は返却していたがある日お前の為にお茶会を開くと言われた。
「兄上、私は結婚しませんよ? どうしてもと言うなら兄上の子が生まれて跡継ぎが決まってから考えますよ」
いつもの断り文句だった。ずるいと思ったが親戚筋の中にはクラウスを自分の娘と結婚させてから兄を退けいずれは公爵にさせようと考える者もいる。アーベルの立場が盤石になるまではこの言い訳を使うつもりだった。いつもは引き下がるアーベルがだらしのない顔で笑っている。
「クラウス、その言い訳はもう使えないぞ。クリスタに子ができた。いい加減に諦めて相手を探せ」
クラウスは驚きアーベルの顔をまじまじと見た。
「兄上、おめでとうございます。だからそんな顔をしていたんですね」
「ありがとう。だがそんな顔をとは失礼な……まあいい。お茶会は来週だ。招待状は発送済みだからそのつもりで。それとクリスタの悪阻が重くて心配だから郊外に別邸を購入した。雑音で煩わせないようにしばらくそちらで過ごす。こちらにはたまに顔を出すが仕事は別邸で行う。すまないがクラウスにはフォローを頼むよ」
「分かりました。それにしてもお茶会など開かなくても公爵家に有利になる令嬢がいればその人と結婚しますよ?」
「駄目だ。それでは昔の私の様になる。自分で愛せる相手を探して幸せになれ。それとできれば使っていない爵位を継いでもらいたいが、もし好きになった相手の条件が婿入りな場合はそれを許す。お前が選んだのなら絶対に反対はしないから相談してくれ」
アーベルは真剣に心配してくれていた。クラウスは溜息をついて癖のある金髪をかき上げた。これ以上とぼけ続けるのは無理だろう。
「探してはみますけど期待はしないで下さいよ」
「きっと見つかるよ、クラウス」
母親にべったりの父親に代わって何かとクラウスの面倒を見てきたのはアーベルだ。クラウスとしてもアーベルの期待には出来るだけ応えたいが……。
このときのクラウスはお茶会が憂鬱で仕方なかった。
だからこのお茶会がきっかけで好きになれる女性を本当に見つけられるとは露程にも思っていなかった。
自分では順調に距離を縮めていると思っていたが、クラウスの考える以上に彼女は身分を気にしていて逃げ出そうとしていた。明日からは公爵領に仕事で行くことになっており1週間は戻れない。もし告白を後回しにしていたらエリーゼはクラウスの前から姿を消していたかもしれない。今は侯爵夫妻に話を通して外堀をある程度埋めたので安心して行くことができる。
安堵の息をつきエリーゼに会ってからの今日までの自分の必死さを思い起こすと不思議な気持ちになる。
自分が誰かを愛し必死に求愛するなど想像もしたことがなかったのだから。
クラウスには女性不信な所がある。それは自分自身の経験からではなく兄の姿を見てのことだった。
兄アーベル・ヘンケルはクラウスより10歳年上で頭も良く理想的な公爵家当主である。兄には以前、家の取引に有利な令嬢と婚約をしていた。クラウスから見て二人は仲睦まじく見えた。兄は常に令嬢に丁寧に接し、節目の贈り物も必ず渡していた。令嬢も兄を慕っていると思っていたが、結婚もあと半年に控えたある日に令嬢はとある商人と駆け落ちした。皮肉にも結婚式に関わる品物を注文している商家の息子だった。だが兄は寛大にも婚約者もその家もその商人の家族にも責任を負わせず許した。なんと素晴らしい兄だと尊敬の念を抱いていたが……今となっては婚約者に興味がなかっただけだと分かる。
その後元婚約者はたったの二か月で平民の暮らしに耐えられないと駆け落ち相手を捨てアーベルにやり直したいと泣いて縋ってきた。駆け落ちは間違いだった、自分はアーベルを愛しているしアーベルも自分を愛しているはずだからやり直せるはずだと……。クラウスはその言い分を呆気にとられて聞いていた。優しい兄は許すのかと心配すれば、冷淡に突き放し今後もし付きまとうならあなたの家との取引は停止しますがどうしますかと静かに問いかけ追い払った。
令嬢に未練はないのかと聞いたら、もともと何とも思っていなかったが利益あっての結婚だから仕方なく受け入れただけだと言っていた。建前と本音の落差に兄の闇を垣間見た気がした。その後アーベルは傷心の振りをして縁談を遠ざけた。
当時11歳だったクラウスはその令嬢の態度に衝撃を受けていた。好きだと言って駆け落ちした相手を生活が辛いと簡単に捨てたのだ。覚悟の出奔ではなかったのか。そして本当はアーベルを愛していると言う。愛の安売りにひどく幻滅し悲しくなったのを覚えている。あの頃はまだ幼く未熟だったと思う。
クラウスは気付いていなかったが、良くも悪くもヘンケル家は溺愛体質らしい。今は亡き祖父もクラウスたちの父親も伴侶に対する愛情が過剰……過多……まあ、要は重いのだ。思い返せば父親の母親への構い方は異常……だった。子供達にすら激しい嫉妬を見せていたなと思う。小さい頃はそれが普通だと思っていたが大人になるにつれ違うことに気付いたが兄や自分は例外でそうならないと思っていた。
いざアーベルがクリスタと結婚すると父同様の執着心を見せる。比較すれば以前の婚約者にどれほど興味がなかったのか気の毒になるほど違うのだ。アーベルも愛情が持てないことをすまないと思っていたから駆け落ちは許したのだろうが、やっぱり戻りたいと言われても受け入れることができないのは当然だろう。
なかなか想う相手に出会えなかったアーベルが無事に妻を娶りクラウスは安心していた。
二人の姿を見ていると食傷気味にはなるがそれを見てクラウスは自分が結婚する事はないと思っていた。あれは……無理だと、アーベルのように一途に愛せる相手に出会えるとは思えなかった。
公爵は兄が継いだので自分は貴族籍を抜け平民として地道に公爵領を支えようと思っていた。公爵領は広すぎてアーベルだけでは管理できない。今は両親が領地にいて治めているがそろそろのんびりしたいと言っていた。
クラウスは人脈の必要性を考え文官として王宮にも勤めたが先日辞めて本格的に領地経営に携わるつもりでいた。
クラウスへの縁談は山の様に来ていて特に婿入りの話は多かったが、どれほどの美女でも資産家でも名家であっても興味は湧かずその気にはならなかった。
だが、アーベルはしきりに結婚を勧めるのだ。自分が幸せだからクラウスにも幸せなってほしいという気持ちは有難いがほっておいてほしい。だいたいアーベルの結婚も30歳を過ぎていたのだからクラウスにはまだ猶予があるはずだ。押し付けられる釣書は返却していたがある日お前の為にお茶会を開くと言われた。
「兄上、私は結婚しませんよ? どうしてもと言うなら兄上の子が生まれて跡継ぎが決まってから考えますよ」
いつもの断り文句だった。ずるいと思ったが親戚筋の中にはクラウスを自分の娘と結婚させてから兄を退けいずれは公爵にさせようと考える者もいる。アーベルの立場が盤石になるまではこの言い訳を使うつもりだった。いつもは引き下がるアーベルがだらしのない顔で笑っている。
「クラウス、その言い訳はもう使えないぞ。クリスタに子ができた。いい加減に諦めて相手を探せ」
クラウスは驚きアーベルの顔をまじまじと見た。
「兄上、おめでとうございます。だからそんな顔をしていたんですね」
「ありがとう。だがそんな顔をとは失礼な……まあいい。お茶会は来週だ。招待状は発送済みだからそのつもりで。それとクリスタの悪阻が重くて心配だから郊外に別邸を購入した。雑音で煩わせないようにしばらくそちらで過ごす。こちらにはたまに顔を出すが仕事は別邸で行う。すまないがクラウスにはフォローを頼むよ」
「分かりました。それにしてもお茶会など開かなくても公爵家に有利になる令嬢がいればその人と結婚しますよ?」
「駄目だ。それでは昔の私の様になる。自分で愛せる相手を探して幸せになれ。それとできれば使っていない爵位を継いでもらいたいが、もし好きになった相手の条件が婿入りな場合はそれを許す。お前が選んだのなら絶対に反対はしないから相談してくれ」
アーベルは真剣に心配してくれていた。クラウスは溜息をついて癖のある金髪をかき上げた。これ以上とぼけ続けるのは無理だろう。
「探してはみますけど期待はしないで下さいよ」
「きっと見つかるよ、クラウス」
母親にべったりの父親に代わって何かとクラウスの面倒を見てきたのはアーベルだ。クラウスとしてもアーベルの期待には出来るだけ応えたいが……。
このときのクラウスはお茶会が憂鬱で仕方なかった。
だからこのお茶会がきっかけで好きになれる女性を本当に見つけられるとは露程にも思っていなかった。
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