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15.クラウスの出会い
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お茶会当日、公爵邸の庭で盛大なガーデンパーティーが開かれた。
招待客は兄が選んでいたので身元はしっかりしているが、とにかく積極的な令嬢が多かった。クラウスにべたべたと触れてくる。淑女としてのマナーをどこに置いてきたのか。とくにアデリア・ドナート伯爵令嬢は何度も釣書を送り返して断っているのに一向に諦めない。自分の良さを理解してほしいからまずは付き合ってくれと今日もクラウスに付きまとう。更に他の令嬢を邪険にするような振る舞いまでするのでクラウスは気分が悪くなった。たまにいる全く言葉の通じない令嬢だった。
だが、彼女ばかりを相手にはしていられない。クラウスはお茶会のホストである。上手くあしらって他の令嬢とも会話をするがクラウスと話の合う令嬢はいなかった。
クラウスとしてもどうせ結婚するならそばに居て落ち着く人が望ましいと思っていたが難しいものだ。
突然大きな音が庭園に響き渡った。
「ガッシャーーーン!!」
何事かと音の方を見れば、ひとりの令嬢が呆然と立っていた。その足元には粉々になった陶器の破片と一輪の花が落ちていた。どうやら花瓶を落としたようだ。
クラウスは視線で使用人に処理の合図を出すと数人の使用人が片付けに向かった。もう一度令嬢を見ればしきりに使用人に頭を下げながら、そっと落ちているガーベラの花を拾い何かを呟いている。口元を見て読唇した感じだと花にごめんねと言っていたようだ。そしてガーベラを近くのテーブルの花瓶に差していた。その姿が不思議とクラウスの頭に焼き付いて離れなかった。
ガーデンパーティーが終わるとアーベルに呼び出された。
「気に入った令嬢は見つかったか?」
何故かガーベラを持つ令嬢がよぎったが彼女とは話もしていないので何とも言えない。
そういえば出席していた令嬢は皆クラウスに必死に話しかけてきたが唯一話していないのは彼女だけだ。彼女はクラウスには興味がなかったのだろうか。よく分からないムカムカが胸の中に渦巻く。
「いえ特にはいませんでしたね」
「そうか……残念だな。ところで今日花瓶を割った令嬢がいたのだが、その令嬢が弁償がわりに働きたいと言うので図書室の整理を頼んだ。明日から私は別邸に行くので後のことはよろしく」
クラウスは怪訝そうな顔をする。
「弁償が必要な高額なものだったのですか? だからと言って令嬢に仕事をさせるのは問題ではありませんか?」
「必要ないと言ったが気が済まないと譲らないので頼んだ。彼女は爵位はないが感じのいい娘さんだったぞ」
アーベルはどこか意味深に言う。先程のクラウスの心を読んだのかと勘繰ってしまいそうだ。あのお茶会に爵位がない女性がいたとは兄はなにか企んでいるのだろうか。胡乱気に兄を見る。アーベルは肩をすくめると何も言わずいそいそと別邸にいる妻の元へ出発して行った。
翌日、朝から公爵家の仕事をこなしていたクラウスはアーベルが言っていた図書室の整理を任せた女性の話をふと思い出した。ガーベラを持つ姿が印象的でどうしても気になり話をしてみたいと思っていた。
思い立って部屋を出て図書室に向かう。扉に手を掛けようとしたら可愛らしい声の歌声が聞こえる。敢えてノックをせずそっと図書室に入れば脚立に乗って本棚の上段を確認している女性がいた。こっそり顔を覗き込めば、喜色満面に溢れ歌を口ずさんでいる。どこか音程が外れているのに暖かな気持ちにさせてくれる歌に思わず微笑んでしまう。
暫くそのまま聞いていたが本の整理に夢中で足元にクラウスがいることに全く気付かない彼女が可笑しくて笑ってしまった。彼女はその笑い声にようやく反応し慌てて脚立を降りてきた。
クラウスが笑っているのを不思議そうにしているので歌を歌っていたことを指摘すると真っ赤になっていた。どうやら無意識だったようだ。
ああ、この人が愛おしいとクラウスは突然思った。そしてあの歌声を再び聞きたいと望んだ。
クラウスはエリーゼを手に入れると決めるとすぐに行動に移した。まずは強引に昼食を一緒に摂る。警戒させないよう友人から始めるのが無難と考えた。彼女と共にする食事は今までで一番美味しく感じた。エリーゼも楽しそうだから同じ気持ちを抱いてくれていれば嬉しいと思う。
話をすれば趣味も合う上に彼女は頭がよく語学が堪能だ。隣国との取引が多い公爵領の仕事を補佐してもらえそうだ。エリーゼは好奇心が旺盛のようだから一緒に他国に旅行に行くのもいい……そこまで考えてクラウスはエリーゼと結婚したいと思っている自分に気付いた。
アーベルの言っていた生涯を共にしたいと望む人と出会えると言うのはこういうことかと納得した。クラウスの変化に聡い執事が使用人に指示を出し、エリーゼとの仲を後押ししてくれた。
翌日には別邸に行きアーベルにエリーゼに求婚するつもりでいると報告すれば早すぎると苦笑いをしていた。
「兄上は義姉上に出会って翌日にはプロポーズをしていましたよね。私は友人として距離を縮めるつもりです。兄上より常識的ですよ」
「まあ、それを言われると返す言葉はないな。それよりクラウス。一応これに目を通して置け」
受け取ったのは彼女の調査書だ。随分と準備がよすぎる……。
調査書に目を通せば彼女は両親を亡くしていた。その為成績がいいにも関わらず学園を辞めている。辛い思いや悲しい思いをしているはずなのにクラウスの見たエリーゼは笑顔で楽しげだ。これからはその笑顔を守るのは自分の役目だと密かに誓った。
「彼女はクリスタの推薦でお茶会に捻じ込んだ。それほど期待していたわけではないがいい結果に結びついてよかった」
「義姉上が?」
「詳しいことは私もまだ教えて貰えていないよ。ただ実家から招きたい女性がいると許可を求められただけだ。妹の家庭教師をしているらしいが侯爵夫妻も信頼しているし問題はない。結婚するならクラウスには伯爵位を継いでもらうから彼女には一度ハイゼ侯爵家と養子縁組をしてもらうことになるだろう」
アーベルはこの話をすればクリスタを喜ばせることができると満足気だ。
兄夫婦に上手く転がされた感はあるがエリーゼを手に入れることができるならば些事である。
公爵領にいる両親には報告の手紙を送り、ハイゼ侯爵夫妻には早めに養子縁組の依頼に行こうとクラウスは予定を立てた。
クラウスの行動は迅速だったが、そう簡単にことは進まなかった。
招待客は兄が選んでいたので身元はしっかりしているが、とにかく積極的な令嬢が多かった。クラウスにべたべたと触れてくる。淑女としてのマナーをどこに置いてきたのか。とくにアデリア・ドナート伯爵令嬢は何度も釣書を送り返して断っているのに一向に諦めない。自分の良さを理解してほしいからまずは付き合ってくれと今日もクラウスに付きまとう。更に他の令嬢を邪険にするような振る舞いまでするのでクラウスは気分が悪くなった。たまにいる全く言葉の通じない令嬢だった。
だが、彼女ばかりを相手にはしていられない。クラウスはお茶会のホストである。上手くあしらって他の令嬢とも会話をするがクラウスと話の合う令嬢はいなかった。
クラウスとしてもどうせ結婚するならそばに居て落ち着く人が望ましいと思っていたが難しいものだ。
突然大きな音が庭園に響き渡った。
「ガッシャーーーン!!」
何事かと音の方を見れば、ひとりの令嬢が呆然と立っていた。その足元には粉々になった陶器の破片と一輪の花が落ちていた。どうやら花瓶を落としたようだ。
クラウスは視線で使用人に処理の合図を出すと数人の使用人が片付けに向かった。もう一度令嬢を見ればしきりに使用人に頭を下げながら、そっと落ちているガーベラの花を拾い何かを呟いている。口元を見て読唇した感じだと花にごめんねと言っていたようだ。そしてガーベラを近くのテーブルの花瓶に差していた。その姿が不思議とクラウスの頭に焼き付いて離れなかった。
ガーデンパーティーが終わるとアーベルに呼び出された。
「気に入った令嬢は見つかったか?」
何故かガーベラを持つ令嬢がよぎったが彼女とは話もしていないので何とも言えない。
そういえば出席していた令嬢は皆クラウスに必死に話しかけてきたが唯一話していないのは彼女だけだ。彼女はクラウスには興味がなかったのだろうか。よく分からないムカムカが胸の中に渦巻く。
「いえ特にはいませんでしたね」
「そうか……残念だな。ところで今日花瓶を割った令嬢がいたのだが、その令嬢が弁償がわりに働きたいと言うので図書室の整理を頼んだ。明日から私は別邸に行くので後のことはよろしく」
クラウスは怪訝そうな顔をする。
「弁償が必要な高額なものだったのですか? だからと言って令嬢に仕事をさせるのは問題ではありませんか?」
「必要ないと言ったが気が済まないと譲らないので頼んだ。彼女は爵位はないが感じのいい娘さんだったぞ」
アーベルはどこか意味深に言う。先程のクラウスの心を読んだのかと勘繰ってしまいそうだ。あのお茶会に爵位がない女性がいたとは兄はなにか企んでいるのだろうか。胡乱気に兄を見る。アーベルは肩をすくめると何も言わずいそいそと別邸にいる妻の元へ出発して行った。
翌日、朝から公爵家の仕事をこなしていたクラウスはアーベルが言っていた図書室の整理を任せた女性の話をふと思い出した。ガーベラを持つ姿が印象的でどうしても気になり話をしてみたいと思っていた。
思い立って部屋を出て図書室に向かう。扉に手を掛けようとしたら可愛らしい声の歌声が聞こえる。敢えてノックをせずそっと図書室に入れば脚立に乗って本棚の上段を確認している女性がいた。こっそり顔を覗き込めば、喜色満面に溢れ歌を口ずさんでいる。どこか音程が外れているのに暖かな気持ちにさせてくれる歌に思わず微笑んでしまう。
暫くそのまま聞いていたが本の整理に夢中で足元にクラウスがいることに全く気付かない彼女が可笑しくて笑ってしまった。彼女はその笑い声にようやく反応し慌てて脚立を降りてきた。
クラウスが笑っているのを不思議そうにしているので歌を歌っていたことを指摘すると真っ赤になっていた。どうやら無意識だったようだ。
ああ、この人が愛おしいとクラウスは突然思った。そしてあの歌声を再び聞きたいと望んだ。
クラウスはエリーゼを手に入れると決めるとすぐに行動に移した。まずは強引に昼食を一緒に摂る。警戒させないよう友人から始めるのが無難と考えた。彼女と共にする食事は今までで一番美味しく感じた。エリーゼも楽しそうだから同じ気持ちを抱いてくれていれば嬉しいと思う。
話をすれば趣味も合う上に彼女は頭がよく語学が堪能だ。隣国との取引が多い公爵領の仕事を補佐してもらえそうだ。エリーゼは好奇心が旺盛のようだから一緒に他国に旅行に行くのもいい……そこまで考えてクラウスはエリーゼと結婚したいと思っている自分に気付いた。
アーベルの言っていた生涯を共にしたいと望む人と出会えると言うのはこういうことかと納得した。クラウスの変化に聡い執事が使用人に指示を出し、エリーゼとの仲を後押ししてくれた。
翌日には別邸に行きアーベルにエリーゼに求婚するつもりでいると報告すれば早すぎると苦笑いをしていた。
「兄上は義姉上に出会って翌日にはプロポーズをしていましたよね。私は友人として距離を縮めるつもりです。兄上より常識的ですよ」
「まあ、それを言われると返す言葉はないな。それよりクラウス。一応これに目を通して置け」
受け取ったのは彼女の調査書だ。随分と準備がよすぎる……。
調査書に目を通せば彼女は両親を亡くしていた。その為成績がいいにも関わらず学園を辞めている。辛い思いや悲しい思いをしているはずなのにクラウスの見たエリーゼは笑顔で楽しげだ。これからはその笑顔を守るのは自分の役目だと密かに誓った。
「彼女はクリスタの推薦でお茶会に捻じ込んだ。それほど期待していたわけではないがいい結果に結びついてよかった」
「義姉上が?」
「詳しいことは私もまだ教えて貰えていないよ。ただ実家から招きたい女性がいると許可を求められただけだ。妹の家庭教師をしているらしいが侯爵夫妻も信頼しているし問題はない。結婚するならクラウスには伯爵位を継いでもらうから彼女には一度ハイゼ侯爵家と養子縁組をしてもらうことになるだろう」
アーベルはこの話をすればクリスタを喜ばせることができると満足気だ。
兄夫婦に上手く転がされた感はあるがエリーゼを手に入れることができるならば些事である。
公爵領にいる両親には報告の手紙を送り、ハイゼ侯爵夫妻には早めに養子縁組の依頼に行こうとクラウスは予定を立てた。
クラウスの行動は迅速だったが、そう簡単にことは進まなかった。
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