1 / 12
第一章
第一話 プロローグ
しおりを挟む
この世界はテイマーで溢れている。
この世界では飼育している生き物をパートナーと呼び、テイマーはご飯を食べるときも、寝るときも、魔物と戦うときも、いついかなる時もパートナーと一緒に生活している。
すべてのテイマーはテイマーの頂点であるゴートテイマーになるために日々鍛錬している。
そんな世界に産まれた僕、エンニオ・ミドルもゴートテイマーになることを夢見て日々生活していた。
この話は、僕がテイマーの頂点であるゴートテイマーになるまでの話である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕が生まれたのは貴族でも王族でもない、ごく普通の家庭だった。
お父さんもお母さんもテイマーの、ごく普通の。
僕たち家族の暮らしはとても幸せなものだった。一緒にご飯を食べたり、食卓を囲んだり、眠ったり。
そんな暮らしが一変したのは僕が13歳の誕生日を迎えた年、そう『パートナー契約』の儀式の日からだった。
「行ってきます!」
僕は元気よく扉を開け、お父さんとお母さんに手を振る。
「「行ってらっしゃい」」
「気を付けていくのよ~」
僕は走って『パートナー契約』の儀式が行われる教会へ向かった。
教会の近くに到着すると、すでにたくさんの人たちが年に一度の儀式のための出し物で賑わっていた。
僕はそんな人ごみの中を掻き分けながら教会へ向かった。
教会の前まで行き、受付を済ませて中に一列に整列した。
しばらくすると教会の牧師が話し始めた。
「諸君。今日は人生で最も大切だと言われている『パートナー契約』の日だ。
だが、恐れることはない。夢を叶えるため、自信をもって迎えるがよい。」
その言葉の後、一斉に大きな拍手や歓声が響き渡り、運命の契約の儀式が始まった。
『パートナー契約』の儀式は人生で一度だけのパートナーを召喚する儀式である。
契約の方法は教壇に上った先にある水晶に向かって、右の手のひらを向け
「汝、仄暗い同居人に身を滅ぼせし者。
その誇り高き自我を以ってその姿を現せ!リレイズ」
と詠唱すると、目の前にパートナーが召喚され、契約を交わす。
詠唱が少し恥ずかしく思えるのは僕だけだろうか。
そして、召喚されたパートナーもランク付けされる。
ランクの高い方からA、B、C、Dとなっていて、ランクが高くなればなるほど強いパートナーということになる。ゴートテイマーになるためにもより高いランクが好まれているのは言うまでもない。
そんなことを話しているうちにも、次々とパートナー契約が行われていく。
Aランクのパートナーと契約出来て両手放しで喜んでいる子もいれば、Dランクのパートナーで肩を沈めている子もいた。
そしていよいよ僕の番が回ってきた。
僕はゆっくりと深く息を吐き、教壇の上へ足を運び、水晶の前に立つ。
右手を水晶に向け、呪文を唱える。
「汝、仄暗い同居人に身を滅ぼせし者。
その誇り高き自我を以ってその姿を現せ!リレイズ!」
「・・・・・・・」
何も起こらなかった。
僕はもう一度唱えてみる。
「汝、仄暗い同居人に身を滅ぼせし者。
その誇り高き自我を以ってその姿を現せ!リレイズ!」
すると、水晶がいきなり光り輝き始めたと思えば、亀裂が入り始め、
パリン
割れて、粉々になってしまった。
周りの人たちがざわざわし始めるのを、牧師が制止する。
「静粛にして下さい。水晶が割れたということは、昔話に聞くところの、この世界ではめったに見られない飼育パートナーがいない人が現れただけです。私も見るのは初めてです。代わりの水晶を持ってきますので、ご安心ください。」
そういって、新しい水晶が持ってこられるが、僕はたたずんだままだった。
「君、悲しいことだが君は『飼育パートなし』らしい。気を付けて帰りなさい。」
教会の関係者はそう僕に言いながら、僕の背中を押し出口へ連れて行った。
教会から帰るときにに、すごい拍手と歓声が何度か響いていたが、僕の耳には届いてこなかった。
家に帰ってからもお父さんやお母さんが心配してくれたが、僕は正気を失ったように布団にずっと横になっていた。
それから何日か経ってから、お母さんがしびれを切らして僕に外に散歩にでも行くように言ってきた。
僕は行くところもないのでただ町を歩いていた。
すると、後ろから声を掛けられた。
「おい、そこのお前!」
振り向くとそこには、僕と同い年ぐらいの少年が三人立っていた。
「お前、『飼育パートナーなし』の男だろ?儀式の日、お前がそう言われた後にパー トナーランクAと契約を果たした二人の内の一人。ゴラギエ・サモンズだ!こいつらは俺の仲間とそのパートナーたちだ。
お前、俺たちと一緒にダンジョンに行くぞ。パートナーなしだったら一緒に冒険する仲間もいないだろう?俺たちが一緒に行ってやるよ。」
僕はその言葉に絶望の暗闇の中一筋の光が差し込んだように思えた。パートナーのおらず冒険するのも絶望的で、ゴートテイマーへの道が閉ざされたと思っていたがそんな僕と一緒に冒険しようと誘ってくれる人たちがいたのだ。
僕はその誘いを喜んで受けることにした。
「本当?ありがとう!僕はエンニオ・ミドル。よろしく。」
「おう。よろしくな、ミドル。」
そういって、僕らは握手をする。
そして、僕らは早速装備を整え、ダンジョンに向かった。
ダンジョンは地下100階層まであり、深くなればなるほど強い魔物がうごめいている場所であり、100階層まで攻略すると新しいダンジョンに生まれ変わる。最下層まで到達することゴートテイマーの条件の一つとされているが、今のゴートテイマーが前のダンジョンを攻略してから誰も最下層に到達できていない。
ゴートテイマーになるためにたくさんのテイマーたちが毎日特訓する場所となっている。
僕らはダンジョンに到着し、受付を済ませて早速一階層から攻略を始めた。
一から五階層はスライムやゴブリンなどの基本的に弱く戦いやすい魔物が出現する。
僕らの前に一匹のスライムが現れる。
「ミドル、お前は後ろの方に居ろよ。」
「うん。」
そういって、サモンズはランクAのパートナーである鷹、イーグルに指示をする。
「イーグル、ウィンド!」
は翼を強く羽ばたかせ、スライムに向かって攻撃する。
スライムは吹っ飛ばされ消滅した。
「俺らの隊長、優しいし強いしすごいんだぜ。」
そう自慢してきたのは、サモンズの仲間の一人のブマル・ハケスでパートナーはランクCの大きなカエル、フロッグだ。
「それに、親も貴族なんだってよ。」
話に加わって来たのは、もう一人の仲間ディニス・レノンでパートナーはランクBのムササビ、スクアラルだ。
「ハケスとレノンのパートナーも凄いよ。僕なんてパートナーすらいないんだから」
「そんなこと言うなよ。隊長についていけばこの先心配ないさ!」
そんなことを話しながら、ダンジョンの下層へ進んでいく。
魔物が現れればサモンズがイーグルで倒し、を繰り返しあっという間に五階層まで来た。
「ミドル!ちょっとそこの穴見てこい!」
「分かった。」
僕は何の疑いもなく見に行き、穴を覗き込む。とても深い穴だった。
「サモンズ、何もないよ。」
僕はそう告げ、振り返ろうとすると後ろから何かに押される。
「えっ?!」
僕は何が起きたのか分からなかった。
時間がゆっくりに見える、感じる。
そして何が起きているのか、理解する。
落とされたんだ。彼、サモンズに。
「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」
サモンズは落ちる僕を見ながら、そんなことを口にし、そして仲間三人と笑っていた。
そして、三人は僕からは見えなくなった。
僕は騙されたのだ。
簡単に信じた俺がバカだったのだ。
僕は死を覚悟しながら、長い長い穴の中を永遠とも感じられる時間落ちて行った。
ポタポタと一定の間隔で落ちてくる雫に顔を打たれ目が覚める。
「いててて、」
体をおこそうとすると全身に痛みが走る。
落ちていく僕をただ見つめるだけのサモンズたちの光景がフラッシュバックする。
「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」
「そうだよな。俺なんかと何て組みたくないよな。」
僕はそう呟き、落ちてきた穴を見上げる。穴の先には光すら見えず、まるで今の僕を表しているかのようだった。
「ここ何階層なんだろう。こんなに高いところから落ちたんだし、いっそ死んだほう がマシだったのに。」
死にたいと思ってしまったことが呼び寄せたのか、そもそも死ぬ運命だったのか奥の方から大きな足音と共に何かが近づいてくる。
僕は痛む体を起き上がらせて、その音の方向とは逆にゆっくりとバックしながら様子を伺う。
だんだん音も近づいてきて、ほんのりとシルエットも見えてくるとそれが人ではないことは明確であった。そのシルエットがくっきりと見えるようになるまでには時間は要らなかった。
そして、お互いに相手が何者か分かるとそれぞれに声を上げる。
「うわああああああああああああ」
「グオオオォォォーーーーーーー」
僕は悲鳴を、化け物は咆哮を。
僕の足は死にたいと思っていたからなのか動かなかった、それとも最強の魔物「ミノタウロス」を目の前にして恐怖で動かなかったのか定かではないが、ピクリともしない。
そんなことは容赦なくミノタウロスは持っている大きな金属の棍棒のようなものを僕めがけて振り下ろしてくる。僕は何の抵抗もせず、その攻撃は僕の左腕を持っていった。
全身に激痛が走る。
そして、再びミノタウロスが棍棒を僕に振りかざしてくる。
その光景がゆっくりに見え、これまでのことが走馬灯のように見え始める。
「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」
「君、悲しいことだが君は『飼育パートなし』らしい。」
そんな悲しいことが見え、僕はこのまま死んでもいいやと思い目をつぶり、歯を食いしばる。しかし、再び走馬灯が見える。
「「行ってらっしゃい」」
「気を付けていくのよ~」
お父さんとお母さんとの家族との思いでだった。そして、
「僕ね、ゴートテイマーになる!」
そう家族に宣言している、小さなころの僕だった。
僕は死にたくないと思った。強く思った。ゴートテイマーになると。家族とまた過ごしたいと。その心が僕を動かした。
僕は間一髪でその攻撃を躱した。
だが、パートナーもない僕にできることはほとんどない。
ミノタウロスは今度は棍棒をスイングしてきた。
今度こそ死を覚悟した。
せめてもの抵抗として、残った右手を棍棒に突き出す。
「グオオオォォォーーーーーーー」
死にたくない、僕にパートナーがいれば、契約できていればこんなことにはならなかったはずだ。僕は僕自身を恨んだ。
「クソぉぉぉぉぉぉーーーーーー」
すると、右手の方から白い光が輝き始め、そして視界を包んだ。
少しして目を開けると、そこにはミノタウロスの攻撃を指一本で止めるの女性が立っていた。
腰まで届きそうな長い白銀の髪が、ダンジョンの暗さと相まってより際立っている。色素が抜けたような白い肌、尖るような顎先と、襟から覗く細い首筋と胸元が危うい魅力を醸し出している。腰についている剣も不思議と様になっている。そんな女神のような彼女に見とれていると、
「ミドル様、あなたに盾突くこの汚らしい汚物を片付けてもよろしいですか?」
「・・・あ、はい。」
僕があっけにとられながら返事をすると、彼女はミノタウロスの棍棒を軽々と吹き飛ばし、指を鳴らした。その瞬間、ミノタウロスは粉々になってしまった。
「わたくしのパートナーに手を出すのは千年早いですよ」
そう彼女は言うと、僕の方に近寄ってきて僕に魔法をかける。
すると、僕の左腕はみるみる治っていき、体中の痛みも消えていった。
「・・・助けてくれてありがとう。」
「いえいえ、わたくしは当然のことをしたまでですよ。
自己紹介が遅れて申し訳ありません。わたくしはあなたとパートナー契約をした
パートナーランクSの女神、アストレアと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
僕はその光景にただ、見とれていただけだった。
この世界では飼育している生き物をパートナーと呼び、テイマーはご飯を食べるときも、寝るときも、魔物と戦うときも、いついかなる時もパートナーと一緒に生活している。
すべてのテイマーはテイマーの頂点であるゴートテイマーになるために日々鍛錬している。
そんな世界に産まれた僕、エンニオ・ミドルもゴートテイマーになることを夢見て日々生活していた。
この話は、僕がテイマーの頂点であるゴートテイマーになるまでの話である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕が生まれたのは貴族でも王族でもない、ごく普通の家庭だった。
お父さんもお母さんもテイマーの、ごく普通の。
僕たち家族の暮らしはとても幸せなものだった。一緒にご飯を食べたり、食卓を囲んだり、眠ったり。
そんな暮らしが一変したのは僕が13歳の誕生日を迎えた年、そう『パートナー契約』の儀式の日からだった。
「行ってきます!」
僕は元気よく扉を開け、お父さんとお母さんに手を振る。
「「行ってらっしゃい」」
「気を付けていくのよ~」
僕は走って『パートナー契約』の儀式が行われる教会へ向かった。
教会の近くに到着すると、すでにたくさんの人たちが年に一度の儀式のための出し物で賑わっていた。
僕はそんな人ごみの中を掻き分けながら教会へ向かった。
教会の前まで行き、受付を済ませて中に一列に整列した。
しばらくすると教会の牧師が話し始めた。
「諸君。今日は人生で最も大切だと言われている『パートナー契約』の日だ。
だが、恐れることはない。夢を叶えるため、自信をもって迎えるがよい。」
その言葉の後、一斉に大きな拍手や歓声が響き渡り、運命の契約の儀式が始まった。
『パートナー契約』の儀式は人生で一度だけのパートナーを召喚する儀式である。
契約の方法は教壇に上った先にある水晶に向かって、右の手のひらを向け
「汝、仄暗い同居人に身を滅ぼせし者。
その誇り高き自我を以ってその姿を現せ!リレイズ」
と詠唱すると、目の前にパートナーが召喚され、契約を交わす。
詠唱が少し恥ずかしく思えるのは僕だけだろうか。
そして、召喚されたパートナーもランク付けされる。
ランクの高い方からA、B、C、Dとなっていて、ランクが高くなればなるほど強いパートナーということになる。ゴートテイマーになるためにもより高いランクが好まれているのは言うまでもない。
そんなことを話しているうちにも、次々とパートナー契約が行われていく。
Aランクのパートナーと契約出来て両手放しで喜んでいる子もいれば、Dランクのパートナーで肩を沈めている子もいた。
そしていよいよ僕の番が回ってきた。
僕はゆっくりと深く息を吐き、教壇の上へ足を運び、水晶の前に立つ。
右手を水晶に向け、呪文を唱える。
「汝、仄暗い同居人に身を滅ぼせし者。
その誇り高き自我を以ってその姿を現せ!リレイズ!」
「・・・・・・・」
何も起こらなかった。
僕はもう一度唱えてみる。
「汝、仄暗い同居人に身を滅ぼせし者。
その誇り高き自我を以ってその姿を現せ!リレイズ!」
すると、水晶がいきなり光り輝き始めたと思えば、亀裂が入り始め、
パリン
割れて、粉々になってしまった。
周りの人たちがざわざわし始めるのを、牧師が制止する。
「静粛にして下さい。水晶が割れたということは、昔話に聞くところの、この世界ではめったに見られない飼育パートナーがいない人が現れただけです。私も見るのは初めてです。代わりの水晶を持ってきますので、ご安心ください。」
そういって、新しい水晶が持ってこられるが、僕はたたずんだままだった。
「君、悲しいことだが君は『飼育パートなし』らしい。気を付けて帰りなさい。」
教会の関係者はそう僕に言いながら、僕の背中を押し出口へ連れて行った。
教会から帰るときにに、すごい拍手と歓声が何度か響いていたが、僕の耳には届いてこなかった。
家に帰ってからもお父さんやお母さんが心配してくれたが、僕は正気を失ったように布団にずっと横になっていた。
それから何日か経ってから、お母さんがしびれを切らして僕に外に散歩にでも行くように言ってきた。
僕は行くところもないのでただ町を歩いていた。
すると、後ろから声を掛けられた。
「おい、そこのお前!」
振り向くとそこには、僕と同い年ぐらいの少年が三人立っていた。
「お前、『飼育パートナーなし』の男だろ?儀式の日、お前がそう言われた後にパー トナーランクAと契約を果たした二人の内の一人。ゴラギエ・サモンズだ!こいつらは俺の仲間とそのパートナーたちだ。
お前、俺たちと一緒にダンジョンに行くぞ。パートナーなしだったら一緒に冒険する仲間もいないだろう?俺たちが一緒に行ってやるよ。」
僕はその言葉に絶望の暗闇の中一筋の光が差し込んだように思えた。パートナーのおらず冒険するのも絶望的で、ゴートテイマーへの道が閉ざされたと思っていたがそんな僕と一緒に冒険しようと誘ってくれる人たちがいたのだ。
僕はその誘いを喜んで受けることにした。
「本当?ありがとう!僕はエンニオ・ミドル。よろしく。」
「おう。よろしくな、ミドル。」
そういって、僕らは握手をする。
そして、僕らは早速装備を整え、ダンジョンに向かった。
ダンジョンは地下100階層まであり、深くなればなるほど強い魔物がうごめいている場所であり、100階層まで攻略すると新しいダンジョンに生まれ変わる。最下層まで到達することゴートテイマーの条件の一つとされているが、今のゴートテイマーが前のダンジョンを攻略してから誰も最下層に到達できていない。
ゴートテイマーになるためにたくさんのテイマーたちが毎日特訓する場所となっている。
僕らはダンジョンに到着し、受付を済ませて早速一階層から攻略を始めた。
一から五階層はスライムやゴブリンなどの基本的に弱く戦いやすい魔物が出現する。
僕らの前に一匹のスライムが現れる。
「ミドル、お前は後ろの方に居ろよ。」
「うん。」
そういって、サモンズはランクAのパートナーである鷹、イーグルに指示をする。
「イーグル、ウィンド!」
は翼を強く羽ばたかせ、スライムに向かって攻撃する。
スライムは吹っ飛ばされ消滅した。
「俺らの隊長、優しいし強いしすごいんだぜ。」
そう自慢してきたのは、サモンズの仲間の一人のブマル・ハケスでパートナーはランクCの大きなカエル、フロッグだ。
「それに、親も貴族なんだってよ。」
話に加わって来たのは、もう一人の仲間ディニス・レノンでパートナーはランクBのムササビ、スクアラルだ。
「ハケスとレノンのパートナーも凄いよ。僕なんてパートナーすらいないんだから」
「そんなこと言うなよ。隊長についていけばこの先心配ないさ!」
そんなことを話しながら、ダンジョンの下層へ進んでいく。
魔物が現れればサモンズがイーグルで倒し、を繰り返しあっという間に五階層まで来た。
「ミドル!ちょっとそこの穴見てこい!」
「分かった。」
僕は何の疑いもなく見に行き、穴を覗き込む。とても深い穴だった。
「サモンズ、何もないよ。」
僕はそう告げ、振り返ろうとすると後ろから何かに押される。
「えっ?!」
僕は何が起きたのか分からなかった。
時間がゆっくりに見える、感じる。
そして何が起きているのか、理解する。
落とされたんだ。彼、サモンズに。
「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」
サモンズは落ちる僕を見ながら、そんなことを口にし、そして仲間三人と笑っていた。
そして、三人は僕からは見えなくなった。
僕は騙されたのだ。
簡単に信じた俺がバカだったのだ。
僕は死を覚悟しながら、長い長い穴の中を永遠とも感じられる時間落ちて行った。
ポタポタと一定の間隔で落ちてくる雫に顔を打たれ目が覚める。
「いててて、」
体をおこそうとすると全身に痛みが走る。
落ちていく僕をただ見つめるだけのサモンズたちの光景がフラッシュバックする。
「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」
「そうだよな。俺なんかと何て組みたくないよな。」
僕はそう呟き、落ちてきた穴を見上げる。穴の先には光すら見えず、まるで今の僕を表しているかのようだった。
「ここ何階層なんだろう。こんなに高いところから落ちたんだし、いっそ死んだほう がマシだったのに。」
死にたいと思ってしまったことが呼び寄せたのか、そもそも死ぬ運命だったのか奥の方から大きな足音と共に何かが近づいてくる。
僕は痛む体を起き上がらせて、その音の方向とは逆にゆっくりとバックしながら様子を伺う。
だんだん音も近づいてきて、ほんのりとシルエットも見えてくるとそれが人ではないことは明確であった。そのシルエットがくっきりと見えるようになるまでには時間は要らなかった。
そして、お互いに相手が何者か分かるとそれぞれに声を上げる。
「うわああああああああああああ」
「グオオオォォォーーーーーーー」
僕は悲鳴を、化け物は咆哮を。
僕の足は死にたいと思っていたからなのか動かなかった、それとも最強の魔物「ミノタウロス」を目の前にして恐怖で動かなかったのか定かではないが、ピクリともしない。
そんなことは容赦なくミノタウロスは持っている大きな金属の棍棒のようなものを僕めがけて振り下ろしてくる。僕は何の抵抗もせず、その攻撃は僕の左腕を持っていった。
全身に激痛が走る。
そして、再びミノタウロスが棍棒を僕に振りかざしてくる。
その光景がゆっくりに見え、これまでのことが走馬灯のように見え始める。
「『飼育パートナーなし』のお前と冒険する奴なんかいるかよ」
「君、悲しいことだが君は『飼育パートなし』らしい。」
そんな悲しいことが見え、僕はこのまま死んでもいいやと思い目をつぶり、歯を食いしばる。しかし、再び走馬灯が見える。
「「行ってらっしゃい」」
「気を付けていくのよ~」
お父さんとお母さんとの家族との思いでだった。そして、
「僕ね、ゴートテイマーになる!」
そう家族に宣言している、小さなころの僕だった。
僕は死にたくないと思った。強く思った。ゴートテイマーになると。家族とまた過ごしたいと。その心が僕を動かした。
僕は間一髪でその攻撃を躱した。
だが、パートナーもない僕にできることはほとんどない。
ミノタウロスは今度は棍棒をスイングしてきた。
今度こそ死を覚悟した。
せめてもの抵抗として、残った右手を棍棒に突き出す。
「グオオオォォォーーーーーーー」
死にたくない、僕にパートナーがいれば、契約できていればこんなことにはならなかったはずだ。僕は僕自身を恨んだ。
「クソぉぉぉぉぉぉーーーーーー」
すると、右手の方から白い光が輝き始め、そして視界を包んだ。
少しして目を開けると、そこにはミノタウロスの攻撃を指一本で止めるの女性が立っていた。
腰まで届きそうな長い白銀の髪が、ダンジョンの暗さと相まってより際立っている。色素が抜けたような白い肌、尖るような顎先と、襟から覗く細い首筋と胸元が危うい魅力を醸し出している。腰についている剣も不思議と様になっている。そんな女神のような彼女に見とれていると、
「ミドル様、あなたに盾突くこの汚らしい汚物を片付けてもよろしいですか?」
「・・・あ、はい。」
僕があっけにとられながら返事をすると、彼女はミノタウロスの棍棒を軽々と吹き飛ばし、指を鳴らした。その瞬間、ミノタウロスは粉々になってしまった。
「わたくしのパートナーに手を出すのは千年早いですよ」
そう彼女は言うと、僕の方に近寄ってきて僕に魔法をかける。
すると、僕の左腕はみるみる治っていき、体中の痛みも消えていった。
「・・・助けてくれてありがとう。」
「いえいえ、わたくしは当然のことをしたまでですよ。
自己紹介が遅れて申し訳ありません。わたくしはあなたとパートナー契約をした
パートナーランクSの女神、アストレアと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
僕はその光景にただ、見とれていただけだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
神に見捨てられた少年は、異世界で無双する 〜追放されたけど気づいたら最強の加護を持ってました〜
fuwamofu
ファンタジー
辺境の村で「無能」と蔑まれ、勇者パーティから追放された少年アルト。
だが彼が持っていたのは「無効化」と「複製」という、神が創った誰にも扱えない究極スキルだった。
気づかぬうちに世界の理を超え、魔王さえも恐れる存在となるアルト。
追放した元仲間たちは後悔し、国家は彼を求め、仲間になった美少女たちは惹かれていく――。
これは“無自覚最強”が世界を変え、すべてにざまぁを返す異世界成り上がり譚。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる