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第27話「来訪者」
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それからのこと。
結局、街が落ち着くまでに数日を要した。
アルガスは、その間ほとんど何も出来ずに、宿や近所やギルド付近をウロツク程度。
バタバタしているギルドも、荒野の端の街ゆえに、仕事をしないわけにもいかないらしく、臨時受付と掲示板を外に出してクエストを張り出していた。
アルガスも暇を持て余していたので、腕がなまらない程度にチョクチョクとそれらを受けてはこなしつつ、ギルドが落ち着くのを待つ。
幸い金には困っていなかったので生活は何とでもなるが……アルガスの胸中にあるのは、リズのことばかり。
本音では彼女のことが心配で気が気ではなかったのだが、あまり態度に出すとミィナが不安がるので努めて感情にも話題にも出さないようにした。
兎にも角にもまずは情報収集だと思い、そのためのギルドの本格的再開を待ち望む。
いっそ別の街に行ってもいいのかもしれないが、とある噂が気になり足止めを喰らっていた。
代官の親族が、復讐に来るかもしれないというものだ。
まぁ、噂の真偽はともあれ、ギルドの本格的再開を待つその間───クエスト以外の時間は暇で仕方がなかったので、アルガスは戦闘で向上したと思しきステータスを確認したり、武器の手入れを行っていた。
ブゥン……!
名 前:アルガス・ハイデマン
職 業:重戦車(ティーガーⅠ)
体 力:1202
筋 力: 906
防御力:9999
魔 力: 38
敏 捷: 58
抵抗力: 122
※ 状態異常なし
残ステータスポイント「+2301」
重戦車:ラーニング済み
(その1)ティーガーⅠ
装備:
(兜)衛兵隊のフェイスガード付きの兜
(鎧)衛兵隊のハーフプレートアーマー
(鎧下)チェインメイル、麻のギャベンゾン
(盾)補強済みタワーシールド
(武器)鋼のショートソード
アルガスはステータス画面をポチポチと弄り、ヘルプなどを参照していく。
傍から見ればブツブツと怪しい人MAXだが、ミィナはここ数日で慣れっこだ。
今もおとなしく、ヘッドの上でちょっこんと座りつつ、あやとりをしている。
「ん~ふ~ふ~むー♪」
彼女の鼻歌を聞きつつ、
(ふーむ……。現状、ステータスを弄る必要はないな。正直、ティーガーⅠが強すぎて、その必要性を感じられないし───)
取りあえず、残ポイントはそのまま貯めておこう。
軍団を殲滅した割にはほとんど上昇していない。
それは、アルガス自身が元々強いというのもあるのだろう。
無理にポイントを割り振るよりも、今は貯めておき───今後の方向性が見えてきたときにそれに沿ったステータスを割り振った方がいい。
そして、装備。
「うん……普通に質は良いな」
リリムダ鉱山製と思しき装備。
アルガスが元々使っていた装備は大半が傷んでいた。
そのため、破損したものは修理し、残りは買い替えたりした。
この辺境でつくられる製品では、さほどいいものが手に入らなかったので、格安で売られていた元衛兵隊装備を購入した。
リリムダ出身だという元代官の土地で作られたものらしく、衛兵どもの武装はリリムダ出身の兵として、向こうで作られた装備をそのまま使っていたのだろう。
造りは、そこらの店売りよりもしっかりしている。
ちなみに……元の持ち主がどうなったかは知らない───。
住民に襲われ、拉致された者は代官を含めて行方不明。
宿の主人などに聞いてもニコニコ笑うばかりで逆に怖い……。
そのうちスタータスを閉じ、武器もピカピカに磨き上げると、いよいよやることがなくなってきた。
食堂に降りて、軽食を貰いつつ───街の動向を宿の主人や女将さんに聞いたりしていたが、さすがに手持ち無沙汰になってくる。
暇を持て余して、ミィナの身上話ももっと詳しく聞いて見たりもした。
彼女の話は稚拙で要領を得ないものの多かったが、根気よく話を聞いて総合的に分析してみると、どうもミィナの出身地は遥か西方にある漆黒の大森林と呼ばれる辺境の方らしい。
嘘か本当か、両親の内一人はエルフなんだとか……。
言われてみればちょこっと耳がとがっている気もするが……うーむ、言われなければわからない。
どうやら、単純な人種差別も絡んでいそうな話で、彼女は、人間とエルフの間に生まれたがゆえに、生活が困窮してすぐに売り飛ばされたということらしい。
地域特有の差別も絡んでいるなら、なおのこと親元に戻すのは難しそうだ。
「ふーむ。当分は一緒だな」
「ん~? うん♪」
よくわかっていないなりに、アルガスが保護者になってくれるということだけは理解したミィナがピョンとアルガスの膝に乗る。
アルガスとしても、重戦車化した時に装填手がいるのは助かる。
小さい頃のリズを思い出すので、アルガスとしても懐かれること自体にも悪い気はしない。
それに、ミィナは素直でいい子だ。
頭をナデリコナデリコしながら、ミィナが遊んでくれというので、二人であやとりをして時間を潰す。
アルガスは親代わりとしてリズを育てていたこともあるので、こういった子育てにも慣れたものだ……。
(───もっとも、リズは勝手にデカくなった気もするけどな)
「んで、ここをこうして、こうして───」
「ここ?」
「そう、そこをもって引っ張ると───」
二人あやとりの定番……!
「ほぃ! 帝都タワー!」
「わぁぁあああ!!」
ワチャワチャとあやとりをしていた二人の耳に───。
コンコン。
不意に扉を叩く音。
スッと、目を鋭くしたアルガスに、ミィナも身を固くする。
チラリと目配せをすると、ミィナは不安そうにしながらもベッドの脇に身を隠す。
アルガスはひとり、剣を手近によせると、抜き身にして後ろ手に隠す。
そして刀身を隠しながら扉に近づくと、
「───どちらさん?」
結局、街が落ち着くまでに数日を要した。
アルガスは、その間ほとんど何も出来ずに、宿や近所やギルド付近をウロツク程度。
バタバタしているギルドも、荒野の端の街ゆえに、仕事をしないわけにもいかないらしく、臨時受付と掲示板を外に出してクエストを張り出していた。
アルガスも暇を持て余していたので、腕がなまらない程度にチョクチョクとそれらを受けてはこなしつつ、ギルドが落ち着くのを待つ。
幸い金には困っていなかったので生活は何とでもなるが……アルガスの胸中にあるのは、リズのことばかり。
本音では彼女のことが心配で気が気ではなかったのだが、あまり態度に出すとミィナが不安がるので努めて感情にも話題にも出さないようにした。
兎にも角にもまずは情報収集だと思い、そのためのギルドの本格的再開を待ち望む。
いっそ別の街に行ってもいいのかもしれないが、とある噂が気になり足止めを喰らっていた。
代官の親族が、復讐に来るかもしれないというものだ。
まぁ、噂の真偽はともあれ、ギルドの本格的再開を待つその間───クエスト以外の時間は暇で仕方がなかったので、アルガスは戦闘で向上したと思しきステータスを確認したり、武器の手入れを行っていた。
ブゥン……!
名 前:アルガス・ハイデマン
職 業:重戦車(ティーガーⅠ)
体 力:1202
筋 力: 906
防御力:9999
魔 力: 38
敏 捷: 58
抵抗力: 122
※ 状態異常なし
残ステータスポイント「+2301」
重戦車:ラーニング済み
(その1)ティーガーⅠ
装備:
(兜)衛兵隊のフェイスガード付きの兜
(鎧)衛兵隊のハーフプレートアーマー
(鎧下)チェインメイル、麻のギャベンゾン
(盾)補強済みタワーシールド
(武器)鋼のショートソード
アルガスはステータス画面をポチポチと弄り、ヘルプなどを参照していく。
傍から見ればブツブツと怪しい人MAXだが、ミィナはここ数日で慣れっこだ。
今もおとなしく、ヘッドの上でちょっこんと座りつつ、あやとりをしている。
「ん~ふ~ふ~むー♪」
彼女の鼻歌を聞きつつ、
(ふーむ……。現状、ステータスを弄る必要はないな。正直、ティーガーⅠが強すぎて、その必要性を感じられないし───)
取りあえず、残ポイントはそのまま貯めておこう。
軍団を殲滅した割にはほとんど上昇していない。
それは、アルガス自身が元々強いというのもあるのだろう。
無理にポイントを割り振るよりも、今は貯めておき───今後の方向性が見えてきたときにそれに沿ったステータスを割り振った方がいい。
そして、装備。
「うん……普通に質は良いな」
リリムダ鉱山製と思しき装備。
アルガスが元々使っていた装備は大半が傷んでいた。
そのため、破損したものは修理し、残りは買い替えたりした。
この辺境でつくられる製品では、さほどいいものが手に入らなかったので、格安で売られていた元衛兵隊装備を購入した。
リリムダ出身だという元代官の土地で作られたものらしく、衛兵どもの武装はリリムダ出身の兵として、向こうで作られた装備をそのまま使っていたのだろう。
造りは、そこらの店売りよりもしっかりしている。
ちなみに……元の持ち主がどうなったかは知らない───。
住民に襲われ、拉致された者は代官を含めて行方不明。
宿の主人などに聞いてもニコニコ笑うばかりで逆に怖い……。
そのうちスタータスを閉じ、武器もピカピカに磨き上げると、いよいよやることがなくなってきた。
食堂に降りて、軽食を貰いつつ───街の動向を宿の主人や女将さんに聞いたりしていたが、さすがに手持ち無沙汰になってくる。
暇を持て余して、ミィナの身上話ももっと詳しく聞いて見たりもした。
彼女の話は稚拙で要領を得ないものの多かったが、根気よく話を聞いて総合的に分析してみると、どうもミィナの出身地は遥か西方にある漆黒の大森林と呼ばれる辺境の方らしい。
嘘か本当か、両親の内一人はエルフなんだとか……。
言われてみればちょこっと耳がとがっている気もするが……うーむ、言われなければわからない。
どうやら、単純な人種差別も絡んでいそうな話で、彼女は、人間とエルフの間に生まれたがゆえに、生活が困窮してすぐに売り飛ばされたということらしい。
地域特有の差別も絡んでいるなら、なおのこと親元に戻すのは難しそうだ。
「ふーむ。当分は一緒だな」
「ん~? うん♪」
よくわかっていないなりに、アルガスが保護者になってくれるということだけは理解したミィナがピョンとアルガスの膝に乗る。
アルガスとしても、重戦車化した時に装填手がいるのは助かる。
小さい頃のリズを思い出すので、アルガスとしても懐かれること自体にも悪い気はしない。
それに、ミィナは素直でいい子だ。
頭をナデリコナデリコしながら、ミィナが遊んでくれというので、二人であやとりをして時間を潰す。
アルガスは親代わりとしてリズを育てていたこともあるので、こういった子育てにも慣れたものだ……。
(───もっとも、リズは勝手にデカくなった気もするけどな)
「んで、ここをこうして、こうして───」
「ここ?」
「そう、そこをもって引っ張ると───」
二人あやとりの定番……!
「ほぃ! 帝都タワー!」
「わぁぁあああ!!」
ワチャワチャとあやとりをしていた二人の耳に───。
コンコン。
不意に扉を叩く音。
スッと、目を鋭くしたアルガスに、ミィナも身を固くする。
チラリと目配せをすると、ミィナは不安そうにしながらもベッドの脇に身を隠す。
アルガスはひとり、剣を手近によせると、抜き身にして後ろ手に隠す。
そして刀身を隠しながら扉に近づくと、
「───どちらさん?」
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