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#38 Merci la vie
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一番最初に頭に浮かんだのは、自身のアレに平静を命じること。
身体なんて電気信号で幾らでも制御できる。
さっきから二人の間で主張していた存在感がふっと柔らかくなったことに気付いたのか、シャルロットが驚いた表情で俺を見つめた。
「今の声は、本当にシャルロットのお母さん?」
そう尋ねることで、鉄の意志で耐えた風を装う。
「……ダト思ウ」
「シャルロットはこの溶岩みたいな中を流されてきたけれど、地面の上でも繋がっているってことなのかな?」
「ママン、本物カナ?」
シャルロットは俺にしがみつく。
理性と電気信号とでしっかり抑える。
「一緒に探しに行こう」
手をつないで立ち上がったそのとき、再び聞こえた。
「チャーリー!」
今度はもっと近い。
『交信』で人間の生体電気信号の塊を探すと、さほど遠くない距離に六人分を発見する。うち五人が女性。ハーレム・パーティ?
「六人くらい居るっぽい」
「コッチ?」
シャルロットは俺の手を引いて歩きだそうとする。
俺はシャルロットよりも前に出て、その方向へと進み始めた。
「チャーリー!」
「ママン!」
再会までそこから体感五分もかからなかった。
それ自体は非常に喜ばしいことなのだが、なんというかあちらの皆さんの格好が、なんとなく直視できない。
ざっくり言うと金属ビキニ&金属ビーチサンダル。
一人だけいた男性――老紳士は、金属ビキニの下だけバージョン。
まあ俺もフンドシと足袋だけなので似たようなものではあるが。
「Shima!」
シャルロットのママンから早口で何やらまくしたてられた。
握りしめられた両手を上下にぶんぶん振り回されながら涙を流しながらも笑顔で色々言われているが、シャルロットは俺との『交信』で日本語がかなり上達したのに対して、俺の方はフランス語が全く上達していないので全然わからない。
ただ漏れ伝わってくる一番大きな感情は『感謝』なので、俺は日本語で「どういたしまして」を繰り返すばかり。
あとシャルロットのママンは若く見えるし胸も大きいので、なんというかそれもあってこの両手上下運動は早めに脱出したかった。
「詩真。ママン、アリガトウッテ言ッテル」
シャルロットのママン――ジェーンさんが少し落ち着いた後、シャルロットが通訳となり俺たちは様々な情報交換をした。
その中でシャルロットが一番喜んだのが、世界中のSNSから例の画像が消えたというニュース。義ウイルスがちゃんと働いてくれたということだ。
フランスの巷では、フランス当局が動いたという噂が広がっているらしいが、当局からの公式見解は一切発表されていない。
シャルロットは俺のvisについてはあえて伏せておいてくれたようだ。
一方、あちらの老紳士サルバドールさんは、そのvisについて説明してくれた。
フォンテーヌ・ブローに塔が出現した当時、彼はそこで犬の散歩中だった。
驚いてリードを手放してしまった彼がまず最初に心配したのは、愛犬アンダルシアが目の前に現れた塔の下敷きになったりはしていないか、ということ。
思わず触れた指が塔の壁から離れず、もがいているうちに中へ入ってしまった。
そこで目覚めたvisが『探す』というもの。名前を知り、実際に会ったことのある生き物が塔内か、もしくは聖域内に居る限りは、方角と距離がなんとなくわかるそうだ。
今回もシャルロットの居る方向へずっと移動し続けてここへたとり着けたとのこと。
次にジェーンさんたちのこと。
サルバドールさんのvisによりシャルロットの生存自体は確かめられていた。なので探索隊を出そうという話になったらしい。
そのとき塔は危険だとか二次遭難がどうとかいう議論の中で、「四の五の言うな。じゃあ危険は承知で私が行く!」と声を上げたのがジェーンさんで、その賛同者である女性警官や女性兵士たちが協力してくれるという話になったらしい。
ちょうどそのタイミングで発見された仮説が、その探索を後押しした。
その仮説とは、フランス塔のゴーレムたちは「彼らから剥がれ落ちた金属板よりも小さな金属は狙わない」というものだった。
シャルロットが気付いたことと一緒だ。
だが「盾担ぎ」と違って人間には、その拾った金属片を隠せるだけの体毛はない。
そこで新たに登場したのが、鎧作成担当だったルドンさんのvisが成長して作れるようになった金属水着だった。
小さなフックとチェーンとでサイズ調節できるそれを装備すると、確かにアイアンゴーレムにもスチールゴーレムにも襲われずに済んだ。
そのため、ジェーンさん、サルバドールさん、最初にシャルロットと一緒に塔に入った女性警官ソフィーさん、女性兵士二名に女性医師一名の計六名がシャルロット探索隊として結成されることになった。
ジェーンさんは塔内でランニングを繰り返し、あっという間にpotentiaを伸ばしていった。
ちなみにソフィーさんのvisは『女性を守る』という効果で、塔内の女性に限り、肉体的能力や自然治癒力に強化効果が与えられというもの。
それもあって、ジェーンさんの入塔が認められたというのもあるとか。
シャルロットが溶岩の中でも死ななかったのは、シャルロット自身のvisに加え、ソフィーさんのバフ効果もあったからかもと、シャルロット自身が分析していた。
もちろん、溶岩の中へ身を投げたのは俺とシャルロットだけの封印する秘密ということになっている。
で、問題なのがこれからどうするか、という話。
塔同士が中で繋がっているというのは世界規模の大ニュースとなるはずだから。
でもとりあえずこの情報を即座に公開するのは危険が伴う可能性が高そうというのが、ソフィーさんたちの判断。
その辺りは俺でも理解できる。
塔経由で大量の人員をよその国へ送り込むことができるようになるから。
現在、戦争当時者である国にも塔が出現しているから。
それにサルバドールさんが居れば、サルバドールさんのいったん出会った人を他国の塔へ送り込むか、もしくは入塔者をサルバドールさんが目撃し名前を覚えた状態でフランスの塔に入れば、二つの塔間の開通ルートを発見できる。
別にサルバドールさんじゃなくとも、類似のvisを持っている人が別の塔に入って地元の塔に居る仲間を探すという手だってある。
ふと思い出す。
今度、日本がアメリカと中国から入塔希望者を受け入れるって言ってたよな。
例えば、その中国の入塔希望者が既にロシアで入塔者となった上でそういうvisを入手していたとしたら――なんて頭に浮かんだりもする。
アメリカから来る人もそういうvisを持っている可能性はあるし。
いや、陰謀論とかではなく、可能性にはちゃんと向き合わないといけない。
さっき「サルバドールさん自体が拉致される恐れもある」可能性を指摘されたとき、ジェーンさんに俺も「当事者なんだよ」というようなことも言われた。
確かにそうだ。
俺はうまく立ち回れば相手の真意を見抜ける可能性がある。
シャルロットは俺のvisを、ジェーンさんたちへ『触れた生き物と会話できる』としか説明していないのにも関わらず、言われたのだ。
そうなんだろうな。
俺はもう引きこもっちゃいけないところまで来ちゃったんだろうな。
「詩真、難シイ顔シテル」
シャルロットが俺の手を握る。
『一緒なら、乗り越えられるよ』という想いが伝わってくる。
「世界の皆で協力して塔の秘密を解き明かせれば理想なんだけど、どうしても政治的な駆け引きみたいなことが絡んでくるんだろうね」
「ソウダネ。私モ、詩真ト二人ダケデ塔ノ探検ヲ楽シミタイヨ」
「チャーリー?」
チャーリーというのはシャルロットの愛称。俺とシャルロットが会話をするたびに、シャルロットがジェーンさんたちに会話内容を説明する。
『反省、私モ』
シャルロットからそういう想いが伝わってきたあと、ジェーンさんとの会話内容について説明してくれた。
「ママンカラ詩真ニ伝エルコト。政治ハ、自分タチノ権利ヤ生活ニ結ビツクモノ。ソレヲ避ケルトイウコトハ、自分ノ生活カラ目ヲソムケルノト同ジ。大切ナモノガアルナラバ、政治ニ向キアイナサイッテ」
真正面から言われて、自分の甘さが恥ずかしい部分も当然あるけれど、でも同時にありがたいなとも感じた。
「詩真ノコトハ本当ノ息子ダト思ッテ、遠慮ナク言ウカラネッテ」
なんか外堀がもう埋まってる。
ああ、でも。それでもいいのかもな。
日本を出て世界中を研究して回る学者とか小さな頃に憧れていた。
シャルロットとなら、日本の色んなしがらみを忘れて、そういう未来に行けるのかな。
でもそのためには「今」にちゃんと向き合わないと。
この情報もしっかり日本側へ、それも早く共有しよう。
そんなことを考えていたら、シャルロットに頬へキスされた。
ジェーンさんたちは皆、笑顔で俺たちを見つめてくれていた。
### 簡易人物紹介 ###
・国館川 詩真
主人公。現実より塔の方が居心地が良い。visは公的には『異世界通訳』だが微細な電気の流れを送受信できる。伊薙探索特別班。支給浴衣をシャルロットに与えたので、現在フンドシとサラシ、足袋のみ。
・中分地 富久子
フッコさん。亜貴の同級生。詩真の境遇と趣味に理解と共感があるが筋金入りの亜貴信者。タレ目の眼鏡美人(推定E)。visは『探査』。詩真に告白、返事待ち中。
・国館川 亜貴
姉。羞恥心<探究心な姉。ご立派(田平推定G)。visは『雷』。責任感が強く嘘が苦手。伊薙探索特別班。
・椰子間比嘉 良夢
自衛隊員。男性。探索隊B→Aチーム入り。色黒で元野球部キャッチャー。既婚者。伊薙探索特別班。
・伏猿 晶乃
自衛隊員。女性。マッチョ自慢で腹筋を触らせようとしてくる。伊薙探索特別班。
・伊薙 珠
元幼馴染(田平推定D)。話が通じない。visは『闇』。詩真への恋慕と暴言を爆発させ塔内へ逃走。
・田平 己輝
詩真の拉致に加担した、顔のパーツが中央に寄っている丸顔の自衛隊員。26歳男性。無類のおっぱい好き(特技はカップ推定)。情報通。聖女に関する情報をたくさんくれていた。
・シャルロット
なぜか日本の塔の奥地に居たフランスの「聖女」。17歳。マンガ好きで詩真と好きな作品がかぶった。身体部位を自身の肉体で再生するvisを持つが、男性の下半身を治療したために(厳密には自身のではない)股間画像がネット流出し、塔内へ失踪していた。
・アヌーク
日本アニメ好きなシャルロットの女友達。visは『幻を身につける』。そうやって作った幻の『シャルロットの顔』で逆ナンしまくって享楽にふけった。
・バルタザール
アヌークの想い人。アヌークに良い顔しながらも裏でシャルロットに言い寄ってくる。
・ジャン
朴訥男子。アヌークが必死にシャルロットとくっつけようとしている。
・ソフィー
最初に駆けつけた警官の一人。女性。入塔者となった。visは『女性を守る』。シャルロット探索隊に参加。
・ルドン
最初に駆けつけた警官の一人。男性。入塔者となった。visは進化して『金属の武具を出す』のが可能に。
・ギュスターヴ
ルドンの後輩である新米警官。男性。入塔者となった。visは『武器に炎をまとわせる』だが功を焦り、スチールゴーレムに下半身を潰された。その後自身の股間を撮影し、SNS拡散の元凶となった。
・ジェーン
シャルロットの母親。自らシャルロット探索をするため入塔者となった。
・サルバドール
犬の散歩中に塔に遭遇し、入塔者となった。visは『生き物を探す』。
・シャルロット探索隊
ジェーン、ソフィー、サルバドールの他、女性兵士ニ名、女性医師一名により構成される六名。
・デンキトカゲ
交信能力を持つ六足トカゲ。一番懐いている個体に「ピリリ」と名付けたが、群れが蛹を経て一個の生物「ピリリたち」に。蛹化終了後、巨大化して再会。なにかと気がつき気を遣ってくれる。
身体なんて電気信号で幾らでも制御できる。
さっきから二人の間で主張していた存在感がふっと柔らかくなったことに気付いたのか、シャルロットが驚いた表情で俺を見つめた。
「今の声は、本当にシャルロットのお母さん?」
そう尋ねることで、鉄の意志で耐えた風を装う。
「……ダト思ウ」
「シャルロットはこの溶岩みたいな中を流されてきたけれど、地面の上でも繋がっているってことなのかな?」
「ママン、本物カナ?」
シャルロットは俺にしがみつく。
理性と電気信号とでしっかり抑える。
「一緒に探しに行こう」
手をつないで立ち上がったそのとき、再び聞こえた。
「チャーリー!」
今度はもっと近い。
『交信』で人間の生体電気信号の塊を探すと、さほど遠くない距離に六人分を発見する。うち五人が女性。ハーレム・パーティ?
「六人くらい居るっぽい」
「コッチ?」
シャルロットは俺の手を引いて歩きだそうとする。
俺はシャルロットよりも前に出て、その方向へと進み始めた。
「チャーリー!」
「ママン!」
再会までそこから体感五分もかからなかった。
それ自体は非常に喜ばしいことなのだが、なんというかあちらの皆さんの格好が、なんとなく直視できない。
ざっくり言うと金属ビキニ&金属ビーチサンダル。
一人だけいた男性――老紳士は、金属ビキニの下だけバージョン。
まあ俺もフンドシと足袋だけなので似たようなものではあるが。
「Shima!」
シャルロットのママンから早口で何やらまくしたてられた。
握りしめられた両手を上下にぶんぶん振り回されながら涙を流しながらも笑顔で色々言われているが、シャルロットは俺との『交信』で日本語がかなり上達したのに対して、俺の方はフランス語が全く上達していないので全然わからない。
ただ漏れ伝わってくる一番大きな感情は『感謝』なので、俺は日本語で「どういたしまして」を繰り返すばかり。
あとシャルロットのママンは若く見えるし胸も大きいので、なんというかそれもあってこの両手上下運動は早めに脱出したかった。
「詩真。ママン、アリガトウッテ言ッテル」
シャルロットのママン――ジェーンさんが少し落ち着いた後、シャルロットが通訳となり俺たちは様々な情報交換をした。
その中でシャルロットが一番喜んだのが、世界中のSNSから例の画像が消えたというニュース。義ウイルスがちゃんと働いてくれたということだ。
フランスの巷では、フランス当局が動いたという噂が広がっているらしいが、当局からの公式見解は一切発表されていない。
シャルロットは俺のvisについてはあえて伏せておいてくれたようだ。
一方、あちらの老紳士サルバドールさんは、そのvisについて説明してくれた。
フォンテーヌ・ブローに塔が出現した当時、彼はそこで犬の散歩中だった。
驚いてリードを手放してしまった彼がまず最初に心配したのは、愛犬アンダルシアが目の前に現れた塔の下敷きになったりはしていないか、ということ。
思わず触れた指が塔の壁から離れず、もがいているうちに中へ入ってしまった。
そこで目覚めたvisが『探す』というもの。名前を知り、実際に会ったことのある生き物が塔内か、もしくは聖域内に居る限りは、方角と距離がなんとなくわかるそうだ。
今回もシャルロットの居る方向へずっと移動し続けてここへたとり着けたとのこと。
次にジェーンさんたちのこと。
サルバドールさんのvisによりシャルロットの生存自体は確かめられていた。なので探索隊を出そうという話になったらしい。
そのとき塔は危険だとか二次遭難がどうとかいう議論の中で、「四の五の言うな。じゃあ危険は承知で私が行く!」と声を上げたのがジェーンさんで、その賛同者である女性警官や女性兵士たちが協力してくれるという話になったらしい。
ちょうどそのタイミングで発見された仮説が、その探索を後押しした。
その仮説とは、フランス塔のゴーレムたちは「彼らから剥がれ落ちた金属板よりも小さな金属は狙わない」というものだった。
シャルロットが気付いたことと一緒だ。
だが「盾担ぎ」と違って人間には、その拾った金属片を隠せるだけの体毛はない。
そこで新たに登場したのが、鎧作成担当だったルドンさんのvisが成長して作れるようになった金属水着だった。
小さなフックとチェーンとでサイズ調節できるそれを装備すると、確かにアイアンゴーレムにもスチールゴーレムにも襲われずに済んだ。
そのため、ジェーンさん、サルバドールさん、最初にシャルロットと一緒に塔に入った女性警官ソフィーさん、女性兵士二名に女性医師一名の計六名がシャルロット探索隊として結成されることになった。
ジェーンさんは塔内でランニングを繰り返し、あっという間にpotentiaを伸ばしていった。
ちなみにソフィーさんのvisは『女性を守る』という効果で、塔内の女性に限り、肉体的能力や自然治癒力に強化効果が与えられというもの。
それもあって、ジェーンさんの入塔が認められたというのもあるとか。
シャルロットが溶岩の中でも死ななかったのは、シャルロット自身のvisに加え、ソフィーさんのバフ効果もあったからかもと、シャルロット自身が分析していた。
もちろん、溶岩の中へ身を投げたのは俺とシャルロットだけの封印する秘密ということになっている。
で、問題なのがこれからどうするか、という話。
塔同士が中で繋がっているというのは世界規模の大ニュースとなるはずだから。
でもとりあえずこの情報を即座に公開するのは危険が伴う可能性が高そうというのが、ソフィーさんたちの判断。
その辺りは俺でも理解できる。
塔経由で大量の人員をよその国へ送り込むことができるようになるから。
現在、戦争当時者である国にも塔が出現しているから。
それにサルバドールさんが居れば、サルバドールさんのいったん出会った人を他国の塔へ送り込むか、もしくは入塔者をサルバドールさんが目撃し名前を覚えた状態でフランスの塔に入れば、二つの塔間の開通ルートを発見できる。
別にサルバドールさんじゃなくとも、類似のvisを持っている人が別の塔に入って地元の塔に居る仲間を探すという手だってある。
ふと思い出す。
今度、日本がアメリカと中国から入塔希望者を受け入れるって言ってたよな。
例えば、その中国の入塔希望者が既にロシアで入塔者となった上でそういうvisを入手していたとしたら――なんて頭に浮かんだりもする。
アメリカから来る人もそういうvisを持っている可能性はあるし。
いや、陰謀論とかではなく、可能性にはちゃんと向き合わないといけない。
さっき「サルバドールさん自体が拉致される恐れもある」可能性を指摘されたとき、ジェーンさんに俺も「当事者なんだよ」というようなことも言われた。
確かにそうだ。
俺はうまく立ち回れば相手の真意を見抜ける可能性がある。
シャルロットは俺のvisを、ジェーンさんたちへ『触れた生き物と会話できる』としか説明していないのにも関わらず、言われたのだ。
そうなんだろうな。
俺はもう引きこもっちゃいけないところまで来ちゃったんだろうな。
「詩真、難シイ顔シテル」
シャルロットが俺の手を握る。
『一緒なら、乗り越えられるよ』という想いが伝わってくる。
「世界の皆で協力して塔の秘密を解き明かせれば理想なんだけど、どうしても政治的な駆け引きみたいなことが絡んでくるんだろうね」
「ソウダネ。私モ、詩真ト二人ダケデ塔ノ探検ヲ楽シミタイヨ」
「チャーリー?」
チャーリーというのはシャルロットの愛称。俺とシャルロットが会話をするたびに、シャルロットがジェーンさんたちに会話内容を説明する。
『反省、私モ』
シャルロットからそういう想いが伝わってきたあと、ジェーンさんとの会話内容について説明してくれた。
「ママンカラ詩真ニ伝エルコト。政治ハ、自分タチノ権利ヤ生活ニ結ビツクモノ。ソレヲ避ケルトイウコトハ、自分ノ生活カラ目ヲソムケルノト同ジ。大切ナモノガアルナラバ、政治ニ向キアイナサイッテ」
真正面から言われて、自分の甘さが恥ずかしい部分も当然あるけれど、でも同時にありがたいなとも感じた。
「詩真ノコトハ本当ノ息子ダト思ッテ、遠慮ナク言ウカラネッテ」
なんか外堀がもう埋まってる。
ああ、でも。それでもいいのかもな。
日本を出て世界中を研究して回る学者とか小さな頃に憧れていた。
シャルロットとなら、日本の色んなしがらみを忘れて、そういう未来に行けるのかな。
でもそのためには「今」にちゃんと向き合わないと。
この情報もしっかり日本側へ、それも早く共有しよう。
そんなことを考えていたら、シャルロットに頬へキスされた。
ジェーンさんたちは皆、笑顔で俺たちを見つめてくれていた。
### 簡易人物紹介 ###
・国館川 詩真
主人公。現実より塔の方が居心地が良い。visは公的には『異世界通訳』だが微細な電気の流れを送受信できる。伊薙探索特別班。支給浴衣をシャルロットに与えたので、現在フンドシとサラシ、足袋のみ。
・中分地 富久子
フッコさん。亜貴の同級生。詩真の境遇と趣味に理解と共感があるが筋金入りの亜貴信者。タレ目の眼鏡美人(推定E)。visは『探査』。詩真に告白、返事待ち中。
・国館川 亜貴
姉。羞恥心<探究心な姉。ご立派(田平推定G)。visは『雷』。責任感が強く嘘が苦手。伊薙探索特別班。
・椰子間比嘉 良夢
自衛隊員。男性。探索隊B→Aチーム入り。色黒で元野球部キャッチャー。既婚者。伊薙探索特別班。
・伏猿 晶乃
自衛隊員。女性。マッチョ自慢で腹筋を触らせようとしてくる。伊薙探索特別班。
・伊薙 珠
元幼馴染(田平推定D)。話が通じない。visは『闇』。詩真への恋慕と暴言を爆発させ塔内へ逃走。
・田平 己輝
詩真の拉致に加担した、顔のパーツが中央に寄っている丸顔の自衛隊員。26歳男性。無類のおっぱい好き(特技はカップ推定)。情報通。聖女に関する情報をたくさんくれていた。
・シャルロット
なぜか日本の塔の奥地に居たフランスの「聖女」。17歳。マンガ好きで詩真と好きな作品がかぶった。身体部位を自身の肉体で再生するvisを持つが、男性の下半身を治療したために(厳密には自身のではない)股間画像がネット流出し、塔内へ失踪していた。
・アヌーク
日本アニメ好きなシャルロットの女友達。visは『幻を身につける』。そうやって作った幻の『シャルロットの顔』で逆ナンしまくって享楽にふけった。
・バルタザール
アヌークの想い人。アヌークに良い顔しながらも裏でシャルロットに言い寄ってくる。
・ジャン
朴訥男子。アヌークが必死にシャルロットとくっつけようとしている。
・ソフィー
最初に駆けつけた警官の一人。女性。入塔者となった。visは『女性を守る』。シャルロット探索隊に参加。
・ルドン
最初に駆けつけた警官の一人。男性。入塔者となった。visは進化して『金属の武具を出す』のが可能に。
・ギュスターヴ
ルドンの後輩である新米警官。男性。入塔者となった。visは『武器に炎をまとわせる』だが功を焦り、スチールゴーレムに下半身を潰された。その後自身の股間を撮影し、SNS拡散の元凶となった。
・ジェーン
シャルロットの母親。自らシャルロット探索をするため入塔者となった。
・サルバドール
犬の散歩中に塔に遭遇し、入塔者となった。visは『生き物を探す』。
・シャルロット探索隊
ジェーン、ソフィー、サルバドールの他、女性兵士ニ名、女性医師一名により構成される六名。
・デンキトカゲ
交信能力を持つ六足トカゲ。一番懐いている個体に「ピリリ」と名付けたが、群れが蛹を経て一個の生物「ピリリたち」に。蛹化終了後、巨大化して再会。なにかと気がつき気を遣ってくれる。
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※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
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