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#37 本当にいいのか?
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身構えたシャルロットではあったが、スチールゴーレムたちは彼女に全く構わなかった。
さっきは攻撃されまくっていたというのに。
そこでシャルロットは考えた。
自身が今、何も身にまとっていないことに。
さっき自分の胸や股間を隠していたあのアイアンゴーレムから剥がれた金属板は、腕が千切れたときに落としたようだ。
もしかして彼らは、金属片に覆われていない者は叩かないのか?
そういやカブトガニに似た「盾担ぎ」は、拾った金属片の上に自分の体毛を覆っていたかも。
少し落ち着いたシャルロットは、悠然と彼らの横を通り抜け、城の裏手へと抜けた。
裏手にもスチールゴーレムたちが整然と、しかし静かに佇んでいた。
ここでももう攻撃されない。
しかしこう見ると、裏も表も似たような造り――と観察していると、そこへアイアンゴーレムが一体、さまよい込んできた。
スチールゴーレムが一体、それと打ち合う。
しばらく打ち合いが続き、アイアンゴーレムの表面が次第に光沢を持ち始めたかもと思い始めた頃、決着がついた。
なんとアイアンゴーレムの方が打ち勝ち、元から居た方のスチールゴーレムが倒れたのだ。
すると、スチールゴーレムのうちの何体かがその倒れた方のスチールゴーレムを大きな腕で引っ掛け、シャルロットが今抜けてきた、城の中央へと運んでゆく。
シャルロットは再び城の中央へと戻った。
好奇心でいっぱいだった。
そこで見た光景は、さっきの倒れたスチールゴーレムが、金属ブロックへと叩かれてゆく様。
ゴーレムたちには彼ら自身の何か壮大なルールやストーリーがある、そう感じたシャルロットはもう城から立ち去ることにした。
城を抜けた先へと一人、進む。
入口付近とさほど変わらない光景。
入り組んだ洞窟と、あちこちを走る小さな溶岩の小川。
ただ天井はどこも抜けていて、アイアンゴーレムたちの叩き合う音が高く遠く響いていた。
ここにも赤い星が見える――シャルロットはその赤い瞬きが次第に怖くなり、さらに奥へと走った。
まだ誰も来ていないであろうその場所では、もはや全裸であることが気にならなくなっていた。
アイアンゴーレムは相変わらずあちこちで打ち合っていたが、近づかなければ襲われることはなかった。
時折、岩の隙間の赤い実を食べ、奥へ奥へと進んでゆくと、やがて大きな地底溶岩湖に行き当たった。
その淵で、これからどうしようとしゃがみ込んで一人涙を流すシャルロットだったが、急に身を震わせた。
自身の孤独に気付いて。
ここで一生暮らすなんて冗談じゃない、と。
もういいや――そう思ってしまったシャルロットは、溶岩湖に身を投げた。
全身に凄まじい痛みを感じて、俺は「うわぁ」と叫んでしまった。
「私モ、死ンダト思ッタヨ」
でも、シャルロットから続きが送られてきた。
何かに守られている気がした、と。それが何かはわからないけれど、とも。
溶岩の水流は想像以上に激しく、シャルロットは流されることしかできなかった。
全身を襲う酷い痛みはすぐに鈍化するが、しばらくするとすぐにまた鋭い痛みを感じ始める。
自分の表面の細胞が死ぬ度に新しい細胞に取り替えられているのかも、と、自身のvisを恨めしくさえ思った。
とても長い時間に感じた。
もう、治さないでいいよ、とすら思った。
やがて、周囲を同じように流れてゆく存在を感じた――視認など当然できなかったが、なぜかそれがあのゴーレムたちだと感じた。
ゴーレムたちの一つの大きな群れの一部となったシャルロットは流され続け、やがて、岸へと投げ出された。
それを感じている自分が、まだ生きているということに、絶望的な気持ちになった。
自分には死ぬことも許されないのか、と。
それならばこの消し炭みたいな姿ではいたくない、と。
そこで気を失い、気がつくと、全裸で地面に突っ伏していた。
全身が、もとの怪我のない自分の体に戻っていた。
起き上がろうとして、すさまじく疲れていることに気付き、とりあえず近くにあった岩に寄りかかった。
相変わらず絶望と孤独とが自分を取り合っていると感じていた。
そんな時だった、人の気配を感じたのは。
誰か居るのかと彼女が問いかけたとき、返ってきたのが「います」という男性の声。
男性。それだけで身がすくんだ。しかしその直後、同じ声で、今度は英語で「います」と来た。
フランス人ではないかもしれない、そう思えただけで、体のこわばりが少しほどけた。
さらに日本人なのかアメリカ人なのかとシャルロットが問いかけると、その声は「日本人です」と答えた。
「ソレガ、詩真ダッタヨ。出会エタノガ詩真デ、本当ニ良カッタ」
シャルロットが俺をハグする。
ふわりと甘い香りが鼻腔を抜ける。
布越しでも感じる柔らかさと体温。
うなじが隠れるくらいのショートヘアは軽く風が吹く度に頬をくすぐる。
小さな声で、しかも日本語で何度も繰り返す『好キダヨ』。
そういったささやかな体感に一つ一つ心を留めていたら、股間を抑え込むのをつい忘れてしまった。
シャルロットが顔を上げ、俺の目を見つめる。
「私ハ、初メテダヨ」
「お、俺だって初めてだよ」
ととっさに返事して、そういうつもりじゃないのにとセルフ脳内突っ込みをした俺の唇に、シャルロットの唇が重ねられた。
ぎこちない舌が突っ込まれてようやく、冷静さが戻ってきた。
俺はシャルロットを嫌いではない。いやむしろ好き。こんな状況じゃなくともどこかで出遭えていたら、好きな作品の趣味が合うってことはとてつもない偶然な幸せで、きっと好感を抱いていたはず。じゃあなぜ俺は今こんなに慌てているのか。こんな状況で盛り上がっていいのだろうかという罪悪感はどこから来ているのか。他の皆が一生懸命、塔の探索をしているから? フッコ先輩やクソ珠の気持ちには応えないのに簡単にシャルロットになびいたから? 聖女の弱った境遇につけこんじゃっている気がしちゃっているから? あっ、あとこんなところで盛り上がっちゃって妊娠でもさせてしまったら、どうなってしまうんだろうとか、きっとフランスや日本の偉い人から怒られるんじゃないだろうかとか、世界中のSNSで酷いことたくさん言われるんじゃないだろうかとか。
脳裏を一瞬にして様々な思考が通り抜け、思わず口走った言葉がこれ。
「ひ、避妊できないよ、ここじゃ」
シャルロットはプッと吹き出し、またキスしてきた。
今度は舌が入らない、代わりにシャルロットの思いが送られてきたキス。
内容を言葉にするとちょっとエグいんだけど『エッチの直後、子宮だけ入れ替えたらセーフかも』みたいな内容。
なんか圧倒されてしまった。女子という生き物に。
もしも自分が同じ能力を得たとしても、こんな考え方はできなかったと思う。
だから。
「ちょっとここだと、丸見え過ぎるよね」
と言うのが精一杯。
いや、そりゃ、性欲を爆発させたい気持ちはすごくある。そりゃありまくってる。
ただ冷静さが邪魔をする。
この期に及んでまだ腰が引けた返しをする自分を、ヘタレてんなと第三者的に見つめている自分が居る。
そんな俺たちの気持ちがダダ漏れてるのを思いやってくれたのか、「ピリリたち」が俺たちを背中にひょいと乗せ、運んでくれた。
俺とシャルロットが出会ったあの洞窟へと。
二人、手を取り合い、洞窟の奥へ一歩ずつ歩いてゆくときの、この、どうしようもない期待感と高揚感、そして背徳感。
二人が出会った場所にはすぐに着いた。
すでにじっとりと汗ばむシャルロットの肌を、薄暗いなか赤みを帯びた溶岩の明るさが照らし、やけに色っぽく感じる。
『詩真、好キダヨ』
シャルロットは密着したまま、何かを待っているかのように俺を見つめる。
わかってる。
シャルロットが待っているその言葉をまだ言ってないことに。
それを言ってしまったら、きっと止まれないと思ったからあえて言わないでいたが、もういい加減、我慢の限界だった。
「好きだよ、シャルロット」
心の引き金を引いてしまった。
優しく、でも激しく重なる唇、絡み合う舌。もどかしく互いの背中を撫で合う指。
本当にいいのか? 本当にしちゃうぞ?
何十回目かの自問自答に、答えが返ってきた。
俺の内側ではなく、外側から。
女の人の声。
「チャーリー!」
そう聞こえた直後。シャルロットが俺から唇を放した。
「ママン?」
触れているシャルロットの素肌から、彼女の母親の映像が送られてきた。
### 簡易人物紹介 ###
・国館川 詩真
主人公。現実より塔の方が居心地が良い。visは公的には『異世界通訳』だが微細な電気の流れを送受信できる。伊薙探索特別班。支給浴衣をシャルロットに与えたので、現在フンドシとサラシ、足袋のみ。
・中分地 富久子
フッコさん。亜貴の同級生。詩真の境遇と趣味に理解と共感があるが筋金入りの亜貴信者。タレ目の眼鏡美人(推定E)。visは『探査』。最近ちょっと破廉恥。
・国館川 亜貴
姉。羞恥心<探究心な姉。ご立派(田平推定G)。visは『雷』。責任感が強く嘘が苦手。伊薙探索特別班。
・椰子間比嘉 良夢
自衛隊員。男性。探索隊B→Aチーム入り。色黒で元野球部キャッチャー。既婚者。伊薙探索特別班。
・伏猿 晶乃
自衛隊員。女性。マッチョ自慢で腹筋を触らせようとしてくる。伊薙探索特別班。
・伊薙 珠
元幼馴染(田平推定D)。話が通じない。visは『闇』。詩真への恋慕と暴言を爆発させ塔内へ逃走。
・田平 己輝
詩真の拉致に加担した、顔のパーツが中央に寄っている丸顔の自衛隊員。26歳男性。無類のおっぱい好き(特技はカップ推定)。情報通。聖女に関する情報をたくさんくれていた。
・シャルロット
なぜか日本の塔の奥地に居たフランスの「聖女」。17歳。マンガ好きで詩真と好きな作品がかぶった。身体部位を自身の肉体で再生するvisを持つが、男性の下半身を治療したために(厳密には自身のではない)股間画像がネット流出し、塔内へ失踪していた。
・アヌーク
日本アニメ好きなシャルロットの女友達。visは『幻を身につける』。そうやって作った幻の『シャルロットの顔』で逆ナンしまくって享楽にふけった。
・バルタザール
アヌークの想い人。アヌークに良い顔しながらも裏でシャルロットに言い寄ってくる。
・ジャン
朴訥男子。アヌークが必死にシャルロットとくっつけようとしている。
・ソフィー
最初に駆けつけた警官の一人。女性。入塔者となった。
・ルドン
最初に駆けつけた警官の一人。男性。入塔者となった。visは『甲冑や剣や盾を出す』。
・ギュスターヴ
ルドンの後輩である新米警官。男性。入塔者となった。visは『武器に炎をまとわせる』だが功を焦り、スチールゴーレムに下半身を潰された。その後自身の股間を撮影し、SNS拡散の元凶となった。
・ママン
シャルロットの母親っぽい。なぜか洞窟の奥から声が聞こえた。
・デンキトカゲ
交信能力を持つ六足トカゲ。一番懐いている個体に「ピリリ」と名付けたが、群れが蛹を経て一個の生物に。蛹化終了後、巨大化して再会。なにかと気がつき気を遣ってくれる。
さっきは攻撃されまくっていたというのに。
そこでシャルロットは考えた。
自身が今、何も身にまとっていないことに。
さっき自分の胸や股間を隠していたあのアイアンゴーレムから剥がれた金属板は、腕が千切れたときに落としたようだ。
もしかして彼らは、金属片に覆われていない者は叩かないのか?
そういやカブトガニに似た「盾担ぎ」は、拾った金属片の上に自分の体毛を覆っていたかも。
少し落ち着いたシャルロットは、悠然と彼らの横を通り抜け、城の裏手へと抜けた。
裏手にもスチールゴーレムたちが整然と、しかし静かに佇んでいた。
ここでももう攻撃されない。
しかしこう見ると、裏も表も似たような造り――と観察していると、そこへアイアンゴーレムが一体、さまよい込んできた。
スチールゴーレムが一体、それと打ち合う。
しばらく打ち合いが続き、アイアンゴーレムの表面が次第に光沢を持ち始めたかもと思い始めた頃、決着がついた。
なんとアイアンゴーレムの方が打ち勝ち、元から居た方のスチールゴーレムが倒れたのだ。
すると、スチールゴーレムのうちの何体かがその倒れた方のスチールゴーレムを大きな腕で引っ掛け、シャルロットが今抜けてきた、城の中央へと運んでゆく。
シャルロットは再び城の中央へと戻った。
好奇心でいっぱいだった。
そこで見た光景は、さっきの倒れたスチールゴーレムが、金属ブロックへと叩かれてゆく様。
ゴーレムたちには彼ら自身の何か壮大なルールやストーリーがある、そう感じたシャルロットはもう城から立ち去ることにした。
城を抜けた先へと一人、進む。
入口付近とさほど変わらない光景。
入り組んだ洞窟と、あちこちを走る小さな溶岩の小川。
ただ天井はどこも抜けていて、アイアンゴーレムたちの叩き合う音が高く遠く響いていた。
ここにも赤い星が見える――シャルロットはその赤い瞬きが次第に怖くなり、さらに奥へと走った。
まだ誰も来ていないであろうその場所では、もはや全裸であることが気にならなくなっていた。
アイアンゴーレムは相変わらずあちこちで打ち合っていたが、近づかなければ襲われることはなかった。
時折、岩の隙間の赤い実を食べ、奥へ奥へと進んでゆくと、やがて大きな地底溶岩湖に行き当たった。
その淵で、これからどうしようとしゃがみ込んで一人涙を流すシャルロットだったが、急に身を震わせた。
自身の孤独に気付いて。
ここで一生暮らすなんて冗談じゃない、と。
もういいや――そう思ってしまったシャルロットは、溶岩湖に身を投げた。
全身に凄まじい痛みを感じて、俺は「うわぁ」と叫んでしまった。
「私モ、死ンダト思ッタヨ」
でも、シャルロットから続きが送られてきた。
何かに守られている気がした、と。それが何かはわからないけれど、とも。
溶岩の水流は想像以上に激しく、シャルロットは流されることしかできなかった。
全身を襲う酷い痛みはすぐに鈍化するが、しばらくするとすぐにまた鋭い痛みを感じ始める。
自分の表面の細胞が死ぬ度に新しい細胞に取り替えられているのかも、と、自身のvisを恨めしくさえ思った。
とても長い時間に感じた。
もう、治さないでいいよ、とすら思った。
やがて、周囲を同じように流れてゆく存在を感じた――視認など当然できなかったが、なぜかそれがあのゴーレムたちだと感じた。
ゴーレムたちの一つの大きな群れの一部となったシャルロットは流され続け、やがて、岸へと投げ出された。
それを感じている自分が、まだ生きているということに、絶望的な気持ちになった。
自分には死ぬことも許されないのか、と。
それならばこの消し炭みたいな姿ではいたくない、と。
そこで気を失い、気がつくと、全裸で地面に突っ伏していた。
全身が、もとの怪我のない自分の体に戻っていた。
起き上がろうとして、すさまじく疲れていることに気付き、とりあえず近くにあった岩に寄りかかった。
相変わらず絶望と孤独とが自分を取り合っていると感じていた。
そんな時だった、人の気配を感じたのは。
誰か居るのかと彼女が問いかけたとき、返ってきたのが「います」という男性の声。
男性。それだけで身がすくんだ。しかしその直後、同じ声で、今度は英語で「います」と来た。
フランス人ではないかもしれない、そう思えただけで、体のこわばりが少しほどけた。
さらに日本人なのかアメリカ人なのかとシャルロットが問いかけると、その声は「日本人です」と答えた。
「ソレガ、詩真ダッタヨ。出会エタノガ詩真デ、本当ニ良カッタ」
シャルロットが俺をハグする。
ふわりと甘い香りが鼻腔を抜ける。
布越しでも感じる柔らかさと体温。
うなじが隠れるくらいのショートヘアは軽く風が吹く度に頬をくすぐる。
小さな声で、しかも日本語で何度も繰り返す『好キダヨ』。
そういったささやかな体感に一つ一つ心を留めていたら、股間を抑え込むのをつい忘れてしまった。
シャルロットが顔を上げ、俺の目を見つめる。
「私ハ、初メテダヨ」
「お、俺だって初めてだよ」
ととっさに返事して、そういうつもりじゃないのにとセルフ脳内突っ込みをした俺の唇に、シャルロットの唇が重ねられた。
ぎこちない舌が突っ込まれてようやく、冷静さが戻ってきた。
俺はシャルロットを嫌いではない。いやむしろ好き。こんな状況じゃなくともどこかで出遭えていたら、好きな作品の趣味が合うってことはとてつもない偶然な幸せで、きっと好感を抱いていたはず。じゃあなぜ俺は今こんなに慌てているのか。こんな状況で盛り上がっていいのだろうかという罪悪感はどこから来ているのか。他の皆が一生懸命、塔の探索をしているから? フッコ先輩やクソ珠の気持ちには応えないのに簡単にシャルロットになびいたから? 聖女の弱った境遇につけこんじゃっている気がしちゃっているから? あっ、あとこんなところで盛り上がっちゃって妊娠でもさせてしまったら、どうなってしまうんだろうとか、きっとフランスや日本の偉い人から怒られるんじゃないだろうかとか、世界中のSNSで酷いことたくさん言われるんじゃないだろうかとか。
脳裏を一瞬にして様々な思考が通り抜け、思わず口走った言葉がこれ。
「ひ、避妊できないよ、ここじゃ」
シャルロットはプッと吹き出し、またキスしてきた。
今度は舌が入らない、代わりにシャルロットの思いが送られてきたキス。
内容を言葉にするとちょっとエグいんだけど『エッチの直後、子宮だけ入れ替えたらセーフかも』みたいな内容。
なんか圧倒されてしまった。女子という生き物に。
もしも自分が同じ能力を得たとしても、こんな考え方はできなかったと思う。
だから。
「ちょっとここだと、丸見え過ぎるよね」
と言うのが精一杯。
いや、そりゃ、性欲を爆発させたい気持ちはすごくある。そりゃありまくってる。
ただ冷静さが邪魔をする。
この期に及んでまだ腰が引けた返しをする自分を、ヘタレてんなと第三者的に見つめている自分が居る。
そんな俺たちの気持ちがダダ漏れてるのを思いやってくれたのか、「ピリリたち」が俺たちを背中にひょいと乗せ、運んでくれた。
俺とシャルロットが出会ったあの洞窟へと。
二人、手を取り合い、洞窟の奥へ一歩ずつ歩いてゆくときの、この、どうしようもない期待感と高揚感、そして背徳感。
二人が出会った場所にはすぐに着いた。
すでにじっとりと汗ばむシャルロットの肌を、薄暗いなか赤みを帯びた溶岩の明るさが照らし、やけに色っぽく感じる。
『詩真、好キダヨ』
シャルロットは密着したまま、何かを待っているかのように俺を見つめる。
わかってる。
シャルロットが待っているその言葉をまだ言ってないことに。
それを言ってしまったら、きっと止まれないと思ったからあえて言わないでいたが、もういい加減、我慢の限界だった。
「好きだよ、シャルロット」
心の引き金を引いてしまった。
優しく、でも激しく重なる唇、絡み合う舌。もどかしく互いの背中を撫で合う指。
本当にいいのか? 本当にしちゃうぞ?
何十回目かの自問自答に、答えが返ってきた。
俺の内側ではなく、外側から。
女の人の声。
「チャーリー!」
そう聞こえた直後。シャルロットが俺から唇を放した。
「ママン?」
触れているシャルロットの素肌から、彼女の母親の映像が送られてきた。
### 簡易人物紹介 ###
・国館川 詩真
主人公。現実より塔の方が居心地が良い。visは公的には『異世界通訳』だが微細な電気の流れを送受信できる。伊薙探索特別班。支給浴衣をシャルロットに与えたので、現在フンドシとサラシ、足袋のみ。
・中分地 富久子
フッコさん。亜貴の同級生。詩真の境遇と趣味に理解と共感があるが筋金入りの亜貴信者。タレ目の眼鏡美人(推定E)。visは『探査』。最近ちょっと破廉恥。
・国館川 亜貴
姉。羞恥心<探究心な姉。ご立派(田平推定G)。visは『雷』。責任感が強く嘘が苦手。伊薙探索特別班。
・椰子間比嘉 良夢
自衛隊員。男性。探索隊B→Aチーム入り。色黒で元野球部キャッチャー。既婚者。伊薙探索特別班。
・伏猿 晶乃
自衛隊員。女性。マッチョ自慢で腹筋を触らせようとしてくる。伊薙探索特別班。
・伊薙 珠
元幼馴染(田平推定D)。話が通じない。visは『闇』。詩真への恋慕と暴言を爆発させ塔内へ逃走。
・田平 己輝
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なぜか日本の塔の奥地に居たフランスの「聖女」。17歳。マンガ好きで詩真と好きな作品がかぶった。身体部位を自身の肉体で再生するvisを持つが、男性の下半身を治療したために(厳密には自身のではない)股間画像がネット流出し、塔内へ失踪していた。
・アヌーク
日本アニメ好きなシャルロットの女友達。visは『幻を身につける』。そうやって作った幻の『シャルロットの顔』で逆ナンしまくって享楽にふけった。
・バルタザール
アヌークの想い人。アヌークに良い顔しながらも裏でシャルロットに言い寄ってくる。
・ジャン
朴訥男子。アヌークが必死にシャルロットとくっつけようとしている。
・ソフィー
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最初に駆けつけた警官の一人。男性。入塔者となった。visは『甲冑や剣や盾を出す』。
・ギュスターヴ
ルドンの後輩である新米警官。男性。入塔者となった。visは『武器に炎をまとわせる』だが功を焦り、スチールゴーレムに下半身を潰された。その後自身の股間を撮影し、SNS拡散の元凶となった。
・ママン
シャルロットの母親っぽい。なぜか洞窟の奥から声が聞こえた。
・デンキトカゲ
交信能力を持つ六足トカゲ。一番懐いている個体に「ピリリ」と名付けたが、群れが蛹を経て一個の生物に。蛹化終了後、巨大化して再会。なにかと気がつき気を遣ってくれる。
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