93 / 103
#93 交差する想い
しおりを挟む
「リテル君、寿命の渦を偽装の渦して感情を隠しても、表情に出したら隠してないのと一緒だよ」
クラーリンに言われて、自分が警戒心をむき出しにしてしまっていることに気付く。
鏡が身近にないから表情まで気が回らないのは今後の課題だな。
「安心してくれ。僕は魔術師として純粋にタールを褒めた。だが彼らの人柄は軽蔑している。コンウォルが脱出に利用した河馬種の親子だが、息子のフリをするために本当の息子をさらい、母親を脅して親のフリをさせた。本物の息子はいまギルフォドで軟禁されているはずだ。いくら息子が無事で協力金を握らせたとはいえ、そのやり方は不本意だと思ったよ。ただ、グリニーのために、『魔動人形』に移ったタールを脱出させる手伝いはせざるを得なかった。僕がタールを見捨てたら、タールがウォルラースに何を伝えるかわからない。だから直前まで脱出準備を手伝って、そしてギルフォドを経ったのは昨晩のこと。今日の昼にウォルラースの隠しアジトでグリニーに再び『眠れ、魂の形』をかけた。その後はタールから聞いた情報をもとにグリニーを助けるための魔術をずっと試行錯誤していた」
「それなのに、まだ彼らと」
「まだ足りないのだ。理論はできた。だが、まだなのだ。さっき言っただろう? 外から強制的に他人の寿命の渦を操作するには、その魂や肉体に繋がりがあるものを触媒にしなければならないと。同じなんだ」
まさかチェッシャーを触媒に――って、触媒って具体的にはなんだ?
何をするんだ?
生贄とかそういうんじゃないよな?
「僕が触れようとしているのは魔術特異症そのものだ。だとしたら、魔術特異症の者を触媒にしなければならなかったんだ」
クラーリンは、俺が魔術特異症だと見抜いた上でこんなことを言っているのか?
俺の偽装の渦は不十分だったのか?
「触媒ってのはなんですか? 生贄ですか?」
「ははは。殺すわけがない。その寿命の渦が失われるようなことをしたら、触媒としての価値も消える。一時的に繋ぐだけだよ。グリニーの魔術特異症と触媒の魔術特異症とを。思考的には踏み台にすると言ったほうが良いだろうか。繊細な荷物を運ぶには、置いてある側と移したい側の高さを合わせる必要があるから。そして高さが合えば、そこでようやくグリニーの寿命の渦をこちらへ引っ張って取り戻すことができる。触媒となる魔術特異症の者にはただグリニーの獣種と同じ寿命の渦を偽装の渦してもらうだけでいい。もっとも取り戻しに時間がどのくらいかかるかわからないから、偽装の渦を強制する魔法『眠れ、魂の形』で補助するつもりだが」
つまり俺に協力しろと言うことなのか?
方法論としては納得感がありそうだが、そもそも信用がまだできない。
「その、魔術特異症と思われる子がね、ウォルラースに洗脳されているようなのだ」
洗脳?
というか俺のことじゃなかったのか?
他に?
「僕がグリニーの世話やエルーシ君への魔法の手ほどきをしている間にね、ウォルラースがずっとその子につきっきりで……それを特に気にはしていなかったが、今日の昼に気付いたときにはもうウォルラースに陶酔していた。もしかしたら僕にも知らせていない魔法品か何かを使ったのかもしれない。ただ重要なことは、その魔術特異症の子の協力を得るには、ウォルラースの命令が必要だということなんだ。だからタールだったやつらがウォルラースと合流できるまでの最後の手伝いを頼まれてやった。そんな悪党にすがるくらい、僕にとってはグリニーが全てなんだ」
話を整理すると、グリニーさんとチェッシャー以外に、魔術特異症の子がウォルラースの手下として同行している、ということか?
まさかキタヤマさん?
いや「その子」って表現してるから、クラーリンさんより年齢が上のキタヤマさんではないよね?
俺が知る地球人転生者は他に、レムのお母さんと、それからメリアンに因縁があったトレインの恋人であるスマコさん。二人ともすでに亡くなられている。
グリニーさんが五人目としてもう一人?
信用しきれないクラーリンとの会話を断ち切れないのは、転生者の希少性がゆえ――信用?
何を信用するというんだ?
こいつらは何をした?
さっきから『魔力感知』で馬車があった辺りを念入りに確認しているが、生存者の気配がまったくない。
こいつらは、定期便の乗客も護衛も、何の関係もない人たちを虐殺したのだ。
「だからといって、こんな酷いことを」
「ああそうさ! 僕が甘かったんだよ!」
クラーリンが珍しく感情的な怒鳴り声をあげた。
「信じてもらえないかも、だけどね。僕はこの襲撃について、襲撃どころかネスタエアインとコンウォルが無事に定期便から脱出するための手伝いとしか聞いていなかった。いくらグリニーを守るためとはいえ、虐殺に手を貸すわけがないだろう? 僕がそんなことをしてグリニーが心を痛めないとでも? だから途中で君を助けたし、今こうして君に頼んでいる。君とタールとの因縁は知らないが、コンウォルの君に対する態度はおかしかった。隠れることもせず敵意を剥き出しにして。エルーシ君もそうだ。ただ上昇志向が強いだけの少年だった彼が、魔術を熱心に頑張っていた彼が、君の存在に気付いた途端に怒り狂った。いや、君のせいにするつもりはない。ただ、君はウォルラースとも因縁があるんだろう? 信用してほしかったから全て話した。真実を。僕が君を騙そうとしているようにみえるか? 必死なんだ。ネスタエアインは逃げた。もし彼が、僕がコンウォルを見捨てたなどと判断したら……今、気が気じゃないんだ」
クラーリンの必死さは伝わってきているし、話の辻褄は合っているように思える。
今後のリテルやルブルムたちの身の安全を考えると、ネスタエアインを野放しにはしたくないし、ウォルラースもそこに居るのなら、その合流前に――とは思う、けど。
戦力的には――噛み締めた奥歯が震える。
「それに君はあの子も助けたいんじゃないかな。君がチェッシャー同様に仲良くしていた子……フラマを」
フラマ?
魔術特異症ってフラマさんのことか?
ああ、そうか。
この世界においては、通常の寿命の渦ではない者は全てひっくるめて「魔術特異症」なんだっけ。
ただそれだと、クラーリンの想定している術式にはフラマさんは適合しないような気がする。
フラマさんは地球人転生者ではなく、地界出身のアモンという種族を父に持つ、単なる獣種ハーフだから――いや逆か?
グリニーさんも地界出身の魔人と獣種とのハーフなのだとしたら。
どっちが正解なのか?
前にアイシスでグリニーさんに会った時、普通の寿命の渦にしか感じられなかったのはクラーリンが魔法で寿命の渦を偽装の渦していたからっぽいが、それだけ寿命の渦の扱いに慣れているクラーリンが、俺の本来の寿命の渦に気づかないでいるだろうか?
最善の努力はし続けてはいるが、自分の技術を過信してはいない。
フラマさんの名前はチェッシャーから簡単に聞けるだろうし、俺を油断させるための罠とも考えられる。
ただ、もし真実なのだとしたら、俺がリテルの体から分かれるためにはクラーリンさんの思考や経験がとても有用そうではあるんだよな。
とはいえそんな目先の罠に釣られてリテル自身を損なうことがあったら、申し訳ないなんて言葉ではすまされないし。
「すぐに結論は出ないことだろう。先に君の友人のハト君だっけ? 彼の手当をしよう」
ハト?
マドハト?
でもさっき首を――詳細な『魔力感知』で理解する。
寿命の渦のコントロールが不十分なマドハトは、自身の寿命の渦を偽装の渦で「そこにはいない」状態までは絞り込めない。
だからこそ、寿命の渦が消えた状態を、首を切り離されたことのせいなのだとしか思えなかった。
だが今、詳細な『魔力感知』をすると、クラーリンがチェッシャーに教えていた『死んだふり』に近い本当に微かな寿命の渦の動きを感じる。
クラーリンが地面に転がっているマドハトの頭に触れると、それは大きな毛の塊へと変わる――もしかして、尻尾?
あれはマドハトの頭ではなく尻尾なのか?
「これは、通常の傷とは違うな? 『生命回復』でつなげられそうにない」
「貸してください!」
クラーリンさんからマドハトの尻尾を受け取り、倒れているマドハトの元へと駆け寄る――首のないマドハトの死体、にしか見えない。
恐る恐る、頭があるであろう位置に触れてみる――ある!
途端にマドハトの首から上が現れる。
「……テル……さま……」
「良かった……」
マドハトを抱きしめる。
本当に良かった――いや、そんなことより急いで治療をしなくては。
「傷口を見せるんだ」
「ダメです。戻らないです」
「どういうことだ?」
尻尾の傷口部分を、エルーシの燃えている火にかざして改めて見ると、やけに黒ずんでいる。
「テルさまと、最初に会った時と同じです。自分の身体の一部を首として差し出すことで自分の命を守るです。秘密の魔法です。あのときは腕を一本差し出したです。この体は尻尾があったから、尻尾を差し出したです。差し出したものはもう差し出しちゃったから、元には戻せないです」
なるほど。確かに最初に寄らずの森でマドハトに出会った時、マドハトは片腕がなかった。
あのときは命からがら逃げ出してきたんだろうなんて思っていたけれど、ラビツたちの実力を知っている今だと、そんな簡単に見逃すほどラビツたちは甘くもないはずだ。
ラビツたちのような傭兵は、『魔力感知』ではなく『気配感知』だろうけど、それでもまだ生きているゴブリンを見逃すわけはないように感じるし。
となると、これは魔法、いや、魔術の効果なのか。
首の代わりに身体部位の一部を差し出し、その部位を頭部に、本体は首なし死体へと見せかけ、しかも寿命の渦まで消し込む。そんなすごい効果の魔術を、身体部位を触媒として捧げることで極限まで魔法代償コストを下げた、といったところか。
ゴブリン魔法の奥深さを改めて思い知らされる。
「感動の再開に水を差すようで申し訳ないが、協力してくれるかどうかの返事を急かしても良いかい?」
「クラーリン……さん、グリニーさんの治療に役立ったかもしれないウォルラースやタールと、対立できるんですか?」
「できるかできないかで言えば、グリニーを助けるために必要ならばいくらでもする。あと、さんは要らない。例えばネスタエアインが到着前ならば、君らが捕虜のフリをしてくれればウォルラースたちに近づける。あとは隙を見てウォルラースとフラマとを無力化できれば、グリニーやチェッシャーと共に脱出して、ということは不可能ではないと思う。ただ状況によっては、君たちを連れて行っておきながら対立する可能性は捨てきれない。何度も言うが、グリニーが最優先なのだ。僕はグリニーを助けるために生きていると言っても過言ではない」
あくまでもグリニーさんが最優先なのは終始伝わってきている。
それに俺を騙したいのなら表面上でも嘘をつけばいいのに、グリニーさんの安全のためならウォルラースとの友好関係を保ち俺たちとの対立も辞さないと、ある意味不器用な告白をしてきている。
これはちゃんと真意なのかもしれないな。
クラーリンは焦っているようでもあるし。
それでも、まだすぐには踏ん切りがつかない。
俺が考えるべきはリテルと、そしてせっかく助かったマドハトの安全。
なんならこのまま逃げたっていいのだ。
ただ、ネスタエアインとウォルラースとを野放しにしてしまう危険性も無視できないのは確か。
ネスタエアインよりも先にアジトに行って、ウォルラースを無力化できるのであれば、グリニーさんの安全を確保できたなら、クラーリンはネスタエアイン退治に手を貸してくれるのであろうか。
「わかった。ここで時間を消費して、ネスタエアインがウォルラースと合流してしまったならば、色々なことが難しくなるかもしれない。それならば今すぐ独りで戻った方がグリニーはより安全を確保できる気がしている。ありがとう、リテル君。最後にもう一つ、お礼代わりに情報をあげよう。タールの『魔動人形』がもう一体、ギルフォルド王国に居るらしい。アモンという地界の種族の体らしい。本来はコンウォルとネスタエアインをウォルラースと引き合わせた後、彼らはそこから指名手配の及ばぬギルフォルド王国へと向かい、僕らはお役御免になるはずだった」
アモンということはそれがフラマさんとオストレアのお父さんということか?
クラーリンはといえば、無防備にこちらへ背中をさらけ出し、去ってゆく。
「……テルさま」
マドハトの頭を撫でる。
「もう、リテルで良いよ、マドハト」
「はいです!」
「それからもう少し、危険なことに付き合ってくれるか?」
「リテルさまをひとりにはしないです!」
「ありがとう、マドハト」
俺は落ちていた『虫の牙』を拾うと、クラーリンを追いかけた。
深夜の森を馬で早駆けする。
クラーリンとエルーシが乗ってきた馬に乗って。
もっとも俺とマドハトはエルーシが乗ってきたやつに「荷物」として乗せられて、だけど。
あの後、念のためにもう一度定期便の方を確認してみた。
全員、焼かれていた。
その中には河馬種の母親も居た。
コンウォルが子どものフリをしていたが、母親はネスタエアインなどではなく、本物の一般人だったのだ。
当のネスタエアインは「魔動人形」内に埋め込まれた魔石の中に寿命の渦を隠し、牛種の商人が持ち運んでいた荷物に「死に人形」として隠れていたようだ。
普通の荷物は全て、門を出る時に領兵さんたちに検分されていたが、見落とされたようだ。
今思えば、あの商人がやたらと寝藁を主張していた袋なら、ネスタエアインの小柄な体くらいは入った可能性はある。
重量を軽くする魔法というのもあるようだし。
唯一、命を助けられていたのは定期便を牽いていた馬が一頭だけ。
恐らくネスタエアインが乗っていったっぽい。
だから俺たちは、ネスタエアインが馬で先行している前提で作戦を組み立てた。
俺とマドハトはクラーリンの魔法『眠れ、魂の形』で、寿命の渦を「カウダ毒で麻痺した獣種」へと整え、縛られた上で馬で運ばれる。
ただし本当に縛られるわけではなく、「一見縛られているように見えるが簡単に外れる結び方」というやつを使う。
以前、メリアンに教えてもらった技術だ。
縄は、万が一の際に定期便の護衛たちを殺さずに無力化するためにとクラーリンが用意してきたもの。
そしてその先端を馬の鞍へと結びつけ、いざとなったら馬から落ちるだけで縄が解けるようにしてみた。
クラーリンの『眠れ、魂の形』は、幻覚系ではなく実際に寿命の渦自体が整えられるので、消費命の集中をしても表面上は変わらない。自動で偽装消費命してくれるという便利さがある。
ただし、四ディエス以上の魔法代償については、隠すことができないし、『魔力感知』の詳細モードで確認すると、集中してから整えられるまでのほんのわずかな間の揺らぎは感じ取ることができた。
四ディエスの魔法で、一ディエス分だけ偽装消費命ってのを試してみたがうまくはいかなかった。
タール相手に不意打ちという点のみで考えるなら、三ディエス以下の魔法であっても、有効性を過信しないほうがいいだろう。
あるいはスピード勝負か。
どうするかをずっと脳内シミュレーションし続けながら、黒き森の中、馬の背に揺られ続ける。
ウォルラースの隠しアジトというのは、黒き森の奥にあるらしい。
かつてシュラットの住居であったと思われる洞窟の一つで、シュラットは背が高いから洞窟内の天上が高く、中へは馬を連れたまま入れるのだとか。
黒き森と言えばウンセーレー・ウィヒトなので、そっちの問題はないのかとクラーリンに尋ねたところ、シュラットがウンセーレー・ウィヒト化した背景からか、その大半が黒き森を貫く街道沿いに現れるのだそうだ。
森の中を抜ければ特に遭遇することもないと言われていたが、実際その通りであった。
やがて、馬が止まる。
クラーリンが馬の首を軽く二回叩く。
事前に決めておいたアジトの前まで到着した合図。
俺とマドハトはカウダ毒を盛られて縛られた捕虜作戦は果たして通用するのだろうか。
限られた時間の中で最善に近い作戦を用意したつもりだった。
しかし、想定外の事態というのはどこにでも存在する。
ようやく到着したウォルラースの隠しアジトだったが、もう初っ端から前提を崩された。
なぜか分からないが、人数がおかしいのだ。
『魔力感知』については、感知していることを向こうに知られないよう控えめに抑えた『魔力微感知』を使っているのだが、それでも、普通に存在する寿命の渦を把握し損なうことはない。
そりゃ『魔力微感知』では、『死んだふり』みたいな魔法で寿命の渦を偽装の渦していたり、「魔動人形」のように寿命の渦を魔石の中に隠しているような、詳細モードで索敵しないと見つからない類いのやつは、残念ながらとらえることができないが、今、明らかに予定よりも多い人数の存在は俺だけじゃなく、恐らくクラーリンも感知できているのではなかろうか。
海象種が一人、これはウォルラース。
猫種が二人、これはチェッシャーとグリニーさん。
鳥種が一人、これはフラマさん。
そして、山羊種が一人、俺はこの寿命の渦に見覚えがある。
どうしてこんなところに居るのか、ファウン。
襲撃前に抜け出したファウン――ああ、そういや置き手紙があったんだっけ。
こんなことならあの置き手紙を読んでおけば良かった、なんて今更悔やんでも仕方ない。
クラーリンが馬の首を軽く一回叩いた。
決行か。
俺とマドハトが乗せられた馬は、クラーリンの馬に続いて洞窟へと入ってゆく。
馬の足音から、土と草に覆われた地面が、砂利のある岩場へと変わったのがわかる。
しかも傾斜を下っている。
「ウォルラース、僕は戻ったよ。コンウォルとエルーシ君はこの彼にやられた。二人とも彼と因縁があったようでね、僕が止めるのも聞かずに戦闘を始めたのだ。秘密裏に脱出なんてできなかったよ。しかもコンウォルは戦闘のさなか、その能力を見せてしまってね、それをマズイと判断したのかネスタエアインは定期便に火を付けて全員を虐殺したよ。生き残りは居ない。しかもネスタエアインは先に脱出してしまった。僕がこの二人を無力化している間に、馬に乗って。もう着いているかと思ったのだが……そこの君はネスタエアインじゃないね?」
クラーリンは堂々とした声。
そして馬を降りた気配。
「ふむ。ネスタエアインはまだ来ていない。だが、さすがというべきか」
ウォルラースの声。
「あれっ……なんでなんで、どういうことでやんすか?」
ファウンの声――やはりファウンなのか。
「ああ、ファウンは定期便に乗ってきたんだっけか?」
「ウォル? 定期便を虐殺ってどういうことでやんす? まだそんなことを」
ウォルラースとファウンは古くからの知り合いなのか?
「ファウン。彼らは私の命を狙っている」
「どうせまた自業自得でさぁ」
「つれないこと言わないでくれよ」
二人のやり取りからすると、情報共有はできていないっぽい。
ファウンが乗っていたのも偶然だったのか、それとも今このやりとりが茶番で単なる時間稼ぎなのか。
「まさか、ファウン」
ウォルラースの声が移動する。
ファウンの声がある位置よりも奥に。
「おいおい、ウォル。あっしのことを疑うんですかい?」
ファウンの溜め息。
噛み合ってない?
よくよく聞いていると、名無し森で出会った時のウォルラースよりもゆとりが無くなっているように感じる。
演技でなければ、だけど。
「ウォル。本当に偶然でやすよ。あっしとウォルの仲でやすよ! その証拠に良いことを教えるでやす。あの二人を縛っている縄、あれは簡単に解ける縛り方でさぁ」
「クラーリン、どういうことだっ!」
クラーリンが大きな消費命を集中する。
「グリニーに触るなっ!」
「そうは言っても約束を守らなかったのは」
「ウォルラース、君の方ではないか、約束を守らなかったのは。なぜ僕に虐殺へ参加させた? コンウォルとネスタエアインをこっそりと脱出させて連れて来るだけだったろう?」
「クラーリン? どういうこと?」
「お姉ちゃん!」
グリニーさんの声と、チェッシャーの声。
「お二人とも、動かないでおくれやすよ……」
ファウンが二人のすぐ近くに移動している。
「それで彼に手を貸したと?」
空気がピリついているのを感じる。
ファウンが移動したとき、短剣を鞘から抜くような音が聞こえたが、まさか。
「フラマ、あの男を見ろ。『虫の牙』を持っている。あれはタールだ」
ウォルラースがとんでもないことを言い出した。
『虫の牙』を持っているのは俺だ。
これはもう動いたほうがいいのかもしれない。
ただ、動いていいという合図はクラーリンが出すという約束だからな――そのときフラマさんの声が洞窟内に響いた。
「タールだとッ? 両親の仇ッ!」
洗脳という言葉を思い出す。
明らかに様子がおかしい。
これはもう動いたほうが、と体に力を入れようとした瞬間、炎が大きく揺らめく音が聞こえ、凄まじい熱に包まれた。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
レムールのポーとも契約。傭兵部隊を勇気除隊して、ルブルムたちとの合流を目指すなか、夜襲を受けた。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。フォーリーから合流したがリテルたちの足を引っ張りたくないと引き返した。ディナ先輩への荷物を託してある。
・ラビツ
イケメンではないが大人の色気があり強者感を出している鼠種の兎亜種。
高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」に所属する傭兵。二つ名は「胸漁り」。現在は謝罪行脚中。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人。取り戻した犬種の体は最近は丈夫に。
地球で飼っていたコーギーのハッタに似ている。ゴブリン魔法を使える。傭兵部隊を勇気除隊して、夜襲で大変なことに。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
魔法も戦闘もレベルが高く、知的好奇心も旺盛。親しい人を傷つけてしまっていると自分を責めがち。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
アールヴを母に持ち、猿種を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。
・ディナの母
アールヴという閉鎖的な種族ながら、猿種に恋をしてディナを生んだ。名はネスタエアイン。
キカイー白爵の館からディナを逃がすために死んだが、現在はタールに『魔動人形』化されている。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。
・タール
元ギルフォド第一傭兵大隊隊長。『虫の牙』でディナに呪詛の傷を付け、フラマとオストレアの父の仇でもある。
地界出身の魔人。種族はナベリウス。現在は『魔動人形』化したネスタエアインの中に意識を移している。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。ラビツとは傭兵仲間で婚約者。ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種の半返りの女傭兵。知識も豊富で頼れる。二つ名は「噛み千切る壁」。現在はギルフォド第一傭兵大隊隊長代理。
・レム
爬虫種。胸が大きい。バータフラ世代の五人目の生き残り。不本意ながら盗賊団に加担していた。
同じく仕方なく加担していたミンを殺したウォルラースを憎んでいる。トシテルの心の妹。現在、ルブルムに同行。
・ウォルラース
キカイーがディナたちに興味を示すよう唆した張本人。過去にディナを拉致しようとした。金のためならば平気で人を殺す。
ダイクの作った盗賊団に一枚噛んだが、逃走。海象種の半返り。クラーリンとは旧知の仲であった。
・ナイト
初老の馬種。地球では親の工場で働いていた日本人、喜多山馬吉。
2016年、四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。今は発明家として過ごしているが、ナイト商会のトップである。
・モクタトル
スキンヘッドの精悍な中年男性魔術師。眉毛は赤い猿種。呪詛解除の呪詛をカエルレウムより託されて来た。
ホムンクルスの材料となる精を提供したため、ルブルムを娘のように大切にしている。
・トリニティ
モクタトルと使い魔契約をしているグリュプス。人なら三人くらい乗せて飛べる。
・ファウン
ルージャグから逃げたクーラ村の子供たちを襲った山羊種三人組といっとき行動を共にしていた山羊種。
リテルを兄貴と呼び、ギルフォドまで追いかけてきた。傭兵部隊を一緒に勇気除隊した深夜、突如として姿を消した。
・フラマ
おっぱいで有名な娼婦。鳥種の半返り。淡いピンク色の長髪はなめらかにウェーブ。瞳は黒で口元にホクロ。
胸の大きさや美しさ、綺麗な所作などで大人気。父親が地界出身の魔人。ウォルラースに洗脳されているっぽい。
・オストレア
鳥種の先祖返りで頭は白のメンフクロウ。スタイルはとてもいい。フラマの妹。
父の仇であるタールの部下として傭兵部隊に留まっていた。
・オストレアとフラマの父
地界出身の魔人。種族はアモン。タールと一緒に魔法品の研究をしていたが、タールに殺された。
タールの、ギルフォルド王国に居るアモン種族の「魔動人形」が、この父である可能性が高い。
・エルーシ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種。娼館で働くのが嫌で飛び出した。
共に盗賊団に入団した仲間を失い逃走中だった。使い魔にしたカッツァリーダや『発火』で夜襲をかけてきたが、死亡。
・ギルフォド~ニュナム定期便の御者兼護衛
両生種男性がリーブラザス、鹿種女性がメロメン、猿種男性がビグジョン。三人とも練度が高く信頼できそうな感じ。
・ギルフォド~ニュナム定期便の乗客たち
豚種カップルは女性が半返り、河馬種の母子、馬種の老紳士、猫種の痩せた兄妹、牛種の中年男性商人はマイ寝藁じゃないと眠れない。
・コンウォル
スプリガン。河馬種の男の子に偽装していた。タールの『魔動人形』の一体。
夜襲の際に正体を現して『虫の牙』を奪いに来た。そしてマドハトの首を刎ねたが、リテルに叩き潰されて焼かれた。
・クラーリン
グリニーに惚れている魔術師。猫種。目がギョロついているおじさん。グリニーを救うためにウォルラースに協力。
チェッシャーに魔法を教えた人。リテルやエルーシにも魔術師としての心構えや魔法を教えた。
・グリニー
チェッシャーの姉。猫種。美人だが病気でやつれている。その病とは魔術特異症に起因するものらしい。
現在かなり弱っており、クラーリンが魔法で延命しなければ危険な状況。クラーリン、チェッシャーと共にウォルラースに同行。
・チェッシャー
姉の薬を買うための寿命売りでフォーリーへ向かう途中、野盗に襲われ街道脇に逃げ込んでいたのをリテルに救われた。
猫種の半返りの女子。宵闇通りで娼婦をしているが魔法を使い貞操は守り抜いている。リテルに告白した。
・レムール
レムールは単数形で、複数形はレムルースとなる。地界に生息する、肉体を持たず精神だけの種族。
自身の能力を提供することにより肉体を持つ生命体と共生する。『虫の牙』による呪詛傷は、強制召喚されたレムールだった。
・ショゴウキ号
ナイト(キタヤマ)がリテルに貸し出した特別な馬車。「ショゴちゃん」と呼ばれる。現在はルブルムが使用。
板バネのサスペンション、藁クッション付き椅子、つり革、床下隠し収納等々便利機能の他、魔法的機能まで搭載。
・ドラコ
古い表現ではドラコーン。魔術師や王侯貴族に大人気の、いわゆるドラゴン。その卵を現在、リテルが所持。
卵は手のひらよりちょっと大きいくらいで、孵化に必要な魔法代償を与えられるまで、石のような状態を維持する。
・ナベリウス
苦痛を与えたり、未来を見ることができる能力を持つ勇猛な地界の一種族。
鳥種の先祖返りに似た外観で、頭部は烏。種族的にしわがれ声。魔法品の制作も得意。
・アモン
強靭で、限定的な未来を見たり、炎を操ることができるなどの能力を持つ地界の一種族。
鳥種の先祖返りに似た外観だが、蛇のように自在に動かせる尾を持つ。頭部は水鳥や梟、烏に似る。
■ はみ出しコラム【魔物デザイン スプリガン】
今回の魔物デザインは、圧倒的に某マンガのタイトルなイメージが強いスプリガンさんです。
・ホルトゥス、及び地界におけるスプリガン
本来は地界の住人。獣種の大人の膝ほどもない身長で非常に醜い容姿。
巨大な姿になれる魔法を持ち、風を操る。
・地球におけるスプリガン
スプリガンは醜悪であり、妖精の護衛役を果たすらしい。
スプリガンはまったく異質の存在で、エルフに属するもののうちでは最も気むずかしく、最も醜い姿をしている。姿を見せるのは、古い廃墟や塚、環状列石や城のまわり、そのほかスプリガン自身が管理している宝の埋蔵地あたりだけである。スプリガンは子どもをさらい、代わりに自分のたちの醜い息子を置いていったり、悪天候をもたらして農作物を枯らしたり、麦を刈ったばかりの畑に旋風を引き起こしたり、また自分のたちの行きつけの場所に手出しをする人間に対して、ありとあらゆる悪さをする。
スプリガンはかつての巨人の亡霊であり、通常は非常に小さいが、巨大な姿にふくらむこともできるという。概して、障害や病気をもたらすのが好きであるとはいえ、スコットランド高地地方のボーギーほどの危険はなさそうである。スプリガンは相手に危害を加えるよりは、おびやかすのに熱心。スプリガンはたえず盗みをする。
(キャサリン・ブリッグズ編著 平野敬一、井村君江、三宅忠明、吉田新一 共訳『妖精事典』より)
・スプリガンのデザイン
今回はタールの「魔動人形」の一体として攻撃力の高そうな存在を探していました。
ストーリーの都合上、同じ馬車に乗り合わせても主人公たちが気づかない存在、というもう一つの条件も加え、『妖精事典』を眺めていて見つけました。
普段は小さく、巨大化も出来、風を操る。妖精の宝箱の番人で、醜いという身体的な特徴もあります。キャラも立ってます。
なのでほぼ地球イメージのスプリガンそのままでデザインを決定しました。
クラーリンに言われて、自分が警戒心をむき出しにしてしまっていることに気付く。
鏡が身近にないから表情まで気が回らないのは今後の課題だな。
「安心してくれ。僕は魔術師として純粋にタールを褒めた。だが彼らの人柄は軽蔑している。コンウォルが脱出に利用した河馬種の親子だが、息子のフリをするために本当の息子をさらい、母親を脅して親のフリをさせた。本物の息子はいまギルフォドで軟禁されているはずだ。いくら息子が無事で協力金を握らせたとはいえ、そのやり方は不本意だと思ったよ。ただ、グリニーのために、『魔動人形』に移ったタールを脱出させる手伝いはせざるを得なかった。僕がタールを見捨てたら、タールがウォルラースに何を伝えるかわからない。だから直前まで脱出準備を手伝って、そしてギルフォドを経ったのは昨晩のこと。今日の昼にウォルラースの隠しアジトでグリニーに再び『眠れ、魂の形』をかけた。その後はタールから聞いた情報をもとにグリニーを助けるための魔術をずっと試行錯誤していた」
「それなのに、まだ彼らと」
「まだ足りないのだ。理論はできた。だが、まだなのだ。さっき言っただろう? 外から強制的に他人の寿命の渦を操作するには、その魂や肉体に繋がりがあるものを触媒にしなければならないと。同じなんだ」
まさかチェッシャーを触媒に――って、触媒って具体的にはなんだ?
何をするんだ?
生贄とかそういうんじゃないよな?
「僕が触れようとしているのは魔術特異症そのものだ。だとしたら、魔術特異症の者を触媒にしなければならなかったんだ」
クラーリンは、俺が魔術特異症だと見抜いた上でこんなことを言っているのか?
俺の偽装の渦は不十分だったのか?
「触媒ってのはなんですか? 生贄ですか?」
「ははは。殺すわけがない。その寿命の渦が失われるようなことをしたら、触媒としての価値も消える。一時的に繋ぐだけだよ。グリニーの魔術特異症と触媒の魔術特異症とを。思考的には踏み台にすると言ったほうが良いだろうか。繊細な荷物を運ぶには、置いてある側と移したい側の高さを合わせる必要があるから。そして高さが合えば、そこでようやくグリニーの寿命の渦をこちらへ引っ張って取り戻すことができる。触媒となる魔術特異症の者にはただグリニーの獣種と同じ寿命の渦を偽装の渦してもらうだけでいい。もっとも取り戻しに時間がどのくらいかかるかわからないから、偽装の渦を強制する魔法『眠れ、魂の形』で補助するつもりだが」
つまり俺に協力しろと言うことなのか?
方法論としては納得感がありそうだが、そもそも信用がまだできない。
「その、魔術特異症と思われる子がね、ウォルラースに洗脳されているようなのだ」
洗脳?
というか俺のことじゃなかったのか?
他に?
「僕がグリニーの世話やエルーシ君への魔法の手ほどきをしている間にね、ウォルラースがずっとその子につきっきりで……それを特に気にはしていなかったが、今日の昼に気付いたときにはもうウォルラースに陶酔していた。もしかしたら僕にも知らせていない魔法品か何かを使ったのかもしれない。ただ重要なことは、その魔術特異症の子の協力を得るには、ウォルラースの命令が必要だということなんだ。だからタールだったやつらがウォルラースと合流できるまでの最後の手伝いを頼まれてやった。そんな悪党にすがるくらい、僕にとってはグリニーが全てなんだ」
話を整理すると、グリニーさんとチェッシャー以外に、魔術特異症の子がウォルラースの手下として同行している、ということか?
まさかキタヤマさん?
いや「その子」って表現してるから、クラーリンさんより年齢が上のキタヤマさんではないよね?
俺が知る地球人転生者は他に、レムのお母さんと、それからメリアンに因縁があったトレインの恋人であるスマコさん。二人ともすでに亡くなられている。
グリニーさんが五人目としてもう一人?
信用しきれないクラーリンとの会話を断ち切れないのは、転生者の希少性がゆえ――信用?
何を信用するというんだ?
こいつらは何をした?
さっきから『魔力感知』で馬車があった辺りを念入りに確認しているが、生存者の気配がまったくない。
こいつらは、定期便の乗客も護衛も、何の関係もない人たちを虐殺したのだ。
「だからといって、こんな酷いことを」
「ああそうさ! 僕が甘かったんだよ!」
クラーリンが珍しく感情的な怒鳴り声をあげた。
「信じてもらえないかも、だけどね。僕はこの襲撃について、襲撃どころかネスタエアインとコンウォルが無事に定期便から脱出するための手伝いとしか聞いていなかった。いくらグリニーを守るためとはいえ、虐殺に手を貸すわけがないだろう? 僕がそんなことをしてグリニーが心を痛めないとでも? だから途中で君を助けたし、今こうして君に頼んでいる。君とタールとの因縁は知らないが、コンウォルの君に対する態度はおかしかった。隠れることもせず敵意を剥き出しにして。エルーシ君もそうだ。ただ上昇志向が強いだけの少年だった彼が、魔術を熱心に頑張っていた彼が、君の存在に気付いた途端に怒り狂った。いや、君のせいにするつもりはない。ただ、君はウォルラースとも因縁があるんだろう? 信用してほしかったから全て話した。真実を。僕が君を騙そうとしているようにみえるか? 必死なんだ。ネスタエアインは逃げた。もし彼が、僕がコンウォルを見捨てたなどと判断したら……今、気が気じゃないんだ」
クラーリンの必死さは伝わってきているし、話の辻褄は合っているように思える。
今後のリテルやルブルムたちの身の安全を考えると、ネスタエアインを野放しにはしたくないし、ウォルラースもそこに居るのなら、その合流前に――とは思う、けど。
戦力的には――噛み締めた奥歯が震える。
「それに君はあの子も助けたいんじゃないかな。君がチェッシャー同様に仲良くしていた子……フラマを」
フラマ?
魔術特異症ってフラマさんのことか?
ああ、そうか。
この世界においては、通常の寿命の渦ではない者は全てひっくるめて「魔術特異症」なんだっけ。
ただそれだと、クラーリンの想定している術式にはフラマさんは適合しないような気がする。
フラマさんは地球人転生者ではなく、地界出身のアモンという種族を父に持つ、単なる獣種ハーフだから――いや逆か?
グリニーさんも地界出身の魔人と獣種とのハーフなのだとしたら。
どっちが正解なのか?
前にアイシスでグリニーさんに会った時、普通の寿命の渦にしか感じられなかったのはクラーリンが魔法で寿命の渦を偽装の渦していたからっぽいが、それだけ寿命の渦の扱いに慣れているクラーリンが、俺の本来の寿命の渦に気づかないでいるだろうか?
最善の努力はし続けてはいるが、自分の技術を過信してはいない。
フラマさんの名前はチェッシャーから簡単に聞けるだろうし、俺を油断させるための罠とも考えられる。
ただ、もし真実なのだとしたら、俺がリテルの体から分かれるためにはクラーリンさんの思考や経験がとても有用そうではあるんだよな。
とはいえそんな目先の罠に釣られてリテル自身を損なうことがあったら、申し訳ないなんて言葉ではすまされないし。
「すぐに結論は出ないことだろう。先に君の友人のハト君だっけ? 彼の手当をしよう」
ハト?
マドハト?
でもさっき首を――詳細な『魔力感知』で理解する。
寿命の渦のコントロールが不十分なマドハトは、自身の寿命の渦を偽装の渦で「そこにはいない」状態までは絞り込めない。
だからこそ、寿命の渦が消えた状態を、首を切り離されたことのせいなのだとしか思えなかった。
だが今、詳細な『魔力感知』をすると、クラーリンがチェッシャーに教えていた『死んだふり』に近い本当に微かな寿命の渦の動きを感じる。
クラーリンが地面に転がっているマドハトの頭に触れると、それは大きな毛の塊へと変わる――もしかして、尻尾?
あれはマドハトの頭ではなく尻尾なのか?
「これは、通常の傷とは違うな? 『生命回復』でつなげられそうにない」
「貸してください!」
クラーリンさんからマドハトの尻尾を受け取り、倒れているマドハトの元へと駆け寄る――首のないマドハトの死体、にしか見えない。
恐る恐る、頭があるであろう位置に触れてみる――ある!
途端にマドハトの首から上が現れる。
「……テル……さま……」
「良かった……」
マドハトを抱きしめる。
本当に良かった――いや、そんなことより急いで治療をしなくては。
「傷口を見せるんだ」
「ダメです。戻らないです」
「どういうことだ?」
尻尾の傷口部分を、エルーシの燃えている火にかざして改めて見ると、やけに黒ずんでいる。
「テルさまと、最初に会った時と同じです。自分の身体の一部を首として差し出すことで自分の命を守るです。秘密の魔法です。あのときは腕を一本差し出したです。この体は尻尾があったから、尻尾を差し出したです。差し出したものはもう差し出しちゃったから、元には戻せないです」
なるほど。確かに最初に寄らずの森でマドハトに出会った時、マドハトは片腕がなかった。
あのときは命からがら逃げ出してきたんだろうなんて思っていたけれど、ラビツたちの実力を知っている今だと、そんな簡単に見逃すほどラビツたちは甘くもないはずだ。
ラビツたちのような傭兵は、『魔力感知』ではなく『気配感知』だろうけど、それでもまだ生きているゴブリンを見逃すわけはないように感じるし。
となると、これは魔法、いや、魔術の効果なのか。
首の代わりに身体部位の一部を差し出し、その部位を頭部に、本体は首なし死体へと見せかけ、しかも寿命の渦まで消し込む。そんなすごい効果の魔術を、身体部位を触媒として捧げることで極限まで魔法代償コストを下げた、といったところか。
ゴブリン魔法の奥深さを改めて思い知らされる。
「感動の再開に水を差すようで申し訳ないが、協力してくれるかどうかの返事を急かしても良いかい?」
「クラーリン……さん、グリニーさんの治療に役立ったかもしれないウォルラースやタールと、対立できるんですか?」
「できるかできないかで言えば、グリニーを助けるために必要ならばいくらでもする。あと、さんは要らない。例えばネスタエアインが到着前ならば、君らが捕虜のフリをしてくれればウォルラースたちに近づける。あとは隙を見てウォルラースとフラマとを無力化できれば、グリニーやチェッシャーと共に脱出して、ということは不可能ではないと思う。ただ状況によっては、君たちを連れて行っておきながら対立する可能性は捨てきれない。何度も言うが、グリニーが最優先なのだ。僕はグリニーを助けるために生きていると言っても過言ではない」
あくまでもグリニーさんが最優先なのは終始伝わってきている。
それに俺を騙したいのなら表面上でも嘘をつけばいいのに、グリニーさんの安全のためならウォルラースとの友好関係を保ち俺たちとの対立も辞さないと、ある意味不器用な告白をしてきている。
これはちゃんと真意なのかもしれないな。
クラーリンは焦っているようでもあるし。
それでも、まだすぐには踏ん切りがつかない。
俺が考えるべきはリテルと、そしてせっかく助かったマドハトの安全。
なんならこのまま逃げたっていいのだ。
ただ、ネスタエアインとウォルラースとを野放しにしてしまう危険性も無視できないのは確か。
ネスタエアインよりも先にアジトに行って、ウォルラースを無力化できるのであれば、グリニーさんの安全を確保できたなら、クラーリンはネスタエアイン退治に手を貸してくれるのであろうか。
「わかった。ここで時間を消費して、ネスタエアインがウォルラースと合流してしまったならば、色々なことが難しくなるかもしれない。それならば今すぐ独りで戻った方がグリニーはより安全を確保できる気がしている。ありがとう、リテル君。最後にもう一つ、お礼代わりに情報をあげよう。タールの『魔動人形』がもう一体、ギルフォルド王国に居るらしい。アモンという地界の種族の体らしい。本来はコンウォルとネスタエアインをウォルラースと引き合わせた後、彼らはそこから指名手配の及ばぬギルフォルド王国へと向かい、僕らはお役御免になるはずだった」
アモンということはそれがフラマさんとオストレアのお父さんということか?
クラーリンはといえば、無防備にこちらへ背中をさらけ出し、去ってゆく。
「……テルさま」
マドハトの頭を撫でる。
「もう、リテルで良いよ、マドハト」
「はいです!」
「それからもう少し、危険なことに付き合ってくれるか?」
「リテルさまをひとりにはしないです!」
「ありがとう、マドハト」
俺は落ちていた『虫の牙』を拾うと、クラーリンを追いかけた。
深夜の森を馬で早駆けする。
クラーリンとエルーシが乗ってきた馬に乗って。
もっとも俺とマドハトはエルーシが乗ってきたやつに「荷物」として乗せられて、だけど。
あの後、念のためにもう一度定期便の方を確認してみた。
全員、焼かれていた。
その中には河馬種の母親も居た。
コンウォルが子どものフリをしていたが、母親はネスタエアインなどではなく、本物の一般人だったのだ。
当のネスタエアインは「魔動人形」内に埋め込まれた魔石の中に寿命の渦を隠し、牛種の商人が持ち運んでいた荷物に「死に人形」として隠れていたようだ。
普通の荷物は全て、門を出る時に領兵さんたちに検分されていたが、見落とされたようだ。
今思えば、あの商人がやたらと寝藁を主張していた袋なら、ネスタエアインの小柄な体くらいは入った可能性はある。
重量を軽くする魔法というのもあるようだし。
唯一、命を助けられていたのは定期便を牽いていた馬が一頭だけ。
恐らくネスタエアインが乗っていったっぽい。
だから俺たちは、ネスタエアインが馬で先行している前提で作戦を組み立てた。
俺とマドハトはクラーリンの魔法『眠れ、魂の形』で、寿命の渦を「カウダ毒で麻痺した獣種」へと整え、縛られた上で馬で運ばれる。
ただし本当に縛られるわけではなく、「一見縛られているように見えるが簡単に外れる結び方」というやつを使う。
以前、メリアンに教えてもらった技術だ。
縄は、万が一の際に定期便の護衛たちを殺さずに無力化するためにとクラーリンが用意してきたもの。
そしてその先端を馬の鞍へと結びつけ、いざとなったら馬から落ちるだけで縄が解けるようにしてみた。
クラーリンの『眠れ、魂の形』は、幻覚系ではなく実際に寿命の渦自体が整えられるので、消費命の集中をしても表面上は変わらない。自動で偽装消費命してくれるという便利さがある。
ただし、四ディエス以上の魔法代償については、隠すことができないし、『魔力感知』の詳細モードで確認すると、集中してから整えられるまでのほんのわずかな間の揺らぎは感じ取ることができた。
四ディエスの魔法で、一ディエス分だけ偽装消費命ってのを試してみたがうまくはいかなかった。
タール相手に不意打ちという点のみで考えるなら、三ディエス以下の魔法であっても、有効性を過信しないほうがいいだろう。
あるいはスピード勝負か。
どうするかをずっと脳内シミュレーションし続けながら、黒き森の中、馬の背に揺られ続ける。
ウォルラースの隠しアジトというのは、黒き森の奥にあるらしい。
かつてシュラットの住居であったと思われる洞窟の一つで、シュラットは背が高いから洞窟内の天上が高く、中へは馬を連れたまま入れるのだとか。
黒き森と言えばウンセーレー・ウィヒトなので、そっちの問題はないのかとクラーリンに尋ねたところ、シュラットがウンセーレー・ウィヒト化した背景からか、その大半が黒き森を貫く街道沿いに現れるのだそうだ。
森の中を抜ければ特に遭遇することもないと言われていたが、実際その通りであった。
やがて、馬が止まる。
クラーリンが馬の首を軽く二回叩く。
事前に決めておいたアジトの前まで到着した合図。
俺とマドハトはカウダ毒を盛られて縛られた捕虜作戦は果たして通用するのだろうか。
限られた時間の中で最善に近い作戦を用意したつもりだった。
しかし、想定外の事態というのはどこにでも存在する。
ようやく到着したウォルラースの隠しアジトだったが、もう初っ端から前提を崩された。
なぜか分からないが、人数がおかしいのだ。
『魔力感知』については、感知していることを向こうに知られないよう控えめに抑えた『魔力微感知』を使っているのだが、それでも、普通に存在する寿命の渦を把握し損なうことはない。
そりゃ『魔力微感知』では、『死んだふり』みたいな魔法で寿命の渦を偽装の渦していたり、「魔動人形」のように寿命の渦を魔石の中に隠しているような、詳細モードで索敵しないと見つからない類いのやつは、残念ながらとらえることができないが、今、明らかに予定よりも多い人数の存在は俺だけじゃなく、恐らくクラーリンも感知できているのではなかろうか。
海象種が一人、これはウォルラース。
猫種が二人、これはチェッシャーとグリニーさん。
鳥種が一人、これはフラマさん。
そして、山羊種が一人、俺はこの寿命の渦に見覚えがある。
どうしてこんなところに居るのか、ファウン。
襲撃前に抜け出したファウン――ああ、そういや置き手紙があったんだっけ。
こんなことならあの置き手紙を読んでおけば良かった、なんて今更悔やんでも仕方ない。
クラーリンが馬の首を軽く一回叩いた。
決行か。
俺とマドハトが乗せられた馬は、クラーリンの馬に続いて洞窟へと入ってゆく。
馬の足音から、土と草に覆われた地面が、砂利のある岩場へと変わったのがわかる。
しかも傾斜を下っている。
「ウォルラース、僕は戻ったよ。コンウォルとエルーシ君はこの彼にやられた。二人とも彼と因縁があったようでね、僕が止めるのも聞かずに戦闘を始めたのだ。秘密裏に脱出なんてできなかったよ。しかもコンウォルは戦闘のさなか、その能力を見せてしまってね、それをマズイと判断したのかネスタエアインは定期便に火を付けて全員を虐殺したよ。生き残りは居ない。しかもネスタエアインは先に脱出してしまった。僕がこの二人を無力化している間に、馬に乗って。もう着いているかと思ったのだが……そこの君はネスタエアインじゃないね?」
クラーリンは堂々とした声。
そして馬を降りた気配。
「ふむ。ネスタエアインはまだ来ていない。だが、さすがというべきか」
ウォルラースの声。
「あれっ……なんでなんで、どういうことでやんすか?」
ファウンの声――やはりファウンなのか。
「ああ、ファウンは定期便に乗ってきたんだっけか?」
「ウォル? 定期便を虐殺ってどういうことでやんす? まだそんなことを」
ウォルラースとファウンは古くからの知り合いなのか?
「ファウン。彼らは私の命を狙っている」
「どうせまた自業自得でさぁ」
「つれないこと言わないでくれよ」
二人のやり取りからすると、情報共有はできていないっぽい。
ファウンが乗っていたのも偶然だったのか、それとも今このやりとりが茶番で単なる時間稼ぎなのか。
「まさか、ファウン」
ウォルラースの声が移動する。
ファウンの声がある位置よりも奥に。
「おいおい、ウォル。あっしのことを疑うんですかい?」
ファウンの溜め息。
噛み合ってない?
よくよく聞いていると、名無し森で出会った時のウォルラースよりもゆとりが無くなっているように感じる。
演技でなければ、だけど。
「ウォル。本当に偶然でやすよ。あっしとウォルの仲でやすよ! その証拠に良いことを教えるでやす。あの二人を縛っている縄、あれは簡単に解ける縛り方でさぁ」
「クラーリン、どういうことだっ!」
クラーリンが大きな消費命を集中する。
「グリニーに触るなっ!」
「そうは言っても約束を守らなかったのは」
「ウォルラース、君の方ではないか、約束を守らなかったのは。なぜ僕に虐殺へ参加させた? コンウォルとネスタエアインをこっそりと脱出させて連れて来るだけだったろう?」
「クラーリン? どういうこと?」
「お姉ちゃん!」
グリニーさんの声と、チェッシャーの声。
「お二人とも、動かないでおくれやすよ……」
ファウンが二人のすぐ近くに移動している。
「それで彼に手を貸したと?」
空気がピリついているのを感じる。
ファウンが移動したとき、短剣を鞘から抜くような音が聞こえたが、まさか。
「フラマ、あの男を見ろ。『虫の牙』を持っている。あれはタールだ」
ウォルラースがとんでもないことを言い出した。
『虫の牙』を持っているのは俺だ。
これはもう動いたほうがいいのかもしれない。
ただ、動いていいという合図はクラーリンが出すという約束だからな――そのときフラマさんの声が洞窟内に響いた。
「タールだとッ? 両親の仇ッ!」
洗脳という言葉を思い出す。
明らかに様子がおかしい。
これはもう動いたほうが、と体に力を入れようとした瞬間、炎が大きく揺らめく音が聞こえ、凄まじい熱に包まれた。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
レムールのポーとも契約。傭兵部隊を勇気除隊して、ルブルムたちとの合流を目指すなか、夜襲を受けた。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。フォーリーから合流したがリテルたちの足を引っ張りたくないと引き返した。ディナ先輩への荷物を託してある。
・ラビツ
イケメンではないが大人の色気があり強者感を出している鼠種の兎亜種。
高名な傭兵集団「ヴォールパール自警団」に所属する傭兵。二つ名は「胸漁り」。現在は謝罪行脚中。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人。取り戻した犬種の体は最近は丈夫に。
地球で飼っていたコーギーのハッタに似ている。ゴブリン魔法を使える。傭兵部隊を勇気除隊して、夜襲で大変なことに。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
魔法も戦闘もレベルが高く、知的好奇心も旺盛。親しい人を傷つけてしまっていると自分を責めがち。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
アールヴを母に持ち、猿種を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。
・ディナの母
アールヴという閉鎖的な種族ながら、猿種に恋をしてディナを生んだ。名はネスタエアイン。
キカイー白爵の館からディナを逃がすために死んだが、現在はタールに『魔動人形』化されている。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。
・タール
元ギルフォド第一傭兵大隊隊長。『虫の牙』でディナに呪詛の傷を付け、フラマとオストレアの父の仇でもある。
地界出身の魔人。種族はナベリウス。現在は『魔動人形』化したネスタエアインの中に意識を移している。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。ラビツとは傭兵仲間で婚約者。ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種の半返りの女傭兵。知識も豊富で頼れる。二つ名は「噛み千切る壁」。現在はギルフォド第一傭兵大隊隊長代理。
・レム
爬虫種。胸が大きい。バータフラ世代の五人目の生き残り。不本意ながら盗賊団に加担していた。
同じく仕方なく加担していたミンを殺したウォルラースを憎んでいる。トシテルの心の妹。現在、ルブルムに同行。
・ウォルラース
キカイーがディナたちに興味を示すよう唆した張本人。過去にディナを拉致しようとした。金のためならば平気で人を殺す。
ダイクの作った盗賊団に一枚噛んだが、逃走。海象種の半返り。クラーリンとは旧知の仲であった。
・ナイト
初老の馬種。地球では親の工場で働いていた日本人、喜多山馬吉。
2016年、四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。今は発明家として過ごしているが、ナイト商会のトップである。
・モクタトル
スキンヘッドの精悍な中年男性魔術師。眉毛は赤い猿種。呪詛解除の呪詛をカエルレウムより託されて来た。
ホムンクルスの材料となる精を提供したため、ルブルムを娘のように大切にしている。
・トリニティ
モクタトルと使い魔契約をしているグリュプス。人なら三人くらい乗せて飛べる。
・ファウン
ルージャグから逃げたクーラ村の子供たちを襲った山羊種三人組といっとき行動を共にしていた山羊種。
リテルを兄貴と呼び、ギルフォドまで追いかけてきた。傭兵部隊を一緒に勇気除隊した深夜、突如として姿を消した。
・フラマ
おっぱいで有名な娼婦。鳥種の半返り。淡いピンク色の長髪はなめらかにウェーブ。瞳は黒で口元にホクロ。
胸の大きさや美しさ、綺麗な所作などで大人気。父親が地界出身の魔人。ウォルラースに洗脳されているっぽい。
・オストレア
鳥種の先祖返りで頭は白のメンフクロウ。スタイルはとてもいい。フラマの妹。
父の仇であるタールの部下として傭兵部隊に留まっていた。
・オストレアとフラマの父
地界出身の魔人。種族はアモン。タールと一緒に魔法品の研究をしていたが、タールに殺された。
タールの、ギルフォルド王国に居るアモン種族の「魔動人形」が、この父である可能性が高い。
・エルーシ
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種。娼館で働くのが嫌で飛び出した。
共に盗賊団に入団した仲間を失い逃走中だった。使い魔にしたカッツァリーダや『発火』で夜襲をかけてきたが、死亡。
・ギルフォド~ニュナム定期便の御者兼護衛
両生種男性がリーブラザス、鹿種女性がメロメン、猿種男性がビグジョン。三人とも練度が高く信頼できそうな感じ。
・ギルフォド~ニュナム定期便の乗客たち
豚種カップルは女性が半返り、河馬種の母子、馬種の老紳士、猫種の痩せた兄妹、牛種の中年男性商人はマイ寝藁じゃないと眠れない。
・コンウォル
スプリガン。河馬種の男の子に偽装していた。タールの『魔動人形』の一体。
夜襲の際に正体を現して『虫の牙』を奪いに来た。そしてマドハトの首を刎ねたが、リテルに叩き潰されて焼かれた。
・クラーリン
グリニーに惚れている魔術師。猫種。目がギョロついているおじさん。グリニーを救うためにウォルラースに協力。
チェッシャーに魔法を教えた人。リテルやエルーシにも魔術師としての心構えや魔法を教えた。
・グリニー
チェッシャーの姉。猫種。美人だが病気でやつれている。その病とは魔術特異症に起因するものらしい。
現在かなり弱っており、クラーリンが魔法で延命しなければ危険な状況。クラーリン、チェッシャーと共にウォルラースに同行。
・チェッシャー
姉の薬を買うための寿命売りでフォーリーへ向かう途中、野盗に襲われ街道脇に逃げ込んでいたのをリテルに救われた。
猫種の半返りの女子。宵闇通りで娼婦をしているが魔法を使い貞操は守り抜いている。リテルに告白した。
・レムール
レムールは単数形で、複数形はレムルースとなる。地界に生息する、肉体を持たず精神だけの種族。
自身の能力を提供することにより肉体を持つ生命体と共生する。『虫の牙』による呪詛傷は、強制召喚されたレムールだった。
・ショゴウキ号
ナイト(キタヤマ)がリテルに貸し出した特別な馬車。「ショゴちゃん」と呼ばれる。現在はルブルムが使用。
板バネのサスペンション、藁クッション付き椅子、つり革、床下隠し収納等々便利機能の他、魔法的機能まで搭載。
・ドラコ
古い表現ではドラコーン。魔術師や王侯貴族に大人気の、いわゆるドラゴン。その卵を現在、リテルが所持。
卵は手のひらよりちょっと大きいくらいで、孵化に必要な魔法代償を与えられるまで、石のような状態を維持する。
・ナベリウス
苦痛を与えたり、未来を見ることができる能力を持つ勇猛な地界の一種族。
鳥種の先祖返りに似た外観で、頭部は烏。種族的にしわがれ声。魔法品の制作も得意。
・アモン
強靭で、限定的な未来を見たり、炎を操ることができるなどの能力を持つ地界の一種族。
鳥種の先祖返りに似た外観だが、蛇のように自在に動かせる尾を持つ。頭部は水鳥や梟、烏に似る。
■ はみ出しコラム【魔物デザイン スプリガン】
今回の魔物デザインは、圧倒的に某マンガのタイトルなイメージが強いスプリガンさんです。
・ホルトゥス、及び地界におけるスプリガン
本来は地界の住人。獣種の大人の膝ほどもない身長で非常に醜い容姿。
巨大な姿になれる魔法を持ち、風を操る。
・地球におけるスプリガン
スプリガンは醜悪であり、妖精の護衛役を果たすらしい。
スプリガンはまったく異質の存在で、エルフに属するもののうちでは最も気むずかしく、最も醜い姿をしている。姿を見せるのは、古い廃墟や塚、環状列石や城のまわり、そのほかスプリガン自身が管理している宝の埋蔵地あたりだけである。スプリガンは子どもをさらい、代わりに自分のたちの醜い息子を置いていったり、悪天候をもたらして農作物を枯らしたり、麦を刈ったばかりの畑に旋風を引き起こしたり、また自分のたちの行きつけの場所に手出しをする人間に対して、ありとあらゆる悪さをする。
スプリガンはかつての巨人の亡霊であり、通常は非常に小さいが、巨大な姿にふくらむこともできるという。概して、障害や病気をもたらすのが好きであるとはいえ、スコットランド高地地方のボーギーほどの危険はなさそうである。スプリガンは相手に危害を加えるよりは、おびやかすのに熱心。スプリガンはたえず盗みをする。
(キャサリン・ブリッグズ編著 平野敬一、井村君江、三宅忠明、吉田新一 共訳『妖精事典』より)
・スプリガンのデザイン
今回はタールの「魔動人形」の一体として攻撃力の高そうな存在を探していました。
ストーリーの都合上、同じ馬車に乗り合わせても主人公たちが気づかない存在、というもう一つの条件も加え、『妖精事典』を眺めていて見つけました。
普段は小さく、巨大化も出来、風を操る。妖精の宝箱の番人で、醜いという身体的な特徴もあります。キャラも立ってます。
なのでほぼ地球イメージのスプリガンそのままでデザインを決定しました。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
不死王はスローライフを希望します
小狐丸
ファンタジー
気がついたら、暗い森の中に居た男。
深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。
そこで俺は気がつく。
「俺って透けてないか?」
そう、男はゴーストになっていた。
最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。
その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。
設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる